MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

9月の記事 ~ 一覧

2009-09-30 00:00:35 | インポート

09/30

      今月の記事の一覧です。



 『今月の記事の一覧』は、毎月末日に掲載しています。




09/01  ピアノ曲集 『四季』 から9月 『狩りの歌』
                  ~ チ(ャ)ィコーフスキィ





09/02   頭の体操 (19) 漢字クイズ 問題/解答




    私の室内楽仲間たち

09/07   (75) Mozart の Duo ト長調

09/08   (76) BRANDENBURG 6番




09/09   まるチャンの「何だ、これ!?」

       (17) 変なイヌ! (6)




    思い出の曲

09/10   (1) 『ブラ1』 (1)

09/11   (2) 『ブラ1』 (2)




09/14   頭の体操 (20) 漢字クイズ 問題/解答




09/15   イチロー選手が小学6年生のときに書いた作文




    私の室内楽仲間たち

09/16   (77) Beethoven の 弦楽四重奏曲 ト長調 Op.18-2

09/17   (78) Mozart の 『不協和音』 ~

                      (1) 練習時間が無い…!





09/19   まるチャンの「何だ、これ!?」

       (18) 変なイヌ! (7)




    私の室内楽仲間たち

09/23   (79) Viola が無いよ?

09/24   (80) Viola はナイト?

09/25   (81) Viola はヴィオラ?

09/26   (82) Viola にも鈴を?

09/27   (83) Viola がアルと?

09/28   (84) アルト譜表に親しむ

09/29   (84) テナー譜表にも慣れよう




09/30   今月の記事の一覧





テナー譜表にも慣れよう

2009-09-29 00:01:44 | 私の室内楽仲間たち

09/29 私の音楽仲間 (105)  ~
                テナー記号 (譜表) にも慣れよう



          私の室内楽仲間たち (85)





         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




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          (82) Viola にも鈴を?
          (83) Viola がアルと
          (84) アルト譜表に親しむ
          (85) テナー譜表にも慣れよう




 今回はハ音記号の正しい読み方、及び

♪MusicaMusicaMusica♪から、譜例を一部手直し

して転用させていただきました。 ありがとうございました。





 フランス語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語。



 話は急に変わりますが、そのどれにも共通することが
あります。 それは、すべて「ラテン語に由来する」という
ことですね。




 かつて私は友人に相談を持ちかけたことがあります。
その友人は、幾つかの外国語に堪能な方でした。



 「私も外国語を何とかして身に付けたい」という気持ち
が強かったので、訊いてみました。

 「**語と**語では、どちらを選んだらいいだろう?
何か国語かを並行して学習したいのだが…。」



 すると彼女は、まず私に質問しました。

 「ラテン語関係では、今までに何を勉強しましたか?
そしてそれは、既に貴方の身に付いていますか?」

というものでした。



 私が返答に窮していると、彼女は続けました。

 「どれかが既にある程度堪能ならば、同じ系統の言語を
学習するのもいいことだと思います。 ヒントになりますから。

 でも、もしどれも似たようなものならば、相違点ばかり気に
なるはずです。 逆に混乱し、全体としては却って時間が
かかるでしょう。」




 そう言われると、なんだか身につまされてしまいました。
どの言葉も大して勉強したことがなかったので。



 「二つ並行してやるなら、系統の違うものを学ぶ方がいい。」

 「新しいものは新しいものとして身に着けた方がいい。」

 無言のうちにそう言われたような気がしました。




 前回は、アルト譜表にどうすれば親しめるか、ご一緒に
考えてみました。

 そこに記した事柄の中で、「既に慣れ親しんだト音譜表など
に頼り過ぎてはいけない」、という意味のことを申し上げました。
最初はとっかかりの善い便法に見えても、後になって応用が
利かなくなり、却って難儀するからです。



