MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

3月の記事の一覧

2011-03-31 00:00:00 | インポート

03/31



       今月の記事の一覧です。




     私の室内楽仲間たち

03/01   命に別条は…




03/03   頭の体操 (72) 漢字クイズ 問題/解答




     私の室内楽仲間たち

03/08   Mozart の "混沌"

03/09   楽章を結ぶターン

03/11   ハ長調のスポットライト




03/15   頭の体操 (73) 漢字クイズ 問題/解答




03/31   今月の記事 ~ 一覧




   『今月の記事の一覧』は、毎月末日に掲載しています。




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頭の体操 (73) 漢字クイズ 問題/解答

2011-03-15 00:00:00 | 頭の体操 漢字クイズ

03/15    頭の体操 (73) 漢字クイズ




        『これまでのカタカナ語句には、

        カタカナ部分のみ各回ごとに載っており、

         それぞれの記事に飛ぶことも出来ます。

   「古い記事 (トップ) → 新しい記事 (奥)」 の順に並んでいます。




      『頭の体操 漢字クイズ』 カテゴリーでは、

     『問題・解答』の全文が直接ご覧になれます。 こちらは

      「新しい記事 (トップ) 古い記事 (奥)」 の順です。





 01/06 に登場した外国語の人名、地名、用語が、
カタカナ表記で (1) ~ (17) に、登場した順に並んでいます。


 また、(A) ~ (Q) に並んでいるのは、それぞれを漢字で
表記
しようとしたものですが、どう読めばいいでしょうか?



 (1) アドレナリン     (2) スイッチバック     (3) 怪傑ゾロ

(4) フランスパンのクーペ    (5) クープ    (6) サンスヴェリア

     (7) タブー     (8) イリヤ     (9) サウナ

(10) サン=テグジュペリ国際空港 (11) コート・ダズュール国際空港

   (12) ペレアス    (13) メリザンド    (14) ゴロー

  (15) イン プレイ   (16) フィデリオ    (17) アイーダ

(A) 転卯  (B) 割鰻  (C) 居嫌  (D) 食歩  (E) 惨滑嫌

(F) 誰豚声   (G) 隠膚冷   (H) 日照負   (I) 悪飯出

 (J) 女狸餐怒     (K) 減齢明日     (L) 酸土馬漬

(M) 悪奴礼無隣  (N) 花生通祖労  (O) 風乱数繁退空屁

(P) 惨手愚呪屁狸酷催食乞  (Q) 外套出頭緩刻細工卯巧




[解 き 方]


  ・ 漢字を読み、主にその音を用いて、原語での発音を表わそうと試みた
   ものです。

  ・ 音読み訓読みが混ざっています。 必要な場合は、濁点()、
   半濁点()、送り仮名を補ってください。

  ・  従来のカタカナ表記による読み方とは、必ずしも一致しない場合が
   あります。

  ・  音ではなく、単語の意味を外国語に置き換え、その発音を用いる
   こともあります。 「星 → スター」、「太陽 → サン」のようにです。
    今回はケ所あります。

  ・ 口語的俗語的にくだけた読み方をすることもあります。
   (例) 「汚 → きたねぇ」、「社長 → ボス」。
    今回はありません。

  ・ 漢文もどきに、順番を入れ替えて読む場合もあります。
   (例) 「不読 → よまず、よまん、よまない」。
    今回はありません。

  ・ 人名漢字の中には、“”、”” ともに含まれている場合もあります。 
   姓に加えて "first name" をご自分で補ってください。
   (例) 「ヨーゼフ・シュトラウス」。
    今回はありません。

