MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

4月の記事の一覧

2013-04-30 00:00:00 | インポート

04/30



       今月の記事の一覧です。




     私の室内楽仲間たち

04/01   キャッチボールの基本?

04/03   共通項の無い世界

04/04   八方美人になりたい

04/06   それでいいのだハムレット君!




04/08   頭の体操 (132) 漢字クイズ 問題/解答




     私の室内楽仲間たち

04/10   初対面のアンサンブル

04/12   書かなきゃいいのに…

04/13   来なきゃいいのに…

04/14   行き届かなきゃいいのに…

04/15   帰らなきゃいいのに…




04/17   頭の体操 (133) 漢字クイズ 問題/解答




     私の室内楽仲間たち

04/21   乙女の苦しみ

04/25   歌はチェロに

04/28   二人でお色直し




04/30   今月の記事 ~ 一覧





二人でお色直し

2013-04-28 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

04/28 私の音楽仲間 (484) ~ 私の室内楽仲間たち (457)



              二人でお色直し




         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




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                   歌はチェロに
                  二人でお色直し




 チェロの作品を数多く残したポッパー



 その唯一の弦楽四重奏曲から、今回は第Ⅳ楽章です。

 演奏例の音源]は、その一部を1分ほどの長さに編集
したもので、3つの部分を繋ぎ合せてみました。



 (1) 第Ⅳ楽章の主要主題 (再現部

 (2) 第Ⅳ楽章の主要主題 (提示部

 (3) 第Ⅳ楽章の主要主題 (コーダ



 おや? 聞えるのは、主要主題だけですね。 冒頭
でも (1) と同じ、ハ調で登場します。

 低音域で歌う ViolinⅡ。 この再現部では、Vn.Ⅰが
そっと寄り添う点だけが異なっています。 音楽自体
は、楽章の冒頭とまったく同じです。



 さて、「しばらくして第Ⅱ主題が登場する」…というのが、普通
の形ですね。 ところがここでは第Ⅱ主題が、すぐに顔を出し
ます…。 今回の音源にはありませんが。

 その後になってから、主要主題がもう一度聞えるのです!
(2) は、その “確保” に当る部分ですが、ここでは変ホ調
に変身しています。



 次は大きく (3) にジャンプして、 終結部から。 ここでは主題
全体でなく、動きのある “八分音符” のモティーフが活躍します。

 調性は…? 元のハ調で登場して、全曲を締めくくります。




 “短調⇔長調” の交代を、頻繁に繰り返す、この主要主題…。

 「どっちが本当の貴方なの?」…と訊きたくなるところですね。




 これだけ変転を繰り返すなら、“展開部” は不要では?
…聞き終わると、実際にそう感じます。



 それでは、展開部では何が起きているのか?



 短い展開部の主役は、第Ⅱ主題です。 提示部では
長調で。 しかし、この部分では短調で…。

 変身するのは、主要主題だけではなかったんですね。




 こうして見てくると主題は、短調でも長調でも、確かに
魅力的です。 両主題とも。

 そして、短調と長調の間で、“変身” を何度も繰り返す。
その手法自体も、なるほど魅力的ではあります。



 でも、通常の展開部で見られる “モティーフの処理” や、
それに伴う緊張感の高まり、あるいは哲学的な止揚など
は窺えません。

 厄介な弁証法的思考より、単純明快な “明暗” を志向
したほうが、確かに解りやすい。



 しかし弾き終わってみると、その “明暗の変転” からは、
それほど大きな印象を受けません。 短調~長調を行き
来はするものの、“大きなうねり” があるわけではない。

 いわば、振り子の周期が短いので、「気分に浸りにくい」
のです。 弾いていて。 また、おそらく聴いていても。



 “歌“ と “形式” の両立…。 それは、どの作曲家
にとっても “永遠の難題” なのでしょうか。




            音源サイト




歌はチェロに

2013-04-25 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

04/25 私の音楽仲間 (483) ~ 私の室内楽仲間たち (456)



               歌はチェロに




         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




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                  二人でお色直し




 みなさま、

 このたびはダーヴィト・ポッパーの弦楽四重奏について、
快くお受け下さいましてありがとうございます。

 ポッパーはチェリストで作曲家(チェロの曲が多いですが)
で、今年没後100年にあたります。 ワーグナー、リスト、
ブラームスとも交流があり、プラハ、ウィーン、ブダペスト
に住んでいたユダヤ人です。

