Addicted To Who Or What?

引っ越しました~
by lotusruby

韓国映画ショーケース 2008 「あの人は遠くへ」

2008-12-15 22:03:30 | K-Movie Notes


「あの人は遠くへ」

原題:님은 먼곳에(2008 年 7 月)
監督: イ・ジュニク
出演: スエ、チョン・ジニョン、オム・テウン、チョン・ギョンホ、チュ・ジンモ
link to KMSC2008


大作目白押しだった今年の韓国映画界。一応大作と言われていた夏~秋の公開作は全部見たけど、唯一、自分の中でしっくりきた作品はこの作品だけだった。

公開時に見たときは、もちろん字幕なしだったが、日本語字幕が付いて、自分の解釈と違うところがなかったことに驚き。自分の解釈といっても 「想像」 にすぎなかったけれど、言葉が分からなくても伝わるってすごいことだとつくづく感じ入った

現地で公開されたとき、特に若い女性からの支持を得られなかったと監督がぼやいていた記事を読んだけど、特に 「スニ(スエ)があそこまで行く理由がわからない」 というコメントが多かったそうだ。

私は逆に 「どうして分からないのだろうか」 と思った。今の世の中は、女性にも選択肢が多いということなのだろうか。

あそこまで行かなくても、他にも選択肢があったかというと、スニの置かれている状況にはなかったような気がするし、だいたい妻に黙ってベトナムに行くなんて許せない、完全無視ってどういうことよ と問いつめたくなるでしょ(笑)。 

監督の Q&A でも明確にされているけれど、私も 「そりゃ、自分のためでしょ」 と思った。自分はこの先、誰と、何を支えに、どう生きるのかと、自分探しに近いのかもしれないとも思えた。



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以下、ネタバレバレです。
*こちらも記憶がおぼろげなので、細かいところは正確ではないと思います。ご了承ください。*


 イ・ジュニク監督のQ&A  きゃ~~

まず、「意図したところが伝わっているか、ちょっと怖いなぁ~」 とのご挨拶。


Q: ストーリーについて

A: 韓国は短い時間の間に経済的に急成長を遂げ、その分、痛みも伴いました。特に 70 年代の若者。ベトナム戦争は、これまで素材として主にアメリカの作品の中で取り上げられてきました。朝鮮戦争からベトナム戦争、いずれも西欧のイデオロギーの対立から生じたものです。アジアの視点でのベトナム戦争を描いてみようと思いました。この作品では、ベトナム戦争へ出征した夫を探しに行く女性が主人公です。

この主人公を演じたスエは、自分の母親の時代における女性像のイメージ。現在美人ともてはやさされているのは欧米化された顔立ちだけど、スエは整形手術もしていないですしね(笑)。


Q: ラストシーンで登場する隊長さんは、いつも監督の作品で、ちょこっとだけ出演なさっているようですが、なぜいつもちょこっとだけ出演されているのでしょうか。

彼は、演技が上手なのですが、俗に言う成功はしていないのです(笑)。もともと大学路で活躍する舞台俳優で、子供が 2 人います。学費などで大変だと聞いているので、子供の教育の足しにと思い(笑)。私の作品ではなかなか彼に合う大きな役がなくて、でも、最近、他の監督さんの作品で大きな役をもらったそうですよ。

彼と同じような立場の役者を助けていきたいです(笑)。
彼の名前は、シン・ジョングンです。


Q: エンディングで、お互い抱きつくでもなく抱き合うこともなく、オム・テウンが跪き、スエが立っている場面が印象的ですが、あの場面の意図は?

