くるりぴょん、くるりこぴょん

忘れっぽいわたしのための記録。何年か先に、振り返ることのできる思い出を貯めるために。

ボケたのばっかりでも。

2019-10-22 23:42:00 | お母さん
今時分はどこもかしこも金木犀のいい香りがふわふわ。ショートステイの庭にも大きな金木犀の木がある。

週末ミルキーと2人、長袖の服を届けるついでに虎屋の羊羹、コンビニで買ったお茶とお煎餅を持って、お母さんのいるショートステイ先に行った。

どこもそうだけれど、入り口は2重の自動ドア。外からの1枚目は自動で開くけれど、施設内に入るもう1枚は手動の自動ドア。

職員さんに声掛けしないと開けてもらえない。事故(脱走)防止のため。今日は職員室には「幸男クン」がいた。

「幸男クン」はここの職員さんで、スラリとした長身、見た目は平成生まれっぽいツイストパーマのイケメン君。ただ、名前は「Happy man」。

ツイストパーマの見た目とのギャップがあって、なんとなくツボ。いまいち、頼りないんだけど、物腰の柔らかい優しそうなお兄さんだ。

「くるりさん、こんにちはー、さっきまで弟さんが娘さんと一緒に来てましたよー」

そうなのだ。弟のYが娘2人SとHを連れて遊びに来ていた。


入れ違いでわたしとミルキーが入ると、お母さんはテレビ前のソファにいた。カラオケタイムだったようで。マイクは持たずに、みんなそれぞれが好き勝手に歌っている。

蠍座の女、星影のワルツはわかった。サンドウィッチマンっていう歌は知らなかったなぁ。
 
お母さんの座るソファにミルキーと一緒に腰を掛けると、周りのムッシュ&マダム達が、「あんた、大事にされてていいわねぇ」と口々に言う。お母さんはちょっと鼻が高いようだった。

ショートステイ先に子供や孫が面会に来るなんてあまりないのだろう。だって、ショートなのだから。中には家族の都合で超ロングステイとなってしまう人もいるようだけれど。

周りの好奇の目にさらされて居心地が悪く、まだ歌いたそうなお母さんに「羊羹があるよ」と耳打ちすると、それはそれは素早い動きですくっと立ち上がり歩行器を押して部屋に戻った。

もうトイレの場所も部屋も把握しているようだ。部屋と言ってもカーテンで区切られただけのスペース。ベッドと小さな洋服タンスに小物を入れる引き出しだけ。

洋服は二組、パジャマを一組、歯ブラシとコップだけ持ち込んでくださいと言われている。毎日お洗濯をしてもらえ、入浴は週に2日。
洗髪もしてくれ、背中も流してくれ、もたもたしているとお腹まで洗ってくれるのだそう。

お母さんは羊羹を食べながら、同じことを延々と繰り返し話し、繰り返し聞く。

自分がバスケでインターハイに出た時、神奈川新聞に160センチ55キロと身長体重を明記されたこと。

アメリカに住む実姉のせいで入学式当日にバスケ部に入部させられたこと。本当はソフトボールがやりたかったのに。

疎開先だった実母の実家新潟県東頸城郡では、通っていた小学校が遠くに見えていたが、小学校まで実家の田畑を通って行けたので稲は食べられなかったけれど、桃やら梨なら季節ごとに実がなり、食べる物には困らず楽しかったこと。

ミルキーには、学校へちゃんと通っているか?勉強しているか?薬剤師にはなれそうか?彼氏はできたか?

勉強をちゃんとして学校は卒業できたし、薬剤師にもなれたし、彼氏もいると何回も答えている。前はいちいち、ばあば、さっきも言ったよ!と半ギレしていたが、最近は何度聞かれても普通に返事をしている。慣れたものだ。

お母さんに負けないくらいわたしも同じことを聞く。
「お母さん、ここどう?」

前回は「ご飯はまあまあ、ここはサービスがいい、困っていれば誰かがすぐに助けてくれる」と言っていた。

今日は。
「家じゃずっと一人だし面倒見てもらえないけど、ここにいたら寂しくないし、世話してもらえるからね」

「お家ならAくんがいるよ」

「Aくんがいたってご飯の支度しかしてくれないだろ」

末っ子のAくんがいれば何にもいらないと言っていたのに。これは本音かな。

「ご飯はうまくないし、ボケたのばっかりだけど、一人よりはいいな」

お母さんが実家にいたとき、帰ろうとすると寂しい、寂しいと言われた。また来週来るよと言っても泊まっていけよと言われた。

身内でなくても、ボケたのばっかりでも、誰かがいてくれる方がいいのかな。



帰りにこれをもらった。この人、よくわからないんだよなぁ。日曜日は選挙だ。