MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

オケの Viola って…

2010-09-23 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

09/23 私の音楽仲間 (212) ~ 私の室内楽仲間たち (186)

            オケの Viola って…




   この集いは、すでに何度かお読みいただいているグループです。

         これまでの 『私の室内楽仲間たち』

        関連記事 (10) Brahms の弦楽五重奏曲
                (184) Brahms の荒波
                (185) 音の出し入れと Ensemble
                (186) オケの Viola って…





 前回は、Brahms弦楽五重奏曲 第1番 ヘ長調 作品88
その第Ⅰ楽章についてお読みいただきました。



 ところで、同じ年のうちに完成、初演された曲に、『運命の女神
たちの歌
(Gesang der Parzen) 作品89』があります。 題名から
も解るとおり、これは作曲者の "深刻な顔" が顕われている曲で、
ゲーテの詞を用いています。

 曲は荘重なニ短調に始まり、ニ長調を経て、最後は "空虚五度
のニ調" で終わります。 第三音 (長調短調かを決定する) が無い
ので、そう呼ばれますが、Mozart のレクィエムも同じ終わり方を
していますね。 同じニ調で。



 これは、オーケストラを伴った合唱曲 (ピアノ伴奏の編曲もあります)
です。 "合唱" と言うと、思い浮かぶのは混声部合唱ですね。
ところが、この曲は「ソプラノ、第Ⅰアルト、第Ⅱアルト、テノール、
第Ⅰバス、第Ⅱバス」という編成なのです。

 数えてみると "混声部"。 何やら彼の好んだ弦楽五重奏、
六重奏を思わせます。




 この曲は翌1883年に出版されますが、その年には "♭1個の曲"
が、さらにもう一つ続きます。 交響曲第3番 ヘ長調 作品90で、
その年のうちに初演されています。

 最終楽章はヘ短調に始まりますが、幾多の紆余曲折を経て、
最後はヘ長調に落ち着きます。

 全曲が静かに終わることもあり、外面的な効果を狙って成功
するような曲ではありません。 技術的、内面的にも易しいとは
言えず、彼の他の交響曲に比べると、演奏頻度は低いようです。
特にアマチュア オケでは。



 この曲の作品番号は Op.90です。 ところが次の "Op.91" に
は、またもや調、調にこだわった曲が続きます。 それは
アルトのための2つの歌』で、Viola の助奏とピアノを伴った
美しい曲です。 着想は青年時代に遡ると考えられています。

 『満たされた憧れ』(ニ長調)、『聖なる子守歌』(ヘ長調) の二曲です。



 私には、これらすべては一連のシリーズのように見えます。



 … おっと、これではキリがありませんね。




 ところで、貴方はカラオケはお好きですか?



 「急に何を言い出すんだ? お前にはアルトの歌は歌えない
だろう…! アルト (Viola) を多少弾くことは出来ても。」

 いえいえ、そういう意味ではないんです。 私は持ち歌など
ほとんど無いので、たまに家族と一緒にカラオケに行っても、
一人寂しく飲み物を飲んだりしています。

 勉強用の楽譜を抱えて…。 惨めでしょ…?




 実は今回は、貴方に、その Viola を弾いていただこうと思うん
です。 それも、カラオケオーケストラの疑似体験です!

 「冗談じゃない。 そんな楽器など持ってないし、それに、この
インターネット環境で何をしようというんだ。」

 いや、楽器を用意する必要はありません。 楽譜を見て、口
ずさんでいただければいいのです。



 「ちょっと待て。 Viola って、あの、変なアルト譜表 (記号)
使う楽器だろ? そんなの、読んだことがないよ…。」

 いいんです、いいんです。 「正確な音程を歌ってください」
…なんて、そんな滅茶苦茶なことは言いませんから。



 「この "ハ音記号" をどうしてもマスターしたい」なんていう
律義な方が、もしおられたら、{アルト譜表に親しむ]ページ
でも、そのうちご覧になってください。 でもこの譜表を一度
でお読みになれたら、貴方はよほど器用で、要領がいい方
です。

