MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

5月の記事 ~ 一覧

2009-05-31 00:03:54 | インポート

05/31




      今月の記事の一覧です。




 『今月の記事の一覧』は、毎月末日に掲載しています。







05/01  ピアノ曲集 『四季』 から 5月 『五月の夜 (白夜)』
                  ~ チ(ャ)ィコーフスキィ





    私の室内楽仲間 (27) ~ (31)

         Spohr

05/02    (27) ① 作曲家

05/03    (28) ② 宮廷楽長

05/04    (29) ③ 「杖にも棒にも…」

05/05    (30) ④ 演奏の現場

05/06    (31) ⑤ "共" 奏曲




05/07   頭の体操 (10) 漢字クイズ 解答




    私の室内楽仲間 (32) ~ (38)

       Mozart の♭の響き

05/08   (32) ① メヌエット?

05/09   (33) ② 四重奏から交響曲へ  

05/10   (34) ③ Mozart の短調のメヌエット

05/11   (35) ④ ハイドンの短調のメヌエット

05/12   (36) ⑤ アレグロ マギレット

05/13   (37) ⑥ ミラノ土産

05/14   (38) ⑦ 素材の倉庫




05/16   滑舌 カツレツ … (8) ~ 何でも屋さん




    私の室内楽仲間 (39) ~ (41)

       Mozart の♭の響き

05/18   (39) ⑧ ## → ♭♭♭

05/19   (40) ⑨ 3つの♭、3つの音符  

05/20   (41) ⑩ 深まる謎




05/21   頭の体操 (11) 漢字クイズ 解答

05/22   どれがグリンカちゃん?

05/24   マーラー『嘆きの歌』




    私の室内楽仲間 (42) ~ (46)



05/25   (42) ハイドンのロシア四重奏曲



       ラズモフスキィ 第3番

05/26   (43) ① 『やさしいのに合わない…』

05/27   (44) ② 『減七で幻惑』

05/28   (45) ③ 『序奏は倉庫』

05/29   (46) ④ 『細く長く』




05/30   頭の体操 (12) 漢字クイズ 解答

05/31   今月の記事 ~ 一覧





頭の体操 (12) 漢字クイズ 問題/解答

2009-05-30 00:09:20 | 頭の体操 漢字クイズ

05/30      頭の体操 (12) 漢字クイズ 問題/解答




        『これまでのカタカナ語句には、

        カタカナ部分のみ各回ごとに載っており、

         それぞれの記事に飛ぶことも出来ます。

   「古い記事 (トップ) → 新しい記事 (奥)」 の順に並んでいます。




      『頭の体操 漢字クイズ』 カテゴリーでは、

     『問題・解答』の全文が直接ご覧になれます。 こちらは

      「新しい記事 (トップ) 古い記事 (奥)」 の順です。





 04/05 ~ 04/ 12に登場した外国語の人名、地名、用語が、
カタカナ表記で (1) ~ (26) に、登場した順に並んでいます。



 また、(A) ~ (Z) に並んでいるのは、それを漢字で表記
しようとしたものですが、どう読めばいいでしょうか?




(1) ウクライナ              (2) フォン・メック夫人

(3) ユーフォニウム   (4) ブラック ジョーク    (5) カート

(6) クインテット    (7) ジャケット    (8) ペルゴレージ

(9) リンツ    (10) プラーハ    (11) ミヒャエル・ハイドン

(12) ホフシュテッタ      (13) パリ      (14) ギター

(15) マイナー     (16) インターネット     (17) トップ

(18) マップ      (19) レガート      (20) マルカート

(21) キープ      (22) アグレッシブ      (23) カバー

(24) フォルテ     (25) スピード     (26) プッチーニ



(A) 歌葉  (B) 松風  (C) 戯多  (D) 葉璃  (E) 琳通

(F) 鮭努 (G) 掻痕 (H) 得食稲 (I) 風織手 (J) 奇異父

(K) 円果跡  (L) 麗香後  (M) 都通風  (N) 馬不居

(O) 富楽波      (P) 素膚挑      (Q) 風致猪児

(R) 明暮支部     (S) 飲多熱人     (T) 女王鉄人

(U) 本眼付譜尋  (V) 豊富酒手多  (W) 見映高首領

(X) 屁得愚俺痔  (Y) 無楽駆除屋  (Z) 熊負男児有夢




[解 き 方]