 考えてみれば、この種の事柄は至る所に満ち溢れています。
音楽に限ってみても、それも弦楽器の「左手の拡げ方」だけを
見ても、「危険が一杯」です。

 「まず1の指の位置を決め、2、3、4と伸ばして行きましょう」
という教え方が大勢を占めていますから…。



 おっと、また脱線しそうですね。 ちゃんと今日で締めないと、
このシリーズは今月中に終わりません。 失礼しました。



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 以下は前回もご覧いただいた譜例です。

     ハ音記号の正しい読み方]より



 大譜表は、通常ト音記号、ヘ音記号 (バス記号) の二段から
成っています。 ピアノ譜の "右手と左手" を思い浮かべて
ください。

          ③ "大譜表とアルト譜表"
   
         
         

 矢印で示してあるのは、ヴィオラの最低音、ハの音です。

 この楽器の音域は、低音部、高音部の両譜表に跨っている
ので、もしこのアルト譜表を使わないと、ト音記号とバス記号を
頻繁に書き換えることになり、大変面倒です。




 この大譜表の中に、アルト譜表を挟み込んだのが、次の
譜例です。

     ♪MusicaMusicaMusica♪] より、一部改変

 もちろん説明のために作られたもので、実際には存在
しません。



    ④ "大譜表とハ音記号、アルト譜表の関係"

      
 この譜表には、横線が全部で11本書かれています。

 中央の加線は、アルト譜表では中心の第3線に当ります。
線上の音符がちょうど " (ドの音)" になるわけです。

 そう思ってご覧いただければ、"ハ音記号のハ" は、
ピアノで言う "中央ハ" の音であることが明瞭なので、
全体を把握しやすいでしょう。



 アルト譜表では、ご覧の
バス譜表の "ファ"、ト音譜表の "" が、それぞれ
"第線のファ" (下から数えます) 、"第線の" に当ります。




   

 これは前回もご覧いただいた、① ハ音譜表の数々ですが、
すべてを並べてあるだけなので、全体の中での位置関係は
よく解りません。




 これを少し手直しして、中央ハを同じ高さに記したのが、
次の図です。

 ト音記号、バス記号を書き加えるとすれば、どの位置に
来ますか?

        ⑤ 各ハ音譜表の主な守備範囲



 このうち、アルト、テナー (テノール) 以外は、今日では
まずお目にかかることはありません。



 アルト譜表では、上の④の譜例の横線 11本のうち、
ちょうど真ん中の5本を取り出したことになります。

 その代わりに、上の4本、下の2本を消してしまえば、
残った5本がテナー譜表になります。



   Happy Birthday for Score-Reading




 アルト譜表、あるいはテナー譜表を読む場合は、

大譜表全体の中で中央ハの位置をまず意識する

ことから始めてはいかがでしょうか。



 その上で回数を重ね、慣れるようにするのが、
結果的には一番早道のように思われます。




 なお、Violin をこれまで弾いてきた方々がアルト譜表に親しむ
便法として、運指に頼る方法があります。 線の上にある音符
(第1、3線など) を、基本的に奇数番号の指 (人差し指、薬指) で取る
のが多いことが、両譜表に共通しているからです。

 (一方で、第1~第4は、偶数番号の指です。)



 しかしこの場合、読みやすいのは第3ポジションにほぼ限られ、
第1ポジションでは指番号が逆転する (1⇔3、2⇔4) ので、
回を重ねていくと、だんだん応用が利かなくなります。 まして
偶数ポジションはお手上げです。

 それに、もっとも大事なこと、
音の高さを耳で把握しながら、指と結び付ける
作業がおろそかになる危険があります。



 したがって、最初は別としても、今まで親しんできたト音譜表
などを基準にする習慣は、出来るだけ早めに捨てた方がいい
でしょう。 「まったく新しい譜表に出会ったのだ」と、常に意識
することをお勧めします。

 最初は "中央ハ" を強く意識しながら。 そして隣りの音、
5度上下の音、オクターヴ上下の音…などと、砦を増やして
いくのです。 こうして次第に空白を埋めていきます。



 あとは回数を重ね、"条件反射" が芽生えるのを待つことで
しょう。 その瞬間は、大きな喜びと自信を与えてくれます。




 ここから先は余談ですが、私はバス記号で書かれたチェロ
の譜面を、ときどき必要に迫られ、Viola で弾くことがあります。

 と言っても楽器の音域が違うので、苦労して読んでも、実際
はちょうど1オクターブ高い音が出ていることになります。 もし
Viola でも出せる音域なら、実音を出すこともあり、またまた面倒になります。




