2021年6月1日 NHK「おはよう日本」
日々の暮らしで起こりがちな出来事
いわゆる“あるある”を浮世絵風の絵で紹介したイラストが
いまネット上で話題になっている。
作者は福岡市のイラストレーター。
古風な絵柄を入り口に
若者に日本文化の魅力を発信している。
理不尽あるある
「怒らないから言ってみろ」と言われたので言ったら怒られた
片思いあるある
付き合ってもいないくせに別の人と話していると失望
寝すぎたときあるある
しっかり寝たのに逆に疲れている謎
次々に投稿される“あるある”と浮世絵風のイラスト。
地下鉄の車内など福岡市民に身近なところにも。
街で聞いてみると
「インスタで見たことある。」
「母が見たりして
いろいろ教えてもらった。」
「山田さん クスッと笑えておもしろいです。」
イラストレーター 山田全自動さんのインスタグラム。
現代の些細な“あるある”と
レトロな絵柄のギャップが人気を集め
今年フォロワーは一時100万人を超えた。
山田さんはウェブデザイン会社の経営者。
もともと冗談半分だったという情報を
5年間ほぼ毎日続けた結果
企業や自治体からもイラストの依頼が来るようになった。
(イラストレーター 山田全自動さん)
「浮世絵っぽい絵を描いてみたら評判がよかったので
休憩時間に見て爆笑はしないけどクスッと笑ってもらえたらなと。」
山田さんが新たに取り組んでいるのが古典文化を分かりやすく発信することである。
5月に出版した本
古典落語の定番 29の演目のあらすじを漫画で紹介している。
初心者でも理解できるように用語の解説もついている。
(六本松 蔦屋書店 書店員)
「漫画で読むとすごく分かりやすくて
山田さんの絵でスッと入ってくるので
まったく落語のことを知らない人にぜひ手に取ってほしい。」
いま書き進めているのは古典文学を漫画にした作品である。
(イラストレーター 山田全自動さん)
「森鴎外の山椒大夫とか高瀬舟とか
芥川龍之介の蜘蛛の糸みたいな。」
コロナ禍で生まれた余暇をきっかけに浴びるように本を読んだという山田さん。
あえて時代も文化も違う古典に触れることが
ふだん考えないようなことを考えるきっかけになったという。
(イラストレーター 山田全自動さん)
「たとえば高瀬舟とかはテーマとしては安楽死の是非というところですので
いまは役に立たなくても
いつかは考えるとか
考えてよかったと思うことになるタイミングがあるかもしれない。」
自宅で過ごす時間が増えている今こそ若者に読んでほしい。
今年中の書籍化を目指している。
(イラストレーター 山田全自動さん)
「文化とかはいろいろ違うんですけど
結局考えることは今も昔も同じだなみたいな
そういうのはためになるかなと思います。
自分が漫画にすることで
その内容を若者が知ることができたらいいなと。」
2021年5月31日 NHKBS1「国際報道2021」
シビックハッカー(civic hacker)。
市民を意味する シビックとITやコンピューターに精通するハッカーをかけ合わせた造語である。
ハッカーといってもコンピューターなどで違法な活動を行うのではなく
シビックハッカーは
社会の課題に対してネット上でアイデアやデジタル技術を集め便利なサービスを開発したりして解決策を探る人たちのことである。
たとえば去年注目を集めた台湾のマスクマップ。
この薬局ではマスクの在庫が残り40というように
マスクがどこなら売っているのかがすぐに分かるというもの。
これもシビックハッカーの開発したものである。
台湾北部の農村。
5年前 水田から汚染物質が見つかり作付け禁止を余儀なくされた農家。
近くの金属加工場が原因だと考えてきた。
(通報者)
「排水によって汚染されたのだと思います。
農地が7年も使えなくなってしまいました。」
自治体に通報しようとしたが名前や住所を申告しなければならない。
告発者と分かると嫌がらせを受けかねないとあきらめてきた。
そんなとき見つけたのが匿名通報サイトだった。
「このサイトは簡単で安全です。」
違法性が疑われる農地や工場を匿名で通報できる農地違法工場マップ。
通報者がサイトの地図上に位置や画像 被害状況などを記入する。
サイトで集まった通報者からの情報は
運営するシビックハッカーが代理で自治体に報告。
そして現地調査や対策を求めていく仕組みである。
シビックハッカーの蔡さん。
ときには現地に赴いて通報の詳細を確認している。
(シビックハッカー 蔡さん)
「現地を訪ねると細かいところまで見えてきます。
自治体に事態の深刻さを伝えることが大切です。」
農地の不正利用が後を絶たない一方で
行政の対応は鈍いと考えた蔡さん。
解決策としてサイトを起ち上げた。
開設から1年。
行政側からの理解も少しずつ得ることができ
手ごたえを感じ始めている。
実は蔡さんはプログラミングはできない。
技術を持つ他のシビックハッカーたちと協力している。
(蔡さん)
「違法工場の撮影を農村以外の人にも手伝ってもらえる機能を作りたいです。」
(仲間のシビックハッカー)
「農地だった場所に工場を建てたかは写真の照合などで調べられます。」
(シビックハッカー 蔡さん)
「情報や技術をシビックハッカーたちと共有しながら
社会をより良くしていきたいです。」
いま蔡さんたちシビックハッカーの交流の場となっているのが
ガブゼロ(g0v)と呼ばれるサイトである。
技術者や社会人 学生など1万人以上が登録し
ボランティアで動いている。
#環境問題
#学校教育
#違法工場
#フェイクニュース
などテーマごとに集結。
さまざまなスキルや公開された情報をもとに解決策を探り
行政や政治の場に反映してもらおうと提案する。
「g0v」を起ち上げた高さん。
権力に対し情報公開や透明性の担保を求めを求めてきた。
その原点となった経験がある。
(高さん)
「ここで撮影していました。
この入り口付近です。」
2014年
議会にあたる立法院に若者たちが集った。
中国との協定に反発した若者による大規模な抗議活動
ひまわり学生運動。
若者たちが議会を占拠し
手続きを一方的に進めようとした当時の政権への強い不信を示した。
当時 選挙した議会内の様子や若者の声をネットで配信していた高さん。
最終的に政策を撤回させたか“市民の力”を間近で感じた。
(高さん)
「“自分たちは社会の一員だ”と証明したいという思いでした。
市民が影響力を持っていることを実感できたのです。」
