MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

6月の記事の一覧

2012-06-30 00:00:00 | インポート

06/30



       今月の記事の一覧です。




     生活・法律

06/02   これまでの『生活・法律』




     その他の音楽記事

06/05   渦巻く賛否、貴方は?

06/06   ゴジラの逆襲

06/07   演奏者の僕 (しもべ)




06/09   頭の体操 (106) 漢字クイズ 問題/解答




     その他の音楽記事

06/14   1,000小節は天国? 地獄?



     私の室内楽仲間たち

06/19   スピード感も一過性




06/22   頭の体操 (107) 漢字クイズ 問題/解答




     私の室内楽仲間たち

06/26   形式感を伴う Mi の音

06/27   単純な主題、虹色の輝き

06/28   青は空の色、じゃ緑は?

06/29   "コーワ、コーワ" じゃないよ




06/30   今月の記事 ~ 一覧





"コーワ、コーワ" じゃないよ

2012-06-29 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

06/29 私の音楽仲間 (401) ~ 私の室内楽仲間たち (374)



          "コーワ、コーワ" じゃないよ




         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




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              "コーワ、コーワ" じゃないよ




 今回は、まず譜例をご覧ください。 いきなり登場した、
青塗りの音符たち。

 「あまり見かけない形だな…。」 そう感じられるかも
しれませんね。 音符の "棒" や "旗" に上下の違い
はありますが、鳴っているのは同じ高さの音です。



   [譜例





 これ、弦楽器に詳しい方々はよくご存知ですが、二本
の弦を使って、同じ高さの音を取り、代わる代わる鳴らす
方法です。

 この場合は、片方を指で押さえ、もう一本は開放弦。
"4"、"0" は、それぞれの "指" の指示です。



 この形、ピアノや、木管楽器、金管楽器にも登場します。

 「二本の指や、代え指を用いろ」…という指示ですが、
オーケストラなどで、複数の楽器に跨って用いられる
こともあります。




 それはそうと、これ、どんな音がするのでしょうか?

 演奏例の音源をお聞きください。



   [譜例





 音源は、[譜例 ]の最初からスタートしますが、途中、
の箇所からは、下の[譜例 ]のへ、いきなり跳んで
しまいます。

 相変わらず、鑑賞には不向きな編集です。



   [譜例






 音楽はその先まで続き、また冒頭の音楽が聞えたところで
終ります。



 「なんだ。 それじゃ、進展が無いじゃないか!」

 いいの。 元の音楽へ "かえる" ように出来てるもんで。




 肝心の曲名は、前回までと同じ、ハイドンの弦楽四重奏曲
作品50-6 ニ長調 です。 実はこの曲 "" のニックネーム
で親しまれています。



 その理由はお解りですね? "ケロケロ"、あるいは
"ゴロゴロ" 聞えるからです。

 ただし、「ハイドンが蛙の声を表現したかった」…と
いう説には、根拠がありません。

 この形は、他の楽器にも登場します。




 ところで、この二つの譜例には、濃い緑色の音符もあります。

 かなり見にくいのですが、4つの音符が上下運動を繰り返し
ています。



 また、Sの字を横にしたようなのは "ターン" で、私が
書き加えたものです。

 まず上へ、次いで下へ向かってから、最初の音にかえる
ので、音符の数は、厳密に見れば "5個" になります。



 [譜例 ]、[譜例 ]は、前回の第Ⅲ楽章のものです。

 濃緑と、同じ素材が用いられています。



   [譜例





   [譜例





 そして、先ほどご覧いただいた[譜例 ]では、
両方が、一度にミックスされている箇所まであります。

 単純そうに見える楽章に、こんな深謀遠慮が巡らされて
いたなんて…。 私は仰天! "ひっくりかえる" です。



 いや、その前にハイドンさんに言われそうです。 「お前の
音には呆れかえるよ。 あれじゃ、梅雨時の豪雨で濁った
泥水じゃないか!」

 ええ、自分でも解っています。 たとえ一時でも、こんな音
を出すのはイヤ。 恥を曝すよりは、音源をかえることを
真剣に考えたほどです。



 「じゃあ、なんでこんな侮露愚を書いてるんだね?」

 …まことに厳しいご指摘…。 それでも何かエルものがある
のではないか…。 "反面教師" ということだってありますから。




    ハイドンの弦楽四重奏曲 ニ長調 Op.50-6

            音源ページ




 ケロケロ、ゲロゲロ、ゴロゴロ。

 ところで他の国では、蛙さんはどう鳴くのでしょうか?



