MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

11月の記事の一覧

2011-11-30 00:00:00 | インポート

11/30



       今月の記事の一覧です。




     私の室内楽仲間たち

11/02   メトロノームは普遍的か

11/04   #が9、♭が10個

11/06   140年後の悲しみ




11/08   頭の体操 (90) 漢字クイズ 問題/解答




     まるチャンの「何だ、これ!?」

11/12   嘘ツキ村からの離脱




     私の室内楽仲間たち

11/14   ファジーが自然?

11/16   春を迎えるト長調

11/17   挨拶三態

11/19   単純な音符の二面性

11/21   鎮静効果がありマス

11/22   音で閉じ込めた静寂

11/23   ヴィーンの中継プレー

11/24   報われなかった編曲




11/26   頭の体操 (91) 漢字クイズ 問題/解答




     私の室内楽仲間たち

11/28   切実になった死




11/30   今月の記事 ~ 一覧





切実になった死

2011-11-28 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

11/28 私の音楽仲間 (337) ~ 私の室内楽仲間たち (310)



              切実になった死




         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




             関連記事 『死と乙女

               最後の曲は SCHUBERT
                 三連符の見え隠れ
                移ろいの背後の混沌
                 苦悶の果ての長調
                   揺れ動く転調
                   切ない半音階
               叫ぶ乙女、棒読みの骸骨
              死神だけが生まれ変わる?
                 束の間の小春日和
                   死神と踊る?
                  絶望感の表現
                   死神の訓示
                 彼方なるタランテラ
                  切実になった死
                  乙女の苦しみ




 Schubert の弦楽四重奏曲『死と乙女』については、この
場でも何度か触れてきました。



 その第Ⅱ楽章の下地となっているのが、自らの同名の歌曲
でした。 両作品の間には、7年間の隔たりがあります。

 歌詞は、前半が乙女、後半が死神のもの。 "低声" と指定
された歌い手が、一人で歌い分けます。

       関連記事 叫ぶ乙女、棒読みの骸骨




 …と言っても、原曲に明確なメロディーがあるわけでは
ありません。 変奏曲の第Ⅱ楽章は、歌曲の一部だけを
材料にしていました。

 それは、① ピアノの前奏、③ 死(神) の歌、それに続く
短い後奏の部分だけ。

 ② "乙女の叫び、おののき" の箇所は、この四重奏曲
にはまったく取り入れられていません。



 それも、基本となるのは和声の進行。 ピアノのパートに
は、これに伴って幾つかの声部が生じます。 その動きを
断片的に取り入れ、組み合わせ、変化させたのが、四重
奏曲の第Ⅱ楽章でした。

      関連記事 死神だけが生まれ変わる?




 [譜例Ⅰ]は既出のもので、楽章の冒頭です。 通常は
テーマが提示されるのですが、ここでは明確なメロディー
ラインはありません。 辛うじて Vn.Ⅰが、それらしきもの
を奏でます。

 しかしそれも、和声進行に伴うものであることが、ご覧
いただけるでしょう。 重要なのは、むしろチェロ パート
の役割かもしれません。 







 25小節目からは第変奏が始まり、同じ和声進行の中を
Vn.Ⅰが自由に動き始めます。

 この部分の演奏例も、既出のものです。




 次の[譜例Ⅱ]は新しいもので、続く第変奏の前半部分と、
後半の数小節です。



 目立つのはチェロの高音域。 ラインの骨格らしきものは
共通していますが、実際のテーマは、やはり和声です。

 副次的なラインは、Vn.Ⅱの低い音の動きに見られます。

 またアンサンブル的に重要なのは Viola です。 最低音
などで、リズムを受け持ちます。







 演奏例の音源]は新しいもので、Violin の O.さん、Viola
C.S.さん、チェロ の N.さんとご一緒したときのもので、
その場で即席に編成したメンバーです。



 "もっとも音の高い Vn.Ⅰの動き" は、あまり目立たない方
がいいでしょう。 この部分が終ったときに、「あれ? Vn.Ⅰ
は何をやっていたんだっけ?」…と、聴く者の印象に残って
いないようなら、それだけ「他のパートが聞き取れた」…こと
になります。

 その点、自分もまだまだ未熟です。




 これに続くのは、激しい第3変奏。 ff と p、pp が
交錯します。 しかし真の葛藤は、第5変奏の後半
以降に持ち越されます。




 [譜例Ⅲ]は既出で、第変奏の開始部分。





 また[譜例Ⅳ]も同様で、第変奏の開始部分です。






 演奏例は、やはり既出で、第3変奏の終り部分、
第4変奏、および第5変奏の開始部分です。



        関連記事 束の間の小春日和




 第5変奏後半の、激しい葛藤の後は、徐々に力が萎えて
いきます。 楽章は、最後に pp の安息で終ります。




     [音源サイト    [音源サイト




頭の体操 (91) 漢字クイズ 問題/解答

2011-11-26 00:00:00 | 頭の体操 漢字クイズ

11/26    頭の体操 (91) 漢字クイズ




        『これまでのカタカナ語句には、

        カタカナ部分のみ各回ごとに載っており、

         それぞれの記事に飛ぶことも出来ます。

   「古い記事 (トップ) → 新しい記事 (奥)」 の順に並んでいます。




      『頭の体操 漢字クイズ』 カテゴリーでは、

     『問題・解答』の全文が直接ご覧になれます。 こちらは

      「新しい記事 (トップ) 古い記事 (奥)」 の順です。





 08/29 に登場した外国語の人名、地名、用語が、
カタカナ表記で (1) ~ (25) に、登場した順に並んでいます。

 また、(A) ~ (Y) に並んでいるのは、それぞれを漢字で
表記
しようとしたものですが、どう読めばいいでしょうか?