去年 シビックハッカーの力が行政を動かした象徴的な出来事があった。
新型コロナの対策として使われたマスクマップである。
地図上にマスクの販売店が記され
クリックすると
その時点の大人用や子ども用のマスクの在庫数が確認できる。
IT政策の担当閣僚 オードリー・タン氏らが大きな成果として報告してきたこのマスクマップ。
シビックハッカーの発案が出発点だった。
プログラマーの呉さん。
去年 街なかでマスクを求める行列を目撃した。
(プログラマー 呉さん)
「長蛇の列でした。
みんな不安を抱えているみたいでした。」
呉さんは
事前にマスクの在庫数が確認できれば行列は減らせると
マスクマップを考案。
ところが在庫数を調べる術がなく
ネットの情報を頼りに
完売・残りわずか・十分ある
とあいまいなままサイトを発表するしかなかった。
すると翌日 オードリー・タン氏からガブゼロサイトに書き込みがあった。
SNSでの公開を急がないでください
台湾当局はマスクマップが市民に使いやすいサイトだと判断。
活用してもらおうと
開発に必要な販売データを公開に踏み切った。
それによって在庫数が常時確認できるマスクマップが生まれたのである。
(中央健康保険署 情報グループ 陳氏)
「このような販売データの活用は私たちには出来ませんでした。
公開できる情報はできる限り公開していきます。」
(プログラマー 呉さん)
「行政の情報公開の姿勢に市民は賛同しました。
それでマスクマップが生まれたのです。」
“市民の積極的な関与は権力の監視にもつながる“という高さん。
これからも継続していくことが大切だという。
(高さん)
「声は遠慮なく上げるべきです。
普段から改革を進め皆に参加してもらうことが大切ですが
簡単なことではありません。
それが自分たちの手で民主主義を守ることになるのです。」
2021年5月31日 NHK「おはよう日本」
岩手県洋野町の飲食店で5月から提供が始まった生ウニ丼。
この時期一番の人気メニューである。
今回注目するのはウニ丼の器。
ウニを剥いた後の殻を再利用して作っている。
(客)
「ウニの殻からこういう色が出るのかって
不思議な感じです。」
ウニの産地として知られる洋野町。
十数キロにわたって続く浅瀬で育ったウニは
甘さが際立つ最高級品として全国で人気を集めている。
ただ課題となるのは
ウニを剥いた後に残る大量の殻である。
町の水産会社の推計では年間85トン以上にのぼる。
これまで産業廃棄物として捨てられてきた。
(水産会社 眞下取締役)
「ウニ殻がたくさん出ているなかで
我々も産業廃棄物として捨てるしかない。
コストをかけて廃棄している状況。」
そこに注目した町内に住むASAHIさん。
今年3月まで町の地域おこし協力隊員を務め
いまは企業を目指している。
ウニの殻がどのように器に変身するのか。
この日水産会社を訪れたASAHIさんは
加工された後に残った殻を受け取った。
殻はすぐに釜へ入れられ700度の高温で焼かれる。
すると
真っ白な灰になった。
水や木の灰などと調合すると
出来たのは陶芸で使う釉薬(うわぐすり)である。
それを地元の陶芸家が1枚1枚丁寧に作った器に塗り
本焼きすると
ベージュ色の器が完成した。
よく見てみると底の方にはオレンジ色の部分が。
まるでウニの実の色のようで
黒い殻からは想像できない色合いになった。
(ASAHIさん)
「ウニの殻って真っ黒だしトゲトゲだし空っぽだしグロテスクな感じですけど
釉薬(うわぐすり)にして成功したものが初めて窯から出されたときに
ウニの殻からできたというのとは想像ができないような新しい質感の器ができたので
すごく興奮したのを覚えています。」
さらに地元で採れた土で作った陶器に同じ釉薬を塗ってみると
今度はところどころ黄色がかった
こげ茶色で光沢のある美しい陶器に仕上がった。
(ASAHIさん)
「より重厚感があるような
いま出来たばかりの器だけれども
すごく古い時代に作られたみたいな
全く同じ釉薬なのに
素材の土の違いで全然変わったものになるので
陶芸の面白さだなと思いました。」
まったく違う2種類に色合いの陶器で新たな挑戦を始めたASAHIさん。
SNSでの販売やネットショップを展開する準備も進めていて
全国に町の魅力を発信しようとしている。
(ASAHIさん)
「ほぼ捨てられてしまうものだったけれども
人の喜ぶものに生まれ変わったというのが私の1番の喜びポイントでもあるので
そういうところも器を通して伝わればいいなと思いますし
日常の中に1つ1つ大切に作ったもの
それがときめくものであってほしいなと思います。」
2021年5月29日 NHK「おはよう日本」
二酸化炭素排出の原因となる化石燃料から作られるプラスチック製品を少しでも減らそうという“脱プラ”の動きが広がっているが
すぐにプラスチック無しの生活は難しい。
新潟県の企業では地元ならではのあるものを使って
従来のプラスチックよりも環境にやさしい商品を作っている。
新潟市の百貨店。
並んでいるのは
スプーンやカラフルなおちょこまで。
これらの商品はコメをプラスチックに混ぜて作られている。
(新潟三越伊勢丹 バイヤー)
「匂いをかいでみるとほんのりとせんべいや餅のにおいがする。
すごくおもしろい素材だなと思った。」
珍しい商品を前に足を止める人も。
(客)
「プラスチックだけよりも
ちょっと罪悪感がない感じもするし
軽くてなめらかで使いやすそうだなと思って。」
新潟県有数の米どころ南魚沼市に4年前設立された会社。
「こちらが原料となります。
資源米になっています。」
使われているのは家畜の飼料にも利用されず廃棄されてしまうコメ。
「こちらが原料のお米と混ぜる石油系の樹脂です。」
ごく児の技術を使ってコメと樹脂を混ぜ合わせ
コメが含まれたプラスチックを製造している。
開発のきっかけとなったのはSDGsへの貢献である。
現在 国内で消費されているプラスチックの多くは
石油のもとである原油を加熱して分解したものを主な原料にしている。
国内では年間850万トンもののプラスチックが使われているが
植物由来の原料を混ぜれば
その分 二酸化炭素の排出量が減る。
そこで会社では全国的に需要が減っているコメに注目。
植物由来のプラスチック
バイオマスプラスチックを作ったのである。
(バイオマスレジンマーケティング 企画営業部長)
「いま主流のバイオマスプラスチックは
とうもろこしやさとうきびといった 海外由来のもの。