 ますます呆れかえる貴方を振りかえることもなく、
世界各国の蛙さんに登場してもらいました。



 英 croak。

 米では ribbit も。

 フランス COÂÂÂÄ-COÂÂÂÂ, coa-coa、コアー コアー。

 ドイツ QUAK、クヴァック。

 アラビア語 gar gar。

 中国 guo guo。

 オランダ kwak kwak。

 フィンランド kvak kvak。

 ギリシャ brekekekex koax koax (なんて読むの??)

 ヘブライ語 kwa kwa (/qva qva)。

 ヒンズー語 me:ko:me:k-me:ko:me:k。

 ハンガリー bre-ke-ke。

 イタリア cra cra。

 日本 kerokero。

 韓国語 gae-gool-gae-gool。

 ノルウェー kvekk-kvekk。

 ポーランド kum kum。

 ロシア語 kva-kva。

 スペイン語 (スペイン) crua-crua。

 スペイン語 (アルゼンチン) berp。

 スペイン語 (ペルー) croac, croac。

 スウェーデン kvack。

 タイ ob ob (甲高く)。

 トルコ vrak vrak。



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 ハイドンさんはドイツ語。 でも私としては、"クヴァック"
は、あまりピッタリ来ません。

 どこの国の人が、"蛙" と名付けたのでしょうね。



 だーれ? おめぇヘソ、ねーじゃないか…なんて
言ってるのは。

 古いね~。 ボクと同じじゃないか!



 まさか、「"コーワ、コーワ" って鳴く」…なんて
思ってる人、いないよねー…?



青は空の色、じゃ緑は?

2012-06-28 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

06/28 私の音楽仲間 (400) ~ 私の室内楽仲間たち (373)



           青は空の色、じゃ緑は?




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              "コーワ、コーワ" じゃないよ




 第Ⅲ楽章は、[MENUETTO, Allegretto]。 もちろん
TRIO も付いています。

 曲はハイドンの弦楽四重奏曲 作品50-6 ニ長調、
その続きです。



 演奏例の音源は、MENUETTO の冒頭から。

 「繰り返しは無く、TRIO に入ったところで終る」…という、
まったく滅茶苦茶な編集です。 ちゃんとした鑑賞のため
の音源は、一番最後にリンクがあります。




 譜例は、それぞれ [MENUETTO の冒頭]、
[TRIO の冒頭]です。



 おや、また塗り絵が始まりましたね。

 青く塗られた音符は、同じ高さの音の繰り返し。 これは
MENUETTO だけでなく、TRIO にも見られます。



                 [譜例




 TRIO の最初の4つの音符は、上下に動いています。
これを逆行させると、MENUETTO の2小節目と同じ。



                 [譜例




 この4つのモティーフ、登場する順番は逆ですが、同士、
また濃い緑同士は、素材的に関連していることが解ります。

 音符の数やリズムには差がありますが。 ハイドンの遊び
心でしょうか。




 ところで MENUETTO の3小節目には、やはり緑の2音符
現われ、以後、頻出します。

 短い32分音符と、符点の付いた16分音符。 直前の2小節目
の音符たちの、ちょうど半分の長さになっています。



        [譜例 ]       ↓ ↓ ↓




 実は、これとよく似た形なら、前回の第Ⅱ楽章で出てきました。
下の譜例で、"fz" の付いた "↓の2音符" です。

 音符の "長短" は、ちょうど逆になっています。



    [譜例 ]   ↓           ↓




 これらは互いに関係があるのか? 意図的、意識的に
作曲者が用いたのか?