(1) 悪神アペプ (2) ニアミス (3) 東京タワー (4) 破廉恥カンカン

(5) ファッション デザイナー   (6) ランドセル   (7) アラビア語

(8) カスピ海    (9) エストニア語    (10) ハチャトゥリャーン

(11) ホヴァネス (12) チェクナヴォリャーン (13) アルテュニャーン

(14) カシュカシャン     (15) カラヤン     (16) アズナブール

(17) カスパロフ     (18) ミコヤン     (19) ケヴォーキアン

(20) タルタルソース  (21) クルド人居住地域  (22) ベンガル語

(23) ビルマ     (24) クウェー川鉄橋     (25) リゾート地名

(A) 乱飛売   (B) 嫁引愛   (C) 看子病   (D) 弁軽誤

(E) 麦酒負  (F) 怪符置暗  (G) 煮悪味酸  (H) 豊富姐子

(I) 頭虚歌話    (J) 不穏蚊裸病    (K) 春宴遅寒緩

(L) 餌酢豚嫌吾   (M) 蜂爺糖売庵   (N) 歩鼠声猫声

(O) 禍酒下肢病   (P) 歌温泉老父   (Q) 足手流躁子

(R) 空栄華私狂   (S) 離住夫千名   (T) 明日何部売?

      (U) 知恵君遭檻嫌   (V) 嗚呼裸麦酒豪

    (W) 嗚呼苦心悪屁父   (X) 不足読不出会泣

            (Y) 繰怒尽虚柔血息





[解 き 方]


  ・ 漢字を読み、主にその音を用いて、原語での発音を表わそうと試みた
   ものです。

  ・ 音読み訓読みが混ざっています。 必要な場合は、濁点()、
   半濁点()、送り仮名を補ってください。

  ・  従来のカタカナ表記による読み方とは、必ずしも一致しない場合が
   あります。

  ・  音ではなく、単語の意味を外国語に置き換え、その発音を用いる
   こともあります。 「星 → スター」、「太陽 → サン」のようにです。
    今回はケ所あります。

  ・ 口語的俗語的にくだけた読み方をすることもあります。
   (例) 「汚 → きたねぇ」、「社長 → ボス」。
    今回はケ所あります。

  ・ 漢文もどきに、順番を入れ替えて読む場合もあります。
   (例) 「不読 → よまず、よまん、よまない」。
    今回はケ所あります。

  ・ 人名漢字の中には、“”、”” ともに含まれている場合もあります。 
   姓に加えて "first name" をご自分で補ってください。
   (例) 「ヨーゼフ・シュトラウス」。
    今回はケ所あります。

  ・ 音や意味とは無関係で、漢字から連想しないと解けないものも!
    今回はケ所あります。

  ・  厳密に見るといい加減なものもありますが、そこは冗談の世界。
   お見逃しくださいませ。



   解答
    ↓





以下、「08/29 頭の体操 (84) 漢字クイズ 問題/解答」より




(1) 悪神アペプ  (W) 嗚呼苦心悪屁父

 地球と衝突する恐れもある小惑星アポフィスの、
名称の由来です。

 私のことではありませんよ?




(2) ニアミス  (G) 煮悪味酸



 「航空機同士の適正な間隔として、アメリカ連邦航空局(FAA)
では、半径150m、高度差60m以内の接近と定義している。」…
という記載が見られます。 この "半径" の意味が、素人の私
にはよく理解できないのですが。 ご存じの方がおられましたら
ご教示ください。

 いずれにせよ、機体が大きいほど、危険度も大きくなるので
しょう。 "ジャンボ機" と言っても色々ありますが、標準的な
もので、「全長70~77m、全幅 (翼端) が60~70m、全高19~
20m」…だそうです。 巡航速度は、900km/h 以上。



 一方、小惑星アポフィスは、「2029年4月13日には、地表から
およそ32,500km 離れたところを通過すると予測されている。
これは静止軌道 (35,786 km) とほぼ同じ距離である。」

 …地球からは、かなり離れているのね。 ああ、よかった…。




(3) 東京タワー  (I) 頭虚歌話



 ところがこの小惑星、「直径は270~410m」と書かれています。
ちなみに、東京タワーの地上高が、332.6m ですから、ほぼ同じ。

 でも小惑星は球体ですから、図体はジャンボ機よりはるかに
巨大です。

 で、宇宙を飛び回る速度は? なんと時速36,000km、ないし
それ以上なのだそうです。 もし直撃なら、さっきの距離なんか、
1時間で一っ飛び!