 そのときに懸命に闘う相手がいます。 それは、またしても
「1音ずらして読もうとする誘惑」なのです。 前回「ダメ!」と
書かれていた方法を、自分でもやってしまいそうなのです。

 頼りになるはずの、「指番号の一致」も、ここでは「奇数・
偶数」の関係がちょうど逆になってしまい、却って邪魔に
なります。

 また、鳴っている音が実際はオクターブ高いという現実
も、ときどき邪魔になることがあります。



 やはり、「新しいものは新しいものとして」慣れる必要を
感じます。

 チェロの譜面では、バス譜表よりむしろテナー譜表の
部分の方が、Viola を手にしていると易しく感じます。




 でも私にとって一番難しいのは、Violin を持ってアルト
譜表を読むときでしょう。 これはもちろん冗談半分の
余興か、何かの急場をしのぐ際です。



 Violin の最低音は、線の "" です。 ところが Viola では、
G線は下から二番目に当るので、アルト譜表を見ていると
右手も左手も、条件反射的にその位置に行ってしまうのです。
「Violin を持っている」のにです。

 結果的に、Violin の、下から二番目の弦、線を鳴らして
しまい、「ありゃ~!」ということになるのです。

 これが、「楽器の構え方がほとんど同じである」ために起こる
ことなのは、言うまでもありません。



 また Viola の最低音、が記されていても、Violin では
そんな音は出せるわけはありません。 そう解っていれば、
その部分はパスすればいいのに、つい余計なことをして
しまいます。

 あろうことか、Violin を持ちながら「エイ!」とばかりに、
さらに下の弦を弾こうとしてしまうのです。
(5本目の、そんな弦なんか、無いに決まってるのに…。)

 出るのは、木を擦る「スーッ」という音だけです。



 その逆に、Viola を持って Violin の譜面 (ト音譜表)
読むのは、さすがに平気です。 習慣の差は恐ろしい
ものですね。




 ところがオーケストラの譜面などでは、音記号と音記号
が交互に出てくることが、実際には頻繁にあります。 時には
ト音譜表が何段か続くことも。

 でも楽譜の段が変わると、つい頭の中ではハ音記号
書かれているつもりになってしまい、いつの間にか7度低い
音を出しているのです。 これは当時の私だけでなく、私が
在団していたオケの仲間も同じでした。

 そして、「低い音を弾いている方が安心しちゃうんだよね~。
おや? * * チャンもか!? ハハハ…」と、みなで顔を見合わ
せて笑ってしまうのです。



 "集合的無意識" は心理分析の用語ですが、こういうのは
集団的無意識と言うのでしょうか。

 あるいは、単なる悲しい習性? それとも集団的自衛権
自己防衛本能? 高い音は怖いですものねぇ。

 あ、高所恐怖症かな!? それとも、都合の悪い記号は見えなく
なる、選択的特殊識別能力?

 Viola 弾きは興味深い研究対象であること、請け合いです。




 ここまでは、アルト譜表に親しむことを中心に記してきました。
でも、テナー譜表の場合も同様で、根本的な方策は変わらない
はずです。 チェロ、ファゴット、トロンボーンの方々にも、何らか
の参考になれば幸いです。





 ところでつい最近、[I教授の談話室]に次のような記事
が載っていました。

  モーツァルトのオリジナル楽譜では、ソプラノ、アルト、
 テノールは、ハ音記号で書かれています。ソプラノは
 ソプラノ記号(第1線がc)、アルトはアルト記号(第3線
 がc)、テノールはテノール記号(第4線がc)で書かれて
 いるのです。バスは、へ音記号。全部違う記譜法です
 から、読むのがたいへんです。この点では、バッハも
 同じ。ト音記号は、声楽用には使われませんでした。
 … …

この記事の本題はこの後です! 続きをどうぞ。 → (2009年09月14日)




 なお今日出版されている譜面には、

①「我々が読み易いようにト音記号、
 バス記号を中心に書き直したもの」、

②「読みにくいが、原典に出来るだけ
 忠実な譜表を使ったもの」

の二とおりがありますが、②を目撃するのは稀です。




  (この項終わり)




