MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

10月の記事の一覧

2013-10-31 00:00:00 | インポート

10/31



       今月の記事の一覧です。




     私の室内楽仲間たち

10/01   幻の馬




     その他の音楽記事

10/06   考えすぎの私

10/07   女性的なる愛

10/08   父が与えた苦しみ

10/10   意に介さない天才

10/12   天才の道具

10/13   名は体を表す

10/14   作品に塗り込んだ人生




     生活・法律

10/22   さようなら クーちゃん




     私の室内楽仲間たち

10/26   無言の伝授

10/27   悪徐

10/28   とめどない飛翔

10/29   自家中毒

10/30   毒には毒を




10/31   今月の記事 ~ 一覧





毒には毒を

2013-10-30 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

10/30 私の音楽仲間 (522) ~ 私の室内楽仲間たち (495)



                毒には毒を




         これまでの 『私の室内楽仲間たち』


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                   毒には毒を
                   目玉はドコサ
                ク―ちゃんと食べたい


 冗談はさて置き、自家中毒以上に怖いのが、食品中に含ま

れる毒素でしょう。

 すぐ思い浮かぶのはテトロドトキシン、フグ毒です。 調理に
免許が必要なのは、ご存じのとおり。 特に危険なのは卵巣
ですが、頭部や内臓で中毒を起こす例もあります。



 また貝類も、毒と無縁ではない。 本来は毒性の無いカキ、
ホタテなども、毒化することがあるそうです。 気候や環境の
影響によるもので、たまに死者まで出る。

 私たち消費者は、受身ですよね。 法的な指導のみならず、
流通業界が自主的に検査を行い、消費者を守ってくれないと
困ります。




 写真はバイ貝、ツブ貝、マツブなどと呼ばれる、巻貝の
一種です。 これ、刺身にすると凄くおいしい!

 私たちメンバーにも大好評です。 ただ、このバイ貝は
肉食性で、そこが問題なんです。



  DSCF0650



 貝肉の中には唾液腺と呼ばれる部分があって、ここには
テトラミンという神経毒がある。 これを海水中に放出して
周囲の生物を麻痺させ、餌にすると考えられています。

 死亡例は、これまで幸いにも見当たらず、通常は数時間
で回復します。 しかし症状は、目が霞むなどの視覚障害、
めまい、頭痛、船酔い感などで、人によっては痙攣など、
重篤な状態に陥るそうです。



 この毒素は水に溶けやすく、熱にも強いのだそうです。
通常の調理では分解されないので、最初から取り除く
必要がある。

 今回も、毒はちゃんと除去してもらっています。 まず
は包丁の背で叩き割り、苦いハラワタと共に丁寧に取り
除いてくれました。




 解説サイトには、以下のように書かれています。



 「必ず唾液腺を取り除いてから、調理して下さい。 唾液腺
は、乳白色から淡黄色をしていて、一対(2個)あり、貝肉の
上部に含まれています。」

 「貝殻から身を取り出し、貝のフタを下に置いて、貝の身を
中心で切り開くと、左右に一対づつ唾液腺があります。 手
でしごくと取れるので、取り除いたらよく水洗いして調理して
下さい。」



DSCF0553



 私たちの場合は、演奏を聞きながら、これを食べることになる。

 貝毒の部分を取り除かないと、最初から痺れる演奏になって
しまいます。



 おっと、“まだ宵の口” どころか、昼過ぎでしたね。 貝刺しは
まだ出ていない。

 でも、アルコール毒に冒された聴衆も、何人かいるようですよ。
耳が麻痺してくれるといいのにな…。



 それどころか、演奏者が問題ですね。

 500ml の缶ビールをいただき、演奏に臨んだ私でした…。




 今回の演奏例の音源]は、Mozart の弦楽四重奏曲
ト長調 K156
から第Ⅱ楽章の前半部分。 後半に入った
ところで切れています。



        (音源には談笑の声が入っています。)