 ニアミスだからいいようなものの、やっぱり怖いよ~。



 「それ以降、2036年から2103年の間にわずかながら衝突
の可能性がある接近が6回ほど起きると推定されている。」

 学者の方々、よろしくね? 自分に出来るのは、せめて
自動車に直撃されないように、気を付けることだけ…。

   …と言っていたら、二週間もしないうちに、自動車にぶつけ
  られてしまいました。 こちらも運転中。 幸いにも怪我はあり
  ませんでしたが…。 こりゃ、もう駄目だ…。





(4) 破廉恥カンカン  (K) 春宴遅寒緩

 こんな言葉はありません。 もちろんフレンチカンカンのこと。
おフランスの関係者のみなさま、ごめんなさい。

 カンカンになって怒られたりして…。

 ところで、"またカンカンが観たくなったよ"…と私が言ったら、
何とおっしゃいますか? 「外遊に注ぎ込む金など、無いくせ
に、何を言うか!」…ですか? そのとおり! 悔しいけど…。

 でもカンカンを観たこと、まだ一度もないんです。 フランス
を訪れたことはありますが。

 「じゃあ、さっきのは嘘じゃないか!」 いえ、嘘じゃない
んです。

 "ああ、また火星に行きたくなっちゃったな…。"




(5) ファッション デザイナー  (X) 不足読不出会泣



 「あまり人気が無くても、"fashionable designer"、"fashionable
couturier" と言います。」

 自分でそう書いた覚えはあるけど、こういう職業の人、きっと
センスがいいんだろうなー。 着こなしも抜群で!

 ボクなんか、「敢えてダサイ風体してるの?」…なんて訊かれ
ちゃうほどだもんね…。



 ところで、"馬子にも衣装"…って、英語で何て言うんだろう?
そう言えば、ドイツ語のオペラで "Kleider machen Leute" って
いうの、あったよ?

 直訳すると、「着る物は人々を作る」。 なるほどね…。



 じゃ、"紺屋の白袴" は?

 止めとこーね。 自分がだんだん惨めになる…。




(6) ランドセル  (A) 乱飛売

 「江戸幕府が導入した、"将兵の背嚢" を意味するオランダ語、
"ransel" がなまって、"ランドセル" になったとされる。」 これ、
ご存知でした? 私は初耳です。

 同じページには、ドイツ語の同義語、"Schulranzen" の記載
もあり、こちらは "学校の背嚢"。 でも言い方が古めかしいです
ね。

 現代的な呼び名は "学校のリュックサック"、"Schulrucksack"
(シュールルックザック) です。

 一般的な "学生鞄" となると、"Schultasche" になるとか…。
でも、一たび背中に回れば、これも "ランドセル" になります。
同じドイツ語でも、表現のニュアンス次第で、呼び方は様々
なんですね。




(7) アラビア語  (V) 嗚呼裸麦酒豪

 私にとっては、ますます縁遠い言語。

 「右から左へと読む。 数字は左から右に綴られる。」
…とあります。 へえ…。

 "?????? ??????" をとこの "豪酒"、はで語アビラア
。すでうそだのく書と…

。んせまり解は方み読、し但




(8) カスピ海  (B) 嫁引愛



 周辺を4~10の国 (連邦、共和国、州) に囲まれた、"内陸の海"
です。 湖か海か?

 もし "海" だと、排他的経済水域が存在することになり、利害
が絡むので、今日でも国際的な合意 (海/湖) はありません。

 ロシア語だと "Каспийское море"、"カースピの"
です。 「古地中海が陸に閉じ込められて出来た」…とされるの
で、元々は "海"。 塩分も豊富です。



 では、"カースピ" って何? Yahoo!知恵袋には、以下の
記載がありました。

 「カスピ海の "カスピ" の由来 (語源) は何ですか?

 カスピ海西岸に古代住んでいた、南コーカサス民族の中の部族
の名前が、語源だそうです。 歴史の中で発達した文化や、国々
に囲まれていたせいもあって、古代ペルシャ語、古代ギリシャ語、
アラビア語、トルコ語、ロシア語など、それぞれの名前がつけられ
てきましたが、結局、今は滅んでしまった、この部族の名が定着
したことになります。




(9) エストニア語  (L) 餌酢豚嫌吾

 バルト三国の一国、エストニアの言語ですね。

 しかし、リトアニア語、ラトビア語がインド・ヨーロッパ語族に属す
るのに対して、こちらは異質。 フィンランド語、ハンガリー語との
関連も指摘され、ウラル語族に属するのだそうです。

 かつては独特の音素文字を使っていましたが、ドイツ系の移民
が多かったためもあり、語彙も含めて強い影響を受けたと言われ
ます。 しかし成立事情には、解明されていない点も多く、謎の
言語の一つとされています。





