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トレーディングで成功する41の原則から(4)

2005-07-24 07:05:21 | 行動ファイナンス理論など
7月18日の「情報リスクの4原則」に続いて、今日は行動ファイナンス理論の実践原則から「アンカリングのリスクの9原則」について思うところを考えてみます。

アンカリングとは、その人が、意識的または無意識に重視し、最終判断に影響を及ぼすような、情報、意見、または人のことです。

(1)単一のアンカーに頼ってはならない。特に楽観的な予測と悲観的な予測をバランスしてみることが重要である。

単一のアンカーに頼って失敗したのは、今年の2月につけた1ドル101円の円高の時の見通しでした。特に新聞の論調では、90円の円高もありうること、またこれまでも一時的に円安に振れても、それは3週間ほどしか続かず、また円高になるといった見通しがなされておりました。現に筆者は2003年の夏に120円少々でドルを買いましたが、その後2度にわたっての大きな下落を経て101円まで来ていました。もうこれ以上の損失は勘弁して欲しいとの気持ちから、この情報を過度にアンカリングし、2月にドル預金を101円の最安値で解約し、その後105円に戻した3月にドル建ての投資信託まで解約しました。後から振り返ると最悪のタイミングでした。実は、昨年からの第一生命経済研究所の嶌峰さんのレポートでは、中長期での円安が報告されていましたが、短期的なドル・円の動きの前に、その意見をバランスをとって解釈をすることができなかったのです。投資信託を解約する際も相手の営業部長からは、「これからはアメリカと日本の金利差から円安に向かう」との助言を、営業トークとして軽くみてしまいました。もっと、他の情報源をきちんと見るべきだったと反省しております。

(2)取引にかかわっているアナリストの予測レンジ(幅)は、自己正当化のために、普通、極度に狭いことを忘れてはならない。

新聞やシティバンクのマーケット情報でのアナリスト予測は、まさにこのやり方ですね。週末までのイベントに対する為替や株価への影響度に限っての狭い範囲での予測が中心です。「基本的な方向はどちらを向いていて、現在はこういう材料がありこうした局面にあるので、マーケットがこういう風に反応している」、といった大所高所に立った上での解説というのはあまりないように思えます。テロを巡るメディアの報道なども同じ傾向ですね。局所的な情報ばかりが報道され、どうしてイスラム世界とキリスト教世界が反目するに至ったのか、十字軍あたりまで遡る歴史的な流れを踏まえての報道はまずありません。これはニュース性にこだわらざるを得ないマスメディアにのみ頼るのではなく、関係する良質な本を数多く読むことによって、宗教を巡る問題と現在のアメリカの新保守派の政治的な思惑、戦略などを合わせて理解しなければ解けないと思います。同様のことが株式についても言えるのではないでしょうか。

(3)自分とおなじポジションをもっている第3者の分析や情報で、自分の意見の正当性を確認してはならない。

これだけ継続的に儲けるのが困難な株式投資だからこそ、様々な分析情報が行き交います。その中には、自分の見方を支持するものも多く見つかるでしょう。仕事の企画書づくりでも同じようなことを人はしますね。企画を通すのに有利な情報やデータだけをうまく利用するのです。有能な経営者は、そのようなご都合主義の企画が、本当に会社にとって今の段階で必要かどうかを確認するために、「その企画が実現しない場合には、我が社にどのようなインパクトがあるのか?」という質問をするといいます。それがきちんと説明できない企画には「ノー」と言うためです。同様に、ある株を買いたいと思えば、買うべきでないという人の意見をむしろ沢山集めるべきなのですが、掲示板で両極の意見が飛び交っていても、人は自分が思っている意見を無意識のうちに重くみてしまう傾向があるようです。(もっとも、掲示板というのは信頼できるメディアには入らないと考えた方がよさそうですが。)

(4)キリのいい数字や、心理学的な水準で注文を出してはならない。皆がこの水準に注目しているので、取引が活発になって、トラブルに巻き込まれることが多い。

トラブルに巻き込まれるかどうかは別にしても、確かにきりのいい数字には売買の板が厚く並んでいるようですね。その中に自分が並んでも、順番が回ってくるのが遅くなり約定できず、そのまま持ち越しといったことになりがちです。売買の価格はキリの良い数字で決めるのではなく、市場参加者の多くが、このラインを越えれば買いだとか売りだとか考えている、その金額を基準にするべきでしょう。例えば、前日終値、高値、安値、直近の高値などです。よく見ているとそうしたところで株価がもみ合っていることが多いものです。筆者の場合、売りの目安については、終値が前日安値を抜けなかった、その前日安値を一つの基準にしています。