日本はお米の国なのでお米だったらできるんじゃないかと。」
商品を展示していた百貨店の従業員食堂でも
箸やスプーンはコメ由来のものである。
従業員にもSDGsに理解を深めてもらおうと導入された。
(従業員)
「お米がまさか入っているだなんて思わない。
びっくり。
少しずつこうやって形にしていって広めていくのが大事だと思う。」
(バイオマスレジンマーケティング 企画営業部長)
「身の回りのことを1つずつ変えていくことで
SDGsに貢献する事業を展開していきたい。」
少しでも環境にやさいいものを。
米どころ新潟から
脱プラスチックの取り組みが進んでいる。
2021年5月27日 NHKBS1「国際報道2021」
中国サッカー界はこれまで巨額の資金で外国の有名選手を獲得する
いわゆる“爆買い“が注目されてきたが
いま一転して地道な取り組みが始まっている。
去年中国リーグで優勝したチームのグラウンドはいま放置され誰もいない状態になっている。
昨シーズン トップリーグで優勝を果たした「江蘇FC」。
その強豪クラブに何が起きたのか。
事情を聞こうとクラブを訪ねると
(記者)
「解散したのですか?」
(警備員)
「撮影はやめて!」
(解散したのですか?」
(警備員)
「公式の通知はもう出ています。」
ウェブサイトでクラブからファンに通知されたのは“運営停止“の文字。
詳細な説明は無い。
中国政府肝いりのサッカー強化政策のもと
多くのクラブが行なってきたのが外国の有名選手や監督の“爆買い”。
たとえば
元ブラジル代表 オスカル選手は推定年俸30億円。
元アルゼンチン代表 テベス選手は推定年俸46億円。
“サッカーバブル”とも言われ
スポンサー企業が過剰投資を続けてきた。
しかしこうした放漫な経営や新型コロナの影響なども加わり
業績が悪化。
現在は1部から3部まで57クラブがある中国リーグだが
この3年で約20が解散やリーグの脱退を余儀なくされている。
(スポーツ評論家 顔強さん)
「中国のクラブはファンより商業目的を大事にしてきました。
企業がクラブに投資するのは市場戦略で利益を得るためです。
サッカーはただ道具として利用され
これでは長続きしません。」
そんなサッカー界に今新たな動きが起きている。
5年前に設立され現在2部リーグに所属する「南通支雲」。
クラブが掲げる経営方針は“地域密着”である。
シーズン前には地元 江蘇省南通市のファンに向けたイベントを開催。
日頃応援してくれているファンを表彰式でねぎらった。
ファンクラブの会員数は5年で3倍以上に増加。
活動資金の補強に一役買っている。
(ファン)
「チームとファンは“水と魚の関係”です。
水と魚は切り離せません。
地元チームを応援し続けますよ!」
さらにコンビニエンスストアは店内にグッズコーナーを設置。
壁一面を使ってクラブを紹介し
さらなるファン獲得に力を入れている。
(「南通支雲」謝監督)
「クラブを支えるのはファンの応援です。
勝ち負けやお金もうけだけではなく
多くの社会的責任を負っています。
企業の広告看板として存在するだけでは社会的責任を失ってしまいます。」
そして今サッカー人口のすそ野を広げようと地道な取り組みも始まっている。
子ども向けのサッカー教室。
教室を開いた1人 元Jリーガーの楽山孝志さんは中国のスーパーリーグでプレーした経験もある。
教室には現在200人余が参加している。
楽山さんは
サッカーを楽しむ環境をつくることこそがサッカーの健全な発展につながると考えている。
(TGF楽山サッカー塾 楽山孝志コーチ)
「これまでは広告媒体のひとつとしてサッカーをやる。
本来のそれ以外のところで
クラブが成り立つための収益やどうしなければならないという部分がすっぽりなかった。
サッカーが好きな文化を小さい時から感じて育ち
その子たちが将来サポーターに
好きなチーム 地域のチームのために何かしよう
そうなっていくと本当に思う。」
2021年5月24日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」
当局による厳しい対策で感染拡大を抑え込んだとされる中国では
経済活動が事実上 正常化しつつあり街は賑わいを見せている。
こうしたなか
いま 若者の間でマーダーミステリーと呼ばれる体験型の推理ゲームが流行し
各地で専門店が続々とオープンしている。
殺人事件などの推理小説の登場人物になりきって犯人を当てるゲームで
推理の楽しさに加え
ものがたりの世界に入り込めることが魅力となっている。
四川省にあるマーダーミステリーの専門店。
この店では中国の古代に起きた殺人事件をテーマにゲームが行われる。
この日参加したのは12名。
そこへ従業員が進行役として加わる。
(進行役)
「役を決めるカードを配ります。」
最初に選んだカードに基づいて役柄が与えられる。
演じる人物に合わせて衣装も着替え
ものがたりの人物になりきって楽しむ。
それぞれの人物像や事件当日の行動などが細かく書かれた台本が用意されていて
それを見ながらゲームは進行する。
(参加者)
「ウンさん なんで死んでしまったんだ!」
参加者は事件の真相につながるヒントを見つけるほか
お互いの会話の中から犯人が誰かを推測する。
(参加者)
「部屋で解毒剤を見つけました。」
逆の犯人役となった人はさとられないよう努める。
非日常を味わいたい若者の間で2年ほど前から爆発的に流行。
中国各地で3万店舗以上がオープンした。
数時間程度遊ぶものが多いなか
この店では1泊2日の日程でゲームを楽しむことができる。
費用は1人あたり約1万5,000円で
わざわざ別の都市から旅行に来て遊ぶ人も相次いでいるという。
(参加者)
「自分の知らない時代や登場人物の人生を体験できるのは新鮮で楽しいです。」
「ゲームでストレスが発散できます」
若者の間で大流行しているマーダーミステリー。
市場規模は3,000億円近くにのぼるという推計もあり
いま多くの台本が作られている。
山東省で開かれた台本の展示販売会。
(販売員)
「よかったら見てください。」
ゲームを終えると謎が解け一度しか遊べないため
専門店が台本の買い付けに来ている。
日本円で8,000から8万円のものまで幅広く販売されていた。
(バイヤー)
「予想どおり良い台本があるので買いたいです。」
「予算関係なく何でも買います。」
江蘇省で台本制作を行う范さん。
