MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

10月の記事 ~ 一覧

2009-10-31 01:07:04 | インポート

10/31



      今月の記事の一覧です。



 『今月の記事の一覧』は、毎月末日に掲載しています。



10/01  ピアノ曲集 『四季』 から10月 『秋の歌』
                  ~ チ(ャ)ィコーフスキィ





10/03   頭の体操 (21) 漢字クイズ 問題/解答

10/04   頭の体操 (22) 漢字クイズ 問題




    まるチャンの「何だ、これ!?」

10/05   (19) 変なイヌ! (8)

10/06   (20) このCF、好き? (4) Hなヒト?

10/07   (21) このCF、好き? (5) 仮想テレビ と 朝ご飯

10/08   (22) このCF、好き? (6) クマわし蹴り




    私の室内楽仲間

10/09   (86) Dvořák の 弦楽六重奏曲 ②




10/10   頭の体操 (22) 漢字クイズ 問題/解答




       かわせみコンサート

10/12   ① ~ かわせみの翼に

10/13   ② ~ かわせみの歌 「日本の歌曲」




    私の室内楽仲間

10/14   (87) 二つのニ調




    まるチャンの「何だ、これ!?」

10/15   (23) 変なイヌ! (9)




10/16   頭の体操 (23) 漢字クイズ 問題/解答




    まるチャンの「何だ、これ!?」

10/17   (24) 世界一恐ろしいピアノ曲

10/18   (25) 世界一長いピアノ曲




    まるチャンの「何だ、これ!?」

10/20   (26) 演奏しない曲?

10/21   (27) おと 音 OTO 汚斗 オト

10/22   (28) あと 199億秒




10/23   頭の体操 (24) 漢字クイズ 問題/解答




    まるチャンの「何だ、これ!?」

10/26   (29) 変なイヌ! (10)




    私の室内楽仲間

10/27   (88) プロシャ王四重奏曲ヘ長調

10/28   (89) Mozart の 『不協和音』 (2)
          ~ なぜ不協和?

10/29   (90) Mozart の 『不協和音』 (3)
          ~ どうやって跳ねる?

10/30   (91) Mozart の 『不協和音』 (4)
          ~ 重力と反発力で跳~ねる




10/31   今月の記事 ~ 一覧





重力と反発力で跳~ねる

2009-10-30 00:00:04 | 私の室内楽仲間たち

10/30 私の音楽仲間 (111) ~ Mozart の 『不協和音』 (4)



          重力と反発力で跳~ねる



          私の室内楽仲間たち (91)



         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




                関連記事

                練習時間が無い…!
                  なぜ不協和?
                どうやって跳ねる?
              重力と反発力で跳~ねる
                 Mozart の "混沌"
                 楽章を結ぶターン
               ハ長調のスポットライト
                運命の動機の動機?
                 滑らかな不協和音
                 Mozart の『五度』
                 ハ長調の安らぎ
                 不協和音の余波
                  牙を剥く脇役
                  嫌われる飛躍
                  作品か人間か
                  歩くメヌエット?
                   鋭い演奏者






                      ↑
 「"スピカーレ (spiccare)" が "跳躍する" 意味だというの
はわかる。 だが弦を叩いたら、汚い音しか出ないのでは
ないか?


 「だから、一音一音、弓を弦に "腕で置いたり離したり"
する必要があるのでは? 自分はそう教わってきた…。」



 弦楽器奏者の中には、このような疑問をお持ちの方も
多いことでしょう。 前回はここで終わりました。




 古い話ですが、かつて森正 (もりただし) という指揮者がおられ
ました。 「モリショウ」と呼ばれて親しまれ、駆け出しの頃の私
などは、諦め半分の苦笑いを浮かべられながら先生に叱られ
たという、懐かしい思い出があります。

 その "モリショウ" 先生がよく口にされた言葉に、"叩き" が
あります。



 「弦の人たちね、そこはいわゆる "叩き" でやってちょうだい
よ。 ページ、捲ったところはテンポ速いから、半跳ばしでね。
でもⅡ楽章の八分音符はゆっくりだから、長い弾き気味
ヤツだ。 あ、置いてもいいかな…?」などと、同じスピカート
(跳ばし弓) でも、奏法を細かく区別するように指摘されました。

