08/04 私の音楽仲間 (293) ~
私のオーケストラ仲間たち (26)
シンバルなら顔を挟む?
カテゴリー 『私のオケ仲間たち』
先日は、『"ブルックナー" なら Viola ?』という記事を
お読みいただきました。
これ、「ブルックナーの曲を弾くなら、Viola に限る」…という
意識が私にあるからなんです。 ただし、Violin と Viola しか
弾けない私からの、一方的な見解ですが。
ブルックナーと言えば、交響曲作家ですね。 オーケストラの
中低音域を司る Viola には、瞑想的で美しいメロディーが頻繁
に書かれているのです。
ところで、彼の用いる技法で目立つのは、ヴァーグナ風の
和声展開。 パート譜には臨時記号で埋め尽くされる箇所も
あり、何調のパッセジなのか、一見しただけでは解りません。
その上、彼はオルガンの名手。 右手は白鍵、黒鍵の別
なく、自由に駆け巡ります。
きっと、そんな意識で書かれたに違いない、Violin の皆さん
のパート。 本当にご苦労様です。 加線が何本も書かれた
高い音域で、#や♭がひしめいているのですから。
でも、たまに現われる、全音符の連続。 「しめた、左手
が易しいぞ!」…と喜んだのも束の間。 よく見ると、どの
音符の上にも "ヒゲが3本"。
そう、トレモロなのです。 右手を頻繁に、細かく動かさね
ばなりません (正確には、主に指先ですが)。 時には、一小節に
20~30回も。 これ、弦楽器奏者には嫌われることが多い
ようです。
そして、Violin のトレモロをバックに、悠然と歌い続ける
Viola やチェロ。 この時ばかりは、「Violin の皆さん、本当
に申しわけありません…」の一言です。
…こういう事情があるからか、「Violin奏者としてブルックナー
を好きな方」は、そう多くないでしょう。
しかし、以下のように発言した方も、かつておられました。
「自分が森の中の一本の木になったような気がした。」
昔々あるところで、BRUCKNER を一緒に演奏した学生
さんの言葉です。 Violin の達者な方でした。
この至言、何十年経っても私の記憶からは決して消えま
せん。 鳴っている音楽の全体を聴き、味わわないと、こう
いうことは、なかなか言えませんね。
ちなみに、やはり「ブルックナーに冷遇された」…と感じる
オーケストラ奏者には、ほかにフルート、ファゴット、コントラ
バス奏者がいるようです。
とりわけ、シンバル奏者。 この楽器は、「どの版を用いる
か?」…という観点からも、しばしば問題になります。
…ね? こう見て来ると、なぜ「Viola に限る」のか、お解りでしょ?
高音域、低音域の色々なパートの音がよく聞えて、音楽全体を
味わえる。 その上、たまに "泣かせるメロディー" が出て来るの
ですから!
では、ブルックナーと比較されることの多い、マーラーでは?
Violin と Viola を比べただけでは、「特に大きな差は無い」…
というのが私の考えです。 忙しさは、両方ともそれほど変わり
ませんし。 ただ、超高音の目立つのは、やはり Violinさんの方
でしょう。
ただし例外もあります。 「Viola がシビれてしまう」…ような。
"辞世の歌" とも言われる、第9番の最後。 中低音の長い
"A♭" で終ります。 身が震えるような緊張感を煽る、静寂の
中で弾き始める。 文字どおり、弓が震える場合も…。
また未完の第10番の第Ⅰ楽章では、やはり静寂が支配する
中で、高音の "F♯" を決然とフォルテで鳴らさねばなりません。
あの、ショスタコーヴィチの第5番の "E♭" にも劣らぬ緊張感
を伴います。 両者とも、音程には100%の自信が必要です。
一方、室内楽の分野では、マーラーは特に目立つ作品を残し
てはいません。 16歳の年のピアノ四重奏曲 (イ短調の断章)
ぐらいでしょうか。
弦楽合奏のための編曲作品には、Beethoven の 弦楽四重
奏曲第11番『セリオーソ』、Schubert の 弦楽四重奏曲第14番
『死と乙女』があります。
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ところで最近のことですが、私は、ある市民オケの方々と
MAHLER をご一緒する機会に恵まれました。
オーケストラの名は、神戸市民交響楽団。 ここには、友人の
K.君がいます。 同年代ながら、私の "オケと室内楽の師" とも
呼べる存在です。
曲目は、交響曲第6番。 『悲劇的』の名で親しまれている曲
です。 私の今回のパートは Viola で、自分にとっては、ほぼ20
年ぶりに "再会する" 曲でした。
この長大な曲について記すと、大変なことになってしまいます。
どのパートも大変難しい上に、音楽の内容が込み入っている。
それなのに、かなり精度の高い演奏を皆さんがしておられたの
には、本当に驚きました。 どの日の練習も。 そして、もちろん
本番も!