  ・ 音や意味とは無関係で、漢字から連想しないと解けないものも!
    今回はケ所あります。

  ・  厳密に見るといい加減なものもありますが、そこは冗談の世界。
   お見逃しくださいませ。



   解答
    ↓





以下、「01/06 頭の体操 (66) 漢字クイズ/解答」より




(1) アドレナリン  (M) 悪奴礼無隣

 交感神経を刺激する、言わば興奮ホルモン。 砕けた
表現だと、「アドレナリンの分泌が増えて…」。

 先日のこと。 電車の座席でウトウトしていたら、突然
"ドシーン!" 思わず目が覚めました。 物凄い勢いで
腰かけた人がいたのです。 私のすぐ隣に。

 「腰かけた」と言うより、「身体を投げ出した」といった方
がいい。 「失礼な…。 でも、よほど疲れていたんだろう。」

 携帯電話、場違いの大きな話し声、ヘッドフォンから漏れる
打楽器の大音響、最近は減ったが喫煙…。 乗り物内では
トラブルの原因がたくさん。

 アドレナリンの分泌を抑えるのに懸命な私でした。




(2) スイッチバック  (L) 酸土馬漬

 道路で言えば、"ヘアピン カーブ"。 急勾配を登る鉄道
では、車輛の進行方向が変わります。 登山道を遠くから
眺めれば、やはりあのジグザグが。

 ところで先日、北アルプスの万年雪の中から、氷漬けの
お馬さんが発見されました。 登山中に難に遭ったのでしょ
うか、荷物をたくさん背負ったまま…。

 …という夢を見ました。 どうも何かと勘違いしたようで…。




(3) 怪傑ゾロ  (N) 花生通祖労

 私が接したのは、白黒テレビ時代のドラマです。 でも今や
ご存じない方が多いでしょう。 鮮やかなサーベル捌きで、
シャッ、シャッ、シャッ! 敵の胸元に "Z" の字を刻みます。

 そう言えば、"Z" 型のはあまり見ないな。 前衛生け花なら
あってもよさそうなのに。




(4) フランスパンのクーペ  (O) 風乱数繁退空屁

 文字どおり "切れ目" のこと。 寸胴 (ずんどう) なパンより、
おいしそう?

 クーペと言うと、自動車を思い浮かべる方も多いでしょう。
確かに形は似ています。 でも、齧るには硬過ぎるな…。




(5) クープ  (D) 食歩

 これ、"コッペ パン" の語源を辿っているうちに出て来た
言葉でした。 "食い歩き" と書くと "グルメ" です。

 まるチャンや私の場合は "空腑" ですが…。




(6) サンスヴェリア  (E) 惨滑嫌

 学名 "Sansevieria trifasciata"、英語では "Sansevieria"。
和名ではサンスベリア、またはサンセベリアと書かれるの
が普通です。

 サンスヴェリアで画像を検索したら、こんなことに! どう
見ても観葉植物には見えないものが、幾つもあります…。




(7) タブー  (F) 誰豚声

 禁忌、禁断、してはならないことなどと訳されます。

 よく "taboo" と書かれますが、これは英語。 語源は "tabu"
で、ポリネシア語だったんですね。

 動物語だとばかり思っていたのに。

 これを書いているのは、東北関東大震災の二日後。 まさに
タブーと言える行為で、申しわけありません。

 「宮城県内の死者は確実に一万人を超える」という報道を目に
しながら、こんな事を書いています。 東京在住の私はまったく
無事ですが、それも却って辛い。

 被災の深刻な地域には、知り合いが何人か。 心から無事を
祈るばかりです。




(8) イリヤ  (C) 居嫌



 テレビの報道に、眼は釘付け。 "知嫌" な事は何もありま
せん。 すべて目撃しておきたいと思います。

 「ヴォランティアの方々が神戸から現地に向かった」…なる
報道も。 きっと居ても立ってもいられなかったのでしょう。
ご自分たちが苦労された時の経験を生かし、困難に在る
方々を助けるために。

 "食料不足" が叫ばれています。 早く充分な量が届き
ますように。



 でも物資によっては、ある時点から "供給過剰" になります。
「その処分が、現地の新たな難題になる」…なる教訓を耳にした
ことがあります。

 需給バランスを統括的に見守るような組織は無いのかな…。
一歩でも先を見越した対策が望まれます。

 もう一つ大事なのが、"missing center"。 行方不明者に
関する情報交換を、中心的に管理する組織が必要です。

 それ、今回は誰がやるの?