アルト譜表に親しむ

2009-09-28 02:26:22 | 私の室内楽仲間たち

09/28 私の音楽仲間 (104) ~ アルト記号 (譜表) に親しむ




         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




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          (82) Viola にも鈴を?
          (83) Viola がアルと
          (84) アルト譜表に親しむ
          (85) テナー譜表にも慣れよう




 今回はハ音記号の正しい読み方から、譜例を一部
手直しして転用させていただきました。 ありがとうございました。





 前回は「ヴィオラを弾く」お薦めをしました。



 アマチュア・オーケストラに関係している方はよくご存知
と思いますが、入団して手にしたヴィオラが "初めて経験
する楽器" という場合が少なくありません。 学生オケでも、
社会人オケでも。

 その他では、「ブラスバンドでユーフォニウム、チューバ
を吹いていた」、「一人でピアノを弾いていた」、という方も
よくおられます。 木管楽器の経験者は、やはりあまり
見かけません。

 意外に少ないのは、「ヴァイオリンからの転向組」です。
関係はもっとも深い楽器なのですが。




 どなたも、あのアルト記号を読む必要がありますね。 でも
この見慣れない記号に、二の足を踏む場合が多いのでは
ないでしょうか。



 アルト "譜表" は、ハ音記号を用いる記譜法の一つで、今日
では、ほぼ Viola 用専門に使われています。 他には、ごく稀に
アルト・トロンボーンで見かけることがある程度です。



 またこのハ音記号を用いた記譜法には、全部で5種類あり
ますが、"アルト" と "テナー" 以外は、今日ではまったくと
言っていいほどお目にかかりません。

 テナー譜表は、通常バス記号で書かれるチェロやファゴット
に、高音が現われる際に用いられます。 テナー・トロンボーン
ではほとんど常にこれが使われます。 また、ごく稀にコントラ
バスでも見られます。




 ご覧いただくのは ① "ハ音譜表の数々" で、真ん中が
アルト譜表です。 五線譜の中にすっぽり収まっていますね。
記号の中心が "ハの音" なので、ちょうど中央の第3線
"" (あるいは "ド") の音になります。

                 
                 
   
                 
                 
  
(譜例②  [ハ音記号の正しい読み方] より)



 どなたも陥りやすいのが、この "一音ずらす読み方" です。

 「そうか、普通は (高音部記号で) "Si" の場所なのに、ここでは
"Do" なんだな!」と、納得したくなるのです。




 ところが、これは同じ "Do" の音でも、"Si" の「隣りのド」
ではありません。 「7度低いドの音」なのです! これは、
次の譜表を見れば明らかでしょう。



          ③ "大譜表とアルト譜表"

         ([ハ音記号の正しい読み方] より)

   
         
         

 この矢印で示したのは、ヴィオラの最低音、ハの音です。
楽器の音域はご覧のとおり、低音部、高音部の両譜表に
跨っています。

 大譜表は、通常ト音記号、ヘ音記号 (バス記号) の二段から成って
おり、ピアノ譜の "右手と左手" の部分を思い浮かべていただければ
いいでしょう。

        管弦楽曲をピアノ用に編曲した例
        (楽譜の青い表紙の上をクリックしてください)





 したがって、もしこのアルト譜表を使わなければ、ト音記号
とバス記号を頻繁に書き換えることになり、大変面倒です。
Viola という楽器には、この譜表が如何に便利か (特に作曲家
や出版社にとって)
、お解りいただけるでしょう。



 ただし時代が下るごとに、オーケストラ曲でも、より高音を
用いることが多くなります。



 アルト譜表だけで足りるのは、ドイツ音楽では Beethoven、
初期ロマン派の作品、あるいはせいぜいブラームス止まり
でしょう。 ヴァーグナーになると、かなり高い音がしばしば
出てきます。