(10) ハチャトゥリャーン  (M) 蜂爺糖売庵

 来日したときは、すでに白髪。 指揮する姿を、白黒テレビで
観た覚えがあります。 私の多感な少年時代です。 ハハ…。

 プログラムの中には、自作の協奏曲も。 ソリストは、確か
レオニート・コーガンだったと思います。

 …アン、…ヤンで終るのは、アルメニアの姓の特徴だそうです。
以下、同郷の方々の名前が続きます。




(11) ホヴァネス  (H) 豊富姐子

 生まれも育ちもアメリカの作曲家ですが、アルメニア系。 姓
のチャクマクジャーンを、「誰も正確に発音してくれなかったの
で、ミドル ネームの 'ヴァネス' (Hovaness) に改名した」…と
いうのが、表向きの理由でした。

 しかし実際には、人種差別に悩まされたからだと言われます。
後年、アルメニア系であることを、むしろ積極的に表明したいと
望んでからは、綴りを 'Hovhaness' とし、'ホヴネス' と読み方も
変えました。 今日では、この後者の方で呼ばれるのが普通です。

 豊富なのは、その作品数。 実に67の交響曲を含む、500曲を
残しています。




(12) チェクナヴォリャーン  (U) 知恵君遭檻嫌

 ロリス・チェクナヴォリャーン、作曲家でもありますが、今日
では指揮者としての活動が目立ちます。

 竹内貴久雄の音楽室には、以下の記載があります。

 ロリス・チェクナヴォリアンは1937年にイランに生まれた
アルメニア人の指揮者、兼作曲家。 1954年からウィーン
音楽アカデミーで、ハンス・スワロフスキーに指揮法を学ん
でいる。 長らくイギリスを活動の本拠にしていたが、先頃
のソ連邦の解体で独自の道を歩み始めたアルメニア共和
国を代表するオーケストラ、アルメニア・フィルハーモニーの
芸術監督及び主席指揮者にも就任して、このオーケストラ
の再建に尽力している。




(13) アルテュニャーン  (N) 歩鼠声猫声

 アレクサンドル・アルテュニャーン (1920.9.23~)。
ピアニストとしても活動していますが、有名なのは、何と
言ってもトランペット協奏曲でしょう。

 下記のページから、それらしいのを探し当ててください。
無関係なものも混じっています。 → 音源




(14) カシュカシャン  (O) 禍酒下肢病

 キム・カシュカシャン、アメリカ生まれのヴィオラ奏者です。

 禍酒下肢病…? これは誰のことでしょう…。




(15) カラヤン  (J) 不穏蚊裸病

 'ヘルベルト・フォン・カラヤン' の 'von' は、"起源" を表わす
前置詞。 貴族の出であることを示す場合もあります。

 先祖はアルメニア系という説があります。




(16) アズナブール  (T) 明日何部売?

 言わずと知れた、大シャンソン歌手。 "何部売?" は失礼
でした。 新聞じゃあるまいし、

 本名アズナヴーリャン。 お母さんがアルメニア人。

 こちらは公式サイトです。




(17) カスパロフ  (P) 歌温泉老父

 チェスのチャンピオンとして一世を風靡した、カスパロフ。
「母の姓 'カスパリアン' をロシア風に改めた 'カスパロフ'
を名字として名乗るようになった。」…という記載があります。

 以下も、音楽家ではない方が2人続きます。




(18) ミコヤン  (C) 看子病

 ロシア革命の指導者として頭角を現わしてから、レーニン、
スターリン、フルシチョフ、ブレジネフの時代を生き抜きました。

 1960年前後には、ラジオから、「ソ連のミコヤン副首相は…」
なる声が、盛んに流れていたのを覚えています。

 自身がアルメニア生まれなので、ミカヤーン。

 ミカちゃ~ん!…じゃないよ~ん。




(19) ケヴォーキアン  (F) 怪符置暗

 母親は、1915年のアルメニア人虐殺から、辛くも逃れ、合衆
国に辿り着くことが出来ました。 そこで出会って結婚したのが、
同じアルメニア出身の父親だったそうです。 

 生まれたときは 'Jacob Kevorkian' でしたが、小学校の先生
が 'Jack' と読み違えてしまったため、それがニックネームに、
そして通称になってしまいました。

 安楽死を語る際には、決して忘れることの出来ない人物です。
ミシガン大学医学部を、極めて優秀な成績で卒業したと言われ
ますが、後に医師資格をはく奪されてしまいます。 2011年6月
に亡くなりました。




(20) タルタルソース  (Q) 足手流躁子

 タルタルステーキに、タルタルソース。 名称の由来は、
タタール人。 ただ料理や調理法の歴史には、細かい異論
があるようです。

 何でもいいけど、おいしそう。 早く食べましょう!

