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訪問専門の診療所解禁 厚労省、在宅医療後押し 高齢化、ベッド不足対応

2015年07月10日 | 医薬
訪問専門の診療所解禁
厚労省、在宅医療後押し 高齢化、ベッド不足対応
2015/7/10 3:30 日経朝刊

 厚生労働省は来年4月をめどに、医師が高齢者らの自宅を定期的に訪れて診察する「訪問診療」の専門診療所を認める方針だ。外来患者に対応する診察室や医療機器がなくても開設を認める。政府は高齢者が病院ではなく自宅で治療する地域包括ケア(総合2面きょうのことば)を推し進めている。訪問診療に専念する医師を増やし、退院した患者の受け皿をつくる。




 訪問診療の患者の8割以上は「要介護」と認定された高齢者だ。外来で病院に行くことが難しい。
 訪問診療を広げる背景には、入院ベッド(病床)の不足がある。内閣官房が6月にまとめた推計によると、このまま改革をしないで放置すれば「団塊の世代」が75歳以上となる2025年には約17万床が不足する。
 症状が安定した患者は病院でなく、自宅や介護施設で治療を受けやすくする。
 入院した患者が自宅での訪問診療に移れば、医療費が減るとの見方もある。政府の試算では訪問診療にかかる自己負担と保険給付を合わせた医療費の総額は1人あたり月に約32万円で、慢性期患者の入院(約53万円)より4割安い。入院するとささいな体調不良でも治療を施すため、医療費が膨らみやすいとの指摘がある。
 厚労省は訪問専門の診療所を開く場合に、いくつかの条件を付ける方向だ。施設ごとに担当の地域を決め、住民から依頼があれば訪問することを義務付ける。重症の患者を避けて軽症の患者だけ選んで診察するようなことがないようにする。
 患者が来たときに診察の日程などを相談できるよう診療所に事務員を置くことも求める方針だ。
 こうした規制緩和に加え、医療サービスの公定価格にあたる診療報酬を見直す2016年4月に、訪問診療の評価をどこまで上げて金銭的な動機を与えられるかが、普及に向けたカギを握る。
 健康保険法は患者が好きな医療施設を受診できると定めている。厚労省はこの法律に基づいて、医療施設を訪れた患者を必ず診察するよう施設に義務付けてきた。
 外来患者に対応するため、決まった時間に施設内で診察に応じる必要があるほか、一定の広さの診察室や医療機器の設置も義務付けている。診療時間の半分は外来対応にあてるほか、X線の設備を置くよう求める地域もあるという。
 8月以降に中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関)で議論し、来年4月をめどに訪問診療だけの診療所を認める通知を出す。

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