  ・ 漢字を読み、主にその音を用いて、原語での発音を表わそうと試みた
   ものです。

  ・ 音読み訓読みが混ざっています。 必要な場合は、濁点()、
   半濁点()、送り仮名を補ってください。

  ・  従来のカタカナ表記による読み方とは、必ずしも一致しない場合が
   あります。

  ・  音ではなく、単語の意味を外国語に置き換え、その発音を用いる
   こともあります。 「星 → スター」、「太陽 → サン」のようにです。
    今回は英語がか所あります。

  ・ 口語的俗語的にくだけた読み方をすることもあります。
   (例) 「汚 → きたねぇ」、「社長 → ボス」。

  ・ 漢文もどきに、順番を入れ替えて読む場合もあります。
   (例) 「不読 → よまず、よまん」。

  ・ 左の漢字の中には、“”、”” ともに含まれている場合もあります。 
   人名 (右) に加えて "first name" をご自分で補ってください。
    (今回はその必要はありません。)
   (例) 「ヨーゼフ・シュトラウス」。

  ・ 音や意味とは無関係で、漢字から連想しないと解けないものも!
    (今回はありません。)

  ・  厳密に見るといい加減なものもありますが、そこは冗談の世界。
   お見逃しくださいませ。




   解答

    ↓



(A) 歌葉  (23) カバー

 音信普通だった "お馬さん" から先日、連絡がありました。
恋馬さんの実家まで行って、結婚を申し込んだそうです!
汗水流し、 "荷馬" して、お金貯めたんだって。

 私なんか、"仮歯" が抜けて困ってるというのに。 いいな、
"佳馬" の "花馬" を "嫁馬" にするなんて。 それで式は
いつ?

 どうせなら "夏馬" (june bride) にしたら?




(B) 松風  (18) マップ

 道理で最近は、デート・コースの "待婦" ばっかり、"まる"
にネットで検索させてたからな~、裕福な "馬富" さん…。

 "沫父" の私は何もしてやれず、ネットの注文品を "待譜"
してただけでした。




(C) 戯多  (14) ギター

 と言っても、"戯多" の譜面ではなく、手にするのは Violin 族
の楽器だけ。 決して "技多" とは言えません。

 それに私には、この世で解らないことが多すぎます。 "疑多"。

 でも、"偽多"、"欺他" よりはいいか…。




(D) 葉璃  (13) パリ

 もし私が、「またパリに行きたくなった」と言ったら、あなたは
一体どうお考えになりますか? 「偽多!」ですか?

 「へえ、そんなにしょっちゅう行ってるの…?」

 まさか! そんなはず無いでしょう…。 だって、パリに
「行きたくなった」だけですから、また。

 ああ、また火星に行きたくなった…。




(E) 琳通  (9) リンツ

 ああ、また "隣通" に行きたくなったな…。 ちょっと買い物
に出てきます。

 リンツと言えば、関連の深い作曲家として "腸有兎" や
"降雨鬱苦寝" を思い浮かべます。 こういう表記をする
のは本当に申しわけありません。 でも、冗談好きの前者
なら赦してくれるかも。

