MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

解放された Viola

2014-11-17 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

11/17 私の音楽仲間 (634) ~ 私の室内楽仲間たち (607)



             解放された Viola



         これまでの 『私の室内楽仲間たち』



 Mozart の 弦楽五重奏曲 ハ長調 K515 は、四つ
の楽章から成っています。

 うち 【MENUETTO】 と 【Andante】 は、どちらが第Ⅱ、
第Ⅲ楽章なのか、今日でも判りません。 この場でも
何度触れたとおりです。


 演奏例の音源]は、【Andante】 の中ほどの部分。
最初に聞えて来るのは ViolaⅠです。 1オクターヴ
上の Vn.Ⅰと、対等に張り合う様子が聞えます。

 この二つの楽器が中心となり、Andante 楽章は
進んでいきます。


 やがて、冒頭テーマが再び聞えてくる。

 [譜例]は、その冒頭の様子です。 この[音源]
では、【50秒】~以後の部分に当ります。


 最初の12小節は、“序奏” に相当する部分です。

 ViolaⅠは、5段のうち、真ん中のパートですね。

 

                                   ↑

 2つのソロ楽器の本格的な対話が始まるのは、↑の
小節以降です。

 それまでは、Vn.Ⅰにピッタリ寄り添っている楽器が
ありました。 ViolinⅡです。


 では、その2つの Violins が動いていた “音程間隔”
を見てみましょう。 3度や6度が主ですね。

 しかし ViolaⅠが前面に躍り出ると、Vn.Ⅱは背景に
姿を隠します。


 以上は、この 【Andante 楽章】 に限った記述ですが、
3度や6度” は、曲全体にとっては重要な音程です。

 なぜならば、「他の3つの楽章では中心的な音程」…
だからです。

 関連記事 楽章を結ぶ3度? 対照的な “Andante”

 



 「全4楽章の順番は確定されていない。」

 …再三触れているとおりです。


 この問題を 3度、6度” の観点から見れば…。

 「“Andante” は3番目の楽章だ」…というのが
私の考えで、以下がその理由です。


 第Ⅰ楽章 “Allegro” も、また順番不明な “Menuetto” も、
ともに “3度、6度” を中心とした楽章です。

 以上がもしⅠ、Ⅱ楽章だとするなら、“第Ⅲ楽章 Andante”
の導入は、極めて自然です。


 その最初の12小節は、“3度、6度” が中心だから。

 しかし楽章の大半は、ViolinⅠと ViolaⅠの対話なので、
“3度、6度” が他の部分で顔を出す余地はありません。



 こうして、「第Ⅲ楽章は “Andante” で、エピソード的
な役割を担う。 続くのは、再び “3度、6度” が目立つ
第Ⅳ楽章、“Allegro” だ。」…というのが、私の考えです。


 反対に、この “Andante” が第Ⅱ楽章だとすると…。

 エピソードが早くも二番目に現われ、“3度、6度の
 Menuetto”、そして “3度、6度の第Ⅳ楽章”…の順
続くことになります。


 これは全体の流れが良くない。 それに、重めの “Andante”
後に、軽い “Allegretto の Menuetto” が来ている…。

 それは良しとして、さらに “Allegro のフィナーレ”…と続くと、
テンポ感も単調になります。

 



 何はともあれ、この大役を担うのは ViolaⅠですが、これは
Mozart 全室内楽曲の中でも、特異な事件です。

 この曲の後には、3曲のプロシャ王』四重奏曲が作られ
ています。 しかし、この楽章ほど Viola が活躍する楽章は、
どれを見てもありません


 …してみると、Viola に大役が与えられた事情は、
作曲年代とは無関係のようですね。

 四重奏の “格式”、五重奏の “解放感” の違いが、
ここでも顕われているように思われます。

 




            ハ長調 五重奏曲

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              全員が指揮者?
              黒幕にも決定できない順番
              押しかけビール
              羽を伸ばす Mozart
              円やかなペア
              楽章を結ぶ3度?
              対照的な “Andante”
              黒幕は作曲家?
              束になってかかって…来ないでね
              トリは任せたよ
              解放された Viola

            弦楽五重奏曲 ト短調 K516
              疾走する Mozart …
                    など

            弦楽五重奏曲 ニ長調 K593
              呼び交わすニ長調
                    など

            弦楽五重奏曲 変ホ長調 K614
              最後に五重奏曲
                    など




トリは任せたよ

2014-11-12 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

11/12 私の音楽仲間 (633) ~ 私の室内楽仲間たち (606)