 この四重奏はあまり演奏されることはないと思いますが、
どんな曲かちょっと体験してみたくお付き合いいただけれ
ば光栄です。




 まだ寒い二月の上旬、こんな丁重なメールを受け取り
ました。 差出人は、チェロの Sa.さん。 いつも室内楽
をご一緒しているかたで、この曲の提案者です。




 ポッパーの作品は、ほとんどがチェロとピアノのためのもの。

 4つのチェロ協奏曲以外に、「管弦楽作品は無いのかな…」
と思って探すと…、ありました。 『レクィエム』が。

 でもよく見ると、“3つのチェロとオーケストラのための”…と
書いてある。 さらに、そのオケパートを、ピアノ用に編曲まで
しています。



 他の作曲家の作品も、編曲はチェロ、ピアノのためのもの。
『歌の翼に』 (メンデルスゾーン)、『カロ ミオ ベン』 (ジョルダーニ)
『ニーナ』 (ペルゴレージ)などは、日本の音楽の教科書にもあり
ましたね。 もちろん歌で。

 またチィコーフスキィの『四季』、シューマンの『トロイメライ』、
ショパンのノクターン、その他バッハ、ヘンデルの作品などを
見ても、原曲はほとんどが “歌” に関連するものです。



 かと思うと、協奏曲のカデンツァ部分も作曲しています。
ハイドンのニ長調、シューマンのイ短調、サン=サ―ンス
のイ短調など。

 教則本も何種類か著しており、今日でも使われている
ようです。




 そんなポッパーが一曲だけ残した、弦楽四重奏曲。



 演奏例の音源]は、第Ⅱ楽章 “Scherzo” の一部。
“Trio” の後半から、頭に戻った箇所です。

 Violin は私、Sa.さん、Viola B.さん、チェロは Sa.さんです。




            音源サイト




乙女の苦しみ

2013-04-21 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

04/21 私の音楽仲間 (482) ~ 私の室内楽仲間たち (455)



              乙女の苦しみ




         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




             関連記事 『死と乙女

               最後の曲は SCHUBERT
                 三連符の見え隠れ
                移ろいの背後の混沌
                 苦悶の果ての長調
                   揺れ動く転調
                   切ない半音階
               叫ぶ乙女、棒読みの骸骨
              死神だけが生まれ変わる?
                 束の間の小春日和
                   死神と踊る?
                  絶望感の表現
                   死神の訓示
                 彼方なるタランテラ
                  切実になった死
                  乙女の苦しみ




 今回はまず、演奏例の音源]をお聞きください。

 曲はSchubert の弦楽四重奏曲『死と乙女』
から第Ⅱ楽章。 メンバーは Violin 私、A.さん、Viola
K.さん、チェロ Su.さんです。




 楽章の冒頭には、“Andante con moto” と指示
されていますね。 直訳では、“歩く速さで、動きを
持って”…となります。







 おや? 何度かご覧いただいた、上の[譜例]は楽章の
冒頭ですが、そのとおりには演奏してはいませんね。



 4パートスコアで、三段もありますが、一段目も終わらない
うちに、別の箇所へ跳んでしまいました。 相変わらず私の、
いい加減な編集のせいです。

 跳んだ先は、下の[譜例]。 この楽章は変奏曲の形で
書かれていますが、その最後の部分です。








 さて、今回の問題はテンポです。



 大きな課題は2つありますが、まず、“全体の
テンポの流れ
” です。

 最後を、どういうテンポで終るか? pp や ppp
が何度も現われます。



 普通は同じテンポか、あるいは「ゆっくり終わる」
…のが自然なようです。

 「速いテンポで終る」…という方法もありますが、
“死を静かに受容する” 雰囲気としては、あまり
にも “あっけなさすぎ” ますから…。

 ただし、曲全体の構成という観点から、敢えて
そうする選択肢もあるかもしれません。



 そこで重要なのは、Viola の二連符ですね。 もしこれ
が速すぎると、最後が落着かない。

 少なくとも、「それまでと同じテンポをキープしてほしい」
…というのが、私の勝手な希望です。 通常は、そこで
速くなってしまいやすい。 でも今回の K.さんは、とても
落ち着いて演奏してくれました。



