<都知事選>直言 首都どうする(4) 羽田増便
自宅は飛行ルートの真下にある。秋田操さんは「過去、環境や福祉政策で先進的な取り組みを進めてきた都には国を動かす力がある」と期待する |
◆都心低空飛行に反対 東京連絡会・秋田操さん
羽田空港の周辺地域は一九六〇年代から七〇年代にかけて深刻な航空機騒音に悩まされていた。七九年に引っ越した品川区の自宅付近は十分に一回ぐらいの間隔で飛行機が低空を飛び、外では会話を聞き取りにくくなることがあった。一キロほど南の団地に住んでいた友人は、窓を開けると電話の着信音やテレビの音がまったく聞こえないほどだったという。
東京湾を埋め立てて滑走路を移転する「沖合展開事業」が二〇〇〇年に完了し、飛行ルートが海上になってようやく解消した。だから国土交通省が公表した計画を知った時、沖合展開前に戻ってしまうのかと驚いた。二〇年五輪・パラリンピックに間に合うように国際線の発着回数を増やし、着陸時に都心上空を南下するルートを検討する。国際線の年間発着能力は三・九万回増え、九・九万回になる。
だから反対運動を始めた。私の自宅も飛行ルートのほぼ直下で、着陸機が高度三百メートル程度を飛ぶことが予想されている。住宅密集地なので氷塊などの落下物や大気汚染も心配だ。五月には大韓航空機が羽田空港の滑走路で離陸直前にエンジン火災を起こしたが、もし飛行中だったらどうなっていたか。計画は撤回するべきだ。
舛添要一前知事の在任中、都政はこの問題に積極的ではなかった。「航空行政は国の専管事項」と、対応に腰が引けていた。だが、都は国と対等に渡り合えるだけの力を持っている。新知事が本気で計画に異を唱えれば、国も無視できない。
日本には九十七もの空港がある。経済効率を優先して無理に羽田の発着本数を増やすのではなく、一極集中を解消する努力をするべきではないのか。東京五輪・パラリンピックの開催を大義名分にするべきでもない。各地の空港に分散させた方が、海外から訪れる外国人に東京以外の日本の良さも知ってもらえる。
千葉県など羽田空港離着陸機の騒音に現在も苦しんでいる地域からは、負担の軽減につながると歓迎する声があることは知っている。しかし、この問題で住民が分断されてはいけない。新しい知事には、都民の暮らしを守る取り組みを何よりも求めたい。 (聞き手・小松田健一)
<あきた・みさお> 1938年生まれ。京都市出身。元三菱重工社員。品川など7区の市民団体で「羽田増便による都心低空飛行計画に反対する東京連絡会」を結成、共同代表に就く。