2月8日 NHK海外ネットワーク
中国では子供の誘拐が大きな社会問題となっている。
中国では年間に20万人の子どもの行方が分からなくなると言われるが
中には誘拐されて農村部などに売られるケースが数多くあると指摘される。
小学校の下校時間。
校門の前には子どもを迎えに来た親たちが詰めかけている。
最近 全国どこの小学校でも見られる光景である。
「今は悪い人が多いから心配。」
「最近 子どもが誘拐されるニュースが多い。
1人で帰らせるわけにはいかない。」
中国では警察などが子どもの誘拐にかかわった犯罪組織の大規模な摘発をたびたび行っている。
警官が組織の拠点に踏み込み誘拐された多くの子どもたちを救い出す。
しかし売買などを目的とした子どもの誘拐は後を絶たないのが実情である。
何故誘拐が無くならないのか。
専門家は人々の意識に問題があると言う。
(誘拐の問題を調査している 飛さん)
「中国の多くの農村の人たちが年老いたときに自分を養ってくれる男の子を必要としている。
子どもを買い求める市場は巨大化し利潤を生んでいる。」
大通りでペダルをこぐ伍興虎さん(35)。
6年余り前 1歳になる息子が誘拐された。
一人息子の嘉誠ちゃんは深夜に伍さんの自宅に侵入した何者かにさらわれた。
伍さん夫婦は睡眠薬で眠らされその隙に嘉誠ちゃんが連れ去られたと言う。
(伍興虎さん)
「気が付いたら息子がいなくなっていた。
何が起きたかわからず外に出て大声で叫んだ。」
警察に捜索を養成したものの取り合ってもらえず自力で我が子を探し続けている。
伍さんは子どもを誘拐された親などを集め街頭に立った。
親たちは行方が分からなくなった我が子の写真を掲げ少しでも手がかりを得ようと必死に情報の提供を呼びかけた。
息子が5歳の時に誘拐されたという女性。
「一目でいいから会わせてください。
あまりにも残酷。
17年も探している。」
またなかには幼いころ自分自身が誘拐され農家に売り渡されたという男性もいた。
実の母親を探していると言う。
「母を探し出して一緒に暮らしたい。
一目でいいから会いたい。」
(伍興虎さん)
「わたしたちが活動することで多くの人がこの問題を知り関心を持ってくれれば息子が戻ってくるかもしれない。」
一方 子どもを奪われ苦しむ伍さんたちの気持ちを踏みにじるようなことも起きている。
子どもを見つけてくれた人に報償金を支払うと呼び掛けたところ
金目当てに接触してくる人が後を絶たないと言う。
伍さんのもとに送られてきた息子の嘉誠ちゃんだという写真は
伍さんが公開している写真を反転して重ね合成したものである。
ワラにすがる思いで子どもを探す親心につけ込み金をだまし取ろうとしたとみられる。
(伍興虎さん)
「連絡を受けて兄を一緒に東北部に行ったことがある。
指定された口座に金を振り込んだが
その後連絡が取れなくなりだまされたのだとわかった。」
伍さんは男の子を働き手として求める傾向が強い農村部をできるだけ訪問することにしている。
(農村の男性)
「農村部なら子どもがいない家庭は誘拐された子どもでも少しお金を出せば戸籍に登録することが出来る。」
「農村は畑仕事で肉体労働だから
私は違うけど年寄りは皆そういう考え方。
そう簡単には変わらない。」
こうした考え方を変えていくのは容易ではない。
しかし伍さんはお金で子どもを買ってはいけないと訴えていることが
いずれは息子との再会につながると考えている。
(伍興虎さん)
「同じ苦しみを味わう人を二度と見たくない。
皆がこの問題を自分のことと考えてくれれば私の息子の居場所も明らかになるはず。」
専門家も人々の意識自体を変えることの大切さを強調する。
(誘拐の問題を調査している 飛さん)
「子どもを買う人がいなくなればこんなつらい思いをしなくて済む。
人身売買を無くすには買う側にも厳しい罰則を設け
意識を変えることが必要。」