 ただし、それに先立つ、“三連符の前までのテンポ” が
遅すぎたようですね。 私たちの大きな反省点です。

 途中で何度も変奏を繰り返すうちに、重くなってしまった
のです。 特に “f” の数が多い部分で…。




 二つ目の課題は、冒頭の “Andante con moto”。

 これは遅すぎてはいけせん。

 Adagio (ゆったり) や、Lento (遅く)、Grave (重く) では
ない! “ゆっくりめ” ではありますが、音には “軽さと
動き” が必要です。



 いくら深刻な内容でも、この曲におけるシューベルト
のスタイルからすると、流れが停滞しては困ります。




 拍子が 2/2 で書かれているのも、大事な点でしょう。
冒頭の各小節の後半には、軽さが必要です。

 技術的なことを言えば、前半の二分音符の重さが、
後半にも尾を引いてしまいやすいのです。



 2つの四分音符は、“前半よりも軽い弓で”、また
“動きのある弓使い” で弾く必要があります。

 “胃もたれ” どころか、お尻が重くなってしまって
は困りますね。




 さて、これらの観点からすると、私たちの演奏には反省点が
多い。 “本番” ではなかったことが、せめてもの救いです。

 それどころか、“この日が初見” というメンバーが居たかも!
当日の予定には無かった曲です。



 それも、事前にたくさん食べ、全員がビールまで…。

 これでは “胃もたれ” になってしまっても、当然ですね。



 今回のメンバーの中に、“胃もたれの乙女”
が居たのかどうか…?

 …それは秘密ですよ…。




 さて、ここで突然40年ほど前の出来事です。 今回とは
全然関係がありません。



 私は、ある室内楽の演奏会に参加していました。 10人
ほどいた奏者の一人として。

 プログラムの中に、これがありました。 当夜の最後を
飾る名曲に相応しく、演奏時間も40分以上かかります。



 演奏会も終わり、楽しい打ち上げの席の話です。
『死と乙女』で Vn.Ⅰを鮮やかに弾き切った女性が、
スピーチに指名されました。



 「とても長い曲ですので、色々神経を遣いました。
技術的な問題以外に、一番大変だったのは…。」

 場がシーンとして、全員の注目が集まります。



 「…トイレに行かないように、コンディションを整えることでした!」

 お酒の場の雰囲気とはいえ、かなり思い切った発言ですね。
ご本人としては真剣な内容で、半分笑いを誘いたかったらしい
のですが、周囲の反応は今一…。

 逆に静まり返ってしまいました。



 「本当だ! “死” と乙女だ。」

 この一言で、全員が大爆笑。



 その発言、誰がしたのか…って?

 そんなバカなこと言うの、私ぐらいしかいませんよね…。



 ただし私の出番は別の曲だったので、この
曲には参加していません。

 落着きのある名演で、聴いていて、とても
切羽詰まったようには感じませんでした。




     [音源サイト    [音源サイト




頭の体操 (133) 漢字クイズ 問題/解答

2013-04-17 00:00:00 | 頭の体操 漢字クイズ

04/17    頭の体操 (133) 漢字クイズ




        『これまでのカタカナ語句には、

        カタカナ部分のみ各回ごとに載っており、

         それぞれの記事に飛ぶことも出来ます。

   「古い記事 (トップ) → 新しい記事 (奥)」 の順に並んでいます。




      『頭の体操 漢字クイズ』 カテゴリーでは、

     『問題・解答』の全文が直接ご覧になれます。 こちらは

      「新しい記事 (トップ) 古い記事 (奥)」 の順です。





 02/08 ~ 03/07 に登場した外国語の人名、地名、用語が、
カタカナ表記で (1) ~ (19) に、登場した順に並んでいます。

 また、(A) ~ (S) に並んでいるのは、それぞれを漢字で
表記
しようとしたものですが、どう読めばいいでしょうか?