 ちなみにこの方はフルート出身です。




 話は突然変わりますが、"(まり) つき" をご存知ですよね?
高級なところでは、バスケットボールも同じです。

 「ボールはなぜ弾むのか?」 当たり前のことなので、私も
改めて考えることは、あまりありませんが…。

 まず上からボールを落とします。 時には勢いよく、下向き
の力を加えながら。 しかしボールが跳ね上がってきたら、
今度は上向きの力を出来るだけ邪魔しないようにします。



 結果的に、高く上がれば上がるほど、ボールは再び勢いよく
地面を叩きます。 重力と、ボールの反発力とをタイミングよく
利用すれば、ボールを意識的に持ちあげようとしなくても済む
わけです。 逆にタイミングが悪ければボールは失速し、高く
上がってはくれません。

 "位置エネルギー" などという言葉が浮かんできますね。
跳躍(↑) と落下(↓) を、うまく循環させればいいのです。




 今度はティムパニ小太鼓です。 ゆっくりと、でも規則的に
叩く場合は、タイミングとコントロールが重要です。 しかし原理
は鞠つきと同じで、バチが落ちてくる力をうまく利用しなければ
なりません。

 と言って、下向きの力をいつも加えたままでは、バチは自然
に弾んではくれません。 力がうまく解放されないので、運動の
効率が悪くなります。 結果として、太鼓の皮はバチに押さえ
つけられたままになり、いい音もしません。 バチが上へ向か
おうとする瞬間には、手の力は抜けていなければならないの
です。



 また連打など、細かい音符が多くなると、振幅 (高さ) は概して
狭まります ("p" の場合)。 そして、エネルギーも同時に減らす
ようにしないと、頻繁な反復運動は無理になり、軽い音はして
くれません。

 もはや、バチが半ば自動的に運動を繰り返してくれるように、
うまく任せなければならなくなります。 "腕で置いたり離したり"
は、たとえ試みたとしても、おそらく不可能なはずです。




 反発力なら弦楽器にもあります。 、それぞれの
反発力を利用しない手はありません。



 目標は、運動を効率的に継続させることです。

 それがうまく行かない場合、つまり運動が継続せず、音が
汚くなるとすれば、原因は別に存在します。 原因は、実は
"在り過ぎるほど在る" ので、ここではあまり深入りしないよう
にしたいのですが…。



 ① 弦と弓の角度が悪い

 ② "音符の長短" と弓の位置 (先~元) の相性が悪い

 ③ 駒からの距離が近過ぎる

 ④ 上へ跳びたい弓を、 (の位置、重さ) が邪魔している
     (特に "ダウン" を弾いた後)

 ⑤ (Violin、Viola で) 楽器の先端が下がり過ぎている




 このうち、もっとも重要なのはでしょう。 "弦の振動方向"
と "弓の運動方向" にズレがあれば、も、運動の効率
悪くなります。 大半はここに原因があります。

 また弓は着地しにくく、座りが悪くなるので、軟着陸のため
には過剰な労力を要します。 さらに反発力も充分ではない
ので、意識して弓を持ち上げなければならなくなります。




  大まかに言って、弓先短い叩きに、弓元長めで
弾きぎみ
のスピカートに適します。 「先が使えるかどうか」
は、①やとも関係します。

 これは常に変わらない原理なので、たとえ「現時点では
やりにくい」としても、いつか突破口を開くようにしなければ
なりません。




  スピカートは (持続)エネルギーが少ないので、駒から
かなり離れた、(弦の) 張力の少ない場所を使わなければ
なりません。 たとえ "f" の叩きでも! 「最初の衝撃が
ほぼすべて」である点では、ピツィカートに似ています。

 長い音は、"P" でも駒のそばの方がいい場合があります
が、逆に頻繁に弓を反復させる際には、"f" でも、ある程度
指板側を狙った方がいいものです。 弦の摩擦抵抗を少なく
するためで、"叩き" も、広い意味では "反復"の一種です。

 張力の強い "駒の傍" を狙ったままスピカートをやろうと
しても、良い音はまず出ません。 圧力不足でキーキー
言うばかりです。 ちょうどトランポリンの縁の部分に着地
するのと同じで、反発力も充分得られません。 その結果、
奏法に矛盾を抱えたまま、楽器など、道具に責任を転嫁
することにもなりかねません。