(9) サウナ  (B) 割鰻

 このコーナーでは、"蒲焼" に触れるつもりでした。
"禁忌、怠慢" と言われるのは間違いありません。

 すでに "怠鰻" ですものね…。




(10) サン=テグジュペリ国際空港

            (P) 惨手愚呪屁狸酷催食乞

 『星の王子さま』 (Le Petit Prince) の作者として有名
な、サン=テグジュペリの名を戴いた空港です。

 大戦中はパイロットでもありましたが、愛機や遺品
先年引き揚げられ
、話題になりました。




(11) コート・ダズュール国際空港

               (Q) 外套出頭緩刻細工卯巧

 正確に記すなら、"coat" でなく "cloak"。 古くは『外套と
短剣』 ("CLOAK AND DAGGER")
なるアメリカ映画が
ありましたが、ご存じの方はおられますか?

 どちらにせよ "外套" は、もう死語に "該当" するのかも
しれません。




(12) ペレアス  (K) 減齢明日

 作曲家の創作意欲を掻き立てる "文学作品" の中に、
Maeterlinck (メーテルリンク、メーテルランク、マーテルリンク)
戯曲、ペレアスとメリザンドがあります。

 純愛、兄弟、三角関係、殺人、悔恨、新たな生命…と、
人生における様々な側面が描かれているからでしょうか。

 平凡な生活を送る私たちにとっても、決して無縁な
出来事ではないから。 "殺人" は別として…。




(13) メリザンド  (J) 女狸餐怒

 ヒロインのメリザンドは、素性が不明。 「長い髪の
若く美しい女性」です。

 でも、"タヌキ餐" でないことは確かですよ。




(14) ゴロー  (A) 転卯

 森の中で泣いているメリザンドに出会い、連れ帰って
妻とします。 思わぬ拾いモノ?

 それじゃ、何だか『待ちぼうけ』みたいです。 「そこ
に兔が飛んで出て、ころりころげた木のねっこ…。」




(15) イン プレイ  (G) 隠膚冷

 野球の用語では、"ball in play"。 要するに
"タイムのかかっていない" 状態です。

 これに対するのは "ball dead"。

 「"デッドボール" の間違いじゃないの?」 いえ、
"ボールデッド" でいいんです。 デッドボールは
和製英語で、あちらでは "hit by pitch"。

 "デッドボール" 事故が起きると、"ボールデッド"
の状態になります。

 …何だか解らなくなってきた…。




(16) フィデリオ  (H) 日照負

 Beethoven の歌劇 "Fidelio" は、忠実・忠誠 (fidelity)、
夫婦愛、反権力を讃えた作品です。

 陰謀によって夫を捕えられた、Leonore。 Fidelio の名で
男装し、ついに夫を救い出します。

 「か弱い男性を救済する」点では、かの Wagner と通じる
点が多いのですが、さて…。 




(17) アイーダ  (I) 悪飯出

 こちらは自ら地下牢に赴き、恋人とアイに殉じる女性。

 歌劇では、舞台が通常は上下二段に分かれ、上には
王女アムネリスの姿が。 やはり彼を愛する王女です。

 印象的な、彼女の最後のセリフ、"Pace" (平安を)




 お疲れさまでした。




ハ長調のスポットライト

2011-03-11 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

03/11 私の音楽仲間 (264) ~ 私の室内楽仲間たち (238)



            ハ長調のスポットライト




         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




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               ハ長調のスポットライト
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                 Mozart の『五度』
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                 不協和音の余波
                  牙を剥く脇役
                  嫌われる飛躍
                  作品か人間か
                  歩くメヌエット?
                   鋭い演奏者