(5)情報はまずは信じないという態度で接すること。特に、複雑な情報が、信頼できるように思えたときは、逆を考えてみること。

複雑なリポートは、細部で惑って大筋を外しているため、結論がおかしくなっていることが多いようです。本を読んでいても、やたらに細部にこだわりすぎる記述が多く、いったい著者は何が言いたいのかはっきりしない本があります。逆に、あまりにも論旨が明快で、読んでいてすっと入ってくるため、かえって信じがたい思いをする場合もあります。「相場は複雑系」と以前に書いておりますが、トレーディングの世界はゼロサムゲームであることを基本にした場合、複雑系の方程式を解きほぐして、必ず勝てる方程式を導くことは並大抵のことではありません。ましてやその根幹部分を情報として一般に開陳するものでもないでしょう。そのように考えた時にすべての株を巡る情報は何かの意図があって流通していると考えた方がよいかも知れません。後で考えると、「特定筋のはめ込みだった」というような訳の分からない説明がされることもあるようですね。

(6)出所が異なって、おなじ結論のときは、その予測の信頼性は高い。

これは、(1)で言われているように、種々様々な情報源に接してバランスをとって判断するとして、たまたまそれらの情報源が、ロジックは違うかも知れませんが同じ結論を導いている場合は、その予測の信頼性は高いといっている訳であり、当たり前のことですね。例えば、今、半導体業界が調子が良いと言われております。ある人は、これをインテルの増益発表やナスダックの株価で根拠づけをし、また別の人は、半導体のシリコンサイクルから説明し、あるいはBBレシオから裏付け、またある人はパソコン販売の回復を結び付けるなど、異なる立場から同じ結論を得ている場合には、確かに半導体業界は好調かも知れません。しかし、よく考えてみると、株価が反応する来期の見通しという長期のサイクルと、過去のパソコン販売のデータと、業界内だけの特殊な数字であるBBレシオやシリコンサイクルは、本来時間や空間の次元を異にする異質な尺度です。果たして、これらが偶然に波長があっての同じ結論となっているのかどうかは、それらの異分野のニュースソースを統合して評価できるだけの力が必要です。これは個人である我々ができる範囲を超えています。かといって、ある特定の組織に属している人がこれらの情報を加工した場合は、その人が属する組織のバイアスが必ずかかっているものです。要は、何事も一本調子には信頼しないこと、また後で具体的な事実から検証し、良いニュース源とそうでないものを峻別することも必要なようですが、これも難しい。

(7)トレンドは、それが始まったときは、だれも信じていないものだ。皆が行う、トレンドへの追随は、誤りを生む。

これは、日本の稲作型の一勢投資、同質行動に多い誤りと言われています。バブルの時期の投資行動がその典型ですね。清原さんがあれだけの投資成績を上げることができたのも、この同質行動をうまく使ったからだと言われます。現に、彼の属する会社が買った株に人気が出ております。この傾向をうまく利用するのが欧米の狩猟型の投資家だそうです。筆者はどちらかというとへそ曲がりなので、ベストセラーの本はまず読まないし、人気が陰ってきた株をわざわざ買ったりします。それで随分と失敗もしております。そこで、あまりへそを曲げすぎないで、人が群がる取引の多い銘柄にも注目するようになりました。その方がテクニカル指標も素直に反応し易いからです。そして自分なりのテクニカル分析により、一足先に安く買ったり、高く売ったりする「快感」も得られます。逆張りにこだわる理由でもあります。

(8)金の卵は自分がもっているときだけ、価値がある。もし市場参加者の多くがおなじ意見をもっているなら、利益を獲得する取引相手を見つけることはできないだろう。

幸か不幸か金の卵を持ったことがないので何とも批評できませんが、株は相手がいないと買ったり売ったり出来ませんね。そして、「勝ち・負け」も他の誰かの「負け・勝ち」に支えられてます。ということは、皆が同じ意見(上がるという)を持ち、同じ株に参加しているとき、その株はバブル状態になっていると言えます。バブル時代に筆者は株やその他の金融には手を染めていませんでしたが、その時に手を染めていた人の結果はどうだったでしょうか?弱小、零細な個人投資家は、大きなスパンで見るとかなりの損失を出したと聞いております。要は「人の行かない道を行く」ためには、周りの参加者がどのような意見を持っているか、専門家達がどんな見方をしているかを知ることは大切ですが、それは大きな流れ(筆者がドル投資で失敗したようなことにならないための)をきちんと把握するためであり、そして人の行かない「正しい」道を見つけるためであると思っております。

(9)市場参者がカリスマ視する専門家を信用してはならない。自分も他人とおなじ船に乗ることになる。船が沈めば集団でコントロールを失うリスクがあり、パニックに陥る。他のアナリストの意見も求めことが必要である。

これも経験のある方は身をもって実感していることではないでしょうか。考えるべきは、カリスマ視されている専門家には、その意見に追随する人々が多いということですね。そうすると理屈の上では、そのカリスマ専門家が推奨する株の売買の時には、買う時は売り手が、売る時は買い手が少なくなるということを意味します。にもかかわらず、売買が成立して株価が上がっていくということは、全員が安全に降りる(利確する)ことは不可能ですから、いずれパニックになって船が沈んでしまうことは必定となります。つまり逆説的な言い方ですが、カリスマ専門家は、世に知られた時には既にカリスマ性は失われているとも言えます。にもかかわらずその有名なカリスマ専門家を信じて株の売買をするなら、このことのリスクをきちんと承知しておいた方がよいと思います。

何だか、禅問答のようなアンカリングリスクの9原則でした。
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