范さんは日本に駐在し仕事をした経験もある。
中国でも日本の歴史に興味を持つ人は少なくないとして
江戸時代の武士などを扱う台本を数多く制作してきた。
(台本制作会社 代表 范さん)
「これは忠臣蔵をテーマにした台本です。」
歴史学者などとも協力し時代考証にこだわったというこの作品。
日本円で8万円ほどで販売しているが
すでに中国各地の150の店舗が購入した。
(大本制作会社 代表 范さん)
「日本をテーマにした台本を通じて日本の文化を体験できるため
評判は非常に良いです。」
このゲームを通じて日本に中国人観光客を呼び込もうという動きも出ている。
福岡県で町おこしを行なう人たち。
范さんに天才軍師 黒田官兵衛のゆかりの地 吉富町などを舞台にした台本制作で協力を依頼。
実際に中国の人に現地でゲームを楽しんでもらえないかと考えている。
地元の自治体も期待を寄せているという。
(吉富長 花畑町長)
「町おこしになればと。
ゲームを作る話をきっかけに地域の歴史の掘り起こしをできたら
すばらしいことになると考えます。」
(台本制作会社 代表 范さん)
「この市場は急成長しています。
私の台本で日中の交流が進んでほしいです。」
中国の若者が夢中になるマーダーミステリー。
日本の歴史や文化を身をもって知ってもらうツールとしても期待が寄せられている。
2021年5月22日 NHK「おはよう日本」
日本からハワイへの移住が始まったのは約150年前。
当時の明治政府の後押しもあって
一時はハワイの人口の40%近くを占めるまでになった。
太平洋戦争では厳しい偏見にさらされながらも力強く生き抜き
日系人たちはハワイ社会の発展に大きく貢献した。
そんな日系人の歴史に注目し
とりわけ記録がほとんど残っていないとされる女性たちに光を当てた映画を製作している日本人男性がいる。
ハワイに住む日系人をテーマにした映画「Okagesama de(ハワイ日系女性の軌跡)」。
日系2世の女性やその家族たち19人に
移民当時の様子や戦時中の苦労を聞いたインタビュー集である。
(映画「Okagesama de」)
「“いくら貧乏でも子どもだけは離さないで
みんな仲良く育ててくれ”
あれが父の最後の言葉でしたね。」
Okagesama deというタイトルは
苦しかった時代にも感謝の気持ちを忘れず生き抜いてきた日系人が
大切にしてきた言葉である。
アメリカ兵として戦地に赴いた兄を亡くした女性や
コーヒー豆やサトウキビの栽培に携わってきた人々が
その思いを語っている。
自主映画を製作している松元裕之さん(56)。
14年前に訪れたハワイで多くの日系2世と知り合った松元さん。
その歴史や人生について知ってもらおうと
9年前 日系2世の退役軍人たちの証言を集めた映画を作った。
この活動を通じて多くの日系人女性にも出会い
“彼女たちの足跡を伝えたい”と考えた。
(映画製作者 松元裕之さん)
「当時のハワイの日系社会も日本と同じように封建社会で
男性が前面に出て女性は下がって。
女性の記録がほとんど残っていない。
日本に伝わっていない。
女性の頑張りを伝えたいと思った。」
松元さんは何度もハワイを訪れ
2年がかりでインタビューを集めた。
そのひとり
トモエ・オケタニさん(96)。
広島出身の両親のもとハワイで生まれたオケタニさん。
多くの日系人家族と同じように
幼い頃からサトウキビ畑で父を手伝った。
(映画「Okagesama de」)
(日系2世 トモエ・オケタニさん)
「お父さんはキビ畑。
プランテーションを直したり
私たち小さい時からヘルプしました。
お母さんはうちにいて家のことをしたり。」
貧しい生活のなか中学までしか通えなかったトモエさん。
日系2世の男性と結婚し
3人の子どもには十分な教育を受けさせたいと懸命に働いた。
そのかたわら
得意だった裁縫の技術を生かしてハワイアンキルトを広める団体の創設メンバーとなり
ハワイ文化の伝承にも貢献し続けた。
(映画製作者 松元裕之さん)
「女性は表に出なかったけれど
やっぱり女性の頑張りがあったからこそ
今のハワイのアメリカの日系社会があるということ。」
トモエさんのような日系人女性の生きざまを
彼女たちが生きているうちに伝えたい。
コロナ禍でも諦めず完成を目指す松元さんの背中を押すのは
トモエさんが昔習った日本語を使って送ってくれた手紙である。
これを見るたび決意を新たにするという。
(映画製作者 松元裕之さん)
「証言してくださった方が皆さんもう90代の高齢の方で
実は残念ながら証言の後にお亡くなりになった方が2人いらっしゃって
本当に1日も早く完成させて
見ていただきたいと思っています。」
2021年5月21日 NHK「おはよう日本」
市民の掘り起こした地域の歴史や文化を
QRコードを使ってスマートフォンで読み取って旅をしてもらう取り組みに
沖縄県南城市が挑んでいる。
市民が記憶する歴史のエピソードをよみがえらせるこの取り組みは
地域の知られざる魅力をたずねる新たな観光資源として期待されている。
南城市の各地に貼られたポスター。
スマートフォンでQRコードを読み取ると
その地域にゆかりのある写真とエピソードが表示される。
“南城アーカイブツーリズム”と呼ばれるこのサービス
音声ガイドや3か国語にも対応していて
地域の歴史や文化に触れることができる。
今いる場所がかつてどんな風景だったのか確認することができる。
高齢化が進み一部の地域で人口が減少していくなか
南城市では地域の歴史をどう継承していくのかを模索してきた。
今回の取り組み
市が大切にしたのは
地域の隠れた歴史を住民と一緒に再発見していくことである。
(南城市教育委員会 文化課 新垣さん)
「行政側から一方的に文化財の情報をただ発信するということだけではなくて
地域の方々と一緒にやっていただく
連携してつながってやっていくこだわりがあります。」
このサービスで使われている写真とエピソードは
市が地域住民や公民館から約6年間かけて集めてきたものである。
一昨年 市が開催したイベント。
「これは今回1番古いかしら。
戦前の写真。」
「ここに写ってます。」
「写っている。
ちょっと教えてください。
どなたですか。」
「右側のおかっぱの。」
収集した写真について定期的に住民から話を聞き
写真にまつわるエピソードを掘り起こしてきた。
これまでに集めた写真は5,000枚を超える。
南城市は資料の活用に詳しい民間企業と連携しながら
