植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

初だしさんに感謝

2021年12月28日 | 篆刻
実は先日のヤフオクには続きがあります。
田黄というワタシにとって得難い逸品を何とか入手したいと思っていたので、一昨日「田黄の鳥鴉皮のようなもの」を500円入札額を上げただけで、めでたく入手できたことに気をよくしていたのです。

 その日どういうわけか非常に珍しいもの、これはコレクションしたいなぁという品々が幾つも集中していたのです。

 まずは、彩金された絵柄の古紙、丸い筒に入った美しい宣紙が10枚でした。中国の蝋箋に近いものですが、金粉による絵柄が彩色されていて初めて見る見事なものだと思いました。この手の紙はかなり保有しているのですが札を入れる前から値段が上がり始め、なんと43千円で落札!一枚4千円の紙ですよ。

 それから鶏血石が5本混じった状態のいい印材のコレクション十数個が専用のケースに収められていて、印材のコレクターさんンの放出品です。鶏血石はかなり持っていますが、これは上等だな、欲しいと思って2万円で応札していたら、結局54千円になっていました。

ここまでは落札出来ずに残念だったけど、自分の眼は間違ってなかったでありました。

 次に見かけたのがこのブログで何度か紹介している「栄宝斎 」の印泥であります。ヤフオクでも滅多に出品されない印泥で、50年以上経過している時代物は非常に貴重で高額な値段がつきます。また、模造品や類似品も多く、本物であっても最近の栄宝斎は、かなり品質が落ちている(と聞いている)ため、ネットで買えるとしてもさほど欲しくない、ということもあります。

 その道の専門家によると栄宝斎は1950年頃をピークとして、貴重な原料が値上がりし生産も減ったため、良質なものが途絶えているようです。ヤフオクでは、この1年間で2個だけ見つけ、その一つは即決価格35万円で出品継続中(いまだ落札者無し)、もう一つは七宝製の印合に入っていて真贋不明の印泥でしたが、これはままよとばかり12千円で落札しました。これがその現物です。


 今回出品されていたのは「ubudashi2017」という出品者からでした。その説明書きには「風景紋・景徳鎮」と陶器製の印合の説明のみで栄宝斎のことは触れられていません。写真の一枚に蓋の裏で「北京栄宝斎新紀製」の小さなシールがあり、印泥には「金箔」が張られておりました。蓋はかなり年数が経過しているとみえ茶色の黴のようなよごれやシミが出ていますが、ほとんど使用感はありません。量目は最低30g(1両装)でしょう。ワタシも実物がどんなものか知らないのです。前述の35万円の品は、元は七宝焼きの金属製で、印合を陶器に交換したとありました。

 因みにubudashi=初だしとは、骨董の世界では、個人などの収蔵や蔵出しで「初めて世に出たもの」を指します。この出品者さんは栄宝斎のことに気づかないか知らなかったのでしょう。商品説明に記載されなかったので入札者側の目に留まることが少なかったのです。ワタシのにらんだところでは、大体数十年前の印泥で、まだ品質が高くとても高価な時代の本物の北京栄宝斎ではなかろうか、です。

 その理由は①高級印泥につきものの金箔が張られている。②ほとんど使用した形跡が無く(もったいなくて滅多に使わない)、同じところから仕入れたと思しき出品の印泥2個が北京一得閣の八宝印泥など一級品である③また、昨日同じ時間に出品された篆刻済みの印が非常にいい紐や材質の印材で、国内の著名な篆刻家による作品であること、などからの推理であります。箱には、一般的な「西冷印泥」「上海西冷印社」八宝印泥などのラベルが張られていないのは古い時代の印泥に共通しているのです。

 ワタシの推理では、裕福な篆刻家か書道家さんが亡くなったか持ち物整理をして、この業者にオークションによる処分を託したのです。同時に出されていた印には「中島藍川」「山崎方石」さんなどの側款があり高価な芙蓉石などを彫ったものでした。ubudashiさんの出品物は、こうした書道関連品はこれだけ、他には盆栽鉢など十点ほどしかありません。

 ネットで探すと現在わずかに市販される栄宝斎印泥は、例えば宝紅朱砂印泥二銭装(6g)があります。一般に販売される印泥は2両装(60g)が標準です。それが、貴重品で非常に高価なので極く少量で販売されていて4800円でありました。単純計算できませんが2両ならば4万円以上となります。今のものでそうならば、品質が優れて美しい色合いの数十年前の時代物であれば、5万円以上でも簡単に手に入らないでしょう。

 印泥の良し悪しは、勿論値段では無く、何十年経過しても色合いが不変、油じみなどが出ない、深みのある華やかな朱色、そして印面に刷いたように薄く均等について紙に鮮やかに押せる、というような条件があります。これを満たすのは、現在では非常に値段が高い高式熊(こうしきう)印泥か缶盧印泥、耘萍(ウンピョウ)潜泉印泥 あたりだと思いますが、数十年前の栄宝斎はそれを上回る品質である(と思われる)のです。

 結局、欲望には抗えず、こちらの印泥には15千円の札を入れ、13千円で落札、その勢いでubudashiさんの別の出品物も印泥2種「北京一得閣八宝印泥・上海西冷印泥(中身無し)」も落札(5,250円)。更に返す刀で細密な薄意がある名刻印2品もゲット!とても普通に買うには手の届かない「お宝」、滅多に出回ることのない珍しい品々を廉価(計25千円)で入手したのであります。ubudashiさん、ありがとう

明日にはこれらのお宝が届くことでしょう。銘品に間違いない、先の田黄石のようなものと合わせて、手に取り眺める、はたまた実際に印を捺してみる。あぁいいお正月が迎えられそうであります。



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 田黄のようなもの サンタの... | トップ | やはり独学独習が性に合うようだ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

篆刻」カテゴリの最新記事