 は、『"上弦の月" 奏法』と深く関係してきます。

 私が勝手にそう名付けているだけなので、機会があれば、
またいずれ…。




 は①とも関係があります。

 また先端が下がり過ぎると、受け皿が指板側に傾いて
いるので、弓の着地が難しく、また弦の鉛直方向(↑) の
反発力も、ますます不充分になります。




 以上の諸条件が整えば理想的なのですが、なかなかそうは
行きません。 「置いたり離したり」に神経を遣うことがあっても、
ある程度やむを得ないでしょう。

 「叩いてもいいが、最初の一音だけは、弦の上に置いてから
スタートしろ」という教えもあります。 いわば "折衷案"で、私も
一時守っていたことがあります。 しかしこれでは最初の音だけ
性格が異なってしまいます。



 私の場合ですが、スピカートに限らず bowing (弓使い) 全体を
改善するためには、楽器の構え方自体を根本的に変える必要
に迫られました。 俗に "右手のテクニック" と言う言葉があり
ますが、突き詰めれば「"身体全体のバランス" 次第」であると
考えられます。

 右手も左手も、単独では非常に不器用なもので、個別の改善
を目指すとすれば、膨大な時間と辛い練習を重ねなければなり
ません。 「Violin は幼少から始めなければ "モノにならない"」
と言われてしまう所以です。 




 こういう話題、この場では難しいですね…。 行きがかり上、
細かい事柄まで書いてしまいましたが、「そういう問題がある
のか」程度にお考えいただくだけで充分です。




 最後にただ一言。

 「叩いてもうまくいかないから、叩くのは間違いだ!
とは言えないことだけ、強調しておきたいと思います。




 う―さぎ うさぎ、何見て跳ねる?

 「十五夜お月さま、見て跳~~ね~る…。」




 せっかくそんな無邪気な歌を聞いたとしても、今後は
どうも雑念が入ってしまいそうです。




 「もしお月さまにウサギが居れば、重力は 1/6 だから、
反発力は? と…。」

 「月が上弦のときは、ウサギはどこにいるのかな。
あ、いつもこっち、向いてるんだっけ。」

 「餅ツキや鞠ツキは出来ても、音楽は聞こえないな…。
空気が無いもんね。」

 「悪棒狽汚鈴が駄目なら、しょうがない…。 でも、
弓は重くしなきゃいけないのかな…?」




  (この項終わり)




 「悪棒狽汚鈴?」

     (ページの下端をクリックしてみてください。)




    関連記事



   運動の神秘

   (1) 深奥部の筋
   (2) 筋肉の協調
   (3) 筋肉の反目
   (4) 指先を広げる ①
   (5) 指先を広げる ②
   (6) 指先を広げる ③
   (7) ヴァイオリンで叩く?
   (8) なぜよく打つの江川、西本
   (9) 走者も奏者も面食らう
  (10) 三塁ベースは右折禁止



   楽器の顎当て

   (1) 邪魔な厚み
   (2) 材質の差?
   (3) "厚み"と身体の寸法



   弦楽器の Bowing を巡って

  どうやって跳ねる?
  『重力と反発力で跳~ねる
  身体の動きが音になる
  Bowing は足腰から?
  上下のステップ
  優雅な軟着陸
  頬っぺが痒い…



 「悪棒狽汚鈴?」

    ↓



 悪棒 = あく + スティック

 狽汚鈴 = ばい + お + りん

 "アクースティック・ヴァイオリン"  "acoustic violin"


どうやって跳ねる?

2009-10-29 00:06:18 | 私の室内楽仲間たち

10/29 私の音楽仲間 (110) ~ Mozart の 『不協和音』 (3)



             どうやって跳ねる?



          私の室内楽仲間たち (91)



         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




                関連記事

                練習時間が無い…!
                  なぜ不協和?
                どうやって跳ねる?
              重力と反発力で跳~ねる
                 Mozart の "混沌"
                 楽章を結ぶターン
               ハ長調のスポットライト
                運命の動機の動機?
                 滑らかな不協和音
                 Mozart の『五度』
                 ハ長調の安らぎ
                 不協和音の余波
                  牙を剥く脇役
                  嫌われる飛躍
                  作品か人間か
                  歩くメヌエット?
                   鋭い演奏者






 第Ⅰ楽章の序奏部を乗り切るのに、まる一日かかって
しまい、申しわけありません。 やっと Allegro、4/4拍子の
主部に差し掛かりました。



 前回もご紹介した主題、"Do - - Do Re Mi | Sol - Fa"
が、Vn.Ⅰに登場します。 楽譜をお持ちでしたら、ちょうど
23小節目。 どの音源でも2分以内に始まるでしょう。







