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市場波乱の深層(上)4兆元と4兆ドルの副作用

2016年01月23日 | 経済
市場波乱の深層(上)4兆元と4兆ドルの副作用
米中の「劇薬」、世界を翻弄
2016/1/23 3:30 日経朝刊

 年初から大波乱に見舞われた世界の金融資本市場。日本の株式相場は22日に急反発したが、不安は収まっていない。米国の利上げを起点に、中国経済の減速と原油安が共振する波乱の構造は根が深い。



 「人民元が消えた」。1月12日昼前、香港の銀行のディーリングルームで悲鳴があがった。元売りを仕掛ける投機筋に業を煮やした中国当局が大規模な元買い介入を実施。金融市場に出回る元は瞬く間に蒸発し、元の香港銀行間取引金利(翌日物)は過去最高の66.8%に急上昇した。香港発の元安を当局がひとまず力ずくで押さえ込んだ。
 だが元離れの奔流はとまらない。より深刻なのは実需の動きだ。

「過剰設備」生む
 3億5000万ドル(約410億円)のドル建て社債を投資家から買い戻します――。福建省の不動産会社、中駿置業控股は6日、社債を前倒しで償還すると発表した。急激な元安はドル建て債務の負担を重くする。前倒し償還は中国東方航空も表明。春秋航空なども検討に入った。
 ドル建て社債を償還するには投資家に渡すドルを調達するために手持ちの元を売る必要がある。必要な輸入代金を早めに確保するための元売りも増えている。「投機と違って実需は規制しにくい」(BNPパリバ証券の河野龍太郎氏)
 問題を複雑にしたのは2008年に打ち出した4兆元(当時の為替レートで50兆円超)の経済対策だ。米金融危機による世界経済の底割れを防いだ一方、労働人口の減少などで潜在成長率が低下するなか投入された大規模な財政資金は、過剰な設備と債務をもたらした。中国の15年の実質国内総生産(GDP)成長率は6.9%と25年ぶりの低水準に沈み、マネーは中国から逃げだそうとしている。
債務膨張を助長
 かたや太平洋をはさんだ米国には投資マネーが押し寄せる。米利上げでドルの投資魅力が高まり、リーマン・ショック後の金融緩和で世界にばらまいた4兆ドル(約470兆円)の資金が戻り始めているのだ。
 「世界の債務は07年からの7年間で57兆ドル(約6700兆円)増加した」。米コンサル大手マッキンゼー&カンパニーはこう分析する。米国発の大量の緩和マネーは世界中の金利を押し下げ、各国の政府や企業の債務が膨張するのを助長した。中国経済が過剰債務を抱える一因になるなど罪作りな存在でもあった。
 「政策当局者はより悲観的なシナリオに備えなくてはならない」。サマーズ元米財務長官は警鐘を鳴らす。米利上げは1994年のメキシコ、97年からはアジア、98年にはロシアと、通貨危機のきっかけを繰り返しつくってきた。
 その歴史といまが違うのは、市場との対話に不慣れな国家資本主義の中国が絡まり合っていることだ。米国の約3分の2の経済規模という大きさと、手荒い為替介入や朝令暮改の市場対応策が、混乱をさらに深めている。かつてのような政策協調も難しい。
 リーマン危機後に「4兆元と4兆ドル」という史上最大規模のカンフル剤を打った世界経済。政府も市場もその後始末に立ちすくんでいる。
(石川潤、NQN香港=森安圭一郎)

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