 譜例③では、ト音譜表第4間 (下から数える) の "" までしか
記してありませんが、そのオクターヴ上ぐらいまでは、よく
用いられることがあります。

 その場合はもちろんト音譜表を用い、"ハ音"⇔"ト音" と、
記号が頻繁に交代することも珍しくありません。




 こうして見てくると、ただ一種類の譜表だけで済むのは、
弦楽器ではヴァイオリンだけです。



 チェロではバス記号、テナー記号、ト音記号の三種類が
頻繁に使い分けられます。 しかも作曲家によっては、同じ
ト音譜表でも、① 実音どおり、② 実音よりオクターヴ高く
記譜される…の二とおりの場合があり、紛らわしいのです。

 Beethoven、ブルックナー、ドヴォルジャークは、上の②に
相当します。



      Happy B-day for solfège geeks

             (全部 Do ?)




  (続く)




Viola がアルと?

2009-09-27 00:07:13 | 私の室内楽仲間たち

09/27 私の音楽仲間 (103)  ~  Viola がアルと?




          私の室内楽仲間たち (83)





         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




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          (82) Viola にも鈴を?
          (83) Viola がアルと
          (84) アルト譜表に親しむ
          (85) テナー譜表にも慣れよう




 前回は脱線に脱線を重ね、とんでもないことになってしまい
ました。

 この間の経過を辿ってみると、"Rossini" → "Viola が無い" →
"Viola の歴史" → "Viola と私の出逢い" → "私の父や祖父母"
…などと話が前後し、これ以上は在り得ないほどの道草です。



 「いつものことさ…」と呆れているみなさまには改めてお詫びし、
話題を元に戻しましょう。 と言っても、また自分のことですが…。




 私がヴィオラに初めて触れたのは、大学1年のときです。
元々クラシック音楽は大好きだったので、楽器の名前だけ
は聞いていました。 でも、それ以上の知識も興味もありま
せんでした。



 高校時代までは合唱を楽しんでいましたが、大学に進むと、
そこには "オーケストラ" なるものがあったのです。

 「コーラスを続けよう」という思いは大きく揺らぎ、幼少の頃に
手にしたヴァイオリンを、再び取り出すことになりました。 と
言っても、楽器自体は大したものではありませんが。

 いや、「楽器は弾き手次第」でしたね。 反省…。




 しかし、そこで私を待ち構えていたのは、想像も出来ない
ほどの難曲たちでした。

 Beethoven の『レオノーレ』序曲第3番、Mendelssohn の
交響曲『イタリア』、そして R.Strauß の交響詩『ドン・フアン』、
その他。 片や私と言えば、「楽器の経験がある」とは言い
ながら、満足にレッスンも続けず、弾くことすら久しく中断して
いたのですから。 もちろん合奏の経験は無いも同然です。




 そして "試用期間" をしばらく経た後、私はヴィオラへの転向
を打診されました。 「ヴァイオリンには上手な人間がたくさん
いる。 でもヴィオラ・パートには人間が足りないし、団の楽器を
貸してあげられる」というのが、大先輩たちからの助言でした。

 ヴィオラという楽器がアルということは、もちろん知って
いました。 でもそれまでは、そんな楽器など見たことも
なければ、関心もゼロ。




 唯一の頼りと言えば、オーケストラのスコアを、それまでに
何度か見ていたことでした。

 「何だ? この記号は!」 スコアで初めて見たときの衝撃。
 そう、アルト記号です。 もちろん最初から読めたわけでは
なく、上下の Violin やチェロの動きから、「どれが何の音か」
を想像したに過ぎません。



 ちなみに中学生時代に初めて買ったスコアですが、曲は
Schubert の『未完成』交響曲、次に Liszt のピアノ協奏曲
第1番でした。




 しかし、この場でも (79) で記したとおり、Viola は合奏において
極めて魅力的な楽器であることが、だんだん解ってきました。

 その後の細かい事情は省きますが、大学を卒業してからは、
結局「ヴィオラを専門として学ぶ」形になってしまいました。




 オケでまずヴィオラのパートを経験したこと。 これが私に
とっては良かったのか、どうか? 私自身は今でも迷わず
"Yes" と答えます。



 オーケストラという場に私が置かれたのが、もしヴァイオリン
というパートだったら、当時の私にはまったく太刀打ち出来な
かったでしょう。 特に ViolinⅠであれば、難しいパッセジの
連続で、息をつく暇も無いことがほとんどですから。