 今回ここで注目したいのは、主題と同時に書かれている、
八分音符の粒です。 演奏しているのは Vn.Ⅱと Viola で、
「ポン ポン ポン ポン …」と、1小節にちょうど8回鳴っている
ことになります。 部分的にスラーがかかっていますが、大半
はスタカート気味で、切れて聞こえます。



 これは伴奏音形の一種ですが、テンポを軽快に持続する
ための極めて重要な手段で、俗に "刻み" と呼ばれています。
その性格上、普通はメロディー・パート以外に現われます。

 曲が先へ進むとチェロでも奏されます。 上記のテーマが
再現する際 (155小節目) や、途中の 91小節目、107小節目
などです。




 「軽やか」と言いましたが、ニュアンスは場面によって様々
です。 "p" の場合もあれば、"f" のこともあります。 "短め"
がいいか、"長め" がいいかという問題もあります。 テンポ
が速いか遅いかも、これに関係してきます。

 それらの度合いや組み合わせは、千差万別ということに
なりますね。 ここでは一応 "p" で "短め"、テンポは "速め"
と仮定しましょう。

 なぜなら、それがもっとも頻繁に見られる形だからです。
"p の刻み" はアンサンブルにおける大変重要な技術で、
また問題も多く発生します。




 ここで考えてみたいのは、「"ポン ポン …" と聞こえるように
するには、技術的にはどのように演奏すればいいか」という
問題なのです。 専門的になってしまい、申しわけありません。

 「ポ― ポー ポ― ポ―」でも、「ズ― ズ― ズ― ズ―」でも、
ここでは駄目なのです。

 結論から先に言うと、ここは "叩き" で演奏することをお勧め
したいと思います。



 "叩き" とは、一体何でしょうか。 まさか太鼓のバチなどを
持ち出すわけではありません。 弓の "毛の部分" で叩いて
はどうかという意味です。

 もちろん、弦を "真下に向かって" 叩くわけではありません。
"真横の振動" が弦の本来の目的なので、弓を左右に動かし
ながら叩きます。

 技術的にはかなり難しいのですが、「幼いころから教わる」
ことは稀です。 「ソリストになるために必要だ」とは、あまり
考えられないからでしょう。 しかしアンサンブルには必須の
技術で、これには誰もが苦労します。




 弦楽器を弾く方は、「スピカートのことを言ってるな…」
と、すぐお解りのことでしょう。

 いわゆる "跳ばし弓" のことで、音符を一つ弾くごと
に、弓が弦から離れるような奏法のことです。 弦の上
に置いたままの "置き弓" では、テンポが速めの場合、
どうしても「ズ― ズ―」になりがちだからです。



 これまで弦楽器の奏法に関心をお持ちでなかった方に
とっては、ここまで読んでいただいて、多少解りづらかった
と思います。 申しわけありません。




 その反面、弦楽器奏者の中には、大きな疑問をお持ち
の方も、きっといらっしゃるでしょう。



 「"スピカーレ (spiccare)" が "跳躍する" 意味だというの
はわかる。 だが弦を叩いたら、汚い音しか出ないのでは
ないか?」

 「だから、一音一音、弓を弦に "腕で置いたり離したり"
する必要があるのでは? 自分はそう教わってきた…。」




  (続く)




 音源は前回と同じものです。



] Adagio-Allegro

  2009suko

  Agutti Quartet

  Alban Berg Quartet

  Alban Berg Quartett

  Calder Quartet live

  Counterten0r

  emilyplayscello

  Frances Walton String Quartet

  Lenny Supera

  Leonie Bot; Erin Wang; Daniel Jang; Jennifer Diaz

  pointe4anna

  the Quartetto Italiano in 1952

  Quator Capet

  Quarteto Lyra rehearse



  Samuel Santana-Violin I  Usman Waseem-Violin II
  Oliver Marté-Viola     Yohenny Agramonte-Cello


    Pt1   Pt2




  Sforzando String Camp Chamber Group No. 2



  violin: Tien-Hsuan Lee, Holly Jenkins,
  viola: Daniel Hanul Lee, cello: Benjamin Lash





] Andante cantabile

  Alban Berg Quartet

  Calder Quartet live

  Counterten0r

  Frances Walton String Quartet




] Menuetto [Allegro]

