MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

9月の記事の一覧

2014-09-30 00:00:00 | 目録 その他

09/30

       今月の記事の一覧です。



     その他の音楽記事

09/01   俯瞰検閲集団 

 

      私の室内楽仲間たち

09/03   自虐的な遊び

09/05   奇襲攻撃

09/06   省資源の先例

09/11   名は体を表わす?

09/12   作る人、壊す人、伝える人

09/14   ユーモアだけじゃないさ

09/16   聴覚より嗅覚?

09/17   勝手なカラス

09/19   皆伝か、返納か

09/21   ロマン派のタネ証し

09/22   後の祭り

09/24   酔いに任せて

09/25   知識も無しに作れるか!

09/26   お伴は忍者でござる


09/30   今月の記事 ~ 一覧





お伴は忍者でござる

2014-09-26 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

09/26 私の音楽仲間 (620) ~ 私の室内楽仲間たち (593)



            お伴は忍者でござる




         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




       関連記事 Beethoven の 四重奏曲 作品130

                  割り勘ドンブリ
                 不自由な輩め…
                 ドイツもこいつも…
                  最後の作品
                  酔いに任せて
              知識も無しに作れるか!
                お伴は忍者でござる
                  ふざけた曲さ
                深刻めいた遊び
                 感じる殺気
               逆立ちで走るのだ




 完全5度は、クラシック音楽に付き物です。 楽譜
のあちこちで5度の下降進行を見かけても、ちっとも
不思議ではありません。

 しかしこれは、決定的とも言える “強い進行” です。
和声の解決を導くことが多いので、低音で多用しすぎ
ると、音楽はギクシャクしてしまう。


 何度かご覧いただいた下の譜例にも、この5度進行
見られます。 一段目では頻出していて、それもチェロ!
「早く終わらせ帰りたい」…のでしょうか。

 でも、曲はまだ始まったばかり。 Beethoven の弦楽
四重奏曲 変ロ長調 作品130 の第Ⅰ楽章で、その冒頭
ですから。



 二段目に入ると、音域の高いパートに、今度は “上行4度” と
して現われます。 印象は柔らぐが、その目的は…?


 演奏例の音源〕も冒頭からスタートし、下の譜例に続きます。

 いよいよ主部に入り、第一主題が…



…聞こえてきたのですが、どれが主題でしょうか?

 (1) 十六分音符の動き? それとも、(2) Vn.Ⅱの音符5つ


 私の考えでは、主題は (2) です。 上行4度を含んで
いますが、これは先ほどの序奏でも出てきました。

 音程の動きは、この上行4度が基本です。 しかし下降
3度や下降4度、オクターヴ跳躍、さらには減4度、減5度
など、不自然音程も出てきます。


 音程が頻繁に動かず、形が単純なのは、他の要素
と並立させやすいからでしょう。

 そのうち、頻出する要素は (1) の十六分音符です。
しかし展開部再現部では、他の要素も見られます。


 したがって、大事なのはリズム。 これだけは変わりません。

 「第一主題リズム動機であり、他の要素を従えている。
パートナーは替わるが、十六分音符の走句である場合が
多い。」…と言うことが出来るでしょう。


 主題が複数の要素から成っている。 このこと自体
は、それほど珍しいことではありません。

 しかし【組み合わせを変える】ことも、作曲者の企み
の一つです。 聴く者は “捉えどころが無い”…印象を
受ける。 真面目に聴いていると、肩すかしを食います。

 作曲家は、そんな音楽を狙ったのかもしれません。


 ちなみに、この十六分音符の走句は、第二主題で聞かれます。

 ただし先導したり、合いの手を入れたりするだけ。 常に鳴って
いるわけではありません。

        関連記事 知識も無しに作れるか!

 

 

 主題は単純だが、十六分音符が絡みついている。
絶えず動き回り、落着きが無い。

 至る所で現われたかと思うと、お伴はいつの間にか
別の者にすり替わっている。


 まさに神出鬼没です。

 聴く者煙に巻かれてしまいます。

 

 


    [音源サイト    [音源サイト



知識も無しに作れるか!

2014-09-25 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

09/25 私の音楽仲間 (619) ~ 私の室内楽仲間たち (592)



           知識も無しに作れるか!