 …いや、私の場合は肉饅ですけど…。 チンするの。




(21) クルド人居住地域  (Y) 繰怒尽虚柔血息



 クルド人。 "独自の国家を持たない、世界最大の民族集団" と
記されています。 早い話が、第一次大戦後に引かれた人為的な
国境線などで、民族が分断され続けた結果です。

 総人口 2,800万人以上と言われ、トルコの 1,140万人を筆頭に、
イラン、イラク、シリア、ドイツ、アフガニスタン、アゼルバイジャン、
フランス、スウェーデン、イスラエル、レバノン、オランダ…。

 中東だけではなく、ヨーロッパ、ニュージーランドやカナダにも。

 住み慣れた自然風土を捨てて、なぜ地球の裏側にまで行かな
くちゃならないの?

 自治や独立を目指した者は、今日でも迫害の対象になり、逃亡
を余儀なくされます。 しかし逃れた先も、安全とは限らず、温かく
難民として認定してくれる国を目指すしかないのです。

 在日クルド人なるサイトもありました。



    この場でも既出のサイト1年で崩壊したクルド人の独立国
   ~クルディスタン人民共和国
中にある雄弁な図、クルド人
   の居住地域
をご覧ください。





(22) ベンガル語  (D) 弁軽誤

 「ベンガル語 (バングラ) はベンガル人の言語。 主にバングラ
デシュとその周辺で話されている言語。 バングラデシュは、
本来ベンガル語話者が住むベンガル地方全体を指す語で
あった。」

 ベンガルとバングラ。 似ている音なのに、何も知りません
でした。

 でも知らない事は、お互いに「知らない」…と公言する方が
いいですよね。

 下手に知ったかぶりをすると、"弁軽誤" と言われてしまい
ますから…。




(23) ビルマ  (E) 麦酒負

 現ミャンマー。 しかし、かつてはビルマだった国名、どちら
を取るのかは、国際的にも一致していません。 もちろん政治
的思惑が絡んでのことです。

 名称の変更は、国名だけに止まりません。




(24) クウェー川鉄橋  (R) 空栄華私狂

 戦場にかける橋なるアメリカ映画 (1957年) の舞台と
なった、タイの地名。

 「そんな古い映画なんか…」とおっしゃる方でも、"クワイ川
マーチ" はご存じでしょう。 でもこれ、ちっとも楽しい行進曲
じゃないんです。

 敗戦間近の日本軍大佐に扮した、日本人俳優の演技を、
幼少ながら複雑な気持で眺めていたのを思い出します。




(25) リゾート地名  (S) 離住夫千名

 'Resort'。 保養地、観光地、行楽地の意味で使われます。
元の意味は、"頻繁に通う" ことだと教わりました。 だから
保養地なのかな?

 あ、またニースに行きたくなってきた…。




 お疲れさまでした。




報われなかった編曲

2011-11-24 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

11/24 私の音楽仲間 (336) ~ 私の室内楽仲間たち (309)



            報われなかった編曲




         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




                関連記事

                報われなかった編曲
                  2世紀を超えて

                 室内楽で Viola




 先日は、Mozart の クラリネット協奏曲、その弦楽四重奏
による伴奏版についてお読みいただきました。

 編曲者はシュヴェンケ (Schwencke、1767~1822) という、主
にハンブルクで活躍した作曲家、ピアニストだそうです。



 大編成の音楽を、家庭で手軽に楽しむには、当時は自分
たちで演奏するしかなかった…。 その点で編曲という作業
は、今日以上に重要な意味があったことでしょう。

           関連記事 編曲者も偉大!




 もう一人、Mozart と同時代人で、編曲者として知られている
のが、リヒテンタール (Lichtenthal、1780~1853) です。 本業は
お医者さんですが、Mozart に傾倒して、数々の作品を編曲、
紹介したと言われます。

         関連記事 Mozart にも六重奏曲?



