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人は誰もが親不孝

2017-02-25 06:15:00 | 編集手帳

2月21日 編集手帳

 

 名作として名高い往年のテレビドラマに、
倉本聰さん脚本の『昨日(きのう)、
悲別(かなしべつ)で』がある。
北海道の炭坑町「悲別」は架空の地名である。

五月みどりさん演じる女性が裏小路で小さな飲み屋をやっていた。
通称「泣きべそ通り」という。
“悲”も“泣きべそ”も正負でいえば負の言葉だが、
これが「嬉別(うれしべつ)」や「喜色満面通り」では物語が紡がれていくまい。
地名とは不思議なもので、
ときには正よりも負に情緒が宿る。

福岡市・天神に「親不孝通り」の愛称が復活するという。
約20年ぶりのことで、
その呼び名に愛着をもつ住民や商店主の声が現在の「親富孝(おやふこう)通り」からの改名を後押しした。

「親不孝通り」の愛称は予備校通いの若者が目立った1970年代の頃に生まれたが、
非行を助長しかねないという地元警察署の要請を受けて改めた経緯がある。
「悲別」や「泣きべそ通り」に心ひかれる小欄も、
旧名の復活にうなずく一人である。

“負”の度合いは、
そう大きくない。
〈今にして知りて悲しむ父母(ちちはは)がわれにしまししその片おもひ〉(窪田空穂(うつぼ))。親に永遠の片思いをさせて、
人は誰もが例外なしの親不孝である。



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