         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




       関連記事 Beethoven の 四重奏曲 作品130

                  割り勘ドンブリ
                 不自由な輩め…
                 ドイツもこいつも…
                  最後の作品
                  酔いに任せて
              知識も無しに作れるか!
                お伴は忍者でござる
                  ふざけた曲さ
                深刻めいた遊び
                 感じる殺気
               逆立ちで走るのだ




 今回は “解答編” に当ります。 問題をもう一度ご覧に
なるかたは、先に酔いに任せてをご参照ください。

 曲は、Beethoven の弦楽四重奏曲 変ロ長調 作品
130 です。


 「次の2つの譜例の間に、類似性を見つけてください!」
…というのが、前回のお願いでした。

 まず、第Ⅰ楽章で第二主題が Vn.Ⅰに現われる場面です。



 前回と同じ演奏例の音源〕は、下の〔譜例〕から始まり、上へ
跳びます。

 これは楽章の序奏部ですが、問題になるのは1段目だけです。



 前回の記事では、この後に “ヒントの譜例” がありました。

 でも今回は、いきなり “解答の譜例” が続きます。


 

 すぐ上の譜例にを塗り、音符には番号を付けてみました。
まであります。


 

 1~4半音下降音階4~5上昇6度そして、5~7
全音も含む下降音階です。

 次の譜例には、4 5 6 7 1 2 3 4…と、順に書かれています。
それぞれの間の音程関係は、上の譜例と同じです。 もちろん
調が違うので、同じ番号でも別の音名を指しています。



 “音列” が真ん中で切断され、順序が入れ換えられた!

 もし、「聴く者はすべて私の音楽を理解しなさい」…という
のが作曲者の注文なら、それはかなり難しいようです。

 まるで “ジグソー パズル” ですからね…。 それとも、
作曲家自身が戯れているのでしょうか?


 この曲の解説ページには、以下のように書かれていました。

 「瞑想的で荘重な序奏における第1ヴァイオリンの旋律は、
この楽章全体の中核をなし、提示部や展開部のつなぎ目で
たびたび姿を見せる。」


 これが頻繁に現われる理由は、聴く者に気付いてほしいから?

 それに、何度も出てくる < (クレシェンド)。 上昇6度の形には、
ほぼ常に書かれているのです。 弾く者は心を込めて、これを
演奏しなければならない。


 それでもやはり、パズルは難解ですよ、Beethoven先生!
まるで、「たとえ難解でも、音楽を通して自分を理解してくれ」
…と言わんばかりですが…。

 凡人の私たちは、なかなか着いていけずに済みません。

 



 さて、前回ご覧いただいた “ヒントの譜例” ですが、
今回でも触れなかった点が残りました。


 

 それは、頻繁に顔を見せる下降5度、あるいは上昇4度です。
どうやら、第二主題とは無関係なようです。

 

 さて、真面目な話題はこれで終わりですが…。

 “ジグソー パズル” で、余計なことを思い出してしまいました。

 



 “K516f” に、『音楽のさいころ遊び』という作品があります。
ただし、死の直後に出版されており、しかも Mozart 自身の
作という証拠はありません。

 あの “ト短調の五重奏曲 K516”…。 そして管楽五重奏の
編曲番、“K516b”。 これらと肩を並べる音楽でもない。


 楽譜サイト“作品” が、176のピースに分割されています。
いわく、「対位法の知識が無い貴方でも、メヌエットが作れます!」
これは恐らく初版でしょう。

 “さいころ”…ですから、「出た目に応じて各ピースを並べろ…
というわけですね。 偶然音楽の走りでもあります。 各ピース
は1小節分で、3/8拍子。 鍵盤楽器の両手です。


 で、どんな音楽が出来るの? 要するに “出鱈目” な音楽です…。

 組み合わせを計算すると、1116 = 45,949,729,863,572,161とおりも
あるんだって…! 兆の上の “” なる単位まで出てきました。


 このような遊びの例は、Mozart 以前にも見られるのだそうです。

 ただしこの作品では、“さいころ” を前提としてはいないように
思える。 先ほどの楽譜サイトでは数表が見られますが、単純
に “6の倍数” を使える形ではないから。 では、ピースを選ぶ
他の方法は?