高々 "週一回" の練習で、あれだけの結果を出せたのは、各々
が、かなりの準備を「"自宅で" こなしていたから」に他なりません。
さて、この曲でよく話題になるのが、"ハンマー" の採用です。
もちろん "楽器" として! シンバルを使うのをためらった
ブルックナーとは、えらい違いです。
これ、"運命の打撃" を表わすそうですが、視覚的な効果が
大きいですね。 もちろん、「バーン!」と、凄い音がしますが。
でも、具体的に用いる "楽器の素材" については、細かい
指定がありません。
下の写真では、木製のハンマーを振りおろしていますね。
これに関しては、どのオケのステージでも、それほど大きな
差異は無いでしょう。
では、"叩かれる物" の方は?
この写真では、よく解りませんね。 画面の左下隅に
ちょっとだけ見える、青い物体なのですが…。 これ、
何だと思いますか?
そこでクイズです。
今回用いられた、"叩かれる物体" を、ずばり当ててください。
正解は、このページの最後にご覧いただけます。
「馬鹿な! こんな写真を撮っている暇は無いはずだろう?
忙しい Viola を、真面目に弾いていたら!」
そうですね。 でもこれ、本番の2週間前のリハーサルの
休憩中に撮ったんです。 みんなで代わる代わるハンマー
を持って、ワイワイやっている最中のこと。
さて、ちょうど私の番のときに、指揮者氏が通りかかりました。
そこで、背中を向けて去っていく彼の頭上目がけ、私はハンマー
を高く振りかざしたのです!
「本当か!!??」
本当ですよ。 でも "振り下ろした" とは言っていません。
別に、「"鉄槌" を下そう」…と思っていたわけではないし。
だって、"鉄製" じゃないもんね…。
もしあのとき彼が振り向き、バレていたら、私は "クビ" ?
その場合、私にとっての "運命のキツイ打撃" になって
いたかもしれませんね…。
材質が違うだけで、結果はこうも違ってきます。
それでは、正解の写真をどうぞ!
如何でしょう。 貴方にとっての "運命の試練" に、今回は
耐えられましたか?
→ 正解の方
→ 不正解の方
↑
ただし、この2種類のサウンドは、この交響曲では使われて
いません。 いくら何でもね…。 演奏後の拍手は別として。
『喜劇的』も、作ればよかったのに…。
さて、この装置を作るのに、上の写真の打楽器奏者氏、休日
を丸一日返上したのだそうです。 その仕上げは、視覚的にも
大変美しいものでした。
そしてこの、叩かれる "青い素材" ですが、台座に取り付ける
際の、"ネジ留めの強さ" にも、非常に神経を要するとのこと。
出て来る音量や音質が、大幅に変わってしまうのだそうです。
それに、何回か叩くと「寿命が来る」というので、本番の日の
会場練習では、「今は敢えて弱めに叩きます」…と、指揮者に
断っていました。
努力の甲斐あってか、ハンマー君、本番では素晴らしい音を
立てていました。
この曲の打楽器は、もちろんハンマーだけではありません。
ありとあらゆる打楽器が用いられており、掛け持ちとは言え、
要員の人数も膨大です。
その中には、カウベルまで! カランコロン鳴る個体が、20
~30個はあったはずです。
問題は、これらを吊り下げる装置です。 これもメンバーの
皆さんが作ったのではないでしょうか。
アマチュア オケの打楽器の方々は、本当に大変ですね。
自分で楽器を作り、運ばねばならないのですから。 プロの
奏者は、ほとんどを "任せっきり" にして済むのでしょうが。
今回見ていて、つくづくそう思いました。 弦楽器の私から
も、心から拍手を送りたいと思います。
「何だ? お前は打楽器奏者じゃなかったのか?」
…そのご指摘は私にとって、あまりにもキツイ打撃です!
それに、失礼ですよ…。 本当の打楽器奏者の方々に…。
[音源ページ]
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