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既存住宅を活用する政策へかじを切れ

2015年05月27日 | 日記
既存住宅を活用する政策へかじを切れ
2015/5/27 3:30 日経朝刊

 国土交通省が住宅政策の指針となる住生活基本計画の見直し作業を始めた。社会資本整備審議会の分科会で議論し、来春までに新計画を策定する予定だ。
 住宅政策は今、大きな転機を迎えている。日本の住宅の総戸数は約6060万戸と、すでに総世帯数(約5250万世帯)を大幅に上回っている。26日には急増する空き家対策のための特別措置法が全面施行された。
 住生活基本計画は5年ごとに見直すことになっている。人口減少の加速など最近の動向を新計画に適切に反映する必要がある。
 新計画では住宅政策の重点を新規物件の建設から、既存住宅の流通へとしっかりと移すべきだろう。住宅の流通戸数に占める中古住宅の割合は2013年で14.7%と欧米に比べてかなり低い。現行計画が掲げる20年に25%という目標の達成は現状では難しい。
 安心して中古住宅を購入できるようにするためにはまず、第三者が住宅の状況を調べるインスペクション(住宅診断)を普及させる必要がある。築年数などと併せて診断結果を示せば、適正な価格で取引しやすくなる。
 日本の住宅は築20年を超すと建物部分の資産価値がほぼゼロになる場合が多い。これでは適切に維持管理する動機づけにならない。しっかりと補修した住宅は取引価格が上がるようにしたい。
 中古住宅の購入費とリフォーム費用を一体で提供する住宅ローン商品ももっと広げたい。物件を買い取って再販する事業者の税負担の軽減なども要る。
 多様なニーズに合わせた住宅の整備も要る。例えば、バリアフリー構造で介護が必要になっても安心な高齢者向け住宅などだ。手ごろな家賃で暮らせるシェアハウスなどの需要も大きい。
 まちづくりと住宅政策の連携も不可欠になる。人口減少はますます進む。郊外での無秩序な宅地開発はできるだけ抑制して、コンパクトな街を目指す必要がある。
 日本では景気動向を判断する材料として、住宅の着工戸数を重視する傾向がある。住宅建設を後押しするために住宅ローン減税を拡充することも珍しくない。
 国民が住宅を購入しやすくすることは必要だが、新築物件を過度に優遇するのは時代に合わない。リフォーム投資を促し、何世代にもわたってひとつの住宅で暮らすことができる社会に変えたい。

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