収集した写真とエピソードをスマートフォンで楽しめるようにした。
1枚1枚の写真に添えられるのは住民たちの貴重なエピソードである。
(市と連携する民間企業)
「例えばこの写真にもあるんですけど奥武島の若者 男性ですね。
バスケットボールでこういうふうに一緒に米兵とみんなで交流していた。」
「お見せしている馬天区の幼稚園。
そこに遊具写ってますけど
子どもたちのために遊具を作ったんだよと。
いかに地域の人たちが協力して地域を盛り上げていたか。
いろんなエピソードが地域にはまだまだ眠っている。」
そしてようやくこのサービスが始まった。
市の職員が地区の人たちと貼っていく。
(サービスを体験した地元の住民)
「あんまり地域の歴史を知らなかったりというのはあると思うので
こういう身近なので知れるのはいいかなと思います。」
(設置した地区の区長)
「津波古地区も
いままで戦後のいろんな素材(資料)がありながら
県民に紹介されていない部分がたくさんあるんですね。
スマホひとつでもってこういった紹介ができる。
最高ですね。」
住民と一緒に地域の歴史を残していく。
新しいかたちの継承が始まっている。
(南城市教育委員会 文化課 新垣さん)
「暮らしの中のひとつひとつが積み重なって今があるというのを
地域の方の素朴な思い出話やエピソードから体験していただけたらなと思っています。」
2021年5月20日 NHKBS1「国際報道2021」
ここ数年
ベトナム人の女性が韓国の男性と結婚する国際結婚が増えている。
女性たちはベトナムを離れて韓国に行くが
その数が年間約6,000人。
コロナ禍だった去年も移動制限があったにもかかわらず3,000人を超えた。
ただ夫婦生活は思い描いていたものとは大きく異なり
夫との間でトラブルになるケースも少なくない。
ベトナム北部の村。
多くの女性が韓国に嫁いでいるという。
娘が韓国人男性と結婚したという夫婦。
友人を通じて知り合った男性と結婚した娘は
2人の子どもに恵まれ韓国で平穏に暮らしている。
なぜお相手が韓国人なのか。
夫婦が語った理由は
(娘が韓国人と結婚 ザンさん)
「子どもを思い経済的な理由で行かせますが
その後 送金などの支援を期待します。」
なかには韓国にいる娘の仕送りで家を建てた人も。
(娘が韓国人と結婚 ズンさん)
「3年前に建てました。
韓国からサポートしてくれる娘が誇らしいです。」
娘が韓国でたくさん稼ぎ
大きな家だからって取材が来たよ。
うちがお金持ちねえ。」
去年までの6年間
韓国人男性の国際結婚で最も多かった相手がベトナム人の女性だった。
背景にあるのがベトナムでの韓国ブームである。
ドラマやK-POPを通じて若い人たちの韓国へのあこがれが強くなっている。
一方の韓国では
女性の都会への移住などで
地方に暮らす男性は相手を外国に求めるケースが増えている。
韓国政府のまとめによると
ベトナム人との結婚を希望する男性たちは
平均で約130万円をあっせん業者に支払うということである。
一方ベトナム側ではブローカーが女性たちを探す。
こうした事業はごく一部の業者を除いて違法とされている。
国営メディアのひとつがあるブローカーが開いたあっせんの現場に潜入した。
100人余の女性が外で待っています。
3人の韓国人男性が3つの部屋で女性を面接します。
SNS上では女性を探す動きが活発である。
1994~96年生まれの人で56歳の人と結婚したい人はいますか?
顔はそんなに老けていません。
ブローカーに話を聞くと
“新型コロナで各国との往来制限されているなか今年も多くのカップル誕生した”と話していた。
(ブローカー)
「コロナ禍で仕事がないので
結婚相手に選ばれたいとの気持ちが強くなっています。」
ただブローカー側は競争相手が多いことを理由に女性たちに素早い決断を求めるという。
(ブローカー)
「1日で決断しないと。
遅くても2日以内。」
こうして韓国に渡った女性たち。
夫との間でトラブルにあうケースが相次いでいる。
2年前 両国で波紋を呼んだ動画。
韓国人の夫が子どもの前でベトナム人の妻に暴行を加えている。
中には夫に殺害される事件もあり
両国で社会問題になっている。
ブローカーの仲介で韓国人の男性と結婚したものの離婚した女性。
ブローカーが開いたあっせんの席に参加。
自分を選んだ男性とその翌日に婚約した。
もともと韓国の文化や映画が好きだったというが
当時韓国語はほとんど話せず
夫や家族とはスマートフォンの翻訳機能を使ってやりとり。
家から出ることや隣人との交流も認められなかった。
(韓国人の夫と離婚)
「韓国語も話せないので寂しくて泣き
孤独を感じました。
夫と夫の家族は子どもを産んだら家を離れてもいいと言いました。」
女性は結局半年でベトナムに戻った。
(韓国人の夫と離婚)
「韓国の生活習慣を前もって知り言葉も分かっていれば
私のようにならず生活できていたかもしれません。」
ベトナム政府は違法なブローカーの摘発を進めている。
帰国した女性や子どもたちを支援する事務所も去年以降 各地で立ち上がっている。
ベトナムと韓国が共同で女性などの心のケアや社会復帰をサポートしている。
しかしプロジェクトの担当者は
社会全体向き合わない限り解決には至らないと語る。
(ベトナム女性連盟 フォンさん)
「ブローカーによる犯罪は厳しく取り締まられなければなりません。
そのうえで女性だけでなく
地域の人々も現状を正しく理解する必要があります。」
2021年5月20日 NHKBS1「国際報道2021」
かつてないほどの逆風にさらされ
“終わりの始まり”とも指摘されるロシアのプーチン政権。
プーチン政権に対して反発の急先鋒となっている若者たち。
若者たちの熱烈な支持を集めるのが
反体制派の指導者 ナワリヌイ氏である。
今年1月に拘束され
今も刑務所に収監されている。
若者たちを中心としたナワリヌイ氏の釈放を求めるデモはロシアの100以上の地方都市に拡大。
また世論調査でも
プーチン大統領の任期が切れる“2024年以降も続投を望むか”という質問に対し
18~24歳の6割近くが“望まない”と答えている。
こうした若者たちの抗議活動に対しプーチン政権はより一層取り締まりを強化していて
ロシア国内での活動は難しくなりつつある。
こうしたなか立ち上がったのが日本で暮らすロシア人の若者たちである。
東京港区 4月21日 都内にあるロシア大使館前。
ナワリヌイに自由を!