 そのリヒテンタールが編曲した、Mozart の 交響曲第41番
に、先日接することが出来ました。



 弦楽器だけの室内楽版でしたが、各パートに複数の人間が
いたとしても、別に構いません。 練習を重ねて公開演奏する
わけではないので、私たちも楽しみましょう。

 今回は、Vn.Ⅰ 1人、Vn.Ⅱ 1人、Viola 2、チェロ 1、コントラ
バス 1…という人数でした。 私は Viola パートです。




 始まる前に Viola の T.さんが、私の隣りに座ります。



 私は、こう尋ねました。 「ご自分の譜面を持ってきた方
が、見やすいんじゃないですか? 譜面台はたくさんあるし、
場所も広いから。」

 それに対して T.さんは、「ちゃんとした弓順が書いてある
譜面をお持ちでしたら、一緒に見せていただけますか?」



 なるほど…。 確かにそのとおりです。




 さて、事前に譜面を見た限りでは、かつて親しんだオケの
パート譜とは、やはりだいぶ違います。

 「次には、確かアレがあるはずだな」…などと予想しても、
まったく別のパッセジが書いてあるので、却って面食らって
しまうほどです。



 第Ⅱ楽章の後半では、第二主題がヘ長調で再現される
部分があります。

 [譜例]は、原曲のその部分をスコアで見たものです。
76小節目から、フルート、Vn.Ⅰ、ファゴットⅠが一緒に、
4分音符で歌い始めます。 Fa-Sol-La…。







 下から2段目の Viola は、La-Sol-Fa と、反対に下降します。




 ところがこの編曲版 (譜例) では、Viola は違う音程で
弾き始めます。

 最初の音は Do、いわゆる "中央ハ" です。



 原曲には、この音域で動くパートはありません。 よく見ると、
「オーボエⅠがオクターヴ下で動いている」…のだと解ります。

 以下、細かくご覧いただく必要はありませんが、木管楽器や
ホルンのパートを演奏する部分が、延々と続きます。







 緑色で塗ってあるのが、原曲の Viola パートと同じ音符です。
でも、やっと最後になってから出て来るだけですね。

 この楽章には、管楽器の美しいソロの動きがたくさんあります。
声部も必然的に多くなるので、編曲者がもっとも苦労した部分
ではないでしょうか。



 それにしても、ファゴットやホルンがペアで動く箇所が、すべて
1人だけなのです。 いざ、演奏してみると。

 3度下で一緒に動くパートが無い! 変です。



 それに、最後から2、3小節前では、ホルンがオクターヴ
の Do の音を刻むはずです。 6連符で。

 ところが演奏してみると、これさえ、どこにもありません。
思わずそこで私は、「・トトトトト」…と、口ずさんでしまった
ほどです。



 "利非点足" さん、足りないよ、音が!

 やはり4パートでは、交響曲の編曲には無理があるので
しょうか? せっかく貴重な作業をしてくれたというのに。



 でもここは、全員が休みで、暇なはずだけどな…?

 どうも奇妙なことばかりです。




 それから2週間が経ちました。 この記事を書いている、今の
ことです。

 私は、メール添付で送ってもらった PDFファイルを、もう一度
よく見てみました。 それはこの曲の各パート譜で、Y.さん
蔵書を、H.さんが事前に各自に手配してくれたものです。

 Vn.Ⅰ、Vn.Ⅱ、Va.Ⅰ、Va.Ⅱ、チェロ。



 何だって!? Viola パートが2つ??



 私は印刷した自分のパート譜を、もう一度よく見てみました。
"Viola" と書いてあります。 黒々と。 活字の色も濃く…。
そう言えばそうだった! この頃はさらう曲が多かったので、
注意が散漫になり、ずっと忘れていました。

 …ということは、幻の Violaの譜面があったはずです。
このときは演奏されなかったパートが!




 このパート譜のファイルを初めて開き、細部を検討すると…、
ありました! 先ほどのホルンの刻みが。

 ちゃんと Do のオクターヴで…。



 ああ、リヒテンタールさん、ごめんなさい!




 私はメールの記録を、もう一度よく読んでみました。
この Violaのパートは誰? 私に間違いありません。
事前に H.さんから指定されたとおりです。

 では、ViolaⅡの方は…。



 これですべてが判明しました。

 あのとき私の隣りに座った*さんが、もし自分の譜面を
取り出していたら…。 それは、先ほどご覧いただいたの
とは別の譜面、Violaだったはずです。



 弦楽四重奏に編曲したのではなく、弦楽五重奏だった…。




 でも、いざ演奏の場になってみると、誰も気付きませんでした。
私も、またパートを割り振った H.さんも。

 ちなみに当の T.さんは、今回はほとんどの曲に出番がある
という、過密スケジュールでした。 「せめてこの曲ぐらいは楽
をしたい」…。 もしそう思ったとしても、誰も責められません。



 まして、私と一緒のパートだと心強いと思ったのかな…。
そんなことはありませんが。

 でも今後は、弓順を書き込んでおくの、もう止めようっと…。




 今回の音源は、第Ⅳ楽章の最後の部分です。
[譜例]の 1/2小節前からスタートします。

 先ほどの第Ⅱ楽章の部分に比べて、ほとんどが
原曲と同じ作業です。



 アルト譜表のオンパレードで、申しわけありません。
最初の音は、ト音譜表の下の方にある Mi の音です。
Re ではありません。







 見にくい譜面で申しわけありません。

 ところで最後の段には、私が書き加えた部分がありますね。
"タン タカ タ タ …"。

 ティムパニ、ホルン、トランペットが奏でる、仕上げのリズム
ですが、これは、正真正銘、どこにもありませんでした。



 T.さんのパート、ViolaⅡにもね…?




 譜面を送ってくれた H.さん、ごめんなさい。

 譜面を提供してくれたのに、今回は参加できなかった、チェロ
の Y.さん、すみません。 今度は一緒にやりましょうね。



 それに、5つのパートを作ってくれたリヒテンタールさん、本当
にごめんなさい。 必ず再演の機会を設けます。

 今回は "災演" だったけど…。




 こちらは原曲の音源です。

       [音源サイト    [音源サイト




ヴィーンの中継プレー

2011-11-23 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

11/23 私の音楽仲間 (335) ~ 私の室内楽仲間たち (308)



            ヴィーンの中継プレー




         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




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                  シューさん命
               音で閉じ込めた静寂
               ヴィーンの中継プレー
                  鎮静か暗澹か
                 年季が入ってるよ
                 聴くにはいいが…