 問題は後者です。 敵対する批評家を黙らせるよう、皇帝
に直訴したというのは有名な話ですから。 こんなことをして
バチが当たらないといいな…。

 あ、さっそく頭痛が。 いつに無い痛みです! "臨痛"…。




(F) 鮭努  (7) ジャケット

 "サケ" と "シャケ" は、「区別するべきだ」、「いや、単なる
江戸訛りだ」の、二つの考え方があるそうです。

 今や高級魚ですが、昔は "ネコマタギ" と呼ばれていました。
「魚好きの猫でさえ跨いで通るほど、ありふれた魚」の意です。

 ネコの "避努" だったのか、サケは…。




(G) 掻痕  (5) カート

 そろそろ "蚊飛" の季節。 "夏後" どころか、寒くなる
"蚊止" の時期まで、蚊取り線香が手放せなくなります。

 そう、今どき珍しい、エアコンもほとんど使わない我が家
では "夏開戸"。 「網戸を直そうかどうしようか?」
そういうレベルの悩みなのです。

 「 (かあ) 相談しろ」って言われてもね…。




(H) 得食稲  (1) ウクライナ

 有数の穀倉地帯です。 そこで調べてみました。 何が
取れるのか。

 「小麦などの麦類、とうもろこし、甜菜、馬鈴薯、ひまわり、
トマト、タマネギ、りんご、ぶどう、蜂蜜、牛乳や肉類…。」

 やはりどこにも書いてない、"米" とは。 がっかり…。
結果は "憂暗否" です。




(I) 風織手  (24) フォルテ

 「フォルテに近いピアノもあれば、ピアノに近いフォルテ
もある。」

 昔そう言われたことがあります。 特にアンサンブルやオケ
では。 "縦" のバランス、"横" のバランス、両方大事です。




(J) 奇異父  (21) キープ

 いつも私はこう呼ばれていますが、"紀伊富" と書くと思い出す
のは、紀伊國屋文左衛門ですね。

 でも私が驚いたのは、「架空の人物であるとする説もある」と
書いてあることでした! まことに奇異な思いです。




(K) 円果跡  (20) マルカート

 静物画の写生の後だと思ってください。 尻尾の毛が落ちて
いれば、"まる" 過跡ですが。

 "marcato" は "音符をはっきり" 演奏することです。 しかし
それは、必ずしも "音符の頭を鋭く" という意味ではありません。

 ">" (アクセント) も同じです! ああ難しい…。




(L) 麗香後  (19) レガート

 特に音の持続が大事な "麗香後"。 それも単に持続するだけ
でなく、充分な "クォリティ" が必要です。

 音も香りも感動も…。




(M) 都通風  (17) トップ

 "突風"、生命を脅かすこともあります。

 "凸富"、いいですね…。

 "頭譜"、"賭符" ? 凄い! 尊敬します!




(N) 馬不居  (15) マイナー

 ええ、相変わらず帰ってこない。 でもいいんです、"本人"
が幸せなら…。

 長いこと "菊花賞" を目指していましたよ、"埋名" のまま。
一時はだいぶ落ち込んでいましたが、今は自信に満ち溢れて
います、"馬嘶" の声が。

 そう言えばお馬さんの名前、飯野良馬 (いいの りょうま)
または "パノラマ" です。 確か妹がいたな。

 "妹名" は何ていうんだろう…?




(O) 富楽波  (10) プラーハ

 "不落破" と書きたいところですが、度重なる戦火、弾圧、
水害など、幾多の苦難に見舞われてきた都市です。 今日
に至るまで。




(P) 素膚挑  (25) スピード

 日頃おとなしいと思っていた人が怒ると、怖いものですね、
子供でも。 「マジギレしちゃってさー、」なんて、小学生が
この前、言ってましたよ、電車の中で。

 "子不意怒"! あな、恐ろしや…。




(Q) 風致猪児  (26) プッチーニ

 東京の23区内にも "風致地区" という地名があり、バス停の
名前にもなっています。 さすがにイノシシはいませんが。




(R) 明暮支部  (22) アグレッシブ

 協会、学会、法人、何の支部でしょう、一体。 "悪暮支部"、
"悪霊支部" でないことを願います。

 ほら、最近は役所内の組織も信用できないから、色々と…。




(S) 飲多熱人  (16) インターネット

 喋り上戸ですね? 仲良くやってください。 "隠多捏人"
だけは駄目ですよ?

 でもウチへ帰るとどうなんでしょう? 奥さんとはちゃんと
話、たくさんしている? あれ、してないの?

