(Image source: tamako-movie)
面白そうな予告編の期待に反して、あまり面白くなかった『転がれ!たま子』(2006年 監督:新藤風)・・・とくに前半は、テンポが遅くて、セリフも少ないし・・・やや、シュールがかっている。後半はテンポよく進む。
甘食が大好きで欠かせないたま子は、自立できない24歳。子供じみた鉄かぶとをかぶり、自分の殻に閉じこもって、母と弟との3人暮らし。母親に自分の甘食は自分で買いなさいと言い渡され、バイトに出かけるが会社でも適応できず使い物にならない。そんなある日、ご贔屓の甘食屋「日進月歩堂」の爺さんが病気で倒れ、甘食が手に入らなくなる。どうしても甘食が食べたくて、勇気をふりしぼり新しい世界へ踏み出していく・・・
「嫌われ松子」vs「転がれ!たま子」か(笑)。そのたま子役山田麻衣子の不思議ちゃんキャラは、最近よく見かける珍しくないキャラだ。奇抜な衣装や、特異なキャラ設定は、なんだか演劇的、コミック的。演劇として、舞台で見ると面白そうだ。映画公開後に、漫画化されている。
自分の殻に閉じこもったキャラのわりには、あの奇抜な衣装はなんだか解せない。思い切り自己表現を楽しんでいるかのようにも見えるので。社会や他人との調和がとれていないということなのか。
出演陣は豪華。岸本加世子、竹中直人、広田レオナ、ミッキーカーチスなど個性派俳優がぞくぞく登場してくれるので、それはそれで見所もある 。
監督は新藤風。祖父は新藤兼人、父は新藤次郎(近代映画協会のプロデューサー)という、映画一家。いまやタレントだけでなく、製作サイドまでもが世襲的で、閉鎖的な世界なのね。ただ、この新藤風監督は、1作目の『LOVE/JUICE』が国際的評価を得て、邦画界の注目株らしい。
なんだか、とっても甘食が食べたくなった・・・
(Image source: nkino)
なんとなく若者映画が見たくなったので、『僕らのバレエ教室』(2004年 監督:ピョン・ヨンジュ)。
定まらない自分の進路や目標、親の期待に悩む高校3年生の4人が、冬休みに偶然集まったバレエ教室を通して、手探りで自分の道を見つけようとする。子供のようで大人、大人のよう子供だったりする高校3年生の微妙な心理がよく描かれているが、ストーリーに意外性はなく、予想通り。
主演は、元 god のユン・ゲサン。と言っても、god についてはよく知らない。K-Popはたまには聴くけど、god は聴いたことがない。そして、キム・ミンジョン、イ・ジュンギ、オン・ジョンワンと、今、若手と呼ばれて活躍している面々。うん、若くて気持ちがいい。
どうしてバレエ教室なの? というのが、真っ先に湧いた質問なのだけど、これについては調べたらちゃんとピョン監督の明快な答えがあった(link to)。「現実には役に立たないものに熱中するシチュエーションが欲しかった」「勝ち負けではない世界を撮りたかった」そうだ。
現実には役に立たないもの、勝ち負けではない世界に熱中する、か・・・いいな、これ。どうも損得勘定やら、いつかどこかで役に立つに違いないと期待できるものに、時間とお金を投資してしまうのだけど・・・
ピョン監督は韓国映画界を代表する女流監督。東西を問わず、男性が主流の職業である映画監督において、女性の存在はやはり珍しい。この監督の作品で見たのは、前作のキム・ユンジン主演『蜜愛』(2002年)だけ。前作とこの作品とは、受ける印象のトーンがまったく違うので少々驚いた。
女性ならではの視線や観点から・・・というような「女性」をアピールできる部分と、まったくアピールしない部分を、はっきり遣い分けているようだ。