植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

印の来歴を調べる 樸堂先生 福庵先生の作か?

2023年04月03日 | 篆刻
昨日はマイガーデンの地中に伸びた「姫竹」の駆逐に着手しました。植えたときはポット苗の幼株であったものですが6,7年経つうちに勢力範囲を着実に広げ半径2mくらいになって小さな笹の葉が地面から突き出すようになりました。ワタシの人気記事「絶対植えてはならない植物」の一つであったのですが、経験談に基づくものなので真実味があります。(笑)
地下茎を力任せに引っ張って抜くという作業を一時間以上続けたものだから、本日は二の腕が筋肉痛になっています。

さて、昨夜は、印材が集中的に出品されていて、30点ほど気に入ったものがあったのです。そのほとんどが数十年から100年ほど前に彫られている古印で、数人の側款には「浜村蔵六 」さんの銘がはいったものなど、かなり凝ったお金のかかった収集物が、ある出品者さんから大量に出品されていたのです。蔵六さんは明治のころから5代にわたって活躍した篆刻家で、マニア垂涎の印であります。

そんな印が数多く魅力的であったので、20件ほど5千円から15千円くらいの札を入れていたのですが、粘っても眠くなること・深入りして入札額を吊り上げると散財につながりかねないこと、楽しみはまだまだ続くことから、必死に入札合戦には加わらないようにしております。で、結局はお目当ての品はほぼ「全滅」、唯一落札できたのが「茘枝凍石 」でありました。以前から欲しかったのですが、真正のものは滅多に出品されない珍しい石なのです。落札額が4,060円でしたから、いささか眉唾なのですが。

そんなわけで久しぶりに最近入手した古印材の紹介であります。
まずは、古寿山石と思われる「獅子」の紐がある印であります。
この石の優れている要素は①獅子紐が手彫りで造形的に美しい。(近代の紐は、バイト職人や雇われ人が電動ドリルを使って流れ作業で彫るのです) ②長い年月、掌中で賞玩したと見えて自然な艶と黒光りが出ております。③側款には雄朴とした「乙未元旦 樸堂」とあり、 乙未を年号で見れば1895年(明治28年)、1955年、2015年になります。雅号で調べると明治時代の儒者「中内樸堂 1822~1882 」、政治家「野尻 岩次郎(樸堂)1858~1929」、日展委員篆刻家「河西樸堂1960~」あたりがヒットします。中内さんは年代がマッチしませんから、野尻さんのものなら100年以上前、河西さんの作なら有名作家さんの作品なので、なかなかの値打ちものでありましょう。

この石は、参加している篆刻チャットの気鋭の篆刻作家さんたちからも美しいとの感想を寄せていただきました。

次は北京栄宝斎 (榮寶斎)の塗箱に収められた「芙蓉石」であります。25mm角の大型の印材で、こちらも美しく彫られた獅子紐があります。

行ったことはありませんが、書画骨董のメッカといわれる瑠璃廠にある老舗中の老舗であります。日本でいえば銀座鳩居堂みたいなものでしょうか。いかさま贋作の中国とは言え、最も信頼がおける書道関連専門店で、ここの名前が入った印泥は最も良質で高価であります。ワタシは多分本物と思われる印泥を2個だけ所有しております。

芙蓉石は田黄・鶏血石と並んで印材3宝の一つ、やんわりとした透明感があって落ち着いた彫りやすい石材です。この石は、紅と不透明な淡紅色が混じっていて「紅芙蓉」と見ました。やや混じりけが多いので、購入時2~3万円ほどで売られていたかもしれません。時代は木の箱の状態から見て、2,30年ほど前の品物でしょう。

お次はもしかしたらとても貴重でお宝かもしれません。表面が田黄ぽい微透明、裏面が乳白色に近い半透明の自然石形です。貴重な石に共通する「薄意」(彫の浅い極細の飾り)があって、一目で超高級印と感じます。種類は「田黄か田白」または銘石の産出坑道で名高い「杜陵坑」産と思えます。これは寿山系でも善伯洞など良質で美しい材が採れる山坑の一つです。
さらに興味深いのは下の写真にある作款であります。
「福厂作」と彫られておりますが、これは「王福庵」先生である可能性があります。中国篆刻の聖地「西泠印社」の創始者の一人で、篆刻をかじった人なら知らぬ人はいません。もしこれが王さんの作ならば、そして田白などの高級石材が正しかったら、数十万円の値段がついてもおかしくないのです。

さらにこちらが一応「田黄」ではなかろうか、とおもう未刻印材であります。
これも、きちんとした薄意が表裏に施されていて美しいものであります。

田黄に似た石の種類は数多く存在するので、田黄みたいな感じの石、程度にとどめておきましょう。

最後にお目汚し、駄石を参考に載せます。
これは多分パリン石ではなかろうかと思います。5センチほどの幅と8センチほどの高さでありますから、そんなに珍しい石のはずもありません。表はそれでもそれらしく紐を彫ってドリルで加工した最近の石材であります。

一番ひどいのはこれ。
最近のどこにでも売っている雑石寿山石で、ざっとした紐を彫っていますがなんの魅力もありません。しかもつやを出すために表面に塗料を塗っているのです。千円くらいで落札したものですが、ワタシの目もまだまだ節穴でありますな。

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