日本で暮らすロシア人の若者たち50人がナワリヌイ氏の釈放を求めた。
同じ日にロシアで行われた大規模デモと連動する形で抗議デモが行われた。
参加者のひとり アナスタシアさん(26)。
4年前に来日して写真家として活動している。
強権的なプーチン政権によって
母国ロシアの人たちの自由は完全に奪われてしまうのではないかとの危機感からデモに加わった。
(アナスタシアさん)
「私が生まれてから今まで何も変わらず
状況はどんどん悪くなっていくばかりです。」
今アナスタシアさんは友人のアフラモワさんとともに
SNSを通じて一風変わった手法で
抗議の意思を示す取り組みを進めている。
現代美術の学芸員を務めるアフラモワさんが
デモでアナスタシアさんが着ていたコートに着目した。
ロシアで収監されているナワリヌイ氏や現地でのデモの写真をコラージュしたコートを
抗議のシンボルにしたのである。
これを日本から抗議の意思を示したい人が着て
アナスタシアさんが撮影した。
写真は本人のボイスメッセージとともにホームページで発信される。
サイトのタイトルは「恐れるな」。
ナワリヌイ氏のスローガンである。
ロシアでは規制の対象になりかねない反プーチンのメッセージを日本から発信することで
母国で脅かされている“表現の自由”に焦点を当てるのが狙いである。
(アナスタシアさん)
「ロシアでデモに参加するならどんな格好をするか考えコートを選びました。
これなら注目されるし
同じ思いの人たちとの会話も弾みます。」
この取り組みに参加した25人は
それぞれが伝えたい思いをコートに書き込んだ。
今回 特別な思いで参加した人がいる。
日本在住4年のリトヴィノワさん(23)。
書き込んだメッセージは
プーチン 私の子ども時代を返せだった。
リトヴィノワさんはプーチン政権に強く反発する理由がある。
それは父親のアレキサンドルさんがシベリアの刑務所に13年にわたって収監されているからである。
リトヴィノワさんは10歳の時から父親と会っていない。
リトヴィノワさんによると
弁護士の父親は検察当局から顧客情報を拒んだところ
身に覚えのない罪で拘束されたということである。
その後の裁判では密輸などの罪で19年の実刑判決を受けた。
(リトヴィノワさん)
「ロシアの司法制度は治安機関に支配されていて
多くの非合法な決定がされています。
信頼なんてできません。」
リトヴィノワさんは週に1度
30分に限り
ロシアの刑務所が管理する専用のアプリで父と話すことができる。
「ハイ!パパ聞こえる?」
(リトヴィノワさんの父)
「この電話は盗聴されている。」
会話が監視されていることを前提に父親が語ったのは刑務所の劣悪な環境だった。
(リトヴィノワさんの父)
「健康状態が悪くなった。
大きなストレス 糖尿病や栄養失調
すべてが悪影響だ。
悪いのは医者だけじゃない。
その上で支配している人たちの方が問題だ。
当局は医者に適切な治療をさせない。」
リトヴィノワさんが支持するナワリヌイ氏も刑務所でひどい待遇を受けていると言われている。
リトヴィノワさんは
当局からの不当な扱いに苦しむ人をこれ以上出してほしくないと願っている。
(リトヴィノワさん)
「近い将来
虐げられる習慣から抜け出すことで何かが変わることを願います。」
リトヴィノワさんたちの“社会を変えたい”という思いを断ち切りかねないニュースが
4月末ロシアから飛び込んできた。
ナワリヌイ氏率いる政治団体の活動が
“刑事罰の対象になることが避けられない見通しとなった“として
組織の解散を宣言したのである。
(ナワリヌイ氏財団 幹部 ボルコフ氏)
「現在の形で組織を維持することは不可能になった。
ナワリヌイ本部は解散する。」
プーチン政権の弾圧が強まるなか
日本に住むロシア人それぞれの自由を求める声が母国に届くのか。
活動の真価がこれから問われることになる。
2021年5月19日 NHK「おはよう日本」
1978年から43年間 基本設計を変えていないオートバイの名車
ヤマハ発動機の SR400。
排ガス規制が厳しくなるなか
9月末で国内向けの生産が終了する。
あと数か月
根強いファンの愛着がいまフルスロットルで高まっている。
排気量250㏄以上では国内唯一キックでエンジンをかけるオートバイ SR400。
昔懐かしい乗り味が楽しめる。
金属パーツがふんだんに使われている。
ヘッドライトも今では少なくなったガラス製である。
かつての人気車種は厳しくなる規制に対応できず次々と生産をやめている。
SR400は排ガスを抑える装置の開発など細かい改良を重ねて乗り越えてきた。
しかしそれももう限界。
一段階高いレベルの規制がせまり
9月末で生産終了となった。
3月に最終モデルの販売が始まると予約が殺到。
(販売店 店員 金子さん)
「僕が入社して以来初めてじゃないですかね。
もう電話がなりっぱなしで。」
鮮やかにキックスタートを決める大学生のれみさん。
この店の予約一番乗りである。
(れみさん)
「もう美しくて。
デザインが細部にわたってめちゃめちゃ好きです。」
SRは品質の高さで支持されてきた。
2人1組で入念に組み立て作業。
1日で23台しか生産できない。
生産ラインの責任者 中村さん。
作業工程にもうひと手間を惜しまない。
このメーカーのものづくりの精神はSRから培ったという。
(SR400担当 職長 中村さん)
「もうひと手間の考え方だとか
思考の部分をあらためて考えさせてくれるモデルだと思います。
SRの生産終了は確かに残念ですけど
最後の最後までお客様の笑顔のために作ります。」
43年の歴史が育んだ川崎市にあるSR専門の修理店。
ずらりと並んだSRの中には古いモデルもある。
40年近く前の1983年製。
修理に持ち込んだひとの亡くなった父親が乗っていた。
“形見となったオートバイを引き継ぎたい“という依頼である。
SRは長く乗れるよう大切に扱う人が多いという。
(オートバイ修理店 水品さん)
「何十年も眠っていたのが調子よく走り出すと嬉しいですからね。
そのオートバイをいい状態に保つ手助けを今異常にしたいと思います。」
生産終わるからこそ珍しいお客も。
ちひろさんは自分が乗るために買いに来たのではない。
生まれて11か月になる息子の新車である。
ちひろさん自身はすでにSR400を持っている。
お子さんのためには今しか買うチャンスがない。
(ちひろさん)
「免許取得する16年後だと思うんですけど
世の中どうなっているかわからないですし。
本当に私個人の夢で
やっぱり同じ道を走りたいって思います。」
昭和から令和を駆け抜けた名車が
多くの人に惜しまれながら走り去ろうとしている。
2021年5月19日 NHK「おはよう日本」
牛の“げっぷ”には温室効果ガスのメタンが大量に含まれている。
家畜から出るメタンは世界で年間20億トン(CО²換算)は
温室効果ガス全体の4%にあたる。
いまこの“げっぷ”の研究が加速している。
牛が入っていくケージ。
牛が排出した二酸化炭素やメタンの量を測ることが可能である。
げっぷに含まれるメタンの量は牛によって大きく異なる。