 それはもちろん解りません。 しかしハイドンの曲では、
これまでご一緒に見てきた他の作品でも、同じようことが
頻繁に出てきました。



 「"fz" はね、出来れば第Ⅲ楽章が始まるまで、覚えて
おいてほしいから書いたんだよ。」

 そうハイドンが言っているようにも思えます。



 さらに眼が行ってしまうのは、[譜例 ]の、最初の小節の
1、2、3拍。

 先ほどの、同じ音符の繰り返しです。



 こうしてみると、何もかもが関係しているように思えてきて…。
関連が薄そうな第Ⅰ楽章でさえ、疑えばキリがありません。



 次の第Ⅳ楽章は、一体どうなってしまうのでしょうか…。

 そして、ハイドンの頭の中は、どうなっているの?




    でも、頭蓋骨の研究なんか、しちゃ駄目だよ?

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    ハイドンの弦楽四重奏曲 ニ長調 Op.50-6

            音源ページ




単純な主題、虹色の輝き

2012-06-27 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

06/27 私の音楽仲間 (399) ~ 私の室内楽仲間たち (372)



           単純な主題、虹色の輝き




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              "コーワ、コーワ" じゃないよ




 ハイドンの弦楽四重奏曲 作品50-6 ニ長調、今回は
その第Ⅱ楽章です。



 4小節から成る単純な主題を、Vn.Ⅰがいきなり歌い
始めます。 短いテーマはすぐ繰り返され、今度は
細かい32分音符で装飾されます。

 ニ短調、6/8拍子。 テンポは "余りゆっくり過ぎず"。
全体は3つの部分から成ります。



 今回の演奏例の音源は、その第1部分に当ります。







 この32分音符は、やがて他のパートにも現われます。
まず Vn.Ⅱ、Viola。 最後はチェロにも。

 調性は、いつの間にかヘ長調に変わっており、第1部
はそのまま終わります。 音源もここまでです。




 第2部は、いささか唐突な変ニ長調で始まります。 これ
が10小節ほど。

 次いで、調はホ長調へ変わります。 さらに、独創的な
転調を経てニ短調へ。 これは冒頭と同じ調性ですね。



 調性の変化は、色合いの変化。 しかしこの間、終始
聞かれるのは、同じテーマ、同じモティーフです。




 第3部分は、第1部とまったく同じニ短調の音楽で
始まります。

 10小節を経過すると、今度はニ長調に転調します。
先ほど "ヘ長調" で聞かれたのと、同じ音楽です。




 全体は "三部形式" の単純な形でありながら、歌心が一杯。
流れるような32分音符や、転調の美しさが目立ちます。

 私たちには、"過ぎた音楽"。



 挑戦者は前回に同じ、Violin 私、Su.さん、Vioa T.さん
チェロ M.Su.さんの面々です。




    ハイドンの弦楽四重奏曲 ニ長調 Op.50-6

            音源ページ




形式感を伴う Mi の音

2012-06-26 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

06/26 私の音楽仲間 (398) ~ 私の室内楽仲間たち (371)



            形式感を伴う Mi の音




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              "コーワ、コーワ" じゃないよ




 ハ長調の音階で "主音" と言えば、もちろんの音。
Do、Mi、Sol の Do ですね。

 ハ長調の曲、楽章なら、そのメロディー ラインや主声部
は、ほとんどが、この3つの音のどれかから始まります。



 音階では1、3、5番目の音に当り、"Do Mi Sol" は
"主要三和音" と呼ばれます。




 しかし中には、風変りな "ハ長調" もあります。

 最初は長い Mi の音から始まるのに、続く音は Fa。 ヘ長調
の主音ですね。 音楽はそこで停まってしまいます。

 れっきとしたハ長調の曲なのに、最初の1小節目で、この有様。
テンポはゆっくりな上に、"メロディー" というよりは、和声の進行
一つ一つに、重きが置かれています。



 ヘ長調のハーモニーで、一旦停止した音楽。 その後、他
の調のハーモニーを転々とし続け、「どうやらこれはハ長調
の曲らしいな…」と聴き手が確信するのは、やっと8小節目
になってからです。

