空飛ぶ自由人・2

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映画『ロスト・フライト』

2023年12月01日 23時00分00秒 | 映画関係

[映画紹介]

シンガポールから東京経由でハワイに向かう
LCC(低価格航空会社)の旅客機が、
会社の燃料節約の方針で
悪天候の中、強硬航行し、
落雷で全電気系統がダウン。
制御不能となって、
フィリピンの島に不時着


携帯電話の電波も通じない孤立した島だったが、
実はその島は分離独立派に支配されており、
乗客たちは無法者のゲリラに捕らえられ、
身代金要求の材料にされてしまう。
機長は、救出しようとするが、
頼りになるのは、
たまたま移送のために乗っていた殺人犯だけだった・・・

というストーリーの、航空事故プラス
サバイバルストーリー。
いわばありふれた話なのだが、
ありがちなロマンスや
登場人物の背景の回想などの
枝葉を削ぎ落とし
乗客の救出に特化した直球勝負。
その直球が時速170キロ級の豪速球なので、
あっという間に時間が過ぎる。
1時間37分の映画が
体感的にはその半分。
後で思い起こしても、
それほどたいした展開ではないのに、
あれよあれよという間に観客を引っ張ってしまう。
それだけ映画がよく作られているということだろう。

人物の背景といえば、
この正義感と使命感と勇気に満ちた優秀な機長が
なぜこんな小さな航空会社にいるかということと家庭環境のみ。
機長のわけは、
大航空会社に勤めていた頃、
機内で暴れた酔客を殴ってしまったからなのだが、
それも映像一つであっさり納得させる。
機長は技術的にも優れていて、
ゲリラの拠点の電話機の故障を直して、
本社と通信。
その交換手がいたずら電話と間違えてつながない、
などというお粗末も展開する。
(後でこの交換手、叱られただろうな) 
ニューヨーク本社のリーダーが優秀で、
不時着地点を解明し、
フィリピン政府に救助を要請するが、
軍の体制が整うまでに24時間かかるということで、
会社がプライベートで雇った
武装救出部隊が派遣される。
しかし、たった二人。
だが、すこぶる腕利き。
協力する犯罪者も元軍人のスキルを発揮して、
ゲリラの殺戮を一手に引き受ける。
(機長は人を殺さない)
ゲリラの武装集団の描写も不気味でかつリアル。
こういう場合、乗客が能力を発揮したりするのだが、
犯罪者以外、乗客は何もけず、ただ救出を待つのみ。
これもリアル。
乗客を救出したものの、
迫りくるゲリラから
どうやって島を脱出するかは、
誰も思いつかなかった方法。
えっ、そんな、と思うが、
確かにあの方法しかないだろう。
まあ、映画だからね。

というわけで、中だるみもなく、
あっという間の疾風怒濤の映画体験
機長を演ずるのは、ジェラルド・バトラー


乗客を守るという機長としての責務を全うしようと
奮闘する姿を哀愁をこめて演ずる。
さすがオペラ座の怪人。
老けたか、と思うが、まだ54歳。
監督のジャン=フランソワ・リシェの手腕によって、
すこぶる楽しませてもらった。

しかし、年末のフライトとはいえ
乗員乗客が17名とは、少なすぎないか。
まあ、あんまり多いと映画的に難しいとは思うが。

5段階評価の「4」

TOHOシネマズ日比谷他で上映中。