Addicted To Who Or What?

引っ越しました~
by lotusruby

『肩ごしの恋人』

2007-08-28 00:57:19 | K-Movie Notes


(Image source: cine21)
「肩ごしの恋人」と聞くと、竹内まりやの「チャンスの前髪」(TBSドラマ「肩ごしの恋人」主題歌)が頭の中でぐるぐるまわる♪

お台場冒険王で上映された日韓合作映画「肩ごしの恋人」を観てきた。どこが日韓合作かと言うと、俳優&スタッフは韓国、原作・投資(フジテレビ、AMUSEなど)が日本。現在放映中のドラマ「肩ごしの恋人」は、この作品とは何のかかわりもなく、TBSによる製作。

まだチラシも制作されていないようで、カラーコピーなのか手作り風なチラシ

            

かなりコリアナイズされているとは雑誌の記事で読んでいたけれど、原作でとても重要な男性2人、17歳の家出少年タカシと、ゲイのリョウの存在が抹殺されているし、主人公の女性2人のキャラ設定も違うため、原作があると言えども、まったく違う作品と思って見た方がいいかもしれない。

女性のための作品というような売り込みだけど、女性だからといって個人的にはこの映画にはあまり共感できなかった。抑圧とか欲望のはけ口や、先の見えない出口を見つけようとイライラしているようで、原作よりエロい。その大胆さのわりには、エンディングはこじんまりまとまっていて、「あれっ?」という感じ

社会通念やら男女間の付き合い方のお国の違いからか、原作どおりの家出青年やゲイの設定を扱うことができず、既婚者と不倫する女と、夫の不倫に悩む女というありきたりな構図の中に、火遊びを入れて・・・という男女の描かれ方に驚きがないのが残念でもある。

どうしても原作と比較してしまう目線で見てしまうので、もっと違った視点もあると思うけど・・・。

原作では、ジェンダーとか年齢を超える何かを求めつつ、現実を見つめる冷めた目も持ち合わせているのに、不思議と悲壮感が漂っていないところが魅力だったと思う。仕事も恋も失い、持てるものは何もない2人の女性。17歳の高校生との子を宿しシングルマザーとして生きていこうとする萌と、女に興味のないゲイへの恋を貫く覚悟のるり子。どちらも社会から理解を得るには難しい生き方を選択する「強さ」への挑戦がテーマでもあるような気がする。

韓国版萌のジョンワンを演じるのがイ・ミヨン、韓国版るり子のヒスを演じるのがイ・テラン。この2人の外見は確かにタイプが違うけれど、作品の中ではまったく正反対というほどの違いも感じなかった。何よりも2人の腐れ縁みたいなものが、ほとんど説明されていなかった。そして、人生を選択する「強さ」も「わがまま」の延長線にしか感じられなかった。

この作品の監督は、イ・オニ。女流監督が撮った作品というと、たいてい「女性の視点で女性の本音を描いた作品」などと解説されがちだけれど、この作品についても例外ではなさそう。でも、これが女性の本音 と聞き返したくなる。女性から支持を得られる一方で、女性から疑問の声も出たりするのも、常なんだろうな。

ただ、この作品の上映時間は100分で、話の密度は濃くて凝縮感があり、ぎっしりドライフルーツが詰まったずっしり重いフルーツケーキのようなので、見るときは、是非コーヒー  でも飲みながら・・・

ちょうど「Suッkara」10月号にイ・オニ監督のインタビューが少し出ていたけれど、「肩ごし~」については、「女性にはある種の共感、男性には女性をより深く理解する機会」としか触れていないので、ちょっと残念。


余談ながら冒頭の「チャンスの前髪」。 フンフン♪と鼻歌を歌いながら、この記事を書きつつ・・・ ご存知でした?チャンスの前髪って何のことか?
(♪フル視聴 ~8/31

ギリシャ神話のカイロスは、チャンス、好機をつかさどる神。前髪は長いが、後頭部は禿げていて、足が速い。この神は、前から勢いよく走ってくるので、出会ったときに前髪をつかまないと、通り過ぎてつかもうとしても後ろに髪がないのでツルリと手が滑ってつかめない。いつも石橋を叩いてばかりいたら、ここぞというチャンスを逃してしまうので、チャンスだと思ったらつかもうという喩えだそうです。

なんだか、すっかり竹内まりやの新曲とTBSドラマの宣伝記事  のようになってしまったけれど、個人的には、原作とドラマとこの映画と、ひとつのストーリーで3種類楽しめたので、面白かった。日本での公開は11月23日(金)。