 帰ると "飲多寝人" になるんだって…。




(T) 女王鉄人  (6) クインテット

 決して英国女王のことを言ったりしているのではないのです…。

 そう言えば、"鉄の女" と呼ばれた方もいました。 そう呼び
始めたのは、"鉄のカーテン" の一方の当事者、旧ソ連の
ラジオ局だそうです。

 あれ、この言葉も英国の首相が使った表現だな。

 今日は一体、どうなってんだろう…。




(U) 本眼付譜尋  (2) フォン・メック夫人

 自身は音楽家ではないが、ピアノには

幼少時から親しんだようです。





(V) 豊富酒手多  (12) ホフシュテッター

 曲は幾つか発表したものの、オーストリアの片田舎の修道院で
貧しく一生を終えた、アマチュア作曲家です。 修道院ではワイン
を作ったりしていたそうだから、ひょっとするとこの方もお酒が?

 ハイドンの偽作との絡みで名前が出てきました、200年も経って
から。 ひょっとして、有難迷惑かもしれませんね、ご本人は。




(W) 見映高首領  (11) ミヒャエル・ハイドン

 その "幼背負高首領" の弟さんです。 こちらは自分の作品が
交響曲第37番 (Mozart) と呼ばれてしまった時期がありました。




(X) 屁得愚俺痔  (8) ペルゴレージ

 ファンの方、お赦しください。 これはあくまでも私自身のこと
ですので。

 こちらは偽作騒動の中心的な被害者です。 20世紀前半に
出版された「ペルゴレージ全集」には、全部で148曲の作品が
収められているそうですが、近年はそのほとんどが偽作では
ないかと言われています。




(Y) 無楽駆除屋  (4) ブラック・ジョーク

 これは何でしょう。 プロの害虫退治でしょうか。 ウト
(玄人) になっても、仕事に面みがるといいですね、
"楽" じゃなくて。

 シロアリ (白蟻) は、"白在" と書けばいいのに…。




(Z) 熊負男児有夢  (3) ユーフォニウム

  「まさかり 担いで 金太郎  熊に跨り お馬の稽古

   はっけよいよい 残った…」




 お疲れ様でした!






ラズモフスキィ 第3番 ④ 細く長く

2009-05-29 00:36:37 | 私の室内楽仲間たち

05/29 私の音楽仲間 (66) ~ ラズモフスキィ 第3番 ④

               『細く長く



          私の室内楽仲間たち (46)




         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




 前回まで、第Ⅰ楽章冒頭の序奏部の譜例をご一緒に見て
きました。



 そこでは、

① 通常は "赤の位置" に不安定なハーモニーが置かれたら、
直後の "青の位置" では、解決・安定がもたらされるはずなの
に、なかなか "和声が解決しない" こと、

② 薄緑濃緑の "上昇・下降する三つの音"、
また、"トリルに始まる三つの音" が重要な形であること

をお伝えしました。



 言わば、楽譜を眺めるデスク・ワークをご一緒してきたわけ
ですが、それでは実際に演奏する際には、一体どのような
ことを心がければいいのでしょうか?



 ずばり申し上げれば、「持続性のある音を出す」ことです。




 この序奏部では、ハーモニーの移り変わりや、音のつながりが
すべてと言えます。 したがって音程もさることながら、互いの音
が持続性のある音で、また融け合いやすい、良い音質であること
が必要になってきます。

 いい音質と言うと大変抽象的なようですが、言い換えれば
"減衰しにくい音"、しかも "効率よく出された音" ではないか、
そう私自身は感じています。



 歌や楽器演奏に携わる方はよくお分かりと思いますが、小さい
音を長く伸ばすのは、大変難しいことです。 「フォルテならば
何とか誤魔化すことが出来ても、ピアノでは怖い」という思いは、
どなたも経験してこられたのではないでしょうか。

 小さい音のロング・トーンは、言わば試金石であり、誰に
とっても重要な課題です。




 そしてこの序奏部では、ほとんどが PP で書かれています。

 弦楽器で言えば、"ディミヌエンド" や "ピアニシモ" では弓の
動きが止まり、「音が無くなってしまう」現象がよく見られます。
弓を動かすと大きい音が出てしまいがちなので、弓の走り
が悪くなるのです。

 しかし求められているのは、弱くても "持続する音" です。
それでは、弓がほどよく動いていながら、なお軽い音を出す
ためには、どうすればいいのでしょう…?