 しかし、正直に申し上げると、ヴィオラの場合は音符の難しさ
はそれほどでもなく、「左手の技術が無かった」自分には、多少
余裕が感じられたというのが事実です。




 一方では音量のバランス、リズムの正確さ、音質の使い分け
など、やらなければならない課題がたくさんありました。 一般に
「右手の技術」と言われる事柄です。 もちろんこれは、後にプロ
のオーケストラという現場に置かれてから気付かされたことです。

 アンサンブルの場で多少余裕がある分、「全体を生かすため
には、Viola に割り当てられた各音符をどう弾くべきか」を考える
ことが出来ました。 試行錯誤の泣き笑いも、色々ありましたが。



 しかしこれらの改善は至難を極め、後になればなるほど気付く
ことが多く、今でも解決出来ない事柄が、もちろん幾つも残って
います。 駆け出しの頃の不勉強を恥じ、オケの同僚たちに迷惑
をかけたことを、今にして詫びたい気持ちです。




 でも、もし学生時代に、Violin で入団していたら…。 音楽を
志すことには、おそらくならなかったでしょう。 ここでこうして
書くことも、もちろん無く。



 「学生時代に棺オケに片足を突っ込んで以来、人生を誤って
しまいましたね。」

 そんな風にもし同情されるとしたら、こう答えることにしますね。

 「そこらにヴィオラがアルと、人生を誤ってしまいますよ。
みなさんもどうかご注意を。 触るととんでもないことに…。」




 冗談はさておき、もし余裕があれば、「ヴァイオリンを弾く
方々はヴィオラを」、「ヴィオラ専門の方はヴァイオリンを」
手にされることをお薦めします。

 楽器に託された機能、アンサンブルで求められる機能を、
色々な面から味わうことが出来るからです。 そこで得た
経験は、専門楽器においても必ず生かされます。



 「Violin と Viola の演奏では、何が違うのか? そして何が
同じなのか? 奏法上の根本的なアイデアは何なのか?」

 これを考えずに、ただひたすら "さらう" のは、今や私に
とっては楽しいことではありません。 実は昔からですが…。




 そこで、よく話題になることですが、あの "ハ音記号"、
この Viola の場合は "アルト記号" ですが、どうすれば
これに慣れることが出来るのでしょうか。 今でも色々
な方に訊かれることです。

 "スコアで音を読む" というより、楽器で、特に弦楽器
で "音を出す" ことを想定した場合です。




 もしあなたが Viola をお弾きになる方でしたら、最初
はどういう風に読み始めましたか? そして今では?

 その前に Violin を弾いておられましたか? あるいは
Viola が最初の弦楽器?




  (続く)




Viola にも鈴を?

2009-09-26 00:03:05 | 私の室内楽仲間たち

09/26 私の音楽仲間 (102)  ~  Viola にも鈴を?




          私の室内楽仲間たち (82)





         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




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          (79) Viola が無いよ?
          (80) Viola はナイト?
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          (82) Viola にも鈴を?
          (83) Viola がアルと
          (84) アルト譜表に親しむ
          (85) テナー譜表にも慣れよう




 前回は、ヴィオラが古くからある楽器で、"Viola" という
言葉の意味する内容が大変広いことを、ご一緒に見て
きました。

 おまけに、ヴィオラ・ダ・ブラッチョ、ヴィオラ・ダ・ガンバ、
ヴィオラ・ダモーレ、ヴィオラ・ポンポーザなどという楽器や
呼び名まで登場しました。

 これでは、「一体、"普通のヴィオラ" はどれなの…?」
と言いたくなりますね。 かく言う私自身も、元はと言えば
まったくチンプンカンプンでした。



 思い出すのは次のようなジョークです。



 楽器屋へお客さんがやって来ました。

 「セカンド・ヴァイオリンを下さい!
  … あれ、お宅にも無いんですか…?」




 私がヴィオラに初めて触れたのは、大学1年のときです。
もちろん名前ぐらいは聞いていましたが、それまでは興味
も関心もありませんでした。



 初めてヴァイオリンを手にしたのは、小学校5年生のとき。
「やりたい!」とねだったら、父親が買ってきてくれました。

 と言っても、本当に安物の楽器でした。 しかし当時の
我が家は家計が決して楽ではなかったので、よくぞ買って
くれたものだと思います。




 その父親の両親、つまり私の祖父母になりますが、祖父
はヴァイオリン、祖母はピアノを弾く人間でした。 共に明治
生まれですから、この時代で西欧楽器に親しんだ人間は、
本当に数少なかったろうと思われます。

