[書籍紹介]
赤羽駅に近い岩淵に住む独居老人が絞殺死体で発見された。
不動産屋から手付金として受け取ったはずの
3百万円が無くなっていた。
捜査線上に山本美紀という三十歳の女性が浮上した。
フリーの家事代行業で、電話で依頼を受けて、
その日、老人宅を訪問したものの、
不在だったため、家に戻ったという。
警察は重要参考人として身柄を押さえようとしたが、
タッチの差で大宮署に奪われてしまう。
実は、一年半前の変死事件の重要参考人として、
山本美紀の身柄が拘束されてしまったのだ。
自宅の風呂場で溺死した老人のもとに
山本美紀が家事代行で通っていたのだという。
それ以外にも、
さいたま市の独居老人の入水自殺にも、
山本美紀がかかわっていたらしい。
この場合、老人が作った遺書に
家事代行をしてくれた山本美紀への遺贈が
書かれていたという。
自筆のものでなかったため、
この遺言は無効となっている。
大宮署は、山本美紀を逮捕したものの、
検察は立件せず、
釈放されると、今度は赤羽署が代わって山本美紀を逮捕し、
裁判となる。
果たして山本美紀は犯人か。
それとも・・・
本編は、大きく3つの部分で構成される。
第一章は、赤羽署と大宮署の刑事たちの捜査の動向。
第二章は、国選弁護士の担当となった矢田部完(やたべ・たもつ)の動向。
これに仙台で働く青年・高見沢弘志の話がからむ。
3年前、ネットカフェで知り合い、
実家に連れていくはずが
約束の場所に現れず、
その後音信不通になった中川綾子という女性が
山本美紀だったことをテレビのニュースで知ったのだ。
また、並行して、孤独な老人に取り入って金品を巻き上げる
悪女として山本美紀像を作り上げた
マスコミの報道も描く。
第三章は、仕事をやめて傍聴のために上京してきた高見沢弘志の視点から
山本美紀の裁判を描く。
ある時点で、山本美紀が証言を拒絶するようになり、
それが「沈黙法廷」という題名の由来。
文庫本で738ページ。
大部だが、
停滞もなく、ページをめくる手が止まらない。
捜査方針を早々と美紀の犯行として絞り込む
警察の見込み捜査の弊害や
マスコミの理不尽さも切り込む。
また、家事代行業の大変さも描く。
この程度の状況証拠で逮捕し、立件する
警察と検察が相当愚かしい。
山本美紀の人となりが真摯なので、
読者は美紀に感情移入し、
無実を疑わないようになる。
マスコミ報道について、
次の記述が目覚ましい。
山本美紀のプライバシーの暴き立てについても、
それを好んで受け止めている視聴者がいる一方、
嫌悪感を覚えている視聴者も多い。
テレビの関係者は気づいていないだろうが、
市民は必ずしもそれほど下司ではないし、
カネやセックスにまつわる
勘繰りだけが生きがいでもないのだ。
直木賞作家の佐々木譲による小説。
北海道新聞、中日新聞、東京新聞、西日本新聞、河北新報などに連載され、
加筆・修正されて2016年に新潮社から刊行。
2017年に永作博美主演でWOWOWでドラマ化された。
(実は私はドラマを観ているが、内容は忘れていた)
警察小説、法廷小説の側面があり、
更に冤罪小説でもある。
手を抜かない、詳細な記述は目を見張る。
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