             音源ページ




自家中毒

2013-10-29 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

10/29 私の音楽仲間 (521) ~ 私の室内楽仲間たち (494)



                自家中毒




         これまでの 『私の室内楽仲間たち』



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                   目玉はドコサ
                ク―ちゃんと食べたい



 「いらっしゃいませ。 遠路はるばる、ようこそ。
お待ちしていました。」

 到着したのは早朝。 ホスト役の主、Nさんが
さっそく歓待してくれます。



 ここは関西の、さる鄙びた田園地方。 これから
“室内楽合宿” が始まるのです。

 その先陣を切って到着したのが私。 Nさんの
ご好意で、前日の朝からお邪魔しています。

 着いてすぐに “弾け” というのは、さすがの私
でもキツいですから。




 会の名称は “**サロン”。 誰言うとなく、
この地区の名前を取って名付けられました。

 このたびは第七回。 数えてみると、私は
第二回から参加していることになります。



 合宿といっても、もちろん “弾きっ放し” ではありません。

 演奏会に備えた強化合宿ではないから。 交代で演奏し、
出番が無いときは飲んだり食べたり…。



 時には歓談の声のほうが、演奏より大きかったり、一人も
聴いていないことが。 でも、文句を言う人は誰もいません。

 写真の食卓は、朝食の模様ですが、これが夜ともなると
大変! Nさんお手製の山海の珍味を囲み、話に花が咲き
ます。



DSCF0676



 さて、今回はどういうわけか、最初の出し物に参加
することになりました。 初日の午後一時を回った頃
です。

 指名されたメンバーは、後ろ髪を引かれる思いで
食卓を後にし、楽器を取り出す。



 (まだ食べかけ、飲みかけなのにな…。)

 おっと、そんなに意地汚いのは私だけか?




 「それはいいが、弾いているうちに、ご馳走が
腐ってしまわないかね? 演奏のせいで。」

 おや、これは厳しいご指摘ですね…。



 もしそうなったら、自分で責任を取って、
すべていただくことにします。

 これを、自家中毒といいます。




 さて、曲はMozart の弦楽四重奏曲 ト長調 K156

 演奏例の音源]は、その第Ⅰ楽章です。



    (音源には談笑の声が入っています。)

 Violin 私、T.さん、Viola T.さん、チェロ S.さんです。




         音源ページ




とめどない飛翔

2013-10-28 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

10/28 私の音楽仲間 (520) ~ 私の室内楽仲間たち (493)



              とめどない飛翔




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                   いつも元気で
                   旅に病んで
                達人のバランス感覚
                   無言の伝授
                      悪徐
                  とめどない飛翔




 変ホ長調のユニゾンで始まった、第Ⅱ楽章のアダージョ。

 曲はハイドンの弦楽四重奏曲、作品77-1 です。







 途中で変ニ長調などに転調しますが、そこでも同じ主題が顔を
出しています。



 後半では、再び変ホ長調で主題が現われる。 ここでは Vn.Ⅰ
だけが主題を奏で、冒頭には無かった和声進行が聞かれました。

      演奏例の音源 1]  関連記事 思いを断つ




 今回の演奏例の音源 2]は、楽章の最後の部分です。
一部[音源 1}と重複しており、上の譜例でいえば、ちょうど
に当る箇所からスタートしています。



 やはり Viola がテーマを繰り返していますが、あまり
目立つようには書かれていません。 3つのパートが
混然一体となって始まります。

 ハイドンは、ここでも Vn.Ⅰ を自由に歌わせています。
いつのまにかテーマは姿を消し、まるでその束縛から
解き放たれたかのようです。




 楽章が終わりに近づくと、チェロがもう一度、静かにテーマ
を思い出させます。

 Vn.Ⅰ はそれを引き継ぐと、特徴のある複付点のリズムを
繰り返しながら、静かに消えていきます。 まるで、何かに
別れを告げているように、私には聞えます。








 ハイドンがこよなく愛した、弦楽四重奏曲の創作。
その分野でハイドンが残した、最後のアダージョと
なったのが、この楽章です。

 作曲家が深い思いを込めた、ゆったりとした楽章
は、もう一方の作品77-2 にも、また断片的な、作品
103 にもありません。




         音源ページ




悪徐

2013-10-27 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

10/27 私の音楽仲間 (519) ~ 私の室内楽仲間たち (492)