その理由は胃の中の細菌。
牛の中にはさまざまな細菌がいる。
その種類によって牛が出すメタンの量が変わってくる。
研究所ではメタンが少ない牛が持っている細菌を特定して
他の牛の中で増やしてメタンの排出を減らしていきたいと考えている。
(農研機構 主任研究員)
「メタン産生量が少ない牛肉・ミルクは新しい付加価値を生み出す可能性があり
早い段階で実用化につなげていきたい。」
牛が出すメタンの削減をビジネスにしようという研究も始まっている。
スウェーデンでは企業が「カギケノリ」という海藻を牛のエサに使うことで
げっぷのメタンを減らす取り組みを始めた。
海藻に含まれるメタンは
牛の胃の中で発生するメタンを9割抑える効果があるという研究結果が出ている。
(ボルタ・グリーンテック ОケルマンCEO)
「牛の脱炭素の取り組みをしている企業は少ないので
この事業は大きな意味がある。」
げっぷだけではなく牛の排泄物も温室効果ガスの原因となっている。
栃木県大田原市で牛2,500頭を育てている齋藤さんは
排泄物から出る温室効果ガスの削減に取り組んでいる。
エサは国の研究機関などが試作した。
ガスの原因になるたんぱく質を減らしてある。
実験では温室効果ガスを半減することに成功した。
齋藤さんはこのエサで18頭の牛を半年間育てて出荷した。
成長や肉質への影響は見られなかったという。
“環境に配慮した牛肉”として販売したところ注文が相次いだ。
(前田牧場 齋藤取締役)
「私たちが環境に対してできることがあると気づかされ
試験はとても良かった。」
2021年5月18日 NHKBS1「国際報道2021」
今も解決の兆しが見えない北方領土。
日本人の元島民の平均年齢は86歳となったが
故郷に自由に帰る願いはかなわないままである。
一方で北方領土のロシア人も日本に自由に来ることはできない。
ロシア極東サハリンの中心都市 ユジノサハリンスクの学校。
この学校では授業で日本語を選択できる。
大学生のチェレミツカヤさん。
日本語を専攻し
現在はこの学校で教育実習を行っている。
(チェレミツカヤさん)
「経験は足りないですが頑張っています。
できれば日本語の先生になりたいです。」
チェレミツカヤさんが日本語の教師を目指すきっかけとなったのは
幼い頃からの日本人との交流だった。
チェレミツカヤさんは北方四島のひとつ色丹島の出身である。
日本人の元島民と島に住むロシア人との相互理解を深めようと行われてきた
ビザなし交流の枠組みで
島を訪れる日本人に接してきた。
(チェレミツカヤさん)
「日本語の先生はとても熱心に教えてくれました。
ひらがなを書いたり
毎日のように勉強しました。」
将来 日本とロシアの相互理解の手助けをしたいと考えるようになったチェレミツカヤさん。
大学では日本への留学を希望した。
しかし
(チェレミツカヤさん)
「“あなたは行けません ビザはもらえません”と言われました。」
大学側に留学はできないと告げられたのである。
その後 留学どころか旅行でも日本に行けないことが分かった。
理由はひとつ。
北方領土の出身だからである。
(チェレミツカヤさん)
「ここに登録されています。
サハリンスク州ユジノサハリンスク マロクリリスコエ。」
チェレミツカヤさんの証明書には
ロシア側は色丹島の斜古丹周辺を呼ぶマロクリリスコエと書かれている。
日本政府は
証明書に北方領土の地名が記されたロシア人に対して
ビザを発給していない。
発給すればロシアの領土だと認めてしまうことになるからである。
そのため日本人が北方領土に自由に行けない一方
北方領土のロシア人も日本に渡航できないのである。
身近に感じていた日本に自分は行けない。
チェレミツカヤさんは大きな壁があることを初めて実感した。
(チェレミツカヤさん)
「最初に知った時は理解できなかったです。
だって私は日本人ととてもいい関係だし
お互いに会うのを喜んでいます。」
チェレミツカヤさんはもどかしさを感じながらも夢はあきらめてはいない。
(チェレミツカヤさん)
「お互いに自由に行き来できないのは
悔しく失望感も抱いています。
日本語を学び
日本で働いてみたいです。
ロシアと日本の関係の架け橋になりたいです。」
2021年5月17日 NHKBS1「国際報道2021」
国民の9割近くがイスラム教徒のインドネシアでは
新型コロナウィルスのワクチンの接種が宗教上問題ないかどうかで大きな論争になっている。
イスラム教には豚肉や酒類などを口にすることを禁じる戒律がある。
食品などに表示されているのがハラル認証を受けたことを示すマークである。
ハラル認証は
成分や製造過程を確認して戒律に反していないことを証明するものである。
食べ物だけではなく
体に入るワクチンについてもハラルかどうかの確認が行われるが
一部のワクチンが認証を得られなかったことから混乱が起きている。
今年1月にワクチンの接種が始まったインドネシア。
政府はPRビデオで国民に接種を呼びかけている。
♪みんなで国のためにワクチン接種を成功させよう
ジョコ大統領が接種を受けたときにはインターネットで生中継。
背後のパネルで強調されたのは
ワクチンが安全でハラルだということだった。
インドネシアで最初に使用が認められたのは
中国の製薬会社シノバックが開発したワクチンである。
イスラム教団体の研究所がワクチンの成分を分析。
中国で製造過程も確認してハラル認証した。
ところが続いて認められたアストラゼネカのワクチンが波紋を呼んだ。
イスラム教団体は“アストラゼネカのワクチンはハラルではない”とした。
ハラル認証のための調査を行うイスラム教団体の研究所。
アストラゼネカのワクチンの書類を確認したところ
ブタに由来する酵素トリプシンが使われていることが判明したという。
(ハラル研究所 所長)
「宗教的な見解を出す委員会は我々の情報に基づき
ハラルの要件を満たしていないと判断しました。」
この判断にアストラゼネカ側は反論。
ワクチンに使われるウィルスを培養する際に豚由来のトリプシンを使っているものの
その後の製造過程で取り除き
ワクチンには成分として残っていないと説明している。
国民の間に動揺が広がった。
「私はハラルを選びます。
極めて重要です。」
「何がハラルかはイスラム教団体が決めることです。」
インドネシアのイスラム教徒は他の宗教や文化に比較的寛容で
“穏健なイスラム”と言われてきた。
しかし近年
ヒジャブをかぶる女性や
コーランやアラビア語の教育に力を入れる学校が増加。
イスラム教の教えを大切にしようとする人たちの社会や政治への影響力が強まっている。
経済発展にともなって急速に社会が変化するなか
心のよりどころを宗教に求める人が増えたことが背景にあると指摘されている。
こうしたなか2月に行われた調査では
“ワクチンがハラルかどうかを重視する“と答えた人が8割を超えた。
(ハラル研究所 アリンタワティ所長)
「“扱うものすべてで神の教えに従うべき”という考えが強まっています。
ハラルでないものを体に入れたと知れば
イスラム教徒は罪の意識さえ感じるのです。」
