変化を受け入れることと経緯を大切にすること。バランスとアンバランスの境界線。仕事と趣味と社会と個人。
あいつとおいらはジョージとレニー




内閣調査室。

「内調」とあだ名されるこの組織の実体を知る者は少ない。

米国のCIAとFBIや英国のMI5とMI6だと説明されることがある。
超法規的な戦術を含めて国家の保全を担うという意味では、
それも間違いではない。しかし、その実は肥大化した日本の
官僚構造の一部でしかない。
三権分立という旗の下、政治介入の抑止力として公安機関は
独立性を担保されている。検察官の指揮命令権が、法務大臣
に与えられていないというのも、その一例である。
内調にしても、行政機関である内閣と距離を置くべく、実行権
は官僚にある。
しかし、法律上の独立性が担保されるということは、形式だけ
を整えれば良いという発想を許し、人が癒着するといった構造
を招く。内調の構成員と言えば、法務省や総務省、あるいは
検察や警察のOBと経験者だけである。そんな組織が、内閣の
意思や戦略で動かないのは自明の理で、結局は官僚組織の
防衛という不文律が行動規範となるのも止むを得まい。

首相官邸。
この国の政治の中心に、限られた人間だけが立ち寄ることを
許された部屋がある。その中に、明治を思わせる豪奢な木製
の机と、長時間座っていたとしても苦痛を最小限に抑えること
が容易に想像できる椅子。職人が手掛けたであろう細工を凝
らした肘掛に肩肘をつき、座っている男がいた。齢50といった
ところか。
彼は、検事総長のポストを同期に譲った。昨年のことだ。
ただ、官僚の常としてどこかへ天下るには、彼は優秀過ぎた。
そんな彼に用意された席がここだ。
内閣調査室 室長。
官邸にあって、地下には危機管理機能が設置されているが、
内調の室長室も、ひっそりと地下に置かれていた。

室長専用の部屋は今、二人の客人を迎えている。
彼の机の前に置かれた応接セット。そのソファに座る二人の
男達は、室長の方を向いて寛いだ姿勢を保って、室長の反応
を伺っていた。

「今が、その時期だと仰るのですね。」
室長から発せられた言葉は質問というより、確認であった。
「このままでは、大変なことになる。君もお分かりだろう?」
客の一人が応えた。
意味するところは明確である。

保身。

官僚の保身とは、個人だけを意味しない。組織や構造を含めて、
”現状を踏襲”することである。

「わかりました、考えておきます。」
立ち上がった室長が右腕で出口を指した。
会談は終わったということだ。
だが、客人は納得していなかった。確約が欲しいのである。
部屋の主が会談の終了を告げた以上は退出するしかないが、
尚も確認を怠らない。
「正しい判断を期待している。」
二人がドアの向こうに消えた。

室長の正義感が警告を発していた。

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