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ラミ・デュ・ヴァン・エフ シェフのブログ ~言葉の錬金術~

フランス料理に限らず、色んな話のブログ内容です。

「手作り」や「自家製」は一人歩きしていないか

2012-03-02 23:45:47 | Weblog
 飲食店(この場合、個人経営レストランを主とする)に於ける「手作り」や「自家製」はどういう立場なのかお考えになられた事はあるでしょうか。
 「手作り○○」「自家製○○」など(○○は料理名)は、今や普通にメニューに載っている言葉ですが、なぜ手作りにしなければならなかったのか、なぜ自家製にする必要性があったのか、というのは説明されていません。
 勿論、当店のメニューにも「自家製スモークサーモン」という言葉をランチメニューに載せる事はありますが、それは一般的に「スモークサーモン」と言いますと既製品のスライスを連想なさるでしょうから、差別化する為に「自家製」を便宜上使用している言葉であります。
 それは当店だけではなく、既製品と一緒にされたくない、という各お店のシェフの意識から、最近は枕詞(まくらことば)としてよく使われるのではないでしょうか。
 しかし、これだけ「手作り」「自家製」という言葉が氾濫してしまうと、それが「良い」のか「悪い」のか判断に困りますし、冷静に考えると「手作り」するのはレストランとして当然の仕事のようにも思えてきます、敢えて載せる必要もなくなったのではないでしょうか、時代的に。
 私は度々「テリーヌ」や「リエット」、時には「パン」の作り方をブログに載せていますが、メニューに「自家製テリーヌ」や「手作りリエット」「手焼きパン」などの表記はしていません、いや、する必要がないと思っているので表記していません。その分、ブログで語ってますからね。
 結構昔ですが、料理の作り方やどういう仕事をしているか、というのをブログ記事として載せた時(今も載せてますが)、「自慢か!」や「本で読んだのだろう」「料理人なのだからブログで語るより皿の上に表現したらどうか」とのお言葉を頂いた事がありますが、料理人は自分のブログで自分の料理や仕事の補足説明をしてはいけないのでしょうか、男は黙って・・・というやつなんですかね。
 「ブログを見ていないお客さんはどうなる」というお言葉も頂きそうですが、その方には食べていただいて判断していただきますようよろしくお願いいたします。
 あくまでブログは裏方としての仕事の説明や補足でありますから、それを読んでから来店する楽しみもあるでしょうし、来店なさってからそれを読んで理解していただく事も出来る「ツール」であります、ご理解ください。(料理から脱線する話が多いですがね)
 
 さて、今回の本題「手作り」「自家製」でありますが、最近私が思うのは、氾濫している言葉、「手作り」「自家製」の初志は何なのか、という事であります。
 「メニュー全てに自分の仕事を反映させたい」の結果「自家製」に行き着いた、というのが本質のように思いますが、先ほど述べたように「既製品との差別化」というのもあるでしょう。
 しかし、「何となく手作りの方が良いかも」のような「手作りの為の手作り」「自家製の為の自家製」メニューも存在するのではないでしょうか。
 それが家庭で「休みの日、蕎麦を打つのが趣味でして・・・」という趣味としての料理を満喫している「オヤジ(敬意を表しての呼称です)」ならば何ら問題はありませんが、仕事としてチョイスしている者が「どうですか?出来ちゃいました」的なノリではいけないのではないか、という事です。
 要は「本質を理解しようとする努力」が必要なのではないか、と私は思うわけです。
 では、「手作り」「自家製」の本質とは何か?ですが、例えば「パン」を作るとします。
 大まかに言ってしまうと「パン」は、小麦粉、塩、イースト、水が入って、練って焼けばとりあえずは出来るものです。
 しかし、なぜ厳密に「ベーカーパーセンテージ」なるものが存在し、水の温度、生地を捏ねる際のミキサーの回転速度の切り替え、ミキサーを回す時間、捏ね上げ温度、生地分割時間、焼成温度及び時間などを考えなくてはならないか、という事です。
 その一つ一つの作業の意味を理解しようとしなければ「パン」そのものを理解できない、とは考えられないでしょうか。
 勿論、パン食文化圏の人々の生活、歴史、宗教、そこまで遡って考えても決して無駄ではないはずです。
 
 そんな事を考えたのは、私自身、イスラエル、ユダヤ教の雑誌を買って読み込んでいるからかもしれません。(決して、そっちに傾倒しているわけではありません。ワイン、パンを考えれば「キリスト教」を、「キリスト教」を考えれば「世界3大宗教」を、と広がっていっただけです)

 誰に宛てるでもないこの記事は、書きながら自分自身の戒めとしている、とご理解頂ければ幸いです。

 最近、ちょっと宗教チックな流れの記事が多いように感じますが、本人は至って普通であります。

 あっ、自分自身を「普通」という事が「普通」ではないのですかな。












 
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