11/17 私の音楽仲間 (634) ~ 私の室内楽仲間たち (607)
解放された Viola
これまでの 『私の室内楽仲間たち』
Mozart の 弦楽五重奏曲 ハ長調 K515 は、四つ
の楽章から成っています。
うち 【MENUETTO】 と 【Andante】 は、どちらが第Ⅱ、
第Ⅲ楽章なのか、今日でも判りません。 この場でも
何度か触れたとおりです。
[演奏例の音源]は、【Andante】 の中ほどの部分。
最初に聞えて来るのは ViolaⅠです。 1オクターヴ
上の Vn.Ⅰと、対等に張り合う様子が聞えます。
この二つの楽器が中心となり、Andante 楽章は
進んでいきます。
やがて、冒頭のテーマが再び聞えてくる。
[譜例]は、その冒頭の様子です。 この[音源]
では、【50秒】~以後の部分に当ります。
最初の12小節は、“序奏” に相当する部分です。
ViolaⅠは、5段のうち、真ん中のパートですね。
↑
2つのソロ楽器の本格的な対話が始まるのは、↑の
小節以降です。
それまでは、Vn.Ⅰにピッタリ寄り添っている楽器が
ありました。 ViolinⅡです。
では、その2つの Violins が動いていた “音程間隔”
を見てみましょう。 3度や6度が主ですね。
しかし ViolaⅠが前面に躍り出ると、Vn.Ⅱは背景に
姿を隠します。
以上は、この 【Andante 楽章】 に限った記述ですが、
“3度や6度” は、曲全体にとっては重要な音程です。
なぜならば、「他の3つの楽章では中心的な音程」…
だからです。
関連記事 『楽章を結ぶ3度?』 『対照的な “Andante”』
「全4楽章の順番は確定されていない。」
…再三触れているとおりです。
この問題を “3度、6度” の観点から見れば…。
「“Andante” は3番目の楽章だ」…というのが
私の考えで、以下がその理由です。
第Ⅰ楽章 “Allegro” も、また順番不明な “Menuetto” も、
ともに “3度、6度” を中心とした楽章です。
以上がもしⅠ、Ⅱ楽章だとするなら、“第Ⅲ楽章 Andante”
の導入は、極めて自然です。
その最初の12小節は、“3度、6度” が中心だから。
しかし楽章の大半は、ViolinⅠと ViolaⅠの対話なので、
“3度、6度” が他の部分で顔を出す余地はありません。
こうして、「第Ⅲ楽章は “Andante” で、エピソード的
な役割を担う。 続くのは、再び “3度、6度” が目立つ
第Ⅳ楽章、“Allegro” だ。」…というのが、私の考えです。
反対に、この “Andante” が第Ⅱ楽章だとすると…。
エピソードが早くも二番目に現われ、“3度、6度の
Menuetto”、そして “3度、6度の第Ⅳ楽章”…の順
に続くことになります。
これは全体の流れが良くない。 それに、重めの “Andante”
の後に、軽い “Allegretto の Menuetto” が来ている…。
それは良しとして、さらに “Allegro のフィナーレ”…と続くと、
テンポ感も単調になります。
何はともあれ、この大役を担うのは ViolaⅠですが、これは
Mozart の全室内楽曲の中でも、特異な事件です。
この曲の後には、3曲の『プロシャ王』四重奏曲が作られ
ています。 しかし、この楽章ほど Viola が活躍する楽章は、
どれを見てもありません。
…してみると、Viola に大役が与えられた事情は、
作曲年代とは無関係のようですね。
四重奏の “格式”、五重奏の “解放感” の違いが、
ここでも顕われているように思われます。
ハ長調 五重奏曲
[音源サイト ①] [音源サイト ②]
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