2月4日 キャッチ!
トーチかはかつて世界各地の戦場で
兵士が身を隠し
空いた隙間から機関銃で敵の歩兵を撃つために作られた。
アルバニアの国土は日本の四国の1、5倍。
約300万人が暮らしている。
今もアルバニアの各地で見られるトーチカ。
人々の暮らしの中に
存在感とともに暗い過去の記憶を今に残している。
現在はEUヨーロッパ連合の加盟を目指すなど
国際社会との関係強化を進めるアルバニアだが
1990年ごろまではいわば鎖国状態となっていた。
第二次世界大戦後 独自の共産主義体制を築いたアルバニア。
当初はソビエトや中国などと外交関係があったが
両国との政治的対立で
70年代には国際社会から孤立してしまう。
外国からの侵攻を恐れるあまり当時のヱンベル・ホッジャ政権は
すべての国民を守るという名目で
70万個と言われるトーチカを国内各地に建設。
その一部が今に残っている。
暗い過去の記憶を残すトーチカに市民からは批判的な声も聞かれる。
(市民)
「戦争を思い起こさせるので
子どものころトーチカは怖かったです。」
「当初の目的が良いものではないし
今となっても何の役にも立ちません。」
そんな負の遺産であるはずのトーチカにアルバニアの独自性を見出している人がいる。
旅行会社を営むエルトン・チヤウシさん。
去年からはアルバニアのトーチカをめぐる観光ツアーを始めた。
チヤウシさんは
トーチカこそが他のヨーロッパの国々とは大きく違うアルバニアの歴史を物語る重要な証拠だと考えている。
(旅行会社経営 エルトン・チヤウシさん)
「大変だった時代のことを伝える必要があると思います。
トーチカこそがアルバニアの“困難の歴史”のシンボルなんです。」
東ショーロッパの民主化から25年。
経済的に遅れていたアルバニアも
今では新しい建物の建設が進むなど
社会は大きく変化しようとしている。
各地に残るトーチカや住民らの避難施設であったシェルターが
ユニークなアイデアで活用され始めている。
地元の食材にこだわり外国からも多くの客が訪れる人気のレストラン。
レストランにある子どもたちの遊び場で目に飛び込んでくるのがトーチカ。
子どもたちにも親しみやすいようテントウムシやカメにペイントされている。
またそれだけではない。
料理にも貢献している。
かつてシェルターだった場所で約600個ものチーズが熟成されている。
気温や湿度が一定に保たれるためチーズ作りに適しているという。
(レストランオーナー)
「冬は外より暖かく
夏は涼しくて気持ちが良いんです。」
海沿いにはトーチカの上に建てられたホテルもある。
夏場に砂浜で使うパラソルなどを使う倉庫としてトーチカを利用している。
また地元産業にも貢献している。
街の土産物屋を曽族と覗くと
ペン立てや灰皿などトーチカをかたどった様々な商品が並んでいる。
トーチカの観光ツアーを手掛けるチヤウシさんは
アルバニア各地のシェルターを使ったユニークな場所を紹介している。
ワイン作りのために使われているシェルターや
家畜を育てる農家のシェルターなど
その珍しさに観光客からの評判は上々で手ごたえを感じている。
さらにチヤウシさんはトーチカ観光の今後に大きな夢を抱いている。
(旅行会社経営 エルトン・チヤウシさん)
「海沿いのトーチカは西側を向いています。
夕日の見える“トーチカ・ホテル”なんてどうでしょう?
すばらしいでしょ?
ぜひ実現したいです。」
アルバニアの歴史を今に伝えるトーチカ。
チヤウシさんは負の遺産と向き合いながら新しい時代を生きている。