              トリは任せたよ



         これまでの 『私の室内楽仲間たち』



 譜例は Mozart の 弦楽五重奏曲 ハ長調 K515 から
第Ⅰ楽章の終わりの部分です。 各パートが次々にテーマ

を奏でつつ加わります。

 順番を見てみましょう。

 ViolinⅡ、ViolaⅠ、ViolaⅡ…と、音域は低いほうへ。
そして、音の高い ViolinⅠ が聞こえてきます。

                            ↓

  ↑

 トリはチェロ。 ViolaⅡを伴い、補強されていますね。

 これはコーダに当る部分です。 音楽はさらに1分ほど
続き、楽章は終ります。

 演奏例の音源]もここから始まります。


 これは、ちょうど前回の音源]の続きになります。

   関連記事 束になってかかって…来ないでね



 さて、このフーガ風の箇所ですが、チェロは最後に登場

いますね。

 四重奏曲などでは、厳格な “四声のフーガ” が聞かれる
こともあります。 しかし、そこでも事情は同じ。

 チェロや Vn.Ⅰなど、“最低音・最高音” のパートが最初
から現われることは、まずありません。

 “言いだしっぺ” は、ほとんどが “内声” です。 今回の
“五声部”の音楽でも、チェロや Vn.Ⅰは、“最後の二人”
して登場しています。


 中でもチェロを最後まで温存しておく傾向が、Mozart
の室内楽作品では強いのではないでしょうか。 これは
初期の弦楽重奏曲でも言えることなのです。 

 私がいつも思い浮かべるのは、あのニ短調の弦楽
四重奏曲…。 第Ⅰ楽章の最後の部分です。


 この楽章は、決してチェロだけが目立つわけではない。

 現に、短いモティーフの “受け渡し” が、各パートの間
で頻繁に行われます。 チェロが言いだしっぺになること
もあれば、トリになることも…


 しかし、いよいよ【残りが僅か30秒】となったところで、
チェロが朗々と歌い始めます。

 そして、最後は Vn.Ⅰに主導権を譲ったところで、
楽章は終ります。

        ニ短調 四重奏曲 音源ページ]

 


 Vn.Ⅰには細かい動きがありますね。 でも、それ以上にチェロ
消してしまいやすいのが、Vn.Ⅱや Viola のクレシェンドです。

 チェロといえども埋もれてしまう…。

 旋律自体は、さして重要なものはありません。 主要主題と
若干の関係は見られるのですが。


 しかし、「作曲者が最後までチェロをリザーヴしていた」
見ることも可能でしょう。 …もしそうなら…

 「他の3人は、チェロをよく聞えるようにしてあげてほしい。
最後の音符に至るまで、悠然と歌わせましょう。」


 これは一つの解釈にすぎません。 それに、チェロ弾き
でもない私が、なぜこの部分に愛着を覚えるのか…?

 「チェロに最後を託したい。」 そんな思いが作曲者に
あったと考えるのは、邪推にすぎないでしょうか。

 ちなみに、「Mozart がチェロを手にした」…という記述
も見たことがありません。


 何はともあれ、この五重奏曲 ハ長調。 Vn.Ⅰと対等
にチェロが張り合う箇所は、他の楽章でも枚挙に暇が
ありません。

 これについては、また回を改めて。

 




            ハ長調 五重奏曲

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              対照的な “Andante”
              黒幕は作曲家?
              束になってかかって…来ないでね
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              解放された Viola

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                    など

            弦楽五重奏曲 変ホ長調 K614
              最後に五重奏曲
                    など




束になってかかって…来ないでね

2014-11-11 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

11/11 私の音楽仲間 (632) ~ 私の室内楽仲間たち (605)



        束になってかかって…来ないでね



         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




 室内楽の定番的存在…といえば、弦楽四重奏曲でしょうか。
【2つの Violin、Viola、チェロ】という組み合わせは、音域的
には申し分ありません。

 また数字の “4” は美しい偶数であり、混声部合唱、
ピアノ用編曲…などの編成にも現われています。 “4” という
均整美の中にすべてを表現するのは、作曲家にとっても腕の
見せどころです。


 しかし晩年に、むしろ弦楽五重奏を目指したのが Mozart や
Brahms です。 また、あの Beethoven でさえ、作品135 の
最後の四重奏曲の後で五重奏を計画していたと言われます。

