MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

束になってかかって…来ないでね

2014-11-11 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

11/11 私の音楽仲間 (632) ~ 私の室内楽仲間たち (605)



        束になってかかって…来ないでね



         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




 室内楽の定番的存在…といえば、弦楽四重奏曲でしょうか。
【2つの Violin、Viola、チェロ】という組み合わせは、音域的
には申し分ありません。

 また数字の “4” は美しい偶数であり、混声部合唱、
ピアノ用編曲…などの編成にも現われています。 “4” という
均整美の中にすべてを表現するのは、作曲家にとっても腕の
見せどころです。


 しかし晩年に、むしろ弦楽五重奏を目指したのが Mozart や
Brahms です。 また、あの Beethoven でさえ、作品135 の
最後の四重奏曲の後で五重奏を計画していたと言われます。

 “5” は一見すると半端な数字です。 でもだからこそ、作曲家
にとっては “自由な数” なのかもしれませんね。


 Mozart の 弦楽五重奏曲 ハ長調 K515、その第Ⅰ楽章
では、“ペアの動き” が聞かれます。



 あるときは 2つの Violin、また 2つの Viola、そして
Viola とチェロ〕の組み合わせまで見られます。

 その光沢は、煌めきから、燻し銀、そして漆黒へと、
作曲者の内面を顕わすかのように変化し続けます。

        関連記事 円やかなペア



 上の譜例は “提示部” で、ト長調の第二主題に当ります。

 今回の演奏例の音源]は、同じ音楽が再現部で現われた
際の様子です。 調性は形式どおりに ハ長調で聞かれます。

  Violin は私、M.さん、Viola W.さんSa.さん、チェロ M.さんです。


 さて、音源が “54秒” のところに差し掛かると、次のような
音楽が聞えてきます。

 それまで “ペア” だった八分音符の動きに、多少変化が…。

 Viola とチェロは、同じ二人でも “ユニゾン” です。 そして
Vn.Ⅰが単独で歌い始めます。

              ↓          ↓

                         ↑

 人数の比率を見ると、【1:4】ですね。 それが大問題です。
音量バランスの点で。 どうしても “四人” の側が大きくなり
やすいから。

 強弱記号を見てみましょう。 Vn.Ⅰは mfp ですが、他は
すべて p。 大きくなってはいけません。

 しかし Vn.Ⅰの mf が聞えるので、どうしても大きく弾いて
しまいやすい。 直前には f の箇所までありましたし。


 f から p に落とすにせよ、また mfp にせよ、“音量を
すぐに落とす”…という作業は、技術的には決して簡単
ではありませんね。

 こうして色々な要因が重なり、この部分は、バランス
的にちゃんと聞かせるのが難しい音楽になっています。


 ペアの “2”、ソロの “1”、そして 伴奏の “4”…。

 瞬時に変化する、“5” の中味。 円熟した Mozart の、この
“当意即妙” の変わり身に、演奏者が着いていけるかどうか…。

 五重奏の場合、音量バランスの取り方は、四重奏曲以上に
難しいと言えるでしょう。


 “模倣” は、アンサンブルの上で不可欠な要素ですね。

 何と言っても影響力の大きいのが Vn.Ⅰです。 その
とおりに周囲が真似をしてくれるとしたら、本望と言って
もいいでしょう

 でもパート譜には、冷たく p と書かれている。 楽譜を
よく見ると…。


 聴覚に従うか、それとも視覚を重視して、自己を抑制する
ことが出来るかどうか…。

 演奏に賭ける熱意とは裏腹に、難しい問題でもあります。

 




            ハ長調 五重奏曲

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