植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

柿植えれば 金がなるなり

2022年11月01日 | 植物
今日から11月、秋であります。
秋になれば色づくのが柿、葉を落とした柿の木にびっしりと赤く熟れた柿が陽光を浴びて美しい、というのが日本の伝統的な原風景の一つであります。ワタシは藁ぶき農家の庭先に柿の木がある、という景色が好きなのです。

それもあって、10年ほど前に初めたバラ園芸から家庭菜園に広げ、次に果樹を育てようと思付いたとき真っ先に植えたのが5,6年前柿の木でありました。品種は「甘柿 禅寺丸」でありました。完全な甘柿はシブオール(タンニン)が不溶性状態で含まれると渋みを感じません。富有柿・次郎柿・太秋などが代表種です。 禅寺丸は正確に言うと「不完全甘柿」になります。雌雄の花が咲き自家受粉もいたしますが、ミツバチなどの昆虫が寄ってこないときちんと受粉できません。すると、種がつかずその周辺が白いまま(タンニンが水溶性になる)になって渋いのです。

桃栗三年柿八年という言葉があります。誰でも、果樹は簡単に実をつけないのだと考えますが、これは種から育てた場合(実生)で、実際は接ぎ木・取り木苗が市販されています。苗は、場合によっては実が付いた状態で販売されるくらいで、上手く育てれば植え付けした翌年から花を咲かせるのです。

禅寺丸も、丸2年たって実をつけるようになりました。樹が大きくなれば(年数がたつほど)実の数が増え果実も大きくなる、これが自然の常識であります。多くの果樹がそうでありますが、豊作の年の翌年は実が付きにくい(裏年)となります。沢山の果実を生らせると果樹自体は蓄えていた養分を使い疲弊するので、次の年は自然にセーブしてまた栄養を吸収し木を太らせる、ことを繰り返します。

今年は生り年となり、100個以上実が付きました。
皮をむいてみると8割がた「渋柿」になっています。渋いものも、お尻の方には茶色の粉(ごま)こをふいていて甘い部分もあり個体差が大きいのであります。この茶色い微粒が実は、「不溶性」となったタンニンなので甘く感じ、それ以外の白い部分が渋いのです。茶色の部分の割合が大きければ渋い部分を切り落として食べればいいのです。しかし、逆にほとんどが白いものは食べられません。

そこで昨年から「干し柿」にすることにいたしました。ここで金言「渋柿も甘柿も干し柿になる」であります。ほとんどの農家さんが、甘柿を干し柿にしないのは、そのまま食える、干し柿にしたら傷みやすいから、であります。また、渋柿から作った方が甘いという説もあります。しかし、そんなことは構わず昨年作ったのが10数個、若干黴が生えたりしましたが、美味しく頂きました。

今年は数が多く、しかも渋柿の確率が高いので干し柿にするのは当然の帰結であります。作り方は簡単、洗って皮をむいたら紐にぶら下げるだけのことです。水に濡れないようにする、熱湯に5秒間つける、清潔な手で殺菌処理をする、などの知恵があるようです。しかし、ワタシの場合は、仮に失敗しても誰も文句を言わず、ワタシ自身は血糖値を気にして食べないので出来損なっても構わないのであります。そもそもいくら殺菌処理しても、屋外に晒せば雑菌だらけであります。

干し柿作りに失敗する最大の原因は、雨に打たれる、20℃以上の暖かい気温が続くことにあります。また表面が、他の柿や紐などに接していると、そこから雑菌が入ったり乾燥しないので腐ったりするのです。空気が乾燥して低温であれば3週間ほどで出来上がります。皮をむいた初期に日当たりがいいところで天日干し、後は風通しが良く雨に当たらない所に下げて置けば大体成功でしょう。

ともかく30個ばかり干しました。もう少し経ったらもう一度収穫して同じくらい作るつもりであります。
柿は、葉っぱはお茶にして飲むと「高血圧」に効くと聞きます。柿は剥いた皮を干して、ぬか漬物に混ぜるとほのかな色付けになり、うまみが増します。勿論実も美味しく子供のおやつになります。沢山生れば保存がきく「干し柿」とし、こたつに入ってテレビを見ながらお正月のお茶請けにもってこいであります。

何より、育てやすく病害虫も少ないので肥料や殺虫剤・殺菌剤散布も少なくて済みます。実際は「へた」につくヘタ虫、葉っぱを食べる毒虫「イラガ」などが発生しますが、基本ほったらかしで間に合います。昔から農家さんの庭に柿の木を植えたのはそれなりに合理的な理由があったからです。柿を育てるのにお金がかからず、葉っぱや柿を食べたり商品に出来ます(金になります)。

伐り倒せば、黒い木目のある材は硬く高級な「銘木」として珍重され、建材のみならず、ステッキなどに活用されます。品種によっては、その根っこが、昔はゴルフのドライバーのヘッドに使われました(パーシモンヘッド)。今はメタルやカーボンにとって代わられましたが、光沢がある美しい木目のパーシモンなので、今でも装飾品として愛蔵するゴルファーがいるのです。

ワタシ達日本人にとって柿の木を植えることは、とても大事にすべき風習の一つであろうと思います。
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