 冒頭でよく見られるのは、最初の音が4拍間、ちゃんと伸び
ない現象です。 したがって、2小節目の休符の長さが正確に
数えにくくなり、3小節目の "入り" も合いにくくなります。
そして四人のテンポ感は微妙に崩れ始めます。

 以後、長い "PP" の部分に入ってからも、「音が切れ切れになる
悲しい現象」が起こりやすくなり、「誰の音が何拍目で動くのか」、
だんだん判らなくなっていきます。 不安になると、四人の音は
さらに融け合いにくくなってしまいます。



 また、4つの声部の間隔が概して広いので、全体はただでさえ
響きにくく書かれています。 その上チェロなど、低音パートが
控えめ過ぎると、バランスは一層悪くなります。

 またハーモニー自体も不安定なものが多いので、全員が
疑心暗鬼になりやすいのです。

 「自分は今、仲間と一緒に正しい場所を弾いているの
だろうか…?」



 対策としては、"弱くてもちゃんと音を延ばして助け合うこと"
しか無く、「PP に負けない根性」だけでなく、そのための技術も
必要になってきます。




 以上は、単に "正確なアンサンブルを守る" のが目的でした。
しかし、より高度の表現を目指すためにも、やはり必要なのが
"音の持続" です。

 ①で特に大事なのは、"不安定な和声の緊張感の持続"
ですから、音が必要以上に痩せてしまってはいけないわけ
です。

 また②の、「幾つかの音からなるモティーフを聞かせる
ためにも、基本的な問題はまったく変わりません。




 極論すれば、「もし PP が無理ならば諦め、ある程度しっかり
した音量で、音やハーモニーをちゃんと持続させる」演奏の方が、
作曲者には気に入ってもらえるのではないでしょうか。



 また原譜にはありませんが、音の動きが重要なパートに限って
は、控えめな "< >" を書き込んで演奏しても許されるように思い
ます。 パートの間の細かいバランスまでは、Beethoven は通常
指示していないからです。

 もちろんそのやり方は、ハーモニーの "緊張と弛緩" の法則に
合致したものであり、人間の感覚にとって自然なものでなければ
なりません。




 なお、18小節目ので書かれた二つの音 (Vn.Ⅱ と Viola) は、
互いに反発する、緊張感の強い音程です。

 また、26小節に現れる Viola の "La" は、三小節間に亘って
緊張を持続してから、Sol の音に下がらねばなりません。




 以上は "音の持続" が大事でしたが、29小節の3拍目に入る前
には、逆に音を一旦切ることをお薦めします。

 直後の♪が、歯切れのいい (音量が持続しない)、新しい音楽の
始まりなので、その方がアンサンブルも合いやすいからです。

 また、6、11、17小節目の3拍目で音をはっきり鳴らし始める
パートは、その直前の音を多少軽めに弾き終える必要があり
ます。 そうしないと、その3拍目は遅れがちになるはずです。




 序奏部は "Andante con moto" と書かれており、テンポは決して
遅くはありません。 しかし休符の長さ、音の長さを自分勝手に
縮めるような演奏は、個人的には疑問を感じます。 リズム感は
出来るだけ正確に守るべきだと、私自身は考えています。

 ただ、以上は理想論と言えなくもないようです。 "正攻法" 的
な演奏に実際に接する機会、近年はなかなかありません。

 「言うは易く…。」 そうです、「お前、やってみろ」と言われたら、
まったく自信がありません。



 「プロの団体の演奏が常に鑑 (かがみ) である」とは、残念ながら
必ずしも言い切れないようです。




 音源は前回と同じです。




  第楽章

   The Orion String Quartet

   Juilliard Pre-College String Quartet




  第楽章

   Alban Berg Quartet

   The Orion String Quartet




  第楽章

   Loyola University New Orleans

   The Orion String Quartet




  第楽章

   The Orion String Quartet

   Borealis String Quartet

   Tokyo String Quartet

   Loyola University New Orleans




  全楽章

   ブダペスト弦楽四重奏団:1951年11月28日録音

   バリリ四重奏団 1955年録音




 (この項終わり)




