「中国映画の全貌 2008」 @ K's Cinema より 5 本。
にわかオタクになるのも、なかなか道険し・・・(笑)。
この 5 本はどれも見ごたえがあったので、ちょっとだけ覚書き。
K's Cinema は新宿の繁華街にあるこじんまりした映画館だけど、座席がゆったりしていて座り心地がいいので気に入っている。
「呉清源~極みの棋譜」
中国 2005 年
監督:ティエン・チュアンチュアン(田荘荘)
出演:チャン・チェン 、柄本明 、シルビア・チャン 、伊藤歩
( link to goo 映画)
まず冒頭に、呉清源ご本人と、チャン・チェンら出演者が談笑する場面から始まり、一瞬ドキュメンタリーかと思った。
人間としては、太平洋戦争中の日中の狭間で苦悩する孤独な姿、棋士としては、真理の追求に明け暮れる研ぎ澄まされた精神性が画面からとてもよく伝わってくる。
セリフが少なくて、詳細な背景説明もないので分かりづらいと言えば分かりづらいけれど、語りすぎても陳腐だし、最小限の情報で、最大限の感性を発揮をせよと命じられているような感じがした(笑)。
映像では、屋内のたたずまいや風景が、よき昭和の時代の美しさをかもし出している。
「芙蓉鎮」
中国 1987 年
監督: シェ・チン(謝晋)
出演: リュウ・シャオチン(劉暁慶)、チアン・ウェン(秦書田)
( link to goo 映画)
文化大革命についての知識がないので、、この作品で描かれていることにいちいち「へぇ」と頷くばかりだった。事業家や知識人が粛清された文化大革命の波は、有無を言わさず小さな田舎町の人々の生活や価値観を飲み込んでしまう。
人間の価値観って、外部によって押し付けられるものでもなく、押し付けられたところでたちどころに変われるものでもないだろう。もちろん分かっていても、体制には逆らえない。
一生懸命働いて、お金を稼ぎ、蓄財することの何が悪いのか。それだけで「豊農」とレッテルを貼られ、処罰の対象となり、村八分にされてしまう。互いを監視して互いが疑心暗鬼になる時代だからこそ、人間の信頼関係と社会のあり方の根本が見えてくる。社会派ヒューマンドラマだけど、情緒に訴えるだけでなく実に冷静かつ克明で、見ごたえのある作品だった。
ところで、主人公は、米豆腐の店を営む女性だが、米豆腐って何?と、そっちの方にもついつい興味が。みんながおいしそうにがっついている米豆腐、どこかで食べてみたい。
「ブエノスアイレス」
中国 1997 年
監督: ウォン・カーウァイ
出演: レスリー・チャン、トニー・レオン、チャン・チェン
( link to goo 映画)
これは今さら特に語らなくてもいいけど・・・。実はスクリーンで見たのは初めて。最初に DVD で見たときは、レスリー・チャン目当て、次に見たときはトニー目当て、今回、チャン・チェン目当て。見るたびにお目当てが変わっている我がミーハー遍歴に苦笑。
ワタシが見に行った時は、日曜の朝 10:00 という上映回にもかかわらず満席。いろいろな意味でファンが多いようで。
この作品が、その後の同性愛系映画に影響を与えていることは間違いなさそうな気がする。
韓国映画「後悔なんてしない」も良かったなぁと思った作品だったけど、このジャンルは決して好みのジャンルではないけれど(笑)、なぜか異様に切なく心に沁みるのはなぜなのかしら。
ちなみに 「後悔なんてしない」 は今年拙宅への検索ワード上位を占めている。
「變臉<へんめん>/この櫂に手をそえて 」
中国 1996 年
監督: ウー・ティエンミン(呉天明)
出演: チュウ・シュイ(朱旭)、 チョウ・レンイン(周任瑩)、チャン・ルイヤン(張瑞陽)
( link to goo 映画)
變臉(変面)とは、瞬時にいろいろな 「面」 を変える中国四川省の舞台芸能のひとつ。この芸、実際に見たくなるほど鮮やかな芸だ。
「変面王」 という異名をとる老芸人と、身売買仲介者から買った少女との絆の物語。他人同士の老人と少女という組み合わせが、肉親以上の結びつきになるであろうと、なんとなく展開が読めるけれど、その展開の仕方がなかなかもの珍しくて面白い。
20 世紀初頭の中国を描いているそうだが、京劇、大道芸、人身売買、水上生活など、混乱期の中国の貧しい民の暮らしや街並みを通して描かれている。
男子にしか芸を伝承しないと頑なだった老芸人の心を、少しずつほぐしていく少女の健気さがなんとも痛ましく、心打たれる。
「トゥヤーの結婚」
中国 2006年
監督: ワン・チュアンアン
出演: ユー・ナン 、 バータル 、 センゲー
( link to goo 映画)
砂漠化の進む内モンゴルが舞台。水をいかにして手に入れるかが、そこの住む人々の最大の関心事だ。井戸を掘ろうとして爆薬で足を負傷した夫と子供 2人を抱えるトゥヤーの話。
水、そして男と女という人間のきわめて根本的なテーマが一貫して流れている。モンゴルの荒涼とした風景の中に、余計なものが一切ない素朴で厳しい人間の営みが描かれている。
一家を抱えるトゥヤーは、しなやかで、力強い生命力にあふれている女性だけど、彼女の背に負いきれない思いや、やり場のない感情を一体彼女はどこで、どのように処理しているのかとだんだん心配になってくる。結婚式で彼女が見せるひとすじの涙が、彼女の脆さだったのかと、最後はなんだかズンと来た。