Addicted To Who Or What?

引っ越しました~
by lotusruby

『夏物語』ジャパンプレミア

2007-01-17 23:57:51 | K-Movie Notes


『甘い人生』の時にはあれほど切望したジャパンプレミアチケット。それほど切望しなくても『夏物語』では降ってきた。世の中の不条理を感じる・・・。オークションサイトで1枚○万円のビットを見た時には、捕らぬ狸の皮算用でソウル旅行資金に充てようかとの考えがよぎったけれど、さすがに極悪人になりきれない。

さて、舞台挨拶は、幾重ものレースのカーテン(?)の向こうから、スモークもくもくの中、セリであがってきた L.B.H. とスエの登場から。演歌歌手じゃないんだからさーって、この時点で、笑いをこらえるのに大変。チョ・グンシク監督も合流し、3人への質問ももう何度も聞いた話だ。しばらくしてから日本版エンディング曲を歌う藤井フミヤ登場。

そして、字幕版上映。すでにソウルで見ているが、会話や言葉のやり取りの面白さで見せる映画ではないので、字幕が付いたからと言って、印象がガラリと変わるものでもなかった。もちろん、韓国版でわからなかった部分が、字幕版(日本版)で確認できたのはよかったが、ショックなことも・・・

・1969年を象徴する曲だった ♪Yesterday when I was young♪ は日本版から完全に消え去っていたこと。やはり、著作権の問題なのか・・・
・ジョンイン(スエ)を買いかぶっていたこと。ソギョン(イ・ビョンホン)と別れたのは、ジョンインたっての選択・意志だとばかり思っていたのに、違っていた。

このジャパンプレミアの模様は、L.B.H. の話題で埋め尽くされそうなので、あえてここでのお題は・・・

「頑張れグン様

今回の舞台挨拶で最高のリアクションだったのは、フミヤの歌が終わって、「いかがでしたか」と感想を聞かれたチョ・グンシク監督。突然フラれて、一瞬言葉に詰まりモゾモゾと「聞き惚れていたもので・・・」と、照れながらかわした。グンシク監督、決して主演2人と同じラインには立たず、2人の後ろに控える通訳さんと同じラインにたたずみ、通訳さんのメモを横から見たりして・・・。

チョ・グンシク監督はいつも控え目な印象だったが、こういう舞台ではあまり居心地良さそうには見えなかった。舞台挨拶で、グンシク監督が口を開いたことと言えば、登場の時の挨拶と、「このお2人と仕事をしてみていかがでしたか?」(ありきたりな・・・)という質問に対して「試写会などでは、お2人とは仕事がしずらかったと冗談を言いましたが、本当はお2人と仕事が出来て嬉しかったです」(無難・・・)との回答、そして、フミヤの歌について。この3点だけ。もう少し気の利いた質問をしてほしかったな。監督の話はほとんど聞けず・・・

まぁ、監督にとってはこの作品はもう過去のもので、すでに次回作の企画やらキャスティングで、頭の中はいっぱいだったりして・・・
そんなグンシク監督も、映画雑誌のインタビューではちょっとだけ雄弁だ・・・

1969年にこだわった理由は、脚本家キム・ウニがもってきたシナリオで、当時人類初の月面着陸ニュースを聞いた人々が、家の屋根の上にあがって人々が月を眺めたシーンがとても印象に残り、そこを生かしたかった  えーっ、「時代が2人を引き裂いた」というキャッチコピーは一体何なの? 月面着陸の方が監督にとって思い入れがあったなんて。(笑)

ごく普通の平凡な男女の姿を描きたかった  ええ、何の取り柄もない平凡すぎる男女にも小さなドラマはあると言いたかった? 

当初は、ジョンイン(スエ)がソギョン(イ・ビョンホン)と別れてから地の果てまでやってきたというイメージで、ソギョンの目の前に海が広がるエンディング構想だった  面白い、そのエンディング。でもその場合には、ジョンインが主人公で、ソギョンにスターをキャスティングしなければ、なんだかしっとりして共感できたかもしれなかったなぁ。ジョンイン版希望だわ。

特別な演技指導はなく、イ・ビョンホンの自由な演技(アドリブ)に任せた  任せてよかったのか、任せなかった方が
良かったのか・・・。L.B.H.は一字一句、一行のセリフにこだわり、計算して演技するスタイルをもつ人。「自由な演技」と、このスタイルは噛みあわないように見えた。

前作『品行ゼロ』(2002年)はデビュー作にして、160万人以上の観客を動員。リュ・スンボム、コン・ヒョジン、ポン・テギュなど若手個性派俳優達を上手く使いこなしながら、各人の個性をうまく引きだしていたように思えた。

それなのに、この作品では、オ・ダルス、ユン・へジン、チェ・ドンムン、チョン・ソギョンと、忠武路のそうそうたる名脇役を揃えながらも、かれらの演じる役は主人公とのかかわりがほとんどなく、主人公のキャラになんら影響を与えることのない人物設定になっているのが、理解しずらい。

そして、高額ギャラ俳優を使っても、30万の観客しか動員できず、この作品が「スターシステムの崩壊/終焉」の代名詞になってしまった。ただコケるだけでなく、映画界の試金石的な役割を果たしたのなら、別の意味ですごいよグン様

前作が品行最悪だったので、今回は美しい俳優と仕事ができて嬉しいなどと、冗談っぽい話もしていたグンシク監督の本当の意図は、一体どこにあるのか、不思議な人。

グンシク監督は、チャン・ソヌ監督の『LIES/嘘
』で助監督をつとめていたのだそうだ。チャン・ソヌ監督は社会批判的な作品を発表する監督で、民主化運動を題材にしたものや、男女の性を赤裸々に描写する作品があり、国際的な評価も高い。チャン・ソヌ監督からは学ぶことが多かったと言う(チョ・グンシク監督インタビュー:『品行ゼロ』  link to)。

『LIES/嘘』(1999年)はベネツィア国際映画祭コンペ部門出品作で、当時、問題になった作品。これ、実は見たのだけどもちろんレビューは書けなかった。過激な性描写が多くて何を書いてよいやら ・・・。また、映画のストーリーと、この作品に出演する俳優のインタビューが交差して描かれているので、ドキュメンタリー映画を見ているような感じがする。ちなみに、『LIES/嘘』で38歳の彫刻家相手に性の虜になる18歳の女の子を演じたキム・テヨンは、ドラマ「オールイン」のジェニー役を演じている(ちょっとビックリ )。

チャン・ソヌ監督については、この作品しか見ていないので、この作品から受ける赤裸々なイメージが強烈で、グンシク監督がそうしたチャン・ソヌ監督の影響を受けているとは意外な感じがするけれど、ちょっと新たな発見。グンシク監督の次回作は、女性が主人公のアクション映画なのだそうだ。この監督がどのように女性をとりあげるのかは、見てみたい気がする。