  Alban Berg Quartet

  Calder Quartet live

  Counterten0r




] Allegro molto

  Alban Berg Quartet

  bYG7BF3M

  Calder Quartet live

  Counterten0r

  Frances Walton String Quartet

  Tulpen




全楽章

  アマデウス弦楽四重奏団 1954年11月21~22日録音




楽譜ファイル




    関連記事



   運動の神秘

   (1) 深奥部の筋
   (2) 筋肉の協調
   (3) 筋肉の反目
   (4) 指先を広げる ①
   (5) 指先を広げる ②
   (6) 指先を広げる ③
   (7) ヴァイオリンで叩く?
   (8) なぜよく打つの江川、西本
   (9) 走者も奏者も面食らう
  (10) 三塁ベースは右折禁止



   楽器の顎当て

   (1) 邪魔な厚み
   (2) 材質の差?
   (3) "厚み"と身体の寸法



   弦楽器の Bowing を巡って

  『どうやって跳ねる?
  重力と反発力で跳~ねる
  身体の動きが音になる
  Bowing は足腰から?
  上下のステップ
  優雅な軟着陸
  頬っぺが痒い…



 「悪棒狽汚鈴?」

    ↓



 悪棒 = あく + スティック

 狽汚鈴 = ばい + お + りん

 "アクースティック・ヴァイオリン"  "acoustic violin"


なぜ不協和?

2009-10-28 00:32:10 | 私の室内楽仲間たち

10/28 私の音楽仲間 (109) ~ Mozart の 『不協和音』 (2)



              なぜ不協和?



         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




                関連記事

                練習時間が無い…!
                  なぜ不協和?
                どうやって跳ねる?
              重力と反発力で跳~ねる
                 Mozart の "混沌"
                 楽章を結ぶターン
               ハ長調のスポットライト
                運命の動機の動機?
                 滑らかな不協和音
                 Mozart の『五度』
                 ハ長調の安らぎ
                 不協和音の余波
                  牙を剥く脇役
                  嫌われる飛躍
                  作品か人間か
                  歩くメヌエット?
                   鋭い演奏者






 お茶の休憩後はメンバーが代わります。

 Vn.は私、O.S.さん、Viola S.さん、チェロ Sa.さんです。



 曲は Mozart の弦楽四重奏曲 ハ長調 K.465 です。



 この曲が『不協和音』と呼ばれているのは、冒頭の序奏部
に現われる "奇異な" ハーモニーに由来します。 各和音を
個別に見れば、確かに大胆なものですが、繋留 (けいりゅう)
の連続から出来ていることが解りますね。 音の進行と共に、
"ノーマル" なものへ一旦 落ち着いたり、別の不協和音へ
移り変わったりしていきます。 なかなか解決しません。

    ハーモニーが変わっても、一部の音が非和声音として
   残り、やがて隣りの音へ降下して解決に向かおうとする音
   が "繋留音 (Suspension)" です。 二つ以上存在したり、
   稀に上行することもあります。
            → Wikipedia 中のサンプル





 この序奏でやはり重要なのは、各パートの音の線です。



 "La Sol Fa# …"。

 まず Viola に現われる半音階の3つの音。 一拍遅れて
Vn.Ⅱが、そして Vn.Ⅰがこれを模倣します。 "不協和音"
はこの過程で現われては消え、移り変わっていきます。

 最初は分音符で降する音形だけですが、八分音符
上昇形
がすぐ紛れ込み、それまで同じ高さの音を刻んで
いたチェロも、これに加わります。

 さらに、降する分音符も聞かれ、音符の数も
と変化していきます。 しかし行する分音符だけは、
どういうわけか存在しません。 上昇形は繋留に不向き
だからでしょうか。 あるいは、何らかの深謀遠慮がある
のでしょうか。







 やがてフェルマータと共に、全員が音を延ばし、序奏部が
終わります。 Vn.Ⅰは一人だけ動き続け、"Si Do Re Do"
と装飾音を奏でてから、最後の "Si" に落ち着きます。

 同じ形はすでに15小節目にも現われています。




 Adagio の 3/4拍子は、ここで軽やかな Allegro の4/4拍子へ
と変わり、Vn.Ⅰが新しい主題を奏でます。

 "Do - - Do Re Mi | Sol - Fa"。

 序奏部に現われた "3つの音" は、この "Do Re Mi" という
形を準備するためのものであったことが、ここで判ります。
冒頭の半音階は、上昇する全音階に変わっています。