 “5” は一見すると半端な数字です。 でもだからこそ、作曲家
にとっては “自由な数” なのかもしれませんね。


 Mozart の 弦楽五重奏曲 ハ長調 K515、その第Ⅰ楽章
では、“ペアの動き” が聞かれます。



 あるときは 2つの Violin、また 2つの Viola、そして
Viola とチェロ〕の組み合わせまで見られます。

 その光沢は、煌めきから、燻し銀、そして漆黒へと、
作曲者の内面を顕わすかのように変化し続けます。

        関連記事 円やかなペア



 上の譜例は “提示部” で、ト長調の第二主題に当ります。

 今回の演奏例の音源]は、同じ音楽が再現部で現われた
際の様子です。 調性は形式どおりに ハ長調で聞かれます。

  Violin は私、M.さん、Viola W.さんSa.さん、チェロ M.さんです。


 さて、音源が “54秒” のところに差し掛かると、次のような
音楽が聞えてきます。

 それまで “ペア” だった八分音符の動きに、多少変化が…。

 Viola とチェロは、同じ二人でも “ユニゾン” です。 そして
Vn.Ⅰが単独で歌い始めます。

              ↓          ↓

                         ↑

 人数の比率を見ると、【1:4】ですね。 それが大問題です。
音量バランスの点で。 どうしても “四人” の側が大きくなり
やすいから。

 強弱記号を見てみましょう。 Vn.Ⅰは mfp ですが、他は
すべて p。 大きくなってはいけません。

 しかし Vn.Ⅰの mf が聞えるので、どうしても大きく弾いて
しまいやすい。 直前には f の箇所までありましたし。


 f から p に落とすにせよ、また mfp にせよ、“音量を
すぐに落とす”…という作業は、技術的には決して簡単
ではありませんね。

 こうして色々な要因が重なり、この部分は、バランス
的にちゃんと聞かせるのが難しい音楽になっています。


 ペアの “2”、ソロの “1”、そして 伴奏の “4”…。

 瞬時に変化する、“5” の中味。 円熟した Mozart の、この
“当意即妙” の変わり身に、演奏者が着いていけるかどうか…。

 五重奏の場合、音量バランスの取り方は、四重奏曲以上に
難しいと言えるでしょう。


 “模倣” は、アンサンブルの上で不可欠な要素ですね。

 何と言っても影響力の大きいのが Vn.Ⅰです。 その
とおりに周囲が真似をしてくれるとしたら、本望と言って
もいいでしょう

 でもパート譜には、冷たく p と書かれている。 楽譜を
よく見ると…。


 聴覚に従うか、それとも視覚を重視して、自己を抑制する
ことが出来るかどうか…。

 演奏に賭ける熱意とは裏腹に、難しい問題でもあります。

 




            ハ長調 五重奏曲

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              呼び交わすニ長調
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            弦楽五重奏曲 変ホ長調 K614
              最後に五重奏曲
                    など




過剰な負担を強いるな

2014-11-05 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

11/05 私の音楽仲間 (631) ~ 私の室内楽仲間たち (604)



           過剰な負担を強いるな



         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




 演奏例の音源]は前回と同じもの。

 Mozart の弦楽五重奏曲 変ホ長調 K614 
第Ⅳ楽章のロンドから、後半部分です。


 次の[譜例]は、楽章の冒頭の様子です。

 

 さて、楽譜には色々な情報が書き込まれていますね。 音程、
長さ、強弱、スラー、スタカート…。 演奏者はこれらを守りつつ、
各音符を弾き分け、音楽を組み立てていくことになります。

 ↓の箇所をご覧ください。 (1) ではスタカートの記号が書か
れていますが、同じような (2) の部分にはありません。

 「両方ともスタカートか? それとも区別すべきなのか? 

                (1)           (2)

                ↓           ↓ 


 作曲家も多忙なので、二回目以降は記号を省略する場合
があります。  これ、どちらなのか? よくある例で、演奏者
にとっては実に紛らわしい…。

 そこで他の版を調べてみました。

               ↓            ↓

 

 やはり一度目はあり、二度目は無い。 でもよく
見ると、スタカートの記号はクサビ形です!

 それに最初3小節間はすべてクサビ形です。
その上、丸い “・” のスタカートも混在しています。

 問題点は逆に増えてしまいました。


 こうなると、取捨選択や判断は自分でしなければ
なりません。 またこれはスコアですから、最終的に
はパート譜にすべて書き込む必要があります。

 一旦こういう作業が始まると、膨大な労力と時間
とられます。 時には楽器を鳴らす時間以上に。 


 

 ちなみに、最初にご覧いただいたスコアはペーター
版で、二番目はベーレンライターです。 今回は後者
を採用することにしました。

 パート譜も、当然ベーレンライターを用いればいい
のですが、この曲で私が以前から使い慣れているの
はペーター版でした。 指使いその他を細かく書き
込んであるほか、コピーを継ぎはぎまでして “めくり”
に対処した、“力作” なのです。

 印刷のままだと、間に合わない “不可能なめくり”
が多い。 その点では、どちらも大差ないのですが…。

 

