11/11 私の音楽仲間 (632) ~ 私の室内楽仲間たち (605)
束になってかかって…来ないでね
これまでの 『私の室内楽仲間たち』
室内楽の定番的存在…といえば、弦楽四重奏曲でしょうか。
【2つの Violin、Viola、チェロ】という組み合わせは、音域的
には申し分ありません。
また数字の “4” は美しい偶数であり、混声四部合唱、四手
ピアノ用編曲…などの編成にも現われています。 “4” という
均整美の中にすべてを表現するのは、作曲家にとっても腕の
見せどころです。
しかし晩年に、むしろ弦楽五重奏を目指したのが Mozart や
Brahms です。 また、あの Beethoven でさえ、作品135 の
最後の四重奏曲の後で五重奏を計画していたと言われます。
“5” は一見すると半端な数字です。 でもだからこそ、作曲家
にとっては “自由な数” なのかもしれませんね。
Mozart の 弦楽五重奏曲 ハ長調 K515、その第Ⅰ楽章
では、“ペアの動き” が聞かれます。
あるときは 2つの Violin、また 2つの Viola、そして
〔Viola とチェロ〕の組み合わせまで見られます。
その光沢は、煌めきから、燻し銀、そして漆黒へと、
作曲者の内面を顕わすかのように変化し続けます。
関連記事 『円やかなペア』
上の譜例は “提示部” で、ト長調の第二主題に当ります。
今回の[演奏例の音源]は、同じ音楽が再現部で現われた
際の様子です。 調性は形式どおりに ハ長調で聞かれます。
Violin は私、M.さん、Viola W.さん、Sa.さん、チェロ M.さんです。
さて、音源が “54秒” のところに差し掛かると、次のような
音楽が聞えてきます。
それまで “ペア” だった八分音符の動きに、多少変化が…。
Viola とチェロは、同じ二人でも “ユニゾン” です。 そして
Vn.Ⅰが単独で歌い始めます。
↓ ↓
↑
人数の比率を見ると、【1:4】ですね。 それが大問題です。
音量バランスの点で。 どうしても “四人” の側が大きくなり
やすいから。
強弱記号を見てみましょう。 Vn.Ⅰは mfp ですが、他は
すべて p。 大きくなってはいけません。
しかし Vn.Ⅰの mf が聞えるので、どうしても大きく弾いて
しまいやすい。 直前には f の箇所までありましたし。
f から p に落とすにせよ、また mfp にせよ、“音量を
すぐに落とす”…という作業は、技術的には決して簡単
ではありませんね。
こうして色々な要因が重なり、この部分は、バランス
的にちゃんと聞かせるのが難しい音楽になっています。
ペアの “2”、ソロの “1”、そして 伴奏の “4”…。
瞬時に変化する、“5” の中味。 円熟した Mozart の、この
“当意即妙” の変わり身に、演奏者が着いていけるかどうか…。
五重奏の場合、音量バランスの取り方は、四重奏曲以上に
難しいと言えるでしょう。
“模倣” は、アンサンブルの上で不可欠な要素ですね。
何と言っても影響力の大きいのが Vn.Ⅰです。 その
とおりに周囲が真似をしてくれるとしたら、本望と言って
もいいでしょう。
でもパート譜には、冷たく p と書かれている。 楽譜を
よく見ると…。
聴覚に従うか、それとも視覚を重視して、自己を抑制する
ことが出来るかどうか…。
演奏に賭ける熱意とは裏腹に、難しい問題でもあります。
ハ長調 五重奏曲
[音源サイト ①] [音源サイト ②]
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