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【知の明日を築く】シドニー大 フィールドロボティクスセンター 大規模農業 ロボで安く

2016年04月06日 | 農業
【知の明日を築く】シドニー大 フィールドロボティクスセンター
大規模農業 ロボで安く
日本経済新聞 2016/4/6 3:30

 日本の20倍という広い国土に、日本の5分の1の人口が暮らすオーストラリア。広大な土地を生かした大規模農業や鉱業をロボットで支えようと、シドニー大が1997年に設立したのがオーストラリアン・センター・フォー・フィールドロボティクス(ACFR)だ。




除草剤や肥料を自動散布するロボット=シドニー大ACFR提供
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 コンピューター科学や機械電子工学、数学など様々な分野にまたがる120人の研究者を擁する。屋外で働くロボットを研究するフィールドロボティクスの分野では世界有数の規模を誇る。

 ACFRが取り組む最大のテーマは、コスト削減につながる機械の自動化だ。教授のサラ・スカリエは「農地であれ鉱山であれ、豪州では人件費が経営の大きな課題となっている」と話す。

 経済協力開発機構(OECD)によると、豪州はルクセンブルク、フランスに次いで最低賃金が高く、米国の約1.5倍に上る。強い日差しや乾燥した大地など、過酷な自然環境で働く人手は不足する傾向にある。

 農業団体の依頼で開発した「テントウムシ」という愛称のロボットは、4輪で農地を無人走行する。センサーで作物と雑草を認識し、肥料と除草剤を使い分けてノズルで噴射する。適量しか使わないので、肥料代などを節約できる。

 ソーラーパネルを装着した「テントウムシ」は、晴れていれば太陽光のみで稼働する。機械メーカーに技術を供与するなどして、近く商品化する予定だ。価格は、農家が2年程度で投資費用を回収できる水準に設定する見通しだ。

 スカリエが描く農業の未来像では、農民はもはや農地で働いてはいない。自宅の居間でロボットに指示を与えるだけだ。その未来に向けた一歩が、現在開発中の果樹園向けロボットだ。

 全地球測位システム(GPS)やセンサーなどを使い、農園を無人走行しながら、カメラで果樹を1本ずつ撮影する。農家は花のつき具合などのデータを基に、果実の収穫を予測したり、水や肥料が必要な果樹を特定するなどして、収穫量の増大につなげる。

 現在のところ、ロボットはマンゴーやアボカドなどの果実を認識することはできるが、どの果実を収穫すべきかまでは特定できない。どうやって収穫するかも今後の開発課題だ。それでもスカリエは楽観的だ。「今は豪州でロボットを使っている農家はほとんどいないが、5年後には多くの農家が導入しているだろう」と予測する。

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 農業に先立ち、鉱業では遠隔管理などの動きが進行している。2007年にACFRが英豪資源大手リオ・ティントと設立した「リオ・ティント・センター・フォー・マイン・オートメーション」は、トラックや鉄道の無人走行など同社が取り組む鉱山運営の自動化に一役買ってきた。

 スカリエによると、リオ・ティントはこれまで同センターに約4200万豪ドル(約36億円)を拠出した。「我々の主な役割は、操業効率を向上させる理論やアルゴリズムを開発することだ」とスカリエは説明する。

 ACFRの運営資金の95%はこうした産業界からもたらされている。これまで計60社と共同開発し、現在は7~8社のプロジェクトが進行中だ。研究成果を実用化するだけでなく、産学連携を深めてロボットが活躍する新たなフィールドを切り開こうとしている。

=敬称略

(シドニー=高橋香織)


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