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息から嗅ぎ取る体の異変 血液検査に代わる役目 期待

2016年02月14日 | 医薬
息から嗅ぎ取る体の異変
血液検査に代わる役目 期待
2016/2/14 3:30 日経朝刊

 吐く息(呼気)に含まれる微量の物質を検出して、健康チェックに役立てる
研究が進んでいる。呼気には体内で起きる様々な反応によって生じる物質が含
まれている。これを分析することで、子どもに多い糖尿病の発見や、食道がん
のリスク判定などに役立てる。将来、健康診断などに使われるようになるかも
しれない。



 東京医科歯科大学(東京・文京)の三林浩二教授らの実験室で、男性がチューブ
の先端に取り付けたセンサーに向かい、ハーッと息を吹きかけた。三林教授は、
センサー技術が専門だ。呼気に含まれるアセトンを検出する装置の開発を進め
ている。目的は、1型糖尿病の早期発見だ。
 1型糖尿病は生活習慣病の2型糖尿病とは違って、免疫機能の異常が主な原因だ。
子どものときに発症することが多く、世界で毎年約9万人の子どもがかかるとされる。
 患者は膵臓(すいぞう)の細胞が破壊され、インスリンが分泌できなくなる
ため、炭水化物に含まれるブドウ糖からエネルギーを取り出せない。体の脂肪に
含まれる脂肪酸を代謝してエネルギーを得るが、このときにアセトンが生じ、
血液によって肺に運ばれて呼気の中に出てくる。
 呼気中のアセトンの量を測るセンサーを開発した。紫外線を当てると蛍光を出
す酵素の溶液を、小さなカプセルに満たした。先端に付けた触媒がアセトンを捉え
ると溶液に化学反応が起き、酵素が減る。カメラで蛍光強度の減少を測って、アセ
トンの濃度を見積もるしくみだ。血液検査より手軽で、痛みもない。
 1型糖尿病は発症しても気づきにくく、子どもがやつれたり、昏睡(こんすい)
に陥ったりして初めてわかることも少なくない。開発した装置は2PPB(PPBは
10億分の1)のアセトンを検出でき、潜在的な患者を発見できる。学校での歯科
検診などの際に検査し、「患者の早期発見、早期治療につなげたい」と三林教授は
話している。
 京都大学の武藤学教授らは、ガスセンサー製造のエフアイエス(兵庫県伊丹市)
と共同で、呼気中のアセトアルデヒドを測る装置を開発した。アルコールは体内の
酵素によってまず有害なアセトアルデヒドになり、さらに別の酵素によって無害な
酢酸に分解される。ただ人によってはこれらの酵素の働きが弱い。
 日本人の約1割は、アルコールは分解でき、飲酒後も顔が赤くならないが、アセ
トアルデヒドは分解できないという。「自分は酒に強い」と思っているため酒量が
多くなりがちで、アセトアルデヒドにより食道がんや胃がん、大腸がんになるリスク
が高い。
 ビニール袋に息を吹き込んでもらい、装置にセットすると約5分でアセトアルデヒド
の濃度がわかる。遺伝子を調べる従来法に比べ、格段に速い。来年にも発売する予定で、
「リスクが高い人を見つけ、飲酒を控えめにしてもらうなどの対策につながれば」と
武藤教授は話す。
 呼気を調べてわかる病気は多い。国立循環器病研究センターはこれまでの研究から
呼気中の水素やアセトンなど、12種類の物質に注目し、貧血やぜんそくなどの病気と
の関係解明を進めている。健康診断に訪れた人に依頼して呼気を採取。質量分析と
呼ぶ方法で呼気中の物質の種類を特定する。その後の健康状態を追跡し、呼気中の
成分と病気との関連を明らかにする。
 これまで約2000人の呼気を採取し、慢性気管支炎の患者は呼気中の一酸化炭素(CO)
が増える傾向があることを見いだした。気道の炎症を抑えるため、酵素がCOを作る
とみられる。一方、気管支ぜんそくでは、免疫細胞のマクロファージが気管内で、
ぜんそくを起こすウイルスや細菌を攻撃するため一酸化窒素(NO)を作る。これが
呼気に混じるとみられる。
 下内章人室長は「生活習慣病やがんの早期診断にも役立つかもしれない」と話す。
今後、被験者の健康状態を追跡調査し、呼気との関連をより詳細に調べる考えだ。
 呼気検査の課題は精度だ。生体ガスの研究が専門の中部大学の近藤孝晴教授は
「糖尿病に特有のガスは1、2種類しか見つかっていない。精度向上には4~5種類
に増やす必要がある」と話す。
 臨床応用を進めるには、測定方法の標準化も必要だ。息の中の成分や食事からの時間
や吐く息の強さなどに左右される。誰でも簡単に測定できて、正確なデータが得られる
条件を探す必要がある。
 「病は気から」という言葉があるが、いずれ「病は気体で」調べるのが普通になる
かもしれない。
(草塩拓郎)

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