意図は 2 つあります。韓国の女性は、ある意味、これまで男性に抑圧されてきました。それを内面から吐き出させるという意味。頬をぴしゃりと叩くところは、強い否定でもありますが、それはイコール強い肯定になります。

そして、オム・テウンを跪かせたことについては、韓国の男性は自分が間違っていても反省しません。私もです(笑)。私自身が反省しなくてはならないという気持ちをこめました。


Q: スニ(スエ)はどうしてあそこまで、何のために行ったのでしょうか。

自尊心、プライドのためです。夫は自分のことを認めてくれなかった、自分は何も悪いことをしていないのに認めてくれなかった。夫が間違っていることに夫自身に気づいてほしかった。単純な男女間の愛情よりももっと強いものです。

スニがサンギルの頬を叩く場面では、スエにこう指示しました。
1 発目は、「(俺を)愛しているか?ですって」
2 発目は、「愛が何かわかっているの?」
3 発目は、「これが愛よ」


Q: 監督にとって音楽は何ですか?

私は、1960 年代~ 70 年代に10 代を過ごしました。みんな貧しくて楽しみはラジオしかなかった。両親は勉強しろとばかり言うので、思うように聴けず、夜中、布団の中で聴いていました。

勉強も英語もできなかったけど、アメリカのポップソングは 1 回聴いただけで覚えました。もちろん内容も理解していませんけれど、リズムや、その時に心に残った感情は覚えています。


Q: 音楽についてですが、「님은 먼곳에」 がこの作品の主題歌のはずなのに、なぜ最後は 「Oh, Danny Boy」 が流れるのか不思議なのですが。

A: そこに気づいてくれて嬉しいです。「Oh, Danny Boy」 は、アイルランド民謡で親が息子を想う曲です。この作品では、エンディングで、ジョンマン(チョン・ジニョン)が 2 人を見届け、後ろを振り返ってフェードアウトする瞬間に 「オーダニーボーイ」 切り替わります。そこには、妊娠させた愛人ジェニー(チョ・ミリョン)を思い出すジョンマン、サンギル(オム・テウン)を想う母、自分を捨てたジョンマンを想うジェニー(クラブで彼女が歌っていたのが 「Oh, Danny Boy」)、サンギルを想うスニ・・・ いろいろな想いをこめ、このあと、捨てた愛人のところへ戻るであろうジョンマンを想像してもらいたいと思います。


Q: ベトナム戦争について。

A: ベトナム戦争を扱った作品には、ネガティブな題材が多いのが気になりました。政治的な話ですが、朝鮮半島は今でも休戦中です。東西の冷戦は西欧が作りだしたもの。21 世紀になっても朝鮮半島ではこの問題が解決できないのは、なぜでしょうか。ベトナム戦争は解決しているのに、半島はまだ冷戦から抜け出せていません。何か視点を変えて描いてみたかったのです。

たとえば、洞穴に住むベトコンの生活場面を描いていますが、アメリカではベトコンは悪人扱いだけれど、地下の洞穴でも子供に教育を施したり、きちんと生活を営んでいました。ここには、善悪はない。あるのはただ立場の違いだけだということを伝えたかった。反米ではありません。弱者に対して温かい目で見守りたいのです。


Q: 次回作の予定は?

A: 1598 年の豊臣秀吉の明国出兵がテーマです。反日ではありません。過去の歴史を感情だけでなく、成熟した視点で見るということ、相手を攻めるより、まず自らを省みようということです。タイトルは 「雲から抜けた月のように」 です。

できるだけこれまでと違う役者を使いたいと思います。とくに生活に困っている役者さんを(笑)。


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ユーモアたっぷりで、通訳さんへの配慮を忘れないなかなか楽しい Q&A でした。やっぱりこの監督好きだわ~

「恋愛が苦手で、深い恋愛を経験したことがありません、不幸なことですが・・・。でも男性と恋愛する気にはなれません(笑)」 (←「王の男」 の時から言い続けていることなんだとか)。

Q&A 終了後、監督が出てこられないかしらと少しばかり粘ったのですが、タイムアウトとなり悔やまれますが、なぜか男性ファンの居残りが多く、きっとあの後、やっぱり男性に囲まれていたのでは?と(爆)。