 直前のフェルマータの箇所ですが、ここで最後まで動いて
いた、Vn.Ⅰ。 装飾音の音階を丁寧に弾けば、この前後の
部分の関連がよく聞きとれます。




 調性は単純明快なハ長調。 テンポも快適で、序奏部の
混沌とした気分は完全に吹っ切れたかのようです。



 そう言えば、いつかどこかで似たようなことがありました。

       関連記事 『ラズモフスキィ 第3番

      (43) ① 『やさしいのに合わない…』
      (44) ② 『減七で幻惑』
      (45) ③ 『序奏は倉庫』    
      (46) ④ 『細く長く』




 あらら、相変わらずちっとも先へ進みませんね。 まだ
第Ⅰ楽章の序奏部が終わったばかりだというのに。



 この主部では、開始と共に現われる、Vn.Ⅱと Viola の
"八分音符の刻み" が、このあと話題になりました。




  (続く)




 音源です。



] Adagio-Allegro

  2009suko

  Agutti Quartet

  Alban Berg Quartet

  Alban Berg Quartett

  Calder Quartet live

  Counterten0r

  emilyplayscello

  Frances Walton String Quartet

  Lenny Supera

  Leonie Bot; Erin Wang; Daniel Jang; Jennifer Diaz

  pointe4anna

  the Quartetto Italiano in 1952

  Quator Capet

  Quarteto Lyra rehearse



  Samuel Santana-Violin I  Usman Waseem-Violin II
  Oliver Marté-Viola     Yohenny Agramonte-Cello


    Pt1   Pt2




  Sforzando String Camp Chamber Group No. 2



  violin: Tien-Hsuan Lee, Holly Jenkins,
  viola: Daniel Hanul Lee, cello: Benjamin Lash





] Andante cantabile

  Alban Berg Quartet

  Calder Quartet live

  Counterten0r

  Frances Walton String Quartet




] Menuetto [Allegro]

  Alban Berg Quartet

  Calder Quartet live

  Counterten0r




] Allegro molto

  Alban Berg Quartet

  bYG7BF3M

  Calder Quartet live

  Counterten0r

  Frances Walton String Quartet

  Tulpen




全楽章

  アマデウス弦楽四重奏団 1954年11月21~22日録音




楽譜ファイル




                お知らせ



 弦楽四重奏など室内楽を愛される方で、東京近郊で練習場所が
緊急に確保出来ず、お困りのことがありましたらご一報ください。
拙宅の別棟内の一室をお使いいただけます。 (もちろん無料です。)

 場所は小田急沿線の世田谷区内です。 「ただ場所がある」と
いうだけで、室内も整ってはいませんが。

 詳細はメールでお問い合わせください。        maru



それぞれの "プロシャ王"

2009-10-27 02:02:46 | 私の室内楽仲間たち

10/27 私の音楽仲間 (108)



           それぞれの "プロシャ王"



          私の室内楽仲間たち (88)




   この集いは、すでに何度かお読みいただいているグループです。

         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




                関連記事

              それぞれの "プロシャ王"
                   探究心の塊
                  五重奏の響き
                  参入者の対話
                みんなで弾いても怖い




 今回のメンバーは、Violin が私、San.さん、Viola は Sa.
さん
、チェロ Si.さん。 いずれもおなじみの方々です。



 曲は Mozart の弦楽四重奏曲第23番 ヘ長調
「プロシャ王第3番」K.590
です。




 この曲は、『プロシャ王』シリーズの他の二曲同様、チェロ
が大活躍します。 音域の広さ、動きが速くて難しい点でも、
奏者が筆頭に挙げる曲かもしれません。 それをSi.さんが
難無くこなしている様子は、聞いていてほれぼれするほど
です。

 その上、またコントラバスの名手でもあるのですから驚き
です。 プロシャ王じゃないですよ。 Si.さんのことです。
学生時代にはある所でご一緒し、私の下手な Viola を、
真後ろの高い位置から観察しておられたことになります。
そう言えば、何となく王様のような気品と威厳を感じさせる
Si.さんです。 自分の過去を知る王様…(冷や汗)

 その後 (10×α) 年を経て再会したのが、この室内楽の場。
それはちょうど一年前の 10月27日のことでした。 以来、
数えてみると、ご一緒した機会は10回を軽く超えます。