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         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




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                   旅に病んで
                達人のバランス感覚
                   無言の伝授
                      悪徐
                  とめどない飛翔




 「気楽、安心、くつろぎ、ゆとり…。」

 今、イタリア語の辞書を引いている最中です。



 小学館の伊和中辞典で、1983年の初版。 決して
新しくはありませんが、私には充分でしょう。



 (なるほど…。 ちょっとやりすぎたかな。) 私の反省
の弁ですが、一体なんのことでしょうか?

 引いている単語は、agio。 最初にご覧いただいたの
は、その訳語です。



 勘の鋭い貴方は、もうお解りかもしれませんね。

 “agio” 自体は、あまりお目にかかることはありません。
でも読み方は、“アジョ” ですよ。




 それにもう一点。 「どうせお前のことだから、
音楽関係の単語なんだろう?」

 はい、そのとおりなんです!



 これに前置詞の “ad” (= a) が付くと、“ad agio”。

 意味は、「ゆっくりと、余裕をもって」。 “con agio” も同じです。




 もうお解りですね。 “Adagio” の語源を調べたところ、結果は
このようになりました。



 ちなみに “adagio” を引くと、「ゆっくりと、静かに。 アンダンテ
とラルゴの間の遅い速度; 遅い楽章」…とあります。

 そう、テンポを表わすだけでなく、緩徐楽章の意味もあります。



 私が真っ先に思い浮かべる緩徐楽章といえば、
ブルックナーの第8交響曲のアダージョなんです。

 聞けば必ず涙を浮かべてしまう。 こう書いて
いるだけでも、涙線が緩みそうです。



 ではラルゴ楽章は? 『新世界より』の
第Ⅱ楽章です、私の場合は。

 ちなみに “ラルゴ” には、“幅広い” と
いうニュアンスがあります。




 さて、最初から横道に反れてしまいました。



 [譜例1]はすでにご覧いただいたものですが、ハイドン
の弦楽四重奏曲、作品77-1 から、第Ⅱ楽章の Adagio。
その冒頭部分です。

 演奏例の音源]も、ここからスタートします。







 おや? アンサンブルの悪い箇所がありますね。

 私のテンポが遅すぎたのでしょうか?



 同じ傾向は、この先も続きます。

 [譜例2]は、さらに4小節が経過した箇所ですが、
ここでも意見の不一致があるようです。







 内声の刻む八分音符。 アンサンブルの一般的な原則
からすれば、Vn.Ⅰ も、そのテンポに従うべきですね。

 ところが私は、テーマを奏でるチェロと結託して、テンポを
譲ろうとしません。 さらに遅く! まったく頑固なものです。




 ちなみにこの録音は、三回目に通したときのものです。
一回目は、まるで “意見” が合いませんでした。

 八分音符が連続する、この形。 一見すると単純ですが、
とても難しいんです。 その前と同じテンポで刻むのが。



 その上、Vn.Ⅰ が頑固ですね。 いくらなんでも
遅すぎないか?

 しかし私にも、それなりの事情があります。



 この楽章には16分音符だけでなく、32分音符も
出てくる。 これは、いわば “8連符” に当ります
が、さらに “11連符” まであります。

 かなりテンポを落とさないと、すべてがせわしなく
聞えてしまうのです。




 「まるで別の音楽に聞えますよ。」 Violin の
U.さんは、そんなふうにコメントされました。

 ハイドンの音楽には人一倍詳しく、またご自分
でも積極的に演奏するかたです。



 ちょっと、やりすぎたかな…?

 自分のテンポに、今でも自信が持てない私です。




          音源ページ