(1) イニシャル  (2) キャビア  (3) ラッカ―  (4) ラセペード

(5) アヂ―リャ       (6) ギプス       (7) スイートピー

(8) 地元のクリニック      (9) セーター      (10) ズボン

(11) リンゲル液   (12) バリウム検査   (13) プロミネンス

(14) ピロリ菌      (15) リハビリ      (16) ペースト状

(17) 黒いベレー帽  (18) ドキュメンタリー  (19) ムーチョ グスト

(A) 狸侍  (B) 頭凡  (C) 汗多  (D) 偽臥  (E) 楽稼

(F) 危藪嫌       (G) 過食肥       (H) 調子途上

(I) 秘賂裏金      (J) 淋下流役      (K) 悪爺居嫌

(L) 裸攻屁止    (M) 医仁者流    (N) 下戸退裏憎

(O) 風呂魅年数   (P) 独夢脱足萎   (Q) 無貯愚衆賭

    (R) 狗露井辺冷房   (S) 馬狸生夢犬醒




[解 き 方]


  ・ 漢字を読み、主にその音を用いて、原語での発音を表わそうと試みた
   ものです。

  ・ 音読み訓読みが混ざっています。 必要な場合は、濁点()、
   半濁点()、送り仮名を補ってください。

  ・  従来のカタカナ表記による読み方とは、必ずしも一致しない場合が
   あります。

  ・  音ではなく、単語の意味を外国語に置き換え、その発音を用いる
   こともあります。 「星 → スター」、「太陽 → サン」のようにです。
    今回は箇所あります。

  ・ 口語的俗語的にくだけた読み方をすることもあります。
   (例) 「汚 → きたねぇ」、「社長 → ボス」。
    今回はありません。

  ・ 漢文もどきに、順番を入れ替えて読む場合もあります。
   (例) 「不読 → よまず、よまん、よまない」。
    今回はありません。

  ・ 人名漢字の中には、“”、”” ともに含まれている場合もあります。 
   姓に加えて "first name" をご自分で補ってください。
   (例) 「ヨーゼフ・シュトラウス」。
    今回はありません。

  ・ 音や意味とは無関係で、漢字から連想しないと解けないものも!
    今回はありません。

  ・  厳密に見るといい加減なものもありますが、そこは冗談の世界。
   お見逃しくださいませ。



   解答
    ↓





以下、02/08 自己表現に徹した Brahms』より




(1) イニシャル  (M) 医仁者流

 関連語には、initiative (主導権)、initiation (成人式…)
があります。 “頭文字” を意味する initial。



 形容詞としては、“initial training”初歩的な訓練)、
“initial experience”体験)、“initial position”元の
位置)
…などのように使われるのが、元の意味です。

 新型車輛などの試運転は、“initial run”。

 ご覧のPCなどでは、初期画面 (initial screen) で
初期設定 (initial setting) が必要ですね。

 生活に付き物のお金関係では、入会金 (initial fee)、
契約金 (initial payment)、売り出し価格 (initial price)、
期首在庫 (initial stock) があります。

 サッカーのイエローカードは、差し詰め "initial warning"
(初回の警告) でしょうか。



 「うるさい! もういいぞ!」

 あ…。 Final warning だ…。 先、行きましょう。




以下、02/10 頭の体操 (129) 漢字クイズ 問題/解答より




(2) キャビア  (F) 危藪嫌

 黒いダイヤと呼ばれる、食材の逸品。 ロシア語では
“黒いイクラ”。 チョウザメの卵だそうです。

 じゃ、チョウザメって、怖い魚?



 皇帝の魚 チョウザメには、以下の記述があります。

 「“チョウザメ” の名前は、体表にある硬くて大きな鱗が
“ちょうちょ” の羽の形をしていることと、全体的な形が鮫
に似ていることに由来しています。」

 「チョウザメは、シーラカンスが多く生存していた頃の
時代にいた魚の、残存種であるといわれています。
現在生存しているチョウザメ類は、鮫の仲間(軟骨魚
類)にも、鯛や鯉の仲間(硬骨魚類)にも進化しなか
った魚なのです。」



