3月24日 国際報道2018
ITビッグ5(アマゾン、フェイスブック、マイクロソフト、グーグル、アップル)の時価総額の合計は約360兆円。
これはイギリスのGDP国内総生産を上回る。
こうしたIT企業が街に来れば税収や雇用が跳ね上がる。
CEOの資産総額が世界一になるなど巨大企業アマゾン・ドット・コム。
シアトルにある本社だけでは規模が足りないため
別の街に第2本社を建設すると発表した。
候補地の募集には238もの自治体が名乗りを上げし烈な誘致合戦を展開。
さまざまな優遇策を打ち出し猛烈なアピールをしている。
しかし巨大なIT企業に街が支配されるのではないかと不安も広がっている。
都市の命運を左右する巨大企業の誘致。
その光と影。
人口70万人の都市シアトル。
経済が好調なアメリカの中でも“建設用のクレーンが一番多く稼働している町”として知られ
開発が急速に進んでいる。
その原動力となっているのがシアトル中心部に本社を構えるアマゾン・ドット・コムである。
ネット通販だけでなく動画配信サービスなどさまざまな業種に進出していて
街の経済効果はこの7年で4兆円を超えると言われている。
(シアトル市民)
「経済成長がものすごくて街は劇的に変わりました。」
「アマゾンは私たちに多くの雇用の場を与えてくれます。」
街の経済成長とともに不動産価格も上昇している。
この5年で1,6倍に値上がりした。
あるワンルームマンションは家賃は月50万円にのぼり全米で最も高い水準に達している。
(シアトル市民)
「家賃が上がり過ぎてアマゾン社員並みの給料じゃないととても暮らせません。」
アマゾンが第2本社の建設計画を発表したのは去年9月。
投資額は5,500億円。
5万人以上の雇用を生むという巨大プロジェクトである。
立候補した街の1つ 南部ジョージア州アトランタ。
誘致の切り札になると考えているのは地元の大学を核としたIT人材である。
理系で全米トップクラスのジョージア工科大学。
この子は約50のITベンチャー企業が事務所を置いている。
大学内で起業しITの専門知識や資金調達の方法などを専門家から学ぶことができる。
アマゾンが必要となる戦力となる人材をすぐに供給できることを強みとしている。
(ジョージア工科大学 先端技術センター幹部)
「ベンチャー企業を立ち上げられるような有能な人材がたくさんいます。
ITに詳しい教授や学生を企業とつなげ成長に貢献できます。」
錆びついた工業地帯を意味する“ラスト・ベルト”を代表する都市ペンシルバニア州ピッツバーグ。
かつて盛んだった鉄鋼業は衰退。
街の再建の起爆剤にしようとアマゾンの誘致を目指している。
(ピッツバーグ市長)
「世界的企業が本社を建てれば街は一変するでしょう。」
市長自らテレビ番組に出演。
シアトルよりもオフィス賃料が4割も安いことをアピールしている。
(ピッツバーグ市長)
「我々の街は物価が安く済みやすい。
ピッツバーグがアマゾンがふるさとと感じてくれるような街なのです。」
誘致のために常識を打ち破る提案をしたのがカリフォルニア州フレズノ市。
“アマゾン地域基金”というユニークな仕組みを考えた。
この仕組みでは
行政当局とアマゾンの社員とが話し合い
アマゾンが収めた税金の使い道を一緒に決めていく。
道路や公園の整備などに税金が使われることになれば
そこに“アマゾン”という名前を入れるというのである。
なぜそこまでアマゾンに頼るのか。
人口50万人のフレズノには大企業がなく
主な産業は農業しかない。
街にはホームレスの姿が目立ち
失業率は8%。
全米平均の2倍を超えている。
多くの失業者であふれる職業訓練校。
なんとか職を得ようとブロックの積み方などを学んでいる。
(受講者)
「ここにはコンビニなどの仕事しかなくて食べていけません。」
この窮状をアマゾンとともに打ち破りたいと市長は考えている。
(フレズノ リー・ブランド市長)「
「アマゾンはマンモスのよう巨大企業です。
アマゾンが来れば多くの人に雇用を与えてくれます。」
一方巨大IT企業が来たことで議論が巻き起こっている街がある。
アマゾン第2本社の有力候補地の1つ カナダのトロントである。
トロントにはすでにグーグルが進出。
グーグルは去年から再開発地区に市と共同で街を丸ごと作るプロジェクトを進めている。
街中に張り巡らせたセンサーやカメラがさまざまなデータを集め住民の動きを分析。
自動運転の車が効率的なルートを選び渋滞を緩和するなど
無駄をなくし生活を最適化する街づくりを目指している。
(グーグル元CEO エリック・シュミット氏)
「グーグルのすべての技術を街に導入できたら面白いとずっと考えてきました。
町を丸ごとグーグルにまかせて
すべてに我々が責任を持ちたい。
でもそうはいかないですけどね。」
しかし市民はこの構想に戸惑っている。
センサーやカメラなどで収集された個人情報が悪用されるのではないかという不安があるのである。
(トロント市民)
「情報が売買されるような気がします。」
「最大の懸念はプライバシーの侵害だよ。」
こうした不安を払しょくしようと
グーグル側は3月20日に大規模な集会を開き
得たデータは街づくりのためだけに使い商業目的根利用しないことを説明した。
(グーグル担当者)
「我々はトロント市民のプライバシーを尊重します。」
しかし住民の不安はくすぶり続けている。
(参加者)
「グーグル側がどんなビジネスモデルを考えているか知ることは必要ですが
その答えは出ませんでした。
もっと情報と対話が必要です。」
街の命運を決めるほどの影響力を持つ巨大IT企業。
経済効果と引き換えにしたリスクも浮かび上がっている。