 Beethoven の最初の交響曲 ハ長調、その第Ⅰ楽章の
序奏部のお話でした。




 今回ご一緒する曲も、やはり Mi の音から始まります。

 と言っても、音楽は長調。 ハイドンの弦楽四重奏曲
作品50-6、その第Ⅰ楽章です。



 「え? ニ長調の曲なのに、Mi の音から始まるって?」

 そうなんです。 もしハ長調の曲なら、Re に当る音。 音階の
2番目の音ですから、もちろん "主和音" には含まれず、"異質"
と言ってもいいほどの音です。



 スコアで見ると、このように曲は始まります。







 しかし先ほどの BEETHOVEN と違って、これは序奏部では
ありません。 Allegro の主部が、いきなり始まります。

 また主調のニ長調は、"mf" と書かれた4小節目で、すぐに
確立されてしまいます。 "持って回った" 末に主調が登場
するような、先ほどの曲とも違います。




 「ではなぜ、こんな音からハイドンはテーマを始めたんだろう?」

 これは、私が最初に抱いた疑問です。 Mi から始まるニ長調
の曲…? ほかにあまり思い付かなかったからです。



 その疑問に対する解答は、いまだに見つかっていません。

 しかし何度か一人でさらっているうちに、"ひょっとして" と
思い当る "動機" が、幾つか無かったわけではありません。



 それらが当っているかどうかは別にして、演奏例の
音源
をまずお聞きください。

 展開部の中ほどから始まり、この譜例とまったく同じ、
冒頭の部分が、しばらくしてから再現されます。









 今回この曲に挑戦したのは、Violin 私、Su.さん
Vioa T.さん、チェロ M.Su.さんですが、お聴きいた
だいて、多分こう感じられたのではないでしょうか。

 「気が付いてみたら、いつの間にか最初の冒頭
部分に戻っていた。」



 私もそう感じました。 その直前では、このモティーフを
奏でる小節が、2回ほど繰り返されています。

 まず、1オクターヴ高い Mi で始まると、次は Sol の音で
始まる。 そして3度目に Mi で始まると、それは冒頭部分
の Mi に当る音なのです。


 

 もしハイドンが、「あ! もう再現部に戻っていたのか。」
…と、しばらく経ってから聴衆に思わせたかったなら。

 その手段として "打ってつけ" なのが、この "Mi から
始まるテーマ" なのです。



 実は展開部 (繰り返しの後) も、同じモティーフで始まります。
最初の音はもちろん Mi です。

 結局、どの部分もまったく同じ始まり方をする。 これは、
ほかでもたまに見かける手法です。




 提示部、展開部、再現部の3つから成るのが、ソナタ形式。

 「再現部をどう開始するか?」 それは形式感を重んじる
作曲家にとって、一つの大きな課題です。



 "明確なアクセントを感じさせつつ"。 あるいは、
"緊張感を盛り上げた末に"。



 かと思うと、遠隔調で一旦終始した後、"主調に向かって
急接近" する!

 Beethoven の第1、第2交響曲の第Ⅰ楽章が、これに
当り、前者では Mi の音で、一度終始します。



 これらは演出で言えば、ドラマチックな手法ですね。




 しかしいくら再現部でも、いつも劇的な "再会の歓喜"
を伴う場合ばかりとは限りません。

 再現部は、いわば、再び帰って来た元の世界。 その
喜びが、「"この道はいつか来た道" だなぁ。」…という
ことだってあります。



 深い喜びとは、後になって、しみじみ味わうものですから。

 これ、"感慨" と言うべきでしょう。




 「ああ…。 やっぱり自分の家が一番だなぁ……。」
どんなに楽しい思いをしてきた後でもね。

 狭いボロ家も、住めば都。 形式感の伴わない人生
を送る、私の実感です。



 きっと私は "Miー ハー" ?




    ハイドンの弦楽四重奏曲 ニ長調 Op.50-6

            音源ページ




     Beehoven の 交響曲 第1番 ハ長調

     [音源ページ   [音源ページ




     Bethoven の 交響曲 第2番 ニ長調

     [音源ページ   [音源ページ