MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

久しぶりのクラス会

2012-12-27 00:00:00 | その他の音楽記事

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 クラス会。 貴方はよく足を向け、昔の仲間に頻繁に
会われますか?

 私は、あまり気乗りがしません。 土日に重なること
が多いのは、私にとって辛い…というのが、まず切実
な事情。 そして、“現在の仲間” にお相手してもらう
には、研鑽のための時間が足りないからです。



 …なーんて、実際は、私が “付き合いの悪い” 人間
だからなのでしょう。



 そんな私でも、「これだけは逃したくない!」…と思う
クラス会があります。 それは高校一年のクラス会。
今を去る50年近く前の仲間たちです。

 そして欠かせない存在は、担任の教師。 社会科の
石井先生です。




 2011年9月。 今から一年ちょっと前です。 久々
にクラス会が開かれました。

 定刻の少し前に、会場に入ろうとしたときのこと。
ちょうど先生も到着され、一緒になりました。 同じ
クラスの女性が一人、なぜか付添いに。




 「先生! お元気ですか!?」

 先生は、笑顔で振り返りました。 でも無言…。 いつもの
とおり、才気煥発ながら温かい言葉が返ってくるのを期待し
ていた私は、肩すかしを食いました。

 「何か違う。 ひょっとして、僕の顔を忘れたのかな…。」

 でも私は、ちゃんと自分の名前を付け加えて挨拶して
いたのです。

 「何か言ってくれてもいいのに…。」



 先生はすでに現役を退かれています。 30年余の間に担任
を受け持ったクラスの数は、優に20を超えるでしょう。

 ですから、顔を忘れておられても無理はありません。



 でも私は卒業以来、個人的に何度もご一緒していただく機会
に恵まれていました。 結婚式にも来ていただきましたし。

 それに、何にも増して、先生はクラシック音楽の大ファン!
在学中から音楽談義に、一緒に花を咲かせたほどなのです。
後年になってからは、私が指揮していた学生オケの演奏会に、
何度も足を運んでくださいました。




 まもなく会が始まろうとしたとき、幹事の一人が私に耳打ち。

 「先生、認知症なの…。」

 えっ!?



 それで謎が解けました。 先ほどの受け答えが、なぜ不自然
だったのか…。 “忘れた” というより、“言葉が出なかった”…
のでしょう。 症状の一つです。

 今回、久しぶりに先生を交える会を開いたのは、「症状が
進んでしまう前に、早く顔を合わせておいたほうがいい…。」
そんな思惑からだったのです。




 会が始まると、まず先生の挨拶。

 「…まあ、こんな具合で…。 多少不自由だが、すぐに命が
どうこういう病気じゃないんで…。」

 そんなお言葉が、5分ほど続きました。 みんな、シーンと
聴き入っています。



 しかし、あの “頭の回転が速過ぎる”…と言われた先生
の面影はありません。 話は展開せず、堂々巡り…。

 「先生ご自身が、きっと無念で堪らないだろう…。」 そう
感じない仲間は、一人もいなかったでしょう。




 会が終り、たくさんのプレゼントや花束に囲まれた先生。
私も荷物持ちになり、靴置き場までご一緒しました。

 「先生、どの靴でしたっけ?」



 そう口にした私は、一瞬 “しまった!” と思いました。
案の定、先生は思い出せなかったのです。 どの靴を
履いてきたのか…。

 そればかりか、帽子を被ってきたのも忘れておられた
のが、直後に判りました。



 “下手に気を遣ってもまずい。” …誰もがそう思ったはず。

 「お~い、先生の靴、これだっけ??」

 「違うよ、そっちの茶色のだよ!」



 大声で。 …先生と僕らの仲。 それでいいのです。

 年齢も、10歳あまりしか違わない。 先生は大学を出て、
新任の一年目に、僕ら一年四組の担任となったのです。





 しかし、それを単に “親近感” と呼ぶだけでは済まされ
ない、先生の何かが、私たち全員を常に捉えていました。

 この晩も、クラス50名中、20人ほどの出席がありました。
その他、すでに他界してしまった仲間も何人か。




 会場は、先生のお宅の近くでした。 徒歩で迎えに
来られた奥様にも、全員がご挨拶できました。

 「先生、お元気で!」



 荷物持ちの女性と三人で、先生は交差点を渡って行きました。




 そして、二次会の席上。

 「これは、年一回のペースでやってかないと駄目だな…。」



 誰もがそう思っていました。

 「次の幹事、誰、やる? サボったら承知しないぞ。」




 それから一年が過ぎ、秋になっても、
クラス会の通知はありません。

 「冬になっちゃうよ。 これじゃ寒くて、
先生の健康に差し障るな。」



 十二月も押し詰まった、そんなある日、仲間からメールが。
件名には、“残念なお知らせ” とあります。

 「なんだ。 今年はクラス会は無し…ということか?」



 そう思ってメールを開こうとしたとき、
嫌な予感が胸をよぎりました。

 もしや…。




    








         写真は2枚とも S君 (左) の提供です。




 音源は、ブラームスのヴァイオリン・ソナタ 第1番 ト長調、
第Ⅰ楽章 “Vivace ma non troppo” から (2004/10/19)。

 (最初の音が大き過ぎるので、ご注意ください。)

 ピアノ 竹澤洋、ヴァイオリンは伊神優です。



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2 コメント

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Unknown (M.O)
2014-11-30 07:38:41
石井秀先生の懐かしいお写真ありがとうございました。
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コメントありがとうございます (masarumaruhachi)
2014-11-30 23:06:32
M.O.様、ありがとうございます。
先生のお名前の検索でヒットされたのでしょうか?
返信する

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