 要するに、今はあまり見かけない魚なんですね。

 「…それなのに、珍味の卵を目当てに、わざわざ
捕まえ、オナカを切開するなんて…。 怖いのは
人間のほうだよ。」

 …と嘆きつつ、サメザメと泣いております…。




(3) ラッカ―  (E) 楽稼

 医仁者流、危藪嫌、楽稼…。

 お医者さんに対して失礼な表記が
続きましたが、真意ではありません。

 それどころか、このたびは命を救って
いただきました。 文字どおり…。




(4) ラセペード  (L) 裸攻屁止

 …おフランスに、そんなかたが居たのを、これまで
まったく知りませんでした。

 釣り仲間で話題になる、ブラックバス。 その学名
を “micropterus” と命名したのは、作曲家、政治家、
生物学者だった人物です。




(5) アヂ―リャ  (K) 悪爺居嫌

 こちらはロシア語。 かの『白鳥の湖』に登場する、
黒鳥の名です。

 悪魔の娘 “オディール” は、本当はこう発音される
のだそうです。 でも、なんでジ―サンなの?

 白鳥のオデット (アヂェット) 姫も、これにはアヂェン
(唖然) としていました。




以下、02/22 ヴァレンタインの贈り物より




(6) ギプス  (D) 偽臥

 30年以上前、まだ私が若かった頃の話。 ある所で
ソフトボールをしていました。

 私は守備側で、キャッチャー。 そのときバッターが、
ファウルボールを打ち上げました。 三塁側に。

 私は懸命に追いかけましたが、ボールは、差し出す
グラヴの、はるか先に落ちそう…。 私は捕球を諦めた。
そして、そのまま終われば、何事も起こらなかったが…。



 そこには、人工の堀がありました。 正確に言えば、
はるか下に川が流れていた。 ボールが落ちてしまえ
ば、拾うことなど、絶対に不可能な地形です。

 私は、ボール目がけて突進した。 だって、それは
唯一のボールだったから! 川に落ちて流れ去って
しまえば、競技は続けられなくなる。

 そして幸いにも、身を挺してボールを止めることが
出来たのです! …無理な体勢で。 私は右膝内側
靭帯を断裂してしまいました。

 これ、ある学生オーケストラの、夏合宿での出来事
でした。



 当時はオーケストラに務め、Viola を弾いていた私。
通勤しないわけには行かないので、ギブスをはめ、
松葉杖を突き、楽器を肩から下げ、駅の階段を上り
下りしました。 ときには、ラッシュアワーで突き飛ば
されながら。

 演奏会のステージの出入りも、同じようなスタイル
でした。 目立ちますが、仕方ありません。



 その様子を見ていた仲間は、こぞって私に言い
ました。 「休めよ。」

 つまり、自宅待機。 病欠扱いなり、なんなりで。
もちろん給料は貰った上のこと。

 そのほうが身体は楽だし、事情は誰もが認めて
くれたでしょう。

 でも、そういう気にはならなかった。 上半身は
健全で、演奏には支障が無いから…。



 さて、もし貴方なら、どうしますか?



 この “Gips”、解説サイトによれば、オランダ語
で “石膏” (拙考?) の意味だそうです。




(7) スイートピー  (G) 過食肥

 お馴染みの “sweet pea”、英語の直訳で “甘い豆”。 実際
にマメ科の植物ですが、「かつては雑草扱いされていた」…と
あります。

 その恨みかどうか、実は有毒植物です。 甚だしい場合は、
筋肉が硬直し、手足の運動が出来ない状態に陥るほどで、
脳卒中を患ったのと同じ症状が起きるそうです。 “過食肥”
どころでは済まない。

 “名は体を表わす”…とは行かないようで…。 おお怖い。




(8) 地元のクリニック  (N) 下戸退裏憎

 「血圧が低いぞ、これはいい兆候だ。」 高血圧で地元
のクリニックに通院している私は、ここ数年、自宅で測定
を続けています。 毎朝毎晩、その値に一喜一憂。 

 でも一週間ほど前には、胃の上部に軽い痛みを感じて
いました。

 その後、仲間と室内楽をやりながら、突然意識が朦朧と
したのです。 ほんの1~2分間で回復しましたが、そんな
ことは初めて…。 激しい運動をしていたわけでもないし。
その場ではなんとか弾き続け、仲間には気付かれません
でしたが。



 それから三日後、さすがの私も、朝クリニックへ行こうと
思いましたが、あいにく休診日。 そしてその日の午後、
突然吐血し、救急車で運ばれて緊急処置を受けることに
なろうとは、思いもしませんでした。

