10月20日 おはよう日本
囲碁棋士 井山裕太さん(28)。
「名人のタイトル」を獲得し
囲碁の七大タイトルをすべてを手にした。
七冠の独占は2度目。
囲碁・将棋界を通じて史上初の快挙である。
井山さんは12歳の中学1年生でプロ入りした。
最年少記録を次々と塗り替え
“平成生まれの新星”として期待を集めてきた。
去年4月には囲碁界で初めてとなる七冠を達成した。
その半年後 名人戦で敗退し六冠に後退した井山さん。
雪辱を期して臨んだ10月17日の対局。
なんとわずか1年でタイトル奪還。
再び七冠の座に返り咲いた。
(対局後 井山裕太さん)
「昨年よりいい戦いができればと思っていたので
内容的には自分の力としてはまずまず出せた。」
対局2日目の朝
別室で井山さんの対局の行方を見守る棋士たち。
すると
「うわ~すごいことになった。
いきなり!」
「これを捨ててどうのこうのなんていうのはあんまり見ないんだよな。」
井山さんが周りが予想していなかった大胆な手を打って出たのである。
井山さんはもともと
常識はずれに見える一手で相手を翻弄するのを最大な持ち味にしてきた。
しかし去年七冠を獲得したことでそのスタイルに影がさす。
勝ち続けなければならないという重圧から
セオリーどおりの無難な手を選ぶようになった。
(囲碁棋士 井山裕太さん)
「何もできないまま負けてしまった碁もあった。
自分なりのものも残せずに負けた時がやはり一番棋士としてつらいし
ふがいないと感じる」
井山さんはどうやって自分らしい碁を取り戻したのか。
地元大阪の若手棋士たちの勉強会。
井山さんはタイトル戦の合間にこうした勉強会に積極的に参加していた。
時にはプロになる前の子が相手になることもあった。
セオリーに染まる前のみずみずしい感性を再びものにするのが目的だった。
(若手棋士)
「みんなは井山さんに教わる気持ちでやっているが
井山さんは意見を聞いて“その手もありますね”と。
僕たちがしょうもない手を打ったとしても
それを真剣に考えてくれる。」
「積極的に取り入れている感じがする。」
見えてきたのは
原点に帰り
そこから進化を遂げようとする井山さんの姿だった。
井山さんと何度もタイトル争いを繰り広げ
自身も五冠の記録を持つ 張栩九段。
(張栩九段)
「彼の碁を見ていると
自分だったら怖くて打てない。
形勢が良さそうだったら自分ならもう少し安全そうな手を選んだりする。
積極性がある碁で
妥協しないところが本当に素晴らしい。」
終局後の会見で井山さんは晴れやかな表情で対局を振り返り
より高みを見据えた今後を語った。
(囲碁棋士 井山裕太さん)
「自分としては納得のいく内容の碁が打てた。
全体的に見てもそれほど後悔する手もなく
自分らしく戦えた。
本当にいろんな考え方 発想があると常に感じるので
そういったものを自分なりに追求していきたい。」