 ある図書館で私が見かけた “楽譜” は、カルタ状の硬いカード
で、176のピースになっていました。 これなら、床かテーブルに
ばら撒けばいい。 裏返しにするなどして。


 では、美しい曲になるような “模範解答” はあるのでしょうか?
本来は “ちゃんとした曲” だったものを、バラバラにしたに違い
ないから、あるのでしょう。 音源も販売されているようです。

 音源サイトでも、実例が幾つか聞かれます。 ただし、一応
リンクはしてありますが、ほとんどは期待外れですよ! ヒマ
な私が調べた上なので、忙しい貴方は無駄な時間を費やして
駄目ですよ…?


 ああ、やっぱり見ちゃったの……?


 「知識も無しに作曲が出来るか! 一緒にするな!」 

 Beethoven 先生、だいぶ “お冠” のようです。



      [音源サイト    [音源サイト



酔いに任せて

2014-09-24 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

09/24 私の音楽仲間 (618) ~ 私の室内楽仲間たち (591)



              酔いに任せて




         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




       関連記事 Beethoven の 四重奏曲 作品130

                  割り勘ドンブリ
                 不自由な輩め…
                 ドイツもこいつも…
                  最後の作品
                  酔いに任せて
              知識も無しに作れるか!
                お伴は忍者でござる
                  ふざけた曲さ
                深刻めいた遊び
                 感じる殺気
               逆立ちで走るのだ




 〔譜例〕は、Beethoven の弦楽四重奏曲 変ロ長調 作品
130 から。 第Ⅰ楽章の冒頭で、ViolinⅠのパート譜です。


 演奏例の音源〕も、ここから始まります。

 Violin 私、Saさん、Viola Yさん、チェロ Suさんです。



 おや? 音源の編集を間違えてしまったかな…。

 “序奏の後に Allegro”…と来れば、主部が始まるはず。
そして聞こえてくるのは第一主題…。 それが普通なのです
が、なんと、第二主題に跳んでしまいました!


 跳んだ先で聞こえてきた楽器は…。 チェロですね。 でも
十六分音符で動く形は、第一主題部分の Violin と、まったく
同じです。



 「じゃあ、第一主題も第二主題も、同じ十六分音符の形から
始まるの?」

 いえ、この点は、もう少し慎重に検討したほうがいいようです。

 


 

 さて、この曲の解説ページには、次のように書かれています。

 「瞑想的で荘重な序奏における第1ヴァイオリンの旋律は、
この楽章全体の中核をなし、提示部や展開部のつなぎ目で
たびたび姿を見せる。」


 確かにそのとおり…。 でもそれだけでしょうか? 楽譜
詳細に読めば、主部無関係な序奏を目にすることの
ほうが、むしろ少ないのです。

 弦楽四重奏というジャンルに限ってさえ、両者の関連は
緊密です。 特に、構成を重視する作曲家たちの作品では。

 いわんや、Brahms の第1交響曲においては…。 凝り
に凝った序奏部を持つ楽章が、二つもあるのですから…!


 次の記事は MOZART と BEETHOVEN の序奏の一例です。

    関連記事 Mozart の "混沌" 序奏は倉庫 など



 ではこの曲の、先ほどの序奏部は、どうなのでしょう? 主部
とは、何らかの関係があるのでしょうか?


 そこで、今回は貴方にそれを見つけていただきたいのです!


 先ほどと同じ〔譜例〕をご覧ください。 順に、【第二主題】
【序奏部】です。

 例の “十六分音符” は無視し、それ以外に、何か類似性を
発見してください!

 



 如何でしたか? 譜面が小さすぎますよね…。 画面でご覧に
なるのと、大きい楽譜を手元で見るのとは、まったく違います。
無理なお願いなのは、よく解っています。 ごめんなさい…。

 そこで、この先には “ヒントの譜例” を用意しました。 これで
すぐお解りになるかもしれません…。 でも、「どうしても自分で!」
…というかたは、もう少し頑張ってください。

 



