王翰(おうかん)の『涼州詞』のなかに
「葡萄の美酒 夜光の杯 飲まんと欲すれば 琵琶 馬上に催す」という一節がある。
この詩を読むと、行ったこともないのに、中国西域の月の砂漠がありありと目に浮かんでくる。
はるか都を離れた辺境の地で明日の命さえ分からない兵士の悲しみを歌っている詩だが、
なぜかロマンチックで幻想的な感じがして好きな詩だ。
中国へ行った時、絶対にこの夜光杯を買おうと
北京の免税店で片っ端から蛍光灯の光にかざしてみて買ってきたのがこの2つの杯だ。
もう少し中のお酒が透けて見えると思っていたのだが、
それほどでもないね。
(なにせ、安かったから、しょうがないか。)
ワインを注いで飲むにはちょいと小さすぎるので、
時々梅酒を注いでキュッとあおっている。
飲んだ後、器を指ではじいてみると
「キーーン」と澄み切った音がして、
それもまた楽しいのだ。