 石橋を叩いてなんかいたら、何年かかっても渡れません。
この先をお読みになる方は、「オケの中に投げ込まれても
いい」と覚悟した、無謀な方に限ります。




 そのオーケストラ曲とは、先ほどの交響曲第3番で、その
楽章の一部です。

 上記の解説サイト (交響曲) では、「コラール風の動機は
強奏で繰り返され、ハ短調から半音ずつずり上がって
ヘ長調に達し、一転ヘ短調となるという、異様な効果を
上げている」と記されている部分です。

 ただし正確には "イ短調" に始まり、ハ短調、変二短調
(嬰ハ短調)、ホ短調、ヘ長調、ヘ短調と、目まぐるしく動き
ます。



 「よりによって、なぜこんな部分にしたんだ!?」

 それは、前回の弦楽五重奏曲の譜例に、8分音符の
三連符
が一杯出てきたからです。 その動きが、この
部分によく似ているという、それだけの理由です。

 この形、Brahms の心の中では大きな関心事だったよう
な気がします。 たとえ無意識にせよ。




 それではいよいよ、"オケ疑似体験" の方法を申し上げ
ましょうね。

 ページ末尾の "" をクリックすると、カラオケの音源
スタートします。 それをお聴きになりながら、以下にある
Viola のパート譜を追いかけてください。



 もし貴方がプロの Viola奏者なら…。 ほんの戯れだと思って
お見過ごしください。

 アマ オケなどで、すでにお弾きになった方は、当時を思い
出してみてね?

 この曲を「やりたい!」と思いながら、まだ機会が無い方は、
ほんの手鳴らしに挑戦してみましょう。

 「弾きたい!」と願いながら、まだ楽器が鳴らせず、譜面が
読めなくても、とにかく楽器を持ったつもりでオケの中に座り、
周囲の響きに身を委ねてください。 リズムを口ずさまなくて
も、「今どこをやっているか」だけでも追ってみてください。

 さて、もうオケの疑似体験など必要の無い方は…。 お休み
なさい。 失礼しました…。




 音源がスタートすると、まず、「MiMi」という高い音が二度
聞こえます。 次いで、今度は低い音で、やはり「MiMi」と
繰り返されます。 この音符は "2分音符" です。

 その間に、パート譜に記された音符、あるいはそのリズム
口ずさみ、楽譜を追いかけてください。 こちらも音が聞こえる
ようになっています。



 演奏していただくのは細かい動きですが、最初の音はやはり
"Mi" です。 先ほどの二つの "Mi"の、ちょうど中間の高さの音
です。

 これは三連符なので、2分音符一つの中に音符が6個入る
ことになります。 これを表わす "3" の数字は最初だけ記され、
以下同じです。



 何度失敗しても構いません。 「今どこをやってるか?」
をすぐに把握し、再び流れに乗るように努めてください。

 実はこのコツこそ、アンサンブルの極意なのです!
「失敗は失敗のもと」の私が言うのですから、間違い
ありません。







 リズムの口ずさみ方は、"タカタ、タカタ" でも、あるいは
言いにくかったら "タータ、タータ" でも結構です。 好きな
方法で。

 ただし最後の方は、"タカ タカ タカ" が簡単、自然でしょう。

 「タカがリズムだけじゃないか…」とお思いですか? ところが
決して簡単ではありません。 タカをくくるのは怪我の元…。



 この楽章は 2/2拍子、つまり、白玉の2分音符が "大きな一拍"
です。 (この音源でのテンポは、"2分音符 = 69/分" に設定してあります。)

 ところが間に休符がたくさん入っているので、次の弾き始め
正確でなければなりません。 大半は "1拍目の裏" スタートです
が、"1の表" や "2の表" も混ざり、ワンパターンではありません。
単純そうに見えても、慣れないとかなり難しいでしょう。



 "Mi、Mi" で音楽が始まると、貴方の Viola と一緒にチェロが、
同じ音程で動き始めます。 ところが直後に Violin たちも同じ
ように細かい動きを始めるので、しっかり自分の譜面を追う
ようにしないと、すぐ幻惑されてしまいます。 嫌でも貴方の
耳に入って来るのですから。

 やがてチェロは独自の動きを始めるので、Viola は孤立無援
になり、だんだん埋もれていきます。 全オーケストラを相手に
対抗しようとするのは、かなり難しいでしょう。




 さあ、それではさっそくオーケストラの大音量の中に身を
置き、疑似体験を始めてみてください!









  [音源ページ ]  [音源ページ 


      譜例の部分の擬似音源


 


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