一方イスラム教は
“自らの命を守ることが義務“と説いている。
(コーラン)
「自分の手で自らを破滅に陥れてはならない」
インドネシアのイスラム教団体は
“感染を防ぐためにハラルでないワクチンを打っても戒律に背くことにはならない”としている。
しかし団体幹部は取材に対し本音をのぞかせた。
(イスラム教団体 アバス事務局長)
「“豚肉を食べねば死んでしまう”という状況なら豚肉を食べることが義務となります。
ただ実際にはすでにハラルと認められたシノバックのワクチンがあります。
イスラム教徒はアストラゼネカのワクチンを接種すべきではありません。」
危機感を強める政府は
なんとか接種を進めようと説明に追われている。
(インドネシア 新型コロナ対策本部 報道官)
「政府はアストラゼネカのワクチン使用を決定しました。
イスラム教団体も見解を示していますし
規制当局から緊急使用許可も得ています。」
人々の信仰心と感染症対策をどう両立させるのか。
専門家は
“緊急時はハラルではないワクチンを接種してもよい”とするイスラム教の公式見解を丁寧に伝え
人々の不安を取り除いていくべきだと指摘している。
(シアクラ大学 ハラパン医師)
「ワクチン接種の判断において宗教は最も影響する要因の1つです。
政府はイスラム教団体の見解を分かりやすく説明し
国民が情報を得られるようにすべきです。」
3年前インドネシアでははしかの感染拡大が深刻で
政府は子どもを対象にはしかと風疹のワクチンの接種を広めようとした。
ところがそのワクチンがハラルと認められず
接種を拒否する保護者が相次ぎ
最終的な接種率は政府の目標を30%近く下回った。
政府は今回
“ワクチンはハラル”と大々的にアピールすることが接種の促進につながると考えたのである。
インドネシア政府は来年3月までに約1億8,000万人に接種する計画を立てている。
今のところインドネシアに供給されているアストラゼネカのワクチンは約640万回分。
シノバックの10分の1程度と少量なので
接種計画に直接大きな影響を及ぼしているわけではない。
ただシノバックのワクチンだけでは十分ではないので
政府としては
アストラゼネカのワクチンも含めて着実に摂取を進めたい考えである。
中東諸国や同じアジアのイスラム教国マレーシアでも
ワクチンがハラルかという点は重視されている。
各国でワクチンに対するハラル認証がされているし
自国でハラルワクチンの開発を目指す動きもある。
一方で
接種を着実に進めようと
マレーシアでは
政府が接種開始前から
ハラルではないワクチンを接種してもよいという見解を広めてきた。
またUAEアラブ首長国連邦でも
イスラム教の団体がこうした見解を強調している。
政府や宗教団体がどうかかわるかで接種の促進に大きな影響が出る。
2021年5月13日 NHKBS1「国際報道2021」
赤から黄色 緑に色分けされた数字。
これは家電の「修理のしやすさ」を表す指数。
フランスで販売されているスマートフォンや洗濯機など
一部の家電製品に表示が義務付けられていて
数字が大きいほど修理がしやすいということである。
フランスでは以前からごみを出さない社会への転換が進んでいたが
新型コロナの感染対策として厳しい外出制限が行われたこともあり
家電製品が故障しても自分で修理せざるを得ない状況に追い込まれた。
そうしたことからこうした修理のしやすさを求める動きが社会全体に広がってきている。
いまフランスで人気を集めているオンラインでの家電の修理相談。
(利用客)
「脱水できず鈍い音がします。」
(エンジニア)
「洗濯機を見せてもらえますか。
私が見えるようにカメラを向けてください。」
洗濯槽が回らなくなったという女性からの相談。
通話機能を使って洗濯機の状態を見せてもらいながら原因を探っていく。
(エンジニア)
「洗濯槽を回すベルトが切れていると思います。
モーターは回っているのにベルトが切れていて洗濯槽が回らないんです。」
いくつかの質問をしただけで故障原因が特定でき直すことができた。
(利用客)
「30分相談で問題解決なんてすばらしいです。」
9年前にパリ郊外で創業した会社。
オンライン相談で故障の原因を特定したあと替えの部品を販売する。
さらに修理のしかたを説明する動画を作り
誰でも閲覧できるようネットで公開している。
(エンジニア)
「きょうは縦型洗濯機のご説明です。
それでは説明と分解を始めましょう。」
公開している動画は900本近く。
洗濯機や食洗器 冷蔵庫など製品ごとに詳しく解説している。
コロナ禍の機関の売り上げは2,5倍に拡大。
人気の理由のひとつは価格である。
業者に直接修理してもらう場合と比べ料金は3分の1ほど。
平均約5,000円と格安である。
(利用客)
「何でも自分でやるのが好きだし
その方が安いです。
捨てるのは環境に良くないし
安く直せるなら使い続けたいです。」
コロナ禍でそもそも修理を業者に思うように依頼できなかったことも需要を押し上げたという。
(部品販売会社Spareka マラテールCEO)
「フランスでは毎日1万5,000台の洗濯機が故障します。
修理するにも業者が訪問できず
オンラインでの相談が大幅に増えました。」
こうした動きをフランス政府も後押ししている。
2021年1月に表示が義務付けられた“修理しやすさ指数”。
現在 洗濯機 テレビなど5つの品目が対象である。
最高評価は10。
分解やスペア部品の入手のしやすさなどの基準をもとに
メーカーが自ら評価し
政府の機関が監督する。
(指数導入を推進するNGO バスル共同代表)
「修理のしやすさがひと目で分かるのでメーカーは競争を始めるでしょう。
自社製品をアピールしたいのです。」
修理しやすい製品とはどのようなものか。
分解するのにドライバー以外特別な工具は必要ない電気圧力鍋。
(修理業者)
「部品は簡単に分解できます。
カバーもガラスもです。
溶接ではなくはめ込み式なので工具もほとんど使いません。」
心臓部の基盤もソケットにはめ込むだけで簡単に交換できる。
メーカー側も対応を進めている。
頭部リヨンに本社を置く大手家電メーカー。
10年以上前から業界でもいち早く修理しやすい製品づくりを進めてきた。
修理に欠かせないスペア部品の準備にも万全を期している。
倉庫には部品600万点を保管。
注文を受けてから数日以内に世界各地に届けられる態勢をとっている。
(大手家電メーカー グループセブ幹部 ポトロさん)
「部品を保管するには広い場所が必要でコストがかかりますが
1ユーロ(j130円余)の部品があれば
500ユーロ(6万6,000円余)の部品を修理できます。
消費者のメリットは非常に大きいです。
10年前に購入した製品も修理できるのです。」
生産が終了した製品の部品も3Dプリンターで作るという
力の入れようである。
(大手家電メーカー グループセブ幹部 ポトロさん)
「企業のブランド価値を高め
顧客獲得につなげたいと考えています。
これからは修理可能なだけでなく
時代の変化にも対応していかなければなりません。