 散々悩んだ末、使い慣れたペーター版に、ベーレン
ライターの内容を書き写すことにしました。

 して、結果は…。



 f を書き込み、丸いスタカートを消し、あるものはクサビ
形に直し、スラーを消し…。 これでは汚くて、瞬時に情報
を読み取るのは無理ですね

 仕方なしに、これまで真っ白だったベーレンライター版を
使うことに決めました。 作業内容は逆で、従来の “体験
情報” を書き込むわけです

 新しいボウイングや、今までの指使いなど、すべてを…。
でも、これでだいぶスッキリします。

                  ↓


 ちなみに一段目のスラーを書き込んだのも、×で消したのも
自身です。 これはペーター版に見られるスラーでした。

 身体がこれを覚えてしまっているので、確認のために敢えて
記したものです。 (スラーはあったほうが、多少は簡単なのですが。)

                       ↓      ↓      ↓


 なお三段目の最後では、f が落ちていました。 スコアには
あっても、パート譜に無い!

 冗談じゃないよ。 p のままでは “どうもおかしい” と思って
はいたが、気付くまで p で練習してしまったじゃないか…。


 楽譜の誤植を皆無にしろ…とは言わないが、売る以上は、もっと
責任を持ってほしい。 演奏者は比較文献学者ではないから。

 それに、コピーやツギハギをやらせるようでは問題外。 演奏
使えないような楽譜は出版するな。


 …などと、だいぶ意気が上がってしまいました。 なにも、
この曲に限った話ではありません。 演奏するかたなら、
誰でも同じことを感じておられるでしょう。

 こういう作業を通じて、【作曲家の筆致に親しめる】という
メリットは、確かにあるのですが…。



 ちなみに友人のチェロ弾き Su.さんは、この点で徹底しています!
必要あって、ご自分で全員の楽譜を用意してくれるとき、大変な労力
を払ってくれるのです。

 まず、もっとも適当と思われる版を入手し、“めくり” が可能なように
全体を再構成して割り付け、印刷、製本…。 そして各自に届ける…。


 しかも、発表を前提としていない、“一期一会の場” でも…ですよ。
いや、だからこそ、むしろその必要があるのかもしれない。

 私もやっと、最近そう感じるようになりました。

 


 

 さて、丸型とクサビ形では、スタカートはどう違うのでしょうか?

       丸
       ↓ 

  

 「クサビ形のほうが、個々の音符にスピード感があり、リズム
の歯切れがいい。」 …今回はそう書いておくに止めましょう。

      クサビ
      ↓

                ↑            ↑
                (1)           (2)

 また (1) にはスタカートがあり、(2) にはありませんでしたね。

 最初はリズムが主体で、歯切れよく! 次は、メロディーとして
ラインを意識するといいのかもしれません。


 作曲者の書き分けが、如何に自然なことか。

 改めて再認識することとなりました。


 

      [音源ページ ]  [音源ページ




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              最後に五重奏曲
              変ホ長調の輪
              興醒めは得意さ
              みんな酔っ払い
              どっちでもないさ
              過剰な負担を強いるな




どっちでもないさ

2014-11-04 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

11/04 私の音楽仲間 (630) ~ 私の室内楽仲間たち (603)



              どっちでもないさ



         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




 Mozart 晩年の弦楽五重奏曲 変ホ長調 K614 、その第Ⅳ
楽章は “ロンド形式” で出来ています。

 ただし上記の解説ページでは “ソナタ形式” としていますね。
“モティーフの展開” が頻繁に行われているからでしょう。


 しかしテーマが目まぐるしく交代する印象が強いので、ここでは
一応【A B A C A B  A】…の、“自由なロンド” としておきます。

 [譜例]は、楽章の冒頭の様子です。

 


 “” の部分になると、確かに “新しいテーマ” が出て
きます。 しかしそれは、上のモティーフの動きを、逆に
しただけ。 低音域なので、それとは察しにくいのです。

 それに途中からは、またも “A” のモティーフが現われ、
展開風に繰り返されます。


 しかも “” の部分は、“A” のモティーフの展開そのもの
で、新しいテーマが現われるわけではありません。

 したがって「楽章全体は、すべて “A” を基にして出来て
いる」…と言ってもいいほどです。


 演奏例の音源]は、【A B A  A B  A】…の下線部
に当る部分です。



 「ロンドか、ソナタか…だって? どちらでもないよ。
自由に作っているだけさ。 そもそも全楽章を、一つ
単純なモティーフから組み立てたんだからね。
その “全体の枠組み” が、個々の楽章の形式より
優先したのさ。 結果的に。」 

 35歳の “晩年の Mozart” は、そう答えるかも
しれません。


 「〔全体は部分に優先する〕…って言ってるだろ?
あのフルトヴェングラー君だって。」

 あれ…。 どうして知ってるの?


 

      [音源ページ ]  [音源ページ




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