 異変は他にもあり、それを重視しなかったばかりに…。 

 命を救ってくれた、病院のほうの主治医に言われました。

 「鈍いと思います。」




以下、02/23 半世紀後の実体験より




(9) セーター  (C) 汗多

 お気に入りのセーターもズボンも、血で汚れてしまった。
そんな私を救急車へ運び込み、搬送してくれた救命士や
救急隊員のみなさん、ありがとう。

 「本格的な消化器内科のある病院を探していますから、
少し待ってくださいね?」 隊員さんがあちこち連絡を取り
ながら、私にかけてくれた労わりの言葉です。



 このセーター。 英語の汗 “sweat” という言葉が入って
いますね。 「フットボール選手がトレーニングする際、汗
をかいて減量するために編物の上着をユニフォームとして
用いたのが元とされる。」…と、解説サイトにあります。



 さて、***スエットなる市販の飲料水をご存じでしょう。
こちら、「開発における商品コンセプトは “飲む点滴” で、
ヒトの体液に含まれる7種類のイオンを含有する。」…と
あります。 敢えて “汗” の文字を入れたのは、それに
“対抗する、補う”…なる意識があったから、こんな名前に
なったのでしょう。

 「でも、“汗” なんていう言葉が入った飲物、自分は飲む
気がまったくしません。」 こう言ったのは、さるフランス人
の女性です。

 そういう感覚もありますが、日本人は気にしないのか…?




(10) ズボン  (B) 頭凡

 スラックス、トラウザーズ、パンツ、ジーンズ、チノパン、
カーゴパンツ…。 感覚が古く、“頭凡” の私は “ズボン”
で通したいのですが、それでは時代に着いていけないの
でしょうか?

 語源は、「フランス語でペチコートの意味の “jupon”。」

 「いや、擬音 “ズボン” で、江戸時代末期に出来た。」

 じゃ、スラックスは? パンツは…?




(11) リンゲル液  (J) 淋下流役

 先ほどの “飲料水” の開発のヒントにもなったのが、これ。
点滴でお馴染みの薬剤です。

 「カエルの心臓を血液の代りに生理食塩水で灌流するとき、
食塩だけではすぐ拍動が止まってしまい不十分であるが、
これに塩化カルシウムと塩化カリウムを加えると長く活動を
続けることを発見した、生理学者リンガーにちなむ。」

 …そうですか…。 このたびは大変お世話になりました。




以下、02/24 半世紀後の時限爆弾より




(12) バリウム検査  (S) 馬狸生夢犬醒

 ご存じ、胃の検診には欠かせず、私も毎年受けています。

 30年ほど前のことになりますが、こう言われたことがあり
ます。 「胃潰瘍の痕跡がある。 でももう治癒しています。」

 要するに、気付かぬうちに潰瘍が出来て、治ってしまった
というわけ。 へえ、そんなことがあるんだ…と思ったのを、
よく覚えています。



 このたびの出血性胃潰瘍は、お蔭で全治。 先日、退院後に
胃カメラ検査をもう一度受けた際、そう告げられたのです。

 ところが主治医には、こうも言われました。 「胃潰瘍の痕跡
が幾つもあります。」

 尋ねてみると、バリウム検査で判明するような潰瘍の痕は、
ごく一部とのこと。 大きな痕でないと、判らないそうです。



 「毎年バリウム検査を続けているから、大丈夫だ。」
…そう信じていたので、これも驚き。

 初めての胃カメラを、短期間に三度も飲み込んだ私でした。




(13) プロミネンス  (O) 風呂魅年数

 prominence。 元の意味は “傑出、卓越” ですが、太陽表面
の “紅炎” (solar prominence) を指すことが多いようです。



 形容詞の “prominent” は、“大きな、顕著な”。 続く単語は
様々です。 “nose” (高い鼻)、“motif” (よく目立つモティーフ)。

 後に人間が続くと、評価は肯定的になります。 “personality”
(有名人)、“professional” (著名な専門家)、“artist” (傑出した
芸術家)。



 自分の胃内で、血液が噴出する写真を見せられ、驚いた私。
まるで太陽表面から立ち上る、紅い炎そっくりに見えたのです。




(14) ピロリ菌  (I) 秘賂裏金

 戦後まもない頃に生まれた私。 衛生思想や法令が未熟だ
った当時は、一体どんなものが口から入ったか、解らない。

 50代、60代の80%以上が、この菌を抱えていると言われます。
胃がんの大きな原因ですが、保菌から数十年して、私の場合
は出血性潰瘍を引き起こした…。

 最近は健康保険の適用が緩やかになったので、検査の上で、
菌を駆除する薬を、手軽に服用できるようになりました。



 私の場合も、お蔭さまで菌は根絶されました。 やったぞ! 
これで心配の種が消えた!

 「【胃の調子が良すぎる】…と勘違いする患者さんもいるので、
暴飲暴食は控えなさい。」…と、ちゃんと念を押されましたが。

 よほど信用が無いんだな…。 鈍い上に。




以下、03/01 母を送るより




(15) リハビリ  (A) 狸侍

 胃酸の分泌を抑える薬を服んでいましたが、「それも止めて
いい」…と言われました。 ピロリ菌も居なくなったし…。

 でも忘れられないのは、三度目の胃カメラの写真。 胃壁の
一部が白っぽいのです。 ほかはピンクの部分が多いのに。



 「ピロリ菌に食い荒らされたか、胃酸にやられたか、どちらか
です。 十二指腸から胃酸が逆流して来やすいので、夕食は
遅い時間帯に摂らないように。」

 ハハア、殿! かしこまりました…。

 これ、【すぐに横になるとまずい】…という意味なのでしょうか。

 食後の狸寝入り、止めようっと。




(16) ペースト状  (H) 調子途上

 友人たちには、大きな心配をかけてしまいました。

 幸い経過は良好なんですよ! …敢えてそう伝えても、
却って気を遣わせるみたい…。

 「この人、無理してるんじゃないかな…。 暴飲暴食は
控えるんだよ! 今回はお酒も駄目です!」

 …だってさ…。 エ~ン!

 逆の立場だったら、自分もそう思うよね。 死にかけた
人間だもんな…。




以下、03/02 第三の家庭より




(17) 黒いベレー帽  (R) 狗露井辺冷房

 ベレー帽、素敵ですね。

 イメージがよく似合うのは、まず画家。 特に
フランス、スペイン辺りの。  それから、手塚
治虫さんを始めとする漫画家さんたち。

 でも怖いのは、軍隊や特殊部隊との結び付き
なんです。 優しそうに見える、ボーイスカウトも。

 幸か不幸か、私には縁がありませんが。




(18) ドキュメンタリー  (P) 独夢脱足萎

 実際にはあり得ないことが、夢にはよく登場する。 場所、
状況のみならず、亡くなった人物や、ペットまで…。

 そこで、教えてください! 貴方が夢に詳しかったら。



 “スキップ” というのがありますね。 地面を歩きながら、
軽くジャンプする、あれ。

 ところが私がスキップすると、宙高く舞い上がってしまう。
「そんな事は、あり得ない!」 夢の中でも、ちゃんとそう
思っている。

 そして今度は、空の高いところから落下する。 「ああ、
地面にぶつかる!」 その恐怖感、かなり凄いものです。

 そんなことを繰り返しながら、時間的にはほとんど空を
飛んでいる、そんな夢でした…。 だいぶ前のことですが、
ひところは連続して見たことがあります。



 「夢か現 (うつつ) か」と問われれば、ドキュメンタリー
とは “現実”。 それを、まさに逸脱した夢でした。

 やっぱり、どこかおかしいのかな? 胃だけじゃなく。

 メンタリー (mentally) に…。 精神面でもね。




以下、03/07 頭の体操 (130) 漢字クイズ 問題/解答より




(19) ムーチョ グスト  (Q) 無貯愚衆賭

 “Mucho gusto”、“Tanto gusto” で、“始めまして!”

 “Con mucho gusto” は、“喜んで” (~します)

 スペイン語の “gusto” は、“味、風味、味覚、好み、
嗜好、趣味、美的感覚…”。 レストラン・チェーンの
名にも取り入れられました。



 名称が “GUSTO” と記されていた頃の話。 知ら
ずに “グスト” と読むと、「“ガスト” だよ!」と、失笑
を買ってしまいました。

 そういうときは面倒だから、黙るのが最善ですね。



 はい、一丁上がり。 “終わりまして”!




 お疲れさまでした。