 二人はさる楽団で知り合い、一緒になったとのことです。
しかも祖父は "楽隊長" だったとか。



 その "楽団" と言うのは、活動写真の上映の際に、音楽を
演奏していた代物です。 若い方々には、きっと信じがたい
存在でしょう。




 ご存知のように、昔の映画には音が付いておらず、
サイレント映画と呼ばれていました。 セリフが無い
のですから、外国語映画に限らず、筋書きの進行が
よく解りません。 これを補うものとして、活動弁士
または"活弁士"、"弁士" という存在がありました。

 この弁士は、話術に長けていなければならないのは
もちろんのこと、その場の雰囲気を敏感に察知しながら、
観客を誘導し、最大限に楽しませなければなりません。
その代表的な弁士に、名高い徳川夢声がいました。

 若い方々はもちろんご存じないと思いますが、これは
かつての代表的な話術家です。 この "ムセイ" という
名が、無声 (サイレント) 映画に由来することは言うまでも
ありません。



 私も幼少時、この方の声がラジオから流れていたのを何度
も耳にしています。 初期の白黒テレビでも、その姿が。

 また、"おじいちゃん、おばあちゃん" のところへ遊びに行く
と、「夢声さん、夢声さん!」と、二人はよく口にしていました。
二人は当時、と言っても大正から昭和の初期の話ですが、
東京の代表的な "楽団" に属していたらしいので、この名士
とも親交があったのだと思われます。




 祖父は、私がヴァイオリンを手にし始めたと聞くと、
「ぜひ楽器を持ってこい」と命じ、レッスンをしてくれた
のを覚えています。 「ド・デーズ」、「ハ・デーズ」など
と、小学生の私には、いや、今でも、見当もつかない
ような難語を駆使しながら。

 その祖父と同居していた叔父たちは、私が難儀して
いるのを目撃すると、「爺さんの言うことは古いから、
あまり真面目に聴かないように」などと、助け船を出して
くれることがよくありました。



 祖父は頑固な反面、飄々とした人間で、音に関しては
本当に純真、無邪気でした。 老後は市から委託され、
子供たちのための音楽教室を開いていました。



 そして、私にヴァイオリンを買ってくれた父親ですが、これも
音楽好きな人間でした。 と言っても、「オーディオ機器にお金
をつぎ込む」ほどではありません。 ただラジオ放送 (AM) の
クラシック番組は欠かさず聴いていたお蔭で、何とか最低限
の音楽環境で私も育ったのだと思います。




 その父親も、つい先日亡くなりました。



 遺品を整理していたら、カセット・テープが何本か出てきました。
見るとその中には、私が当時所属していたオーケストラの演奏
が…。 そう言えば、FMで放送されたものがあったので、それを
チェックしていたのでしょう。

 それと共に、私が送った招待状や、プログラムも何枚か。
オケの演奏会や、私が指揮した学生オケのものが、大切に
しまわれてありました。



 また遺品の中には、なんと鈴が一杯!

 夥しい数の診察券は、それぞれが小さなクリアー・ケースに
入れられ、クリップで鈴が結び付けられています。 財布にも、
キー・ホルダーにも。 さらに、様々な形の風鈴の数々…。
可愛い、優しい音がきっと大好きだったのでしょう。



 ひょっとして私自身も、そんな音楽好きな祖父や、父の血を
受け継いでしまったのでしょうか。




 おっと! 肝心のヴィオラの話がちっとも進みませんね。
まことにまことに申しわけありません。
 
 これでは競合脱線。 余談が鈴生(な)りです。




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  (続く)