 では、ヒントの譜例です。 共にスコアですが、順に【第二主題】、
【序奏部】です。 “塗り絵” の音符を見比べながら、何かを発見
してください。


 色が薄い上に、紛らわしくて申しわけありません。 以下
の要領で色塗りをしてあります。

 上昇6度。 下降音階。 半音が連続する下降音階
下降5度、あるいは上昇4 



 これでも見にくいですよね? ごめんなさい。

 本来なら “差し” で、楽譜をご覧いただき、
ご一緒に語り合いたいところなのですが…。


 おっと、私は今 “一人酒” を嗜みながら、この記事
書いています。

 今回はこれで失礼。 さて、もう少し行くとするか…。

 




     [音源サイト    [音源サイト



後の祭り

2014-09-22 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

09/22 私の音楽仲間 (617) ~ 私の室内楽仲間たち (590)



                後の祭り




         これまでの 『私の室内楽仲間たち』

              室内楽で Viola



 私は今、反省しきりです。 違う楽器とはいえ、この曲を前回
弾いたときの記憶が無いのですから…。

 

 曲はメンデルスゾーンの弦楽四重奏曲 変ホ長調 (第1番
Op.12) です。 今回は Viola ですが、Vn.Ⅰのパートを確かに
受け持ったことがある。 もちろん楽譜には自分の書き込み
も残っているし、そのときの記事まで書いています。

 記録を見ると、まだ二年も経っていない。 一体どういう心理
状態で、この曲を弾いたのでしょうか…?


 それに比べて、今回の印象は鮮烈でした。 Vn.Ⅰを担当した
Oさんが、みごとなリードぶりを発揮してくれたからです。 そして
何よりも、曲に対する愛情が満ち溢れた演奏でした。

 「そんなときに居合わせることが出来て、本当によかった…。」
自分の偽らざる感想です。


 それに引き換え、同じパートを弾いたはずなのに、自分には
記憶さえ無い。 もっとも中核を成す、重要なパートだというのに。
少なくとも達成感や満足感などは、おそらく無かったからでしょう。

 要するに、作品に対する思い入れが足りなかったということ。
これでは、一緒に付き合ってくれた仲間に喜んでもらえたはず
がない…。 そのときのメンバー表を見ながら、今申しわけない
思いで一杯です。

 


 

 演奏例の音源〕は、いきなり ff で始まります。 音量が大きい
のでご注意ください。 全曲の終わりの “3分間” です。

 〔譜例〕は【50秒】以後の部分ですが、やはり “寂しい歌” が
聞こえてきます。 まず断片的に Vn.Ⅰから。


 そして今回も、これを Vn.Ⅱが歌い始めます。 しかし前回
感じられたような、悲劇的な切迫感はありません。

           関連記事 ロマン派のタネ証し

 

 

 

 それ以後は、第Ⅰ楽章の終わりの部分の音楽が、ほぼ
そのままの形で聞えてきます。 やがて Vn.Ⅰ静かに
変ホ長調の主題を歌い出す。 違うのは、クライマクスの
部分が2小節ほど長いだけで、あとは同じです。


 しかしこの第Ⅳ楽章では、闘争や葛藤を思わせるト短調や
ハ短調が荒れ狂っていました。 同じ変ホ長調でも、ここでは
聴く者に深い平安を感じさせながら、全曲は終わります。

 あの絶えず絡みついてくる、ヘ短調の “寂しい歌” からも、
は解放されたのです。



 蛇足ですが、同じ〔譜例〕の二段目をご覧ください。 “sfp” が
2回ありますが、二つ目の “p” は、私が赤で消してありますね。
これ、手持ちのスコアには書いてないのです。

 ただしそれに気付いたのは、この記事を書いている最中の
こと。 つまり、〔音源〕の演奏は sfp” のままなのです。

 もしスコアのほうが正しいとすれば、どう変わってくるのか?




 
 最初は sfp” なので、すぐに音量を落とします。 でも
二度目は、【ある程度音量を保つ】…必要がある。

 三段目の “dim.” に入るまでは。 そのほうが緊張感
持続できることになります。 それが作曲者の望んだ
音楽なのかもしれません。


 もっと早く気付いていれば、Viola を持ちながら、ちょっと
した演出ぐらいは出来たはずです。 そうなれば、少しは
仲間に喜んでもらえたかもしれないのに…。

 またいつか、この曲に触れるチャンスがあるとは限りま
せん。 Vn. にせよ、Viola にせよ。
 

 


               音源ページ




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