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                   序奏は倉庫
                    細く長く
                曲との出逢い、再会
                 支え合い?妨害?
                   忠実な片腕
                 事前のインプット
                単純な音符の二面性
                   優美な音階
             各馬一斉にスタート…しないね
               沈黙を呼ぶ第Ⅳレース
                  第五コーナー?
                Beethoven の騙し絵
                    刻苦勉励
                 作曲家 対 演奏家
                演奏家 対 ギャラリー
                  繰り返しは嫌




ラズモフスキィ 第3番 ③ 序奏は倉庫

2009-05-28 00:00:57 | 私の室内楽仲間たち

05/28 私の音楽仲間 (65) ~ ラズモフスキィ 第3番 ③

              『序奏は倉庫



          私の室内楽仲間たち (45)




         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




 前回は、第Ⅰ楽章冒頭の序奏部で、"解決しない和声" を
見てきました。

 下記の譜例で、隣り合った "" と "" の箇所をご覧ください。



 通常は "赤の位置" に不安定なハーモニーが置かれたら、
その直後の "青の位置" では、解決・安定がもたらされます。

 しかし、そうなるはずの9 (~10)小節目、15小節目には、強い
不安を感じさせる "減七" のハーモニーが現われます。 それ
以外にも、絶えず不安定な和声が途切れることなく、聴く者の
不安感、緊張感が、いつまでも続きました。

 結果的に全体は混沌としたままで、演奏者もまた
"アンサンブルの霧" の中をさまよう危険があります。




 「音やハーモニーの変わり目が、一定の拍の上に無い」
ことも、その大きな原因であることを、前回ご一緒に見て
きました。

 重要な音の変わり目が、一拍目、つまり小節の頭にあれば
まだしも、三拍目という、人間の感覚からすると "遠い位置"
に置かれているために、演奏者の思い違いやミスを誘発して
しまいがちなのです。

 この "混沌" は作曲者の思惑どおりなのですが、演奏者側が
惑わされては困りますね。 再度この部分を見てみましょう。







 チェロは終始下降しています。 半音階を多く含んでおり、
調性を曖昧にしています。



 緑色が塗られているのは、三つの音符から成る音階です。

 濃緑は下降形で、6~7、18~19、20~22小節にかけて
見られます。

 薄緑は上昇形で、13~14、18~19、20~22小節にあります。

 この上昇・下降形が、ともに3箇所ずつなのは、作曲者が
目指した、論理の一貫性を思わせます。 また、その憧れて
いた民主的平等思想とも、ひょっとすると関連があるのかも
しれません。




 また、これらの音階の開始部分、中継部分にはトリルがある
のに気付きます。

 トリルは音符を目立たせるための装飾ですから、たとえ pp
の中でも明瞭に聞こえなければなりません。 この "pp" という
活字が大敵なのです。




 序奏部は、やがて明確なハ長調を確立し、Allegro vivace の
主部につながります。 そこでは "三つの音から成る音階"
("Do Re Mi"、"La Si Do" など) が、主題の一部として表舞台に
登場します。 そして以後、全曲に亘って主要な役割を演じ
ます。



 また、トリル付きの符点音符に始まる、"三つの音符" の
モティーフも、将来の主役です。 "Sol La Sol" などの形が
それです。

 これに "Fa Mi Re" という下降音形が続くと、第Ⅳ楽章
冒頭で Viola が奏でる、"Sol La Sol / Fa Mi Re" という形が
出来上がります。




 以上は重要なモティーフのほんの一例ですが、他の楽章
には、どのようなモティーフが用いられているのでしょうか。

 そんな点に注目して聴くのも、また面白いでしょう。




 音源は前回のものに若干追加されています。




  第楽章

   The Orion String Quartet

   Juilliard Pre-College String Quartet




  第楽章

   Alban Berg Quartet

   The Orion String Quartet




  第楽章

   Loyola University New Orleans

   The Orion String Quartet




  第楽章

   The Orion String Quartet

   Borealis String Quartet

   Tokyo String Quartet

   Loyola University New Orleans




  全楽章

   ブダペスト弦楽四重奏団:1951年11月28日録音

   バリリ四重奏団 1955年録音




 (続く)





