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アイリスオーヤマ/大山氏の同族経営についての考え方

2016年03月29日 | 企業研究
【私の履歴書】大山健太郎(29)同族経営
創業理念守る兄弟の絆 企業の「格」のために上場せず
日本経済新聞 朝刊 文化 (48ページ) 2016/3/29 3:30


 私には4人の弟がいる。若い頃亡くなった次男を除き、他の3人は長男である私の求めに応じ、それぞれの勤め先を辞め当社の経営陣に加わり私を助けてくれた。


家族と(1982年、後列右端が筆者)
 専務の富生は大学で経営理学を専攻、商社で期待される人材だった。当社の経営が傾きリストラに取り組む時に来てもらい私の右腕として相談相手になった。今は営業や人事などマネジメント全般をみる。買収企業の再生でも方向や原則を示すのは私だが、具体的に汗をかくのは富生だ。

 常務の繁生は博士号を持つ技術者で、研究部門を統括する。大手電気部品メーカーで実績を積んでいたが、当社に移ってもらった。LED電球などの電機分野に進出できたのは彼の力が大きい。

 取締役財務部長の秀雄は理学部卒。コンピューターに詳しく、大型汎用コンピューターのシステムを自社開発し、後にパソコン化も成功したのは彼のおかげだ。グループ全体の金庫番でもある。

 兄弟の絆の核には、母の敏子を思う気持ちがある。

 商売人の父は家を空けることが多く、家の切り盛りは母が一手に担った。町工場を構えて6年後に父が亡くなり19歳の私が社長を継いだ時、母はまだ40歳ほど。8人の子供を抱え、気丈にふるまい泣き言ひとつ口にしない。従業員が帰った後は2人で作業場を掃除した。母と二人三脚で会社を軌道に乗せたのだ。

 韓国・慶州の旧家で厳しく育てられた芯の強い女性だった。私がつきあいなどで午前2時、3時に帰宅すると、布団の上に座って待っている。女性が家長を寝ずに待つのは当然という考えからだ。そんな母を喜ばせたくて私も弟も頑張った。一昨年、92歳で病没。人生の前半は苦労が絶えなかったが、後半は幸せだったのではないか。

 私の長男晃弘も留学後、当社に入社し海外事業を統括している。持ち株会社の代表は既に息子に譲った。グループ企業でまだ私が社長を続けているのはアイリスオーヤマを含め2社程度。それもあと5年、75歳がめどだと考える。弟らの役割は優秀な社員たちが担ってくれるだろう。

 当社は株式を公開していない。何度もお誘いを受けたがお断りしてきた。私にとって大事なのは、事業内容よりも「創業の理念」がきちんと引き継がれることだ。そのためには血のつながった人間による「株式非公開の同族経営」が一番いいように思われる。

 「東証1部上場」は立派な会社の証明と思うが、本来、上場とは資金調達に必要だからするものだ。幸い今は資金の心配はない。今の日本には上場のメリットより問題が多いと感じる。「ガバナンスに役立つ」という主張も、実態を見れば疑問を禁じ得ない。まして企業の格や名誉のために上場を目指しては本末転倒だ。

 私は自分の思う理想の会社像を追求したい。目先の株価のために事業や人を切り捨てさせ、未来の芽を摘み、株価をつり上げ売り抜ける「投機家」のために時間を費やしたくない。そうした種類の株主から口出しされ経営を誤れば被害は従業員にも及ぶ。

 株式公開すれば創業者利益を手にできるのだろう。しかし志を曲げ、自由に指揮できなければ意味がない。トップに大事なのは高い志とそれを実現するリーダーシップだ。株式公開は弊害が大きい。当社の上場は当分ないだろう。


(アイリスオーヤマ社長)


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