       [音源ページ ]  [音源ページ




 『不協和音』の愛称で親しまれる、Mozart の 弦楽四重奏曲
ハ長調 K465
。 いよいよ、その第Ⅳ楽章までやって来ました。



 今回のキーワードは、

① 下降② 上昇する半音階

(主として上昇する) ③ 全音階

上下に向きを変える ④ ターン  …でした。



 いずれも、第Ⅰ楽章冒頭の序奏部に登場し、
各楽章で重要な役割を果たしてきました。




 最終楽章の "Allegro (molto)" は、次のように始まります。







 ViolinⅠの奏でる主題の中には、が見られます。

 も、他のパートに登場していますね。




  第二主題が登場してしばらくすると、次のような形が
ViolinⅠに現われます。







 忙しく向きを変える ④ ターンが、アイディアの中心
であることが解ります。




 提示部をト長調で締めくくるのが、次のような音楽です。







 駆け回る ViolinⅠは、ここでもターンを繰返しています。
先ほどの "急激なターン" に比べて、周期は多少長く
なっています。

 またハーモニーの進行に乗りながら、が巧みに織り
込まれています。 それも二つの Violin により、同時に、
ダブルで。 何と印象的な手法でしょう。




 これらの材料は、全曲の冒頭の混沌とした序奏部で、すべて
姿を現わしていました。

 続く明快な "Allegro" の部分だけでなく、どの楽章でも主題を
形作ったり、また背景の一部として、そっと登場していました。



 今回は紹介できなかった登場人物が、ほかにもたくさん!
「一言あって然るべきだ!」…と、あちこちから苦情が聞えて
きそうです。



 …そう言われてもね…。 苦情は、音楽を作った人に
言ってほしい…。

 その手腕が発揮される様は、さながらオペラの中の
よう。 あちこちで登場人物が顔を出しながら、音楽劇
全体が流れて行きます。




 最後になりましたが、Violin の Sa.さん、Viola の O.さん
チェロの N.M.さん、長時間に亘り、三曲もお付き合い
いただき、ありがとうございました。 お疲れさま。












          [この部分を連続編集した演奏例]
    


楽章を結ぶターン

2011-03-09 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

03/09 私の音楽仲間 (263) ~ 私の室内楽仲間たち (237)



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                  牙を剥く脇役
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                  作品か人間か
                  歩くメヌエット?
                   鋭い演奏者

                   研究の賜物?





       [音源ページ ]  [音源ページ




 "Andante cantabile" の標語に見られるとおりの、歌心に
満ちた音楽。 それは Mozart の 弦楽四重奏曲 ハ長調
K465 『不協和音』
、その第Ⅱ楽章でした。



 第Ⅰ楽章の混沌とした序奏部。 その大きな原因となって
いたのは、もちろん不協和音でした。 繋留音 (けいりゅうおん)
の連鎖が至る所にあり、ハーモニーがなかなか解決しません。

 聴く者は、調性感覚を奪われたまま放置されます。



 この繋留音と並ぶ共犯が、下降上昇する半音階でした。
調性はさらに曖昧になります。





                          ↑
 やがて全音階の光が徐々に行きわたり、主要テーマを準備
しながら、主部 "Allegro" を迎えます (23小節目) 。




 この半音階や全音階が、第Ⅱ楽章でも頻繁に現われている
様子を、前回ご一緒に見てきました。



 もう一つ、この曲で重要なのがターンです。 これは装飾音
の仲間で、上下に向きを変える動き。 Sの字を横にした記号
で表します。
                                    ↓


 ↑

 表示は異なりますが、このターンと実質的に同じなのが、
直後の ViolinⅠの動きです。 最初の5つの音符を見ると、
上下に向きを変えた後は、やはり 元の音 "Fa" に戻って
きています。

