独アディダス社長「ロボで靴生産」 日本工場開設も示唆
日経新聞 2016/7/5 0:42
スポーツ用品の世界大手、独アディダスがビジネスモデルを大きく変えようとしている。柱となるのがロボットや3Dプリンターによるシューズの生産だ。日本経済新聞の取材に応じたヘルベルト・ハイナー社長は「この先の需要増にはロボットによる生産で対応する。欧米の消費地に生産が戻ってくる」と強調。2020年までの日本での工場開設も示唆した。運動アプリを使った健康管理サービスなどデジタル技術をてこに新規事業も拡大、業界首位の米ナイキに対抗する構えだ。
アディダスは5月下旬、ロボットが靴を生産する「スピードファクトリー」を世界展開する計画を打ち出した。17年後半にドイツで、18年に米国で生産を始める。
ハイナー社長は過去30年間、靴生産で欧州から撤退し、韓国、中国、ベトナムとアジアの人件費の安い国を転々としてきた歴史を振り返り、「人件費の高いドイツでも少ない人員でロボットの24時間生産ができるようになった。アジア生産の利点が薄らぐ」と強調した。
靴は衣料品と並び労働集約型産業の象徴とされてきた。消費地である先進国への生産回帰というアディダスの決断は業界での一大転換点となる。
「アジアでの生産では(消費地まで)輸送時間がかかる」とも指摘。「あらゆる産業の動きが速く、製品サイクルは短くなる。消費地に届く時間が今の6週間から、24時間で届けられる」
アディダスは今、週1回のペースで靴の新製品を投入する。もともと靴は用途、色柄、サイズが多様で在庫が膨らみがち。消費地で生産する「地産地消」ができれば、納期を短縮し需要に応じたムダの少ない少量生産が可能になり、流行の変化にも即応できると説く。
現在、年3億足に上る生産規模については「今後、年15%の需要増が見込める。アジアの生産能力は保ち、増加分の年4500万足を(ロボットによる)個別生産で対応する」と説明。「日本は当社にとり4番目に大きい市場。20年までには生産しているだろう」と日本にロボット工場を設けることも示唆した。
デジタル技術を活用した3Dプリンターによる個別仕様の靴生産も視野に入れる。ハイナー氏は「3Dプリンターで靴底の生産を一部でしているが、現状はまだ高額だ」としながら、ロボット工場の「次の段階が3Dプリンター」とも述べた。
誰でも靴が生産できるようになれば、アディダスが運営する大規模工場の意義が揺らぐ懸念もある。だがハイナー氏は「アディダスは個人に靴生産の権利やソフトを販売するようになる」と、むしろ「好機」との見通しを示した。
3Dプリンターにとどまらず、デジタル技術をてこにさらなる事業拡大を図る。象徴が15年に買収したスマートフォン(スマホ)向け運動記録アプリを手掛けるランタスティック(オーストリア)だ。過去の運動履歴や消費カロリーを調べたり、友達同士でジョギングの結果を競ったりできる。世界で1800万人に上る頻繁に使う利用者をアディダス製品の顧客に取り込み、ナイキの同様のアプリに対抗する。
ハイナー氏は、こうした健康管理サービスは最終消費者との接点を増やし、「スポーツ愛好者が当社製品を買うようになる」と相乗効果を指摘。アディダスの将来の事業モデルは携帯電話販売に加えアプリでも収益を上げる米アップルに近い形に進化していくという。
日経新聞 2016/7/5 0:42
スポーツ用品の世界大手、独アディダスがビジネスモデルを大きく変えようとしている。柱となるのがロボットや3Dプリンターによるシューズの生産だ。日本経済新聞の取材に応じたヘルベルト・ハイナー社長は「この先の需要増にはロボットによる生産で対応する。欧米の消費地に生産が戻ってくる」と強調。2020年までの日本での工場開設も示唆した。運動アプリを使った健康管理サービスなどデジタル技術をてこに新規事業も拡大、業界首位の米ナイキに対抗する構えだ。
アディダスは5月下旬、ロボットが靴を生産する「スピードファクトリー」を世界展開する計画を打ち出した。17年後半にドイツで、18年に米国で生産を始める。
ハイナー社長は過去30年間、靴生産で欧州から撤退し、韓国、中国、ベトナムとアジアの人件費の安い国を転々としてきた歴史を振り返り、「人件費の高いドイツでも少ない人員でロボットの24時間生産ができるようになった。アジア生産の利点が薄らぐ」と強調した。
靴は衣料品と並び労働集約型産業の象徴とされてきた。消費地である先進国への生産回帰というアディダスの決断は業界での一大転換点となる。
「アジアでの生産では(消費地まで)輸送時間がかかる」とも指摘。「あらゆる産業の動きが速く、製品サイクルは短くなる。消費地に届く時間が今の6週間から、24時間で届けられる」
アディダスは今、週1回のペースで靴の新製品を投入する。もともと靴は用途、色柄、サイズが多様で在庫が膨らみがち。消費地で生産する「地産地消」ができれば、納期を短縮し需要に応じたムダの少ない少量生産が可能になり、流行の変化にも即応できると説く。
現在、年3億足に上る生産規模については「今後、年15%の需要増が見込める。アジアの生産能力は保ち、増加分の年4500万足を(ロボットによる)個別生産で対応する」と説明。「日本は当社にとり4番目に大きい市場。20年までには生産しているだろう」と日本にロボット工場を設けることも示唆した。
デジタル技術を活用した3Dプリンターによる個別仕様の靴生産も視野に入れる。ハイナー氏は「3Dプリンターで靴底の生産を一部でしているが、現状はまだ高額だ」としながら、ロボット工場の「次の段階が3Dプリンター」とも述べた。
誰でも靴が生産できるようになれば、アディダスが運営する大規模工場の意義が揺らぐ懸念もある。だがハイナー氏は「アディダスは個人に靴生産の権利やソフトを販売するようになる」と、むしろ「好機」との見通しを示した。
3Dプリンターにとどまらず、デジタル技術をてこにさらなる事業拡大を図る。象徴が15年に買収したスマートフォン(スマホ)向け運動記録アプリを手掛けるランタスティック(オーストリア)だ。過去の運動履歴や消費カロリーを調べたり、友達同士でジョギングの結果を競ったりできる。世界で1800万人に上る頻繁に使う利用者をアディダス製品の顧客に取り込み、ナイキの同様のアプリに対抗する。
ハイナー氏は、こうした健康管理サービスは最終消費者との接点を増やし、「スポーツ愛好者が当社製品を買うようになる」と相乗効果を指摘。アディダスの将来の事業モデルは携帯電話販売に加えアプリでも収益を上げる米アップルに近い形に進化していくという。