ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

鹿瀬ダム

2017-07-05 12:26:00 | 新潟県
2016年6月11日 鹿瀬ダム
2017年6月24日
 
鹿瀬ダムは新潟県東蒲原郡阿賀町鹿瀬の阿賀野川本流にある東北電力の発電用重力式コンクリートダムです。
長野県の千曲川や高瀬川で水力発電を行い、化学工業にも参入していた東信電気は豊富な水量と急流が続く阿賀野川に着目、専務の森矗昶の指揮の下、1928年(昭和3年)に竣工したのが鹿瀬ダムです。
鹿瀬ダムは阿賀野川本流に最初に建設されたコンクリートダムで、1924年(大正13年)に大同電力が木曾川に建設した大井ダムを参考に半川締切工法を採用、着工からわずか1年余りで竣工しました。
運用開始当初は鹿瀬発電所で最大4万8000キロワットの発電を行っていました。
その後日本発送電により接収され戦後の電力分割民営化で東北電力が事業継承しました。
鹿瀬発電所は最大出力4万9500キロワットに増強される一方、1973年(昭和48年)にダム左岸に最大出力5万5000キロワットの鹿瀬第二発電所が新設され、併せて10万4500キロワットの発電を行っています。
鹿瀬ダムの堤高は大井ダムに及ばないものの、20門のラジアルゲートを要する堤頂長304.2メートルは大井ダムを凌駕し、大井ダムとともに日本のダム式水力発電のパイオニア的存在となっており、その歴史的・技術的価値から近代土木遺産に選定されています。
 
津川で国道49号から離れ、阿賀野川沿いの国道459号を進むと、角神温泉の手前の高台で右手眼下にダムが見えてきます。
堤高こそ50メートルの大井ダムには及びませんが、川幅300メートルの阿賀野川を締め切る20門のラジアルゲートはまさに壮観の一言です。
コンクリート製のゲートピアと被覆された管理橋、扶壁前面に架けられた歩廊というスタイルが、こののち阿賀野川・只見川に建設される発電用ダムの標準的スタイルとなります。(2017年6月24日)
 
ズームアップ。(2017年6月24日)
 
旧道に下りると水面レベルからダムを見ることができます。
左手は第二鹿瀬発電所。

堤体をズームアップ
一門だけの放流は河川維持放流でしょうか?

下流に移動してみます。
右岸4門の下に水叩きがあります。

右端は鹿瀬発電所の余水吐のようです。
左岸の水叩きもずいぶん段差がついています。

左岸上流のダムサイトには小さな公園があり、ダム湖に沿って遊歩道が伸びています。
このカスケードはイベントの際にはライトアップされるそうです。

上流から
目の錯覚で三角の支柱が点で支えているように見えます。
 
赤崎荘から。(2017年6月24日)

実は鹿瀬ダムには知る人ぞ知る素晴らしい展望スポットがあります。
ダムの南側に赤崎山という山があり自然公園として整備されています。そしてちょうどダムを俯瞰できるポイントに東屋が作られており、『天女の川筏』と呼ばれる展望台となっています。
東屋から下を見下ろすと!!まるでジオラマのような景色が広がります。
大きく蛇行する阿賀野川とダム、そして発電所・・・
まるで空撮のようなアングルでダムを見ることができます。
 
1年後に同じ場所から
昨年は改修中だった発電所建屋が真っ白に新調されています。(2017年6月24日)

ダムと発電所をズームアップ
発電所は改修中です。
 
こちらも1年後。(2017年6月24日)
 
今や阿賀野川および支流の只見川は木曽川や大井川と並ぶ日本有数の水力発電所集積地となっていますが、その走りとなったのが鹿瀬ダムです。その威容は阿賀野川の王者といっても過言ではないでしょう。

(追記)
鹿瀬ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
0724 鹿瀬ダム(0453)
新潟県東蒲原郡阿賀町鹿瀬
阿賀野川水系阿賀野川
32.6メートル
304.2メートル
16525千㎥/2270千㎥
東北電力(株)
1928年
◎治水協定が締結されたダム


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