 前回は、シューベルトの 弦楽五重奏曲 ハ長調、その
第Ⅲ楽章についてお読みいただきました。

 この楽章はスケルツォに始まり、中間部たるトリオを挟み、
再びスケルツォの部分を繰り返すという、大きな三部形式
で出来ています。 これ自体は珍しいことではありません。



 中間部は、何らかのコントラストが見られる部分です。

 しかしこの曲では、スケルツォが Presto、3/4拍子、ハ長調
であるのに対して、トリオは Andante sostenuto、4/4拍子
(版によっては 2/2拍子)、変ニ長調でした。 テンポ、拍子、調性
とも、すべてが変わってしまったわけです。



 テンポや調性はいいとして、拍子までが変わってしまう例は、
この時代の作品としてはあまり思いつきません。 対比が要求
されるトリオとは言え、シューベルトはなぜ、そこまでする必要
に迫られたのでしょうか?




 スケルツォの前身とされることもある、メヌエット。 通常は
やはり 3/4拍子です。

 優雅な宮廷舞曲であったメヌエット。 その中間部、トリオは、
踊りの間の休憩や、気分転換を思わせるものでした。 そして
一息付くと、また踊りが始まります。

 コントラストと言っても、舞踏会の雰囲気が、この中間部で
ぶち壊しになっては困ります。 テンポも調性も、刺激的で
あるよりは、温和なものが好まれたことでしょう。




 Mozart の40番の交響曲 (1788年、ヴィーン) では、ト短調の
メヌエットに対して、トリオがト長調。 もちろん拍子は 3/4
のままですが、ここでは、新たな美しさが聞かれます。  

 厳格な対位法や、それにヘミオーレまであるメヌエットから
解放された、自由で伸びやかな歌。 ここでのメヌエットは、
もはや "優雅な踊り" ではありませんでした。



 ヘミオーラ (単数形) は、たとえば 3/4拍子×2小節 (四分音符が一拍) を、
実質的に2/4拍子×3小節、あるいは3/2拍子×1小節 (二分音符が一拍)
と同等に書き換える方法です。 そこではリズムが「弱弱/弱弱」から、
弱/弱/弱」のように変わります。




 またトリオでは、短調から長調に変わるだけではありません。
楽器の数や、全体の音量が減ります。 同時に、オーケストラ
全体が入り組んだ、複雑な音楽は影をひそめ、木管を始めと
する、各楽器の柔らかな音色のソロが際立ちます。

 しかし、それは束の間の休息でした。 冷徹な f のメヌエット
が始まると、聴く者は再び厳しい現実に引き戻されるのです。



    "ヘミオーレ"、"トリオ" 関連記事 いつも元気で など




 スケルツォとなると、室内楽の分野では Haydn が盛んに
用い始めました。 しかし、交響曲にこれが登場するのは、
Beethoven になってからのことだと言われます。



 あの第九交響曲 (1822~24年、1824年初演、いずれもヴィーン) は、
第Ⅱ楽章が、実質的にはスケルツォですね。

 ニ短調、3/4拍子で始まり、ニ長調、2/2拍子のトリオがあり
ます。 テンポは "Molto vivace" から "Presto" になり、調性、
拍子、テンポとも、ここではすべて変わってしまいました。



 彼が拍子まで変えざるを得なかったのは、なぜなのか…?

 それは、この曲が「数々の異質な楽想の、対立と融合を
目指している」…ことを考えると、理解し易いように思います。



 先ほどの Mozart の交響曲に比べると、その語法は "絶対
音楽的" に感じられます。 と言っても、「個人の内面に立ち
入る」…ことを、曲が許さない…という意味でです。

 同じ純音楽的な手法を用いていながら、「自己の心情を吐露
している」、あるいは、「聴く者にそれが感じられる」…という点
では、Mozart のこの曲の方に、私は人懐っこさを感じます。

 その点、ここでの Beethoven は、「音楽が鉄の鎧を纏って
いる」…ようにさえ感じられます。



 しかし Beethoven にも、"スケルツォ"、"トリオ" という表記は、
以後、すっかり見られなくなります。

 同じ時期に筆を進めていた、変ホ長調 Op.127 の弦楽四重奏
(1822~25年、1825年初演、いずれもヴィーン) 以後、彼にとっては
"楽想の交代" が必要不可欠のものになっていきます。 なに
も、「スケルツォとトリオに限らない」…のです。

 テンポも拍子も調も、自由に変わってしまうことが、当り前の
ようになります。 これは、第九の第Ⅲ楽章を見ても明らかで
しょう。

 終楽章に至っては、この点だけでも "交響曲の形式の破壊"
でした。 同時代人にとっては、巨大な怪獣が出現したような
驚きだったと思われます。




 同じ音楽の都に住むシューベルトも、この第九には大きな刺激
を受けたことでしょう。

 それは、"スケルツォとトリオの対比" という、小さな問題に限り
ません。 目指す音楽に差こそあれ、伝統や常識に捉われない
自由な態度を、この尊敬する大先輩から受け継いだことでしょう。




