飾釦

飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

気ままに新書NO.18・・・「宮沢賢治のちから」山下聖美(新潮新書)を読む

2012-05-29 | 新書(読書)

この歳まで宮沢賢治に興味を持つことなくきました。しかし、宮沢賢治を読むとこんなイマジネーション豊かな作家がいたのかと心底驚かされました。どんな生涯だったのか?伝記映画を2本見てみました。大型書店の文学研究コーナー行ってみれば、あまりにも多い宮沢賢治に関する研究本、それだけ評価も高い作家だったのです。JR東日本がイーハトーヴのキャンペーンをやっていて、勢いつけて花巻の宮沢賢治関連施設も行ってみました。そこは賢治の名前を使った街興しでした。絵本も多々でているのもわかりました。宮沢賢治の経済効果を考えるならば、それは日本文学史上でもトップレベルのものがあるといえるのではないか?と。

 

で、宮沢賢治入門編なのであります。山下聖美という方が書いた新潮新書の「宮沢賢治のちから」は、そんなに文字数も多くなく気軽に読めそうな本だったので、それを購入しました。事前に、賢治の映画2本を見ていたので、あの場面はこのことかなどと映像と文字が一致してくるのでした。それを読んでいると、宮沢家というのは、花巻銀行や花巻温泉の設立にも関わっていたとも言われ、花巻において相当な名家で富を独占していたことがわかってきます。また一方で、遺伝的な病気を持っている一族とも陰で言われていたようなことも書かれていました。いずれにせよ、相当な経済力があったことは間違いないのです。ちなみに、賢治が25歳の時に家出をしたことが新聞記事になったそうで、一青年の家出が記事になるほど有名な家系であったということ。

 

宮沢賢治は信仰面で父親に反抗し改宗をせまり、家業に対しても否定的な態度であったにしろ、経済面ではその父親に依存しっぱなしであったことが、この本にはなんどか書かれてありそれが印象に残ります。賢治がどんなに質素であっても、農民がけっして口にすることができないような料理を食べることができる立場にあったとか、「春と修羅」は父親のお金で自費出版、「注文の多い料理店」は全く売れず父親のお金で買い取ったなどなど。著者の山下氏は、父親の庇護の元にあったことを書き連ねています。

 

賢治作品の豊饒さはどこからているのでしょうか?賢治は「こっくりさん」に夢中になったり催眠術師に弟子入りしたり不思議系に興味を持ったり、自身もたびたび不思議なものを見たりと霊感体質であったそうです。また、触覚、聴覚、嗅覚、視覚、味覚といった五感のみならず第六感までが敏感で研ぎ澄まされ、おまけに共感覚(外部からの刺激に対し色や形は眼、音は耳というふうに別々の器官で認識されるのですが、一つの刺激に二つ以上の器官が反応し感覚が混同すること)の持ち主でもあったのでは、と書かれてありました。そこに強度な法華経信仰がそうした曖昧模糊としたものを裏で支えていたんじゃないのか?と私の勝手な解釈ですが、そんなようなことを想像してみたわけです。

新書で入門 宮沢賢治のちから (新潮新書)
山下 聖美
新潮社
新編 銀河鉄道の夜 (新潮文庫)
宮沢 賢治
新潮社
注文の多い料理店 (新潮文庫)
宮沢 賢治
新潮社
新編宮沢賢治詩集 (新潮文庫)
宮沢 賢治,天沢 退二郎
新潮社

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« イーハトーヴで宮沢賢治の世... | トップ | 朗読『宮沢賢治が伝えること... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

新書(読書)」カテゴリの最新記事