日暮しの種 

経済やら芸能やらスポーツやら
お勉強いたします

パキスタン 横行する“名誉殺人”

2016-08-21 07:15:00 | 報道/ニュース

7,29 キャッチ!


パキスタンで7月16日
26歳の女性が実の弟に殺害されるという事件が起きた。
殺害されたカンディール・バローチさんは
自撮りの写真や動画をソーシャルメディア上に繰り返し投稿。
大胆に肌を露出した姿もあったことから
保守的な地域社会に波紋を広げていた。
弟は姉を殺害した理由について
「家族の名誉を汚した」と述べている。
こうした殺人は“名誉殺人”と呼ばれ
パイスタンでは親が認めない相手との交際や結婚は
社会的にタブーとされてきた。
そのタブーを犯したものを
「家族の名誉を汚した」として殺害するのは名誉殺人で
犠牲者の大半は女性である。
名誉殺人を助長しているのは
イスラム法に基づいたキサース・ディヤト法の存在である。
この法律では
被害者の家族が許せば殺人犯を恩赦することが出来る。
名誉殺人では被害者の家族が加害者の家族でもあることから
恩赦を申し出るケースがほとんどで
刑罰の対象とならない。

カンディール・バローチさんは保守的な社会におけるネット上のスターだった。
カンディールさんは女性の自由な活動を拒絶する社会に対し
果敢に挑んだ。
(カンディール・バローチさん)
「私生活も含め
 私のすべてをネットで公開します。」
弟にとっては彼女の行動はやりすぎだった。
「フェイスブックへの投稿が家族の名誉を汚した」
殺害の理由をそう供述した。
(カンディールさんの母)
「娘の顔は傷だらけでした。
 下も唇も黒ずんでいて
 死んでしまったのだと思いました。」
Q.「なぜこんなことになってしまったと思いますか」
(カンディールさんの母)
「娘への悪口
 よくない噂がどんどん広まったからです。
 息子は友人たちに“これがお前の姉さん”となじられ 
 正気を失ってしまったんです。」
名誉殺人の場合
犯人はたいてい家族の許しを受け
無罪になる。
しかしカンディールさんの父親は
「許せない。娘を殺した息子は射殺されるべきだ」と話した。
事件に抗議する大規模なデモが議論を投げかけている。
パキスタンで社会的なタブーを犯したとして殺害される女性は
毎年1,000人以上。
これは氷山の一角に過ぎない。
カンディールさんは亡くなる前
「古くから続く部族の慣習と戦っていきたい」と話していた。
(カンディール・バローチさん)
「部族のイメージを変えたいんです。
 素晴らしいことです。
 私がいる部族は名誉殺人を認め
 女性の外出を禁止しています。
 私の家族も同じです。」
従来の慣習が変わりつつあるパキスタン社会。
カンディールさんもまた自由を夢見た1人だった。

(京都大学大学院 特任助教 須長恵美子さん)
「パキスタンでは“イッザト=名誉”が非常に重視されている社会的背景がある。
 これに加えて“パルダ”と呼ばれる女性隔離の慣習もある。
 “パルダ”はパキスタンだけに限らず広く南アジアで
 そしてイスラムに限らず
 ヒンズー教やキリスト教といった様々な宗教のの中でも見られる習慣。
 女性の純潔・貞操は
 家族や一族そして男性にとっての名誉になっている。
 反対に
 女性の過ち
 純潔を失う行動は一族・家族・男性の恥にもなる。
 そのため男性にとって女性の純潔を守るのが義務になっている。
 パキスタンでは現在 急激に欧米化が進んでいる。
 特にファッションの面で顕著にあらわれていて
 ジーンズやTシャツといった
 例えば10年前なら容認されなかった服装が
 若い女性の間で特に流行している。
 現在パキスタンではフェイスブックやツイッターなどSNSが非常に普及している。
 従来なら交わることのなかった男女が
 デジタルなプラットフォーム上で
 急激に新たな出会いを模索する動きとつながっている。
 これが従来の女性隔離という“パルダ”の習慣を崩すことになり
 伝統社会が強く反発する原因の1つとなっている。
 これまでにも名誉殺人が起きるたびに
 キサース・ディヤト法の法改正を含めさまざまな議論が行われてきた。
 今年2月には
 パキスタンの名誉殺人をテーマにしたドキュメンタリーが
 アカデミー賞を受賞したことをきっかけに
 シャリフ首相がこれを鑑賞し
 名誉殺人の防止に向けての取り組みを表明している。
 カンディールの事件後
 シャリフ首相の娘 マリアムの働きかけにより
 新しく名誉殺人防止法案が議会に提出されている。
 現在 政府与党に加え
 野党の宗教政党も賛成を表明しているので
 可決される見通し。
 この法案が通れば
 パキスタンの司法が伝統的な社会規範に踏み込む大きな1歩に。」




コメント    この記事についてブログを書く
« 商店街の寺で“お悩み相談” | トップ | 伝統の“悪霊払い”守るために »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

報道/ニュース」カテゴリの最新記事