まきた@VetEpi

酪農学園大学をベースに、発展途上国と日本の獣医疫学に取り組む獣医師のブログです。

頼りがいのあるやつ

2005-12-14 22:55:51 | 学業
12月14日(水)。

昨日に続いて、ウガンダを振り返って行きます。
今日は、「頼りがいのあるやつ」。

発展途上国にはやや慣れているとはいえ、彼ら抜きにして多くの成果を挙げることは出来ませんでした。3ヶ月の間、最も身近にいて、どんなときでも頼りがいのあった、ヒト1名と車1台。

ドライバーのジョゼフは、本当ならば別に支払わなければならないのでしょうが、ルガンダ語とバソガ語の通訳もしてくれ、私の言葉の先生でした。現地語のお陰で、初対面の村人たちともすぐ仲良くなれました。
初めは運転が乱暴でしたが、走り出してからシートベルトをしないこととか、沼地の横で猛スピードで四輪ドリフトをさせないことなど、私の口うるさい指導の末、すっかり安全運転をしてくれるようになりました。
じっとしていると疲れるから、仕事をくれー、という働き者のジョゼフ。また早くウガンダに戻り、タッグを組みたいものです。

エディンバラ大学の眠り病疫学調査プロジェクトで、多くの人の命を救う仕事を手伝った、トヨタのピックアップ。
車体にプロジェクト名が書いてあり、行く先々で人々が、
「とりぱの・・・そみぃゃしす・・・?何しに来たの?」
聞くので、これは古いプロジェクトの名前で、私の研究とは関係ないんだけど・・・と数10回同じ説明を繰り返させられました。
しかし、獣道のような細い道、山道を強引に通って調査を進めることが出来たのは、全く持って日本の技術力と、この車のお陰です。

今日は一番身近だった、「頼りがいのあるやつ」を紹介しました。

人口が減少する村

2005-12-14 08:17:34 | 学業
12月13日(火)。

今日から、来年に国内外で発表する学会への申し込み作業が始まり、同期の博士課程の学生達とともに慌しくなってきました。
まだ結果が出ていないうちから要旨を書くのには抵抗がありますが、こうやっていかないと、学会の参加締め切りは非常に早いので、間に合わないのです。

それはそうと、写真も含め、ウガンダでの活動を、ネットの繋がりがいい今、振り返ってお知らせしていこうと考えました。
今日は私が村々を回っていて、最も衝撃を受けた日、10月28日のことを紹介します。

この日、首都カンパラから100km離れた、カムリ郡で調査をしていました。
すでに調査開始から、100村を回り終わった頃です。
私の質問票で、都市部へ人が流れ込んでくる状況を捉えるため、人口の増減、そして増えた人口は、どこからの移住によってもたらされたか、という一連の質問があります。

これまで、都市部でビジネスオフィスが増えたことにより、人口が減少した、という地域がたった一つだけあったのですが、他は、都市部でも村落部でも、多産文化のウガンダでは、全ての地域で人口は増えていました。

訪れた村は、眠り病の発生地域で、田舎のカムリ郡の中でもかなりの田舎でした。家はほぼ土壁の簡素な作りですが、作物は立派に育ち、美しい村でした。
「ここ5年で、人口は増えていますか、それとも減っていますか?」
という質問に、予想もしていなかった答えが返ってきました。

回答者は一人ではありません。3人と、隣村の村長も一緒でした。他に子供達もいます。しばらく沈黙し、
「なぜ、人口が減っているのですか?」
と聞くと、

「AIDSで皆死んでしまった。今も死に続けている。」
と、女性は答えました。

牛に潜むトリパノゾーマを駆虫することと、同時にツェツェ蝿を駆除する眠り病のプロジェクトで、眠り病に関しては大きな成果を上げた地域でしたが、AIDSの被害はこんな奥地の村でも深刻なのです。

私は、心の中ではしばらくショックを拭いきることは出来ませんでしたが、平静を装い、その後約15分間の質問を続けました。

病気の進行をかなり遅らせることの出来る薬も開発されてきたAIDS。一体この村では、どれくらいの人がキャリアーなんだろうか。罪無く生まれてきて、母乳からウイルスに感染してしまった子も多いことだろう。インタビューで答えてくれているこの人たちもキャリアーかも知れない。

改めて、ウガンダにおける深刻なAIDSの実態を認識し、それでも何も出来ない自分の無力さを感じました。