 譜例の5小節目 (49) には、Sol から始まるターン音形
見られます。



 このターンの動きは、すでに第Ⅰ楽章の序奏部にも、姿を
現わしていました。




 次の譜例は、第楽章 "Andante" の最後の7小節と、続く
楽章 "MENUETTO" の冒頭です。



 注目したいのは、まず "Andante" の最後の小節。 音は、
"Mi Fa Sol Fa" です。

 これに続く "MENUETTO" の冒頭の音形は、やはりこの
"Mi Fa Sol Fa" が骨格になっています。 音程が La まで
上がるだけでなく、半音階も混じっていますが。

 あるいは、"半音階との合成音形" と考えてもいいでしょう。

                                    




 視覚的に説明すると、以上のようになりますが、連続して
聴いてみれば、関連は明らか。 「百聞は一見に如かず」
ならぬ、「百見は一聞に如かず」と言ったところでしょうか。

 直前の楽章の、末尾の7小節には、実質的なターン
3回も現われています。 この自然な流れに乗って、聴く
者は無意識に、続く第Ⅲ楽章に導かれます。

 「このターン、大事な主役の一人なんだ。 ターンなる
装飾音じゃないんだよ?」 Mozart が、そう言っている
ようですね。



 "MENUETTO" の8小節目からは、下降する半音階
見られます。

 さらに21小節目では、上昇する半音階の音符が5つ。
またこの直後には、9個の音符が連続して聞かれます。
ViolinⅠが Do# から La まで、半音階で上昇するのです。



          [この部分の演奏例]
    


Mozart の "混沌"

2011-03-08 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

03/08 私の音楽仲間 (262) ~ 私の室内楽仲間たち (236)



             Mozart の "混沌"




         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




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                  嫌われる飛躍
                  作品か人間か
                  歩くメヌエット?
                   鋭い演奏者




       [音源ページ ]  [音源ページ




 「序奏以外はモーツァルトらしい明快な曲で、室内楽の
中でも屈指の名作の一つ。」

 こう解説サイトに書かれているのが、Mozart の 弦楽
四重奏曲 ハ長調 K465 『不協和音』
です。




 この序奏部では、冒頭で優位を占めていた半音階進行
が、徐々に全音階に変わって行きます。







 10小節目の Viola、12小節目の ViolinⅠには、全音階を
含む3つの音
がはっきりした形で現われ、主部のテーマ
(23小節目の "Allegro") を暗示します。 リズムの点でも、
同じように長い音符がこれに続きます。

 15、22小節目の上下の動き (ターン) にも、同じ特徴が
含まれています。



 不協和音や半音階が、明快なハ長調の世界に変わっていく
様は、あたかも混沌に光が差し込むようです。

 「序奏以外が明快」なのは当然のこと。 まさにそれこそが、
作曲者の意図なのでしょう。



 「このアイディアは Beethoven にも影響を与えた」のでは
ないでしょうか。 その音楽のテーマには、ご存じのとおり
「混沌 → 秩序」、「闇 → 光」などが含まれるからです。

 その一つが、『ラズモーフスキィ第3番』の序奏部です。
「序奏部は調性が♭系で、3/4拍子」、「主部はハ長調、
4/4拍子」などの共通点があります。



       関連記事 『ラズモフスキィ 第3番

        ① 『やさしいのに合わない…』
        ② 『減七で幻惑』
        ③ 『序奏は倉庫』    
        ④ 『細く長く』




 次の譜例は、この『不協和音』の第Ⅱ楽章、ヘ長調の
"Andante cantabile" です。 よく見ると、ここにも先ほど
半音階全音階、またターンと思われる進行が顔を
出しています。

 半音階と言っても、ここは "混沌" とはほど遠く、平安
な歌に、溢れる感情を添えています。







 冒頭部分が再現される45~56小節では、これらの特徴が、より
"手の込んだ" ものになっています。

 しかし、そこは Mozart のこと。 すべてがまことに自然に調和
しており、「部品が浮き上がり、目立ってしまう」ようなことはあり
ません。 まるで「こちらが変奏曲のテーマだった」かのようです。







             [この部分の演奏例]