 話を五重奏曲に戻しましょう。 スケルツォ楽章の拍子が問題
になっていました。



 トリオの拍子が、「3拍子系から2拍子系になる」…点は "第九"
と同じです。 しかしここでは、テンポは逆に落着いてしまいます。

 もちろん、雰囲気も正反対。 喧騒の場から、静謐の世界へ、
突如として転換してしまうのです。



 その世界を音で表現するためには、彼には出来なかったので
はないでしょうか。 舞踏の続きを思わせるような "3拍子" を、
このトリオでも続けることなどは。

 彼は立ち止り、自己の置かれた状況を今一度、沈思せざるを
得なかったのかもしれません。 彼の頭から決して離れたことの
ない、死の静寂について思いを巡らせながら。




 スケルツォがハ長調の fff で終ると、Viola とチェロⅡだけが
取り残されます。 そして、「共に階段を降りて行くと、地下には
変ニ長調の世界が横たわっていた」…というのが、私の勝手な
イメージです。

 楽典的に見れば、「遠隔調の変ニ長調を導くために、音階を
使い、ヘ短調を経由しただけ」…なのですが。



 譜例は前回と同じ Viola パートで、青く塗った部分だけ
が、音源 (前回と同じ) でお聞きいただける部分です。

 この静かな変ニ長調を肯定すること、二回。 それは
最初の繰り返し記号までの部分です。







 これを越えると、変ロ短調が聞かれますが、結局は変ニ長調
に落着きます。 繰り返し記号の後、8小節間の部分です。

 次いで、pp で転調しながら彷徨い続けますが、次の繰り返し
記号の前で待ち構えているのは、またもや変ニ長調。 盛んに
安息を誘うような、何とも薄気味悪い世界です。



 転調は、ppp でさらに続きます。 しかしひたすら彷徨うだけ
で、新たに見えて来る物は何もありません。 やがて至近距離
から、再び舞踏のリズムが聞えてきます…。



 楽式的に見れば、単に変ニ長調からハ長調へ転調しただけ。

 しかし場面は ppp から、再び ff の世界へと激変します。




         弦楽五重奏曲 音源ページ]




 なお余談になりますが、同じ第九交響曲を聴いて感銘を受けた
人物に、アントン・ブルックナーがいます。 時がだいぶ経った
1866年のことですが。 彼は、王立音楽院の教授、ジーモン・
ゼヒター
に教えを請うために、はるばるリンツから通っていたの
です。

 1867年には師ゼヒターが亡くなり、後任教授の最右翼として
抜擢されたのが、ブルックナーでした。 翌1868年にはヴィーン
に移住し、リンツは貴重なオルガ二ストを失うことになります。

 しかし、交響曲作家として身を立てることを決意していた彼に
とって、これはまたと無い転機になりました。 恩師ゼヒターは、
修業中の作品発表を、固く禁じていたからです。 以後、9曲
以上の交響曲が残されたのは、私たちにとっても幸いなことで
はなかったでしょうか。



 ちなみに、彼がゼヒターに師事した期間は7年間です。

 そして、同じゼヒターの下に数ヵ月通っただけで、この世を
去ってしまった作曲家。 それがシューベルトでした。 その
間には、30~40年ほどの隔たりがありますが。




 シューベルトとブルックナー。 二人が出会ったことなど、
もちろんありません。 しかし、この二人のオーストリアの
作曲家の音楽には、幾つか共通点があります。



 一つには、"絶対音楽的で、高邁な楽想" と言うよりは、
"素朴な民衆の歌謡" が聞かれる点で。

 そして、"極めて鋭敏な調性感覚" を持つ点で。

 またそれが、「自己の内面を表現し、伝えるのに不可分
の効果を上げている」…点で。

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 ちなみに彼の交響曲には、スケルツォとトリオの拍子が異なる
楽章が、やはり幾つか見られます。 以下はその例です。

 彼が "スケルツォとトリオの歴史" を意識していた…などとは、
とても思えませんが…。

 しかし結果的には、Haydn、Mozart、Beethoven、Schubert…
とヴィーンに生きた諸先輩の流れを、この点でも受け継ぐことに
なってしまったのです。



 以下の表記は、上段がスケルツォ、下段がトリオ、

また、左から、拍子、調性、テンポ…です。



 第4交響曲 変ホ長調 (1878/80版)。
   2/4、変ロ長調、Bewegt。
   3/4、変ト長調、 Nicht zu schnell。

 第5交響曲 変ロ長調。
   3/4、ニ短調、  Molto vivace (Schnell)。
   2/4、変ロ長調、Im gleichen Tempo。

 第6交響曲 イ長調。
   3/4、イ短調、  Nicht schnell。
   2/4、ハ長調、 Langsam。

 第8交響曲 ハ短調。
   3/4、ハ短調、 Allegro moderato。
   2/4、変イ長調、Langsam。



 なおトリオの調性は、開始の時点では不明確だったり、
また不安定なものが多く見られます。