09/28 私の音楽仲間 (312) ~ 私の室内楽仲間たち (285)
変わり身が勝負
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2曲のハイドンの後は、シューベルトの四重奏曲。 変ホ長調
D87 です。
この曲は第10番と呼ばれていますが、番号は作曲順によるもの
ではありません。 1813年の作といわれるので、16歳の年に当り
ます。 (1814年という記述も見かけますが、正確には1813年と思われます。)
楽章は四つ。
第Ⅰ楽章は、変ホ長調、2/2拍子、ソナタ形式の楽章です。
しかし印象は "器楽的" と言うより、滑らかな歌。 これは、
"Allegro moderato" という速度標記にも表われています。
第Ⅱ楽章は SCHERZO。 変ホ長調、3/4拍子、Prestissimo。
まるで、"しゃっくり" をしながら跳ね回るように聞える、ユーモ
ラスな楽章です。
Adagio の第Ⅲ楽章は、変ホ長調、6/8拍子。 こちらは
ゆっくりな歌。
第Ⅳ楽章は、変ホ長調、2/4拍子で Allegro。 最も活気
に満ちた楽章が、最後に置かれています。
この曲、実は私は聞いたことがありませんでした。
「あの、ごめん。 これ、初めてなんだけど…。」 私の
お決まりの、このセリフ。 恥を忍んで口にしました。
「あれっ、そう?」 Violin の K.君は、さらっと答えながら
チューニングをしています。 Violin の T.さん、チェロの
T.さん も何も言いません。
…ということは、「みんな知ってるんだな、この曲を…」。
こうなったら、おとなしく観念するしかありません。
「まあ、いいや。 K.君に着いていくとするか。」
いい加減ですね。 時と場合によっては顰蹙ものです。
Viola パートでも、曲によっては音符の数に追いまくられ、
スポーツ的な快感を楽しむようなものさえありますから。
しかしこの曲は、そんな忙しさとは無縁です。 おまけに、
リードするのは K.君。 彼の見事な歌に聞き惚れながら、
美しいシューベルトを堪能することが出来ました。
Viola は、何と言ってもアンサンブル楽器。 いくら暇なように
見えても、それなりの神経は遣います。
[譜例 (1)] は、第Ⅰ楽章の再現部からのものですが、①の
後には分散和音の動きがあります。
リズムやテンポは、もちろん正確でなければなりませんが、
やはりこれも "歌" です。 機械的になりすぎず、「どれが
大事な音か?」を考えながら弾くことも、また必要でしょう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/79/a1/3d5ae1e7f7d5e0f7afa5679beea5a35f.jpg)
最後の段では、三連符を刻み始めます。 前のテンポを
正確に引き継ぎ、音の粒をはっきり、仲間たちに聞かせ
なければなりません。
それをさらに Vn.Ⅱが引き継ぎ、その後は両者が交代
しながら、全体のテンポを作っていきます。
[譜例 (2)] は、第Ⅳ楽章の最後の部分です。 やはり二人
が、三連符を刻み始めます。
ところが、5小節目で音楽が一段落すると、Viola が一人で
シンコペーションを始めます。 三連符系が二連符系に
変わっても、テンポはもちろん変わりません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/15/25/22b82856158bace56e9174ff90bc1ef4.jpg)
拍の頭を刻んでくれる、"頭打ち" の人間が居ない! しかし
それでも、テンポを仲間たちに伝えなければなりません。 最初
の2小節間で。
また正確でありながら、一方では仲間たちの音の流れに乗り、
全体でテンポを作っていく必要もあります。
Viola 弾きは、こういう仕事には大体慣れているものです。
「ようし! やってやろう!」
ところが、毎回いい結果を出せるとは限りません。 逆に
返り討ちに遭い、そっと心で泣くことも…。
家庭内で、父や兄たちと弦楽四重奏を楽しんだ、フランツ・
シューベルト。 Viola を担当することが多かったと言われます。
フランツ君も弾いたのかな? この曲の Viola パートを…。
以下の音源は、二つの譜例の部分から抜き出して編集し、
繋げたものです。
(パート譜とスコアとは、細部では必ずしも一致していません。)
演奏は①から始まり、②へは入らず、すぐ③へ跳びます。
さらに、④へは入らず、⑤へ跳び、最後まで行きます。
シューベルトさん、ごめんなさい。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/79/a1/3d5ae1e7f7d5e0f7afa5679beea5a35f.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/15/25/22b82856158bace56e9174ff90bc1ef4.jpg)
[譜例部分の演奏例]
① ~ ②、 ③ ~ ④、 ⑤ ~
最初の音量が大き過ぎることがあります
音源をお聴きの際は、他の外部リンクをクリックすると途切れます。
[音源ページ]