    関連記事  (3) BRAHMS と 『我が生涯から』




 お世話係のSa.さん、今回は Viola です。 この曲では、
チェロに匹敵するほどの大活躍です。

 「あ、うまく行かなかった!」と口にしながら、指使いを
確認するときの、何と楽しげな表情! 心から室内楽を
楽しんでおられるのがわかります。




 Violin のSan.さんは、「室内楽の経験は大変浅い」と言って
おられます。 でも、もしそうなら驚くべきことです。 合奏の
流れに乗っておられる様子が、いとも自然だからです。

 この曲には、ただでさえ弾きにくくて難しい箇所がたくさん
あります。 自分のパートを正確に演奏するだけで、大変な
はずなのですが。 特に終楽章は、Vn.Ⅰ以上に重要な動き
がたくさんあります。

 事前の練習は、当然のことながら "一人だけで" しか出来
ません。 それが当日になって、四人で音を出す場に突然
投げ込まれ、「決められたとおりにやれ!」と強制されるの
です。 それがどんなに大きなプレッシャーか、よくお解り
いただけるでしょう。

 周囲を聴き、テンポをキープし、アンサンブルを作り上げる
こと以上に難しい問題があります。 それは、「休符、お休み
の小節などを正確に数えてから弾き始めること」です。 これ
は "慣れ、経験の回数" によるところが大きいと思われます。
一人で "練習する" ことはしないのが普通ですから。

 音符を弾き終えると "同時に" 休符、休みの小節を数え
始め、たとえその先の挑発的な難所が眼に入っても、委細
構わず冷静に数え続けなければなりません。 弾き始める
のは早過ぎても遅過ぎてもいけません。 何度経験しても
嫌なものです。




 ちなみに自分の話になりますが、"合奏の経験" という点
だけ取ってみれば、一応 (10×α) 年ということになります。
それだけの積み重ねがあり、その経験だけでカバーして
いる面も多々あります。 休みを数え違えても、気付いたら
すぐ「辻褄を合わせ」、素知らぬ顔をする図々しさも、最近
は板に付いてきました。

 それはおそらく私だけではないでしょう。 周囲にかける
迷惑が、結果的に少しでも少なくなればいいのです。

 その諸々の "長年の慣れ" を、San.さんは "僅か数日"
で処理しなければならなかったことになります。 一人で
"仮想" 体験した際は、一体どれほど努力されたことか、
私にも痛いほど解ります。



 他の3人がそれほど大変だというのに、私自身のパート
も決して易しくはありません。 細かい動きを正確に弾く
のは、はっきり言ってかなり困難です。 この日にも、「あ、
やっぱりミスった」と白状する箇所が、実は幾つもあります。




 しかし、仲間と一緒に音を出す機会があるというのは、
何と恵まれたことなのでしょうか。



 そして、共有する喜びは深いに越したことはありません。
すべては、"今日" という一日で決まります。 この日も、
二時間弱という限られた時間内で、全員が "そこそこ満足"
できるような結果を得るというのは、やはり難しかったかも
しれません。

 時計を見ながら、「では、もう一度やりたい楽章をリクエスト
してください」と口走る、自分の決まり文句。 何とも能があり
ません。 おまけに、内容も趣も深いこの曲! 時間を超過
してしまいそうです…。



 あ、案の定、第Ⅳ楽章が終わりきらないうちに、別室の
メンバーがやって来ました。 そう、お茶の休憩です。




 音源です。



Ⅰ: Allegro moderato

 Alban Berg String Quartet

 ELYX Quartet

 Furman Band and Orchestra Camp String Quartet

 Vaghy String Quartet



Ⅲ: Allegretto

 Mozart's Best Music! (Part 6)

    残念ながら MINUETTO 部分だけです (8'45" ~)。

      前半はViolin Sonata K378 の第Ⅰ楽章です。




Ⅳ: Allegro

 ELYX Quartet

 Vaghy String Quartet




楽譜ファイル

 






                お知らせ



 弦楽四重奏など室内楽を愛される方で、東京近郊で練習場所が
緊急に確保出来ず、お困りのことがありましたらご一報ください。
拙宅の別棟内の一室をお使いいただけます。 (もちろん無料です。)

 場所は小田急沿線の世田谷区内です。 「ただ場所がある」と
いうだけで、室内も整ってはいませんが。

 詳細はメールでお問い合わせください。        maru