シン・ジョングン、「神機箭」 にも出てたわ~そういえば。 


韓国映画ショーケース 2008 「サグァ」

2008-12-15 21:52:06 | K-Movie Notes


「サグァ」

原題: 사과(2008 年 10 月)
監督: カン・イグァン
出演: ムン・ソリ、キム・テウ、イ・ソンギュン
link to KMSC2008

2005 年の東京 FILMeX で紹介されていたのに、韓国での公開までに約 3 年を要している。なぜにそんなに時間がかかっていたのか、事情はよく知らないけれど、見た限り、内容に問題があるというわけではなさそう

久々にキム・テウ萌え した作品。
内向的な男性を演じさせたら、右に出るものはいないぐらい細やかな演技をする。いらいらするところもあるけれど、癒されるところもあるから、無碍にできないわ~と、こそっと女心をくすぐられる。本当のキム・テウはどんな人なのかと、ちょっと興味がわいてくる。

またこういう内気な男性に限って勝気な女性に惚れるというパターンはあまり珍しくないけれど、やはり自分に持っていないものに惹かれるのは男女間の常だと言えるのかな(笑)。

最近、よく見かけるイ・ソンギュン。「夜と昼」 にも出ていたっけ。ミンソク(イ・ソンギュン)の方がキャラ的にわかりにくいと思った。7 年間も付き合った挙句に愛し方がわからないと言って別れておきながら、結婚・出産後もヒョンジョン(ムン・ソリ)に未練がましく付きまとうという悩める子羊? か・・・。

結局、最後に決断するのは女なのね。フェミニズムの映画じゃないけど、なんだかズルくない? 男ども・・・。

ストーリーにはドラマティックな展開はないけど、監督が述べているように、恋愛を形作るものは真っ赤なハートだけじゃないというのは、なんだか頷けるような気もしてきた。

 

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以下、ネタばれあり。(とくにエンディング)
***記憶がウロ覚えなので、表現は正確ではないと思います。あしからず。***

 上映後の監督ミニインタビュー

Q: 監督はシナリオも書かれ、この作品はサン・セバンスチャン国際映画祭 新人脚本賞(2005 年)とトロント国際映画祭 国際評論家協会賞(2005 年)を受賞し、世界で評価されていますが、この作品の魅力とは何ですか。

A: はて、何でしょう? 日常の男女が何を感じて、どんな愛を育んでいるかという、日常を映しだしているところでしょうか。


Q: サグァには、謝罪とリンゴという 2 通りの意味があります。タイトルにはどのような意味があるのでしょうか。

A: タイトルをつける時にとても悩みました。普通 「恋愛」 というと、赤いハートを思い浮かべるでしょうけど、私はなぜか青いリンゴを想い浮かべます。登場する 3 人が、愛し合い、そして謝るという、両方の意味合いがあります。


Q: ヒョンジュン(ムン・ソリ)がミンソク(イ・ソンギュン)に青いリンゴを渡すところは、そこを象徴しているのですね。

A: はい。


Q: キャスティングについてお聞かせください。

A: ムン・ソリについて。この年代で一番演技が上手だからです。撮影中、喧嘩をするほど話し合いました。撮影中はご結婚前でしたが、愛の形についていい結果が出るといいなぁと思っていたらめでたくご結婚されました(笑)。本当に勉強になりました。

イ・ソンギュンについて。最近ドラマで活躍中ですが、この作品はドラマ「コーヒープリンス 1 号店」 の前に撮影したものです。それまでの作品は比較的明るい役柄だったので、ここでは真剣な恋愛ものを、楽しく演じていただきました。

キム・テウについて。とても受け身な男性の役柄なので、演技力が問われます。韓国の男性は典型的に、強く、リードする存在で、ときに暴力的に描かれます。ここでは内面的なものを押し出してもらいました。韓国の男性にも殴らない人も、喧嘩しない人もいます(笑)。


Q: エンディングは 2 通りの解釈があるように思えますが。

A: 男性と女性では、反応が異なるようです。男性は、ああこのまま離婚するのだなぁと、女性は、この 2 人はやり直すのだろうなぁと。

私の意図は後者です。この 2 人はまだ別れるには、出会ってからの時間が短すぎます。愛情を得ることよりも、得た後にその愛をどう継続して育むかが重要だと思います。


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