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             各馬一斉にスタート…しないね
               沈黙を呼ぶ第Ⅳレース
                  第五コーナー?
                Beethoven の騙し絵
                    刻苦勉励
                 作曲家 対 演奏家
                演奏家 対 ギャラリー
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ラズモフスキィ 第3番 ② 減七で幻惑

2009-05-27 00:07:50 | 私の室内楽仲間たち

05/27 私の音楽仲間 (64) ~ ラズモフスキィ 第3番 ②

               『減七で幻惑



          私の室内楽仲間たち (44)




         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




 音程を取るのは簡単、テンポが速いわけでもない、それで
いてアンサンブルが難しい…。 この Beethoven の大作では、
第Ⅰ楽章の序奏部が、そのいい例です。



 それはなぜでしょう。 原因としては、以下のような特徴が
考えられます。



(1) すべてがレガート系で、細かいリズムを刻むパートも無い。

(2) 調性を確定するような明確なハーモニーが少ない。

(3) 音やハーモニーの変わり目が、一定の拍の上に無い。




 つまり、すべてが混沌としているのです。 もちろんそれは
作曲者が意図したものですが、それを聴き手に伝える演奏者
までが迷ってしまい、アンサンブルが乱れる危険があります。




 ハーモニーの移り変わりの一つに "解決" があります。

 「属和音 (ソシレ) ⇒ 主和音 (ドミソ)」が、その典型的なものです。
どちらも美しい長三和音ですが、前後関係によっては「緊張
解放」を感じさせます。

 しかし和音の中には、それ自体 "不安定" を感じさせるもの
もあります。 短三度の積み重なった "減七" (音源) は、その
代表格で、不安、恐れ、謎、神秘などを表現するのに適し、広く
使われています。



 序奏部には、この "減七" の和音がいくつもあるのが目を
引きます。 1~2、9~10、13、15、20、22~24、26~28 の
各小節がそれです。



 ご覧いただく譜例は前回と同じものですが、何箇所か、
新たに色が塗られています。

 うち、"の組み合わせ" の部分にご注目ください。







 "" は、いわば不安定なハーモニーの中の重要な音で、
ここでは上記の "減七" も何箇所か見られます。

 "不安定" と言っても、もちろん "相対的な意味" においてで、
その "不安定の度合い" には差があります。 そして通常は、
直後に "安定解決" を感じさせるハーモニーが続きます。
それが "" の位置です。



 しかしこの序奏部では "平安" は訪れません。 それどころか、
"減七" が "" の位置に2回も現れます。 9 (~10)、15小節
目がそれです。



 その直前には "赤" の和音があるので、聴く者は、"青" の
位置で当然緊張が解放されることを期待します。

 しかし Vn.Ⅱが "DoSi" と降りても (8 ⇒ 9)、チェロが
"FaMi" と進んでも (14 ⇒ 15)、その期待は叶えられません。
より強い不安を感じさせる "減七" が、そこで待ち構えている
からです。



 結果として、解決・安定への期待は裏切られ続け、聴き手
は混沌の中をいつまでもさまようことになります。

 22小節目に現れた最後の "減七" は、26小節目で音域を
変え、Viola の "La" の音が "Sol" へと下がると、ついに
明るいハ長調が準備され、長い混沌は終わりを告げます。




 以上が作曲者の計算であるのはもちろんで、演奏者は
これらを理解していなければなりません。

 それでは、具体的にはどのような事柄を心がければいい
のでしょうか。




 音源は前回と同じものです。



  第Ⅰ楽章

   The Orion String Quartet

   Juilliard Pre-College String Quartet



  全楽章

   ブダペスト弦楽四重奏団:1951